神話「バベルの塔」から学べる教訓とは。聖書の内容や解釈も考察

更新:2021.11.30

旧約聖書に登場する「バベルの塔」のエピソード。キリスト教に詳しくない方でも、名前くらいは聞いたことがあるかもしれません。傲慢になっていった人々に対し、神はどのような罰を与えたのでしょうか。この記事では大人も考えさせられるこの物語のあらすじと、人々が「天まで届く塔」を建てようとした理由、教訓などを解説していきます。あわせておすすめの関連本も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

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神話「バベルの塔」とは。聖書の内容を紹介

 

旧約聖書の「創世記」第11章に登場する「バベルの塔」の物語。聖書ということでそこには大いなる神の存在があるわけですが、一体どのようなお話だったのでしょうか。まずはその内容をご紹介していきます。


もともと地球上の人々は、同じ言葉を話すひとつの民族でした。東方に移動しながら生活し、やがてシナル(シュメール)という土地にたどり着きます。

人々は、神が作った石の代わりにレンガを、漆喰の代わりにアスファルトという技術を生み出し、それらを用いてとある物をつくろうと考えるのです。「我々の街と、天に届くほどの高い塔を作ろう」と。人々は技術を手に入れたことで傲慢になり、自分たちの力を示すために名をあげようとしました。

その様子を見た神は、人々が神の力を脅かすのではないかと危惧します。そしてこの状況になったのは、すべての人が同じ言葉を使う々民族だからだと考えたのです。

そして神は、ひとつだった人々の言語をバラバラにし、地上を混乱させました。お互いを理解できなくなった人々は散り散りとなり、街作りも中止に。

シナルにある古都の名の「バビロン」と、ヘブライ語で混乱するという意味をもつ「バーラル」という言葉から、この塔は「バベルの塔」と呼ばれるようになったといわれています。

神話「バベルの塔」の解釈。なぜ天まで届く塔を建てようとした?

 

そもそも人々はなぜ「天まで届くほどの高い塔」を作ろうとしたのでしょうか。それは、「神と対等になりたい」という野心からくるものでした。

同じ言葉を話すひとつの民族として一体感をもち、技術を体得していった人々は、自分たちの力を示そうとしだいに傲慢になっていきます。天上というのは神が住まう場所。そこに届くほどの高い塔を建てて、神と対等になろうとしたのでしょう。

神が作った石や漆喰ではなく、自分たちが作り出した煉瓦やアスファルトを使うところにも、自分たちの技術が神に対抗しうるものであると誇示する意思を感じられます。

ただこの状況を、神が黙って見過ごすはずがありません。怒ると同時に人々の力を恐れるようにもなり、意思の疎通ができないように言葉をバラバラにしてしまうのでした。

神話「バベルの塔」から学べる教訓とは

 

「言葉」と「コミュニケーション」は、人々の団結に必要不可欠なものである

「バベルの塔」の物語からは、「言葉」というものが意志の伝達に必要不可欠なものであるということがわかります。

人々は、神により言葉をバラバラにされたことで「話し合う」ことができなくなりました。その結果、街を作ることも、塔を建てることもできなくなってしまったのです。

現代においては翻訳機能なども発達しているため、異なる言語を話す者でも会話をすることはできますが、物事を遂行するにあたりコミュニケーションが重要なことにかわりはありません。むしろ、古代の人々よりも異国の言葉や考えを学ぶ手段をもっているからこそ、よりコミュニケーションを大切にするべきではないでしょうか。

傲慢は破壊を招く

野心や向上心をもつことは悪いことではありませんが、「神と対等になりたい」という身の程を超えた考え方は、神の怒りを買いました。

技術などの力を手に入れたからといって、自らをわきまえない傲慢な態度をもつことは、時に自らの身を亡ぼすこともあるということを念頭に置き、行動したいものです。

子どもも読める絵本「バベルの塔」

著者
佐久間 彪
出版日

 

天高く、雲を突き抜けてそびえ建つ塔が印象的な表紙。30作以上の絵本を手掛けてるかすや昌宏がイラストを担当しています。

文章はすべてひらがなで書かれているので小さなお子さんでも読むことはできますが、内容は少々難しいので、親子で読んで要所で説明をしてあげるのがおすすめ。「傲慢さ」について一緒に考えてみるのもよいでしょう。

絵画を通じて想像力を養う一冊

著者
出版日
2010-07-01

 

バベルの塔を描いた絵画は数多くありますが、有名なのはブリューゲルの作品でしょう。細部まで書き込みがされていて、陰影のある立体的な美しさがあります。

本書は、「おはなし名画」シリーズの姉妹編で、幼児のための名画集といわれているものです。絵の1枚ずつに短いキャプションがついていて、想像を膨らませながら読むことができるでしょう。

子どもも大人も楽しめる一冊です。

「バベルの塔」の新しい解釈

著者
長谷川 三千子
出版日
2007-04-01

 

旧約聖書には、この「バベルの塔」のエピソードをはじめさまざまな物語が収められています。本書は、「創世記」について作者の独自の解釈を記した一冊です。そもそも「創世記」は、4つの資料をいくつかの資料をつぎはぎして作りあげられたものなのだとか。

「バベルの塔」については、「人」「神」「地」に着目し、既成概念にとらわれずに物語を見直していきます。

新たな視点で神話を楽しむことができる一冊です。

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