5分でわかるクトゥルフ神話!元となった小説やキャラ設定などを簡単に解説

更新:2021.11.17

2017年に誕生100周年を迎えた「クトゥルフ神話」。その独特の世界観が人気を呼び、世界各地に普及してさまざまな創作に影響を与えています。この記事では神話の概要やあらすじ、旧支配者や旧神などキャラクターを解説しつつ、おすすめの関連本もご紹介していきます。

ブックカルテ リンク

クトゥルフ神話とは。作者やテーマなど概要を紹介

 

「神話」と銘打たれていますが、クトゥルフ神話はギリシャ神話や日本神話などとは異なり、文化や文明と関連付けて民族に伝承される物語ではありません。複数の作家たちが世界観を共有した小説を発表し、それらの作品群が体系化されることによって作りげられた、いわば架空の神話です。

「クトゥルフ」はこの神話に登場する異形の神のことで、原典には「Cthulhu」と表記されています。宇宙から飛来した異生物として描かれていて、本来人間には発音できない名前になっているのです。

クトゥルフ神話の基礎となる世界観を作ったのは、アメリカの小説家ハワード.P.ラヴクラフト。1919年に発表した『ダゴン』を皮切りに、異形の神々が登場する作品を次々と世に送り出しました。

当初ラヴクラフトは、自身の作品を体系化することを考えていなかったそうです。そのため、クトゥルフ神話自体がいつ成立したのかは定かではありませんが、1928年に代表作である『クトゥルフの呼び声』を発表した前後で、神話の構想は具体化していったと考えられています。

クトゥルフ神話に共通しているのは、超常的な存在に対し、人間の存在や価値は微々たるものであるということ。圧倒的な存在を目の当たりにする恐怖を、ラヴクラフトは「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と呼びました。

ラヴクラフトが作り出したユニークな設定は人気となり、彼の創作を支持する人々が世界観を共有する作品を作っていくこととなります。そして約100年が経過し、アメリカや日本をはじめ世界各地に広まり、さまざまな創作に影響を与えているのです。

クトゥルフ神話の作者ラヴクラフトが作り上げた、神話の体系とは

 

ラヴクラフトの作品には、おどろおどろしくて得体のしれない神々たちが登場します。彼らは人間の理解を超えていて、人々は触れてしまうと恐怖のあまり、狂気に陥ってしまうのです。

このような世界観や設定は人気を呼び、ラヴクラフトを支持する作家たちは彼の作り出した設定や用語、地名を用いた作品を発表するようになります。こうして同じ世界観を共有する作品が数多く登場するようになりました。その過程で神々の個性も深みを増し、「旧支配者」「外なる神」「旧神」などと細分化されていきます。

こうして裾野を広げていったのですが、当のラブクラフトは1937年に46歳の若さで亡くなってしまうのです。

するとアメリカの作家で友人でもあったオーガスト・ダーレスは、ラヴクラフトの作品を世に広めるために出版社「アーカム・ハウス」を設立。ラヴクラフトの作品群を「クトゥルフ神話」と呼び、同時に作品の設定や用語の整理、体系化を進めていきます。

このような活動を通じて、クトゥルフ神話はラヴクラフトの死後に世界中に広まっていったのです。

クトゥルフ神話のもととなった小説『クトゥルフの呼び声』のあらすじ

 

先述したとおり1928年に発表された『クトゥルフの呼び声』は、クトゥルフ神話の世界観が確立されるきっかけとなったものでした。すでに亡くなったサーストンという人物が語り手を務める短編で、彼の手記という形で物語は進んでいきます。

ではあらすじを簡単に紹介しましょう。


ぼく(サーストン)は、謎の死を遂げた伯父の遺品のなかから粘土板や石像を発見します。そこに隠された秘密に興味を抱き、残された「クトゥルフ」や「ル・リエー」という言葉を手がかりに、世界を旅して調査を進めていくのです。

やがてぼくは、「クトゥルフ」とは「ル・リエー」に封印された太古の神で、かつて地球は「クトゥルフ」によって支配されていたことを突き止めます。

しかしこの事実を知った者は皆悲惨な運命をたどっていて、多くを知りすぎたぼくもまた、自身を死が迫っていることを悟るのです……。


短編ながら異形の神クトゥルフの圧倒的な存在感と、その真実に触れてしまった人間の末路が語られている、クトゥルフ神話のエッセンスがつまった作品だといえるでしょう。

クトゥルフ神話のキャラクター設定を解説!旧支配者、外なる神、旧神などの神々

 

クトゥルフ神話における代表的なキャラクターを、設定とともに紹介していきます。

旧支配者

かつて地上を支配していた神々で、善の旧神と対立する邪神と設定されています。初期のラヴクラフト作品においては、神々は善悪で区分できる存在ではありませんでしたが、彼の死後ダーレスによって善悪と分けられるようになりました。

現在は旧支配者たちは封印されて活動が制限されているものの、その親族や従者、信者たちが復活を画策して暗躍しています。そしてもし旧支配者たちが復活すれば、人類はすぐに滅亡してしまうと考えられているのです。

クトゥルフは、旧支配者のなかの代表的な神。タコのような頭にイカのような無数の触腕をもち、緑色のうろこに覆われた山のような巨体をしていて、人間はその姿を見ただけで発狂してしまうそうです。

外なる神

厳密にいうと、旧支配者たちは「神」ではありません。彼らはもともと宇宙から飛来した異生物で、圧倒的な力をもつ一方で、その力には限りがあるとされています。

それに対し外なる神と呼ばれる存在は文字通りの「神」で、宇宙法則にすら干渉できる別格のもの。

たとえば外なる神の元祖となるヨグ=ソトースは、時間や空間を超越し、姿も不定形な「ひとつにして全てのもの」「全てにしてひとつのもの」と称されているのです。外なる神は、神々のなかでも特に人智を超えた超越的な存在だといえるでしょう。

旧神

善神として、旧支配者と対立してきた神々のことです。ダーレスによって新たに生み出された存在で、旧神たちによって旧支配者は封印されていると説明されています。

ただなかには、人間からすれば旧支配者と変わらないような神もいて、単純に人間の味方として描かれているわけではありません。

代表的な作品を収録した中短編集

著者
["H.P.ラヴクラフト", "中央東口"]
出版日
2017-11-16

 

表題作の「クトゥルフの呼び声」をはじめ、最初のクトゥルフ神話に位置付けられる「ダゴン」、ラヴクラフトがプロットを提供した「挫傷」など8つの物語をまとめた中短編集です。

日本におけるクトゥルフの第一人者、森瀬繚が翻訳を担当し、読みやすいのが特徴。さらに訳注や年表、関連用語の索引など資料面も充実しています。初めてクトゥルフ神話を手に取る方はもちろん、概要を知っている方も深読みできる一冊でしょう。

クトゥルフ神話を深く理解するための教科書のような一冊

著者
森瀬 繚
出版日
2005-12-02

 

クトゥルフ神話に登場する神々や人間、また舞台になっている土地の名前など、用語を中心に解説している作品です。

紹介されている項目は全部で111。それぞれ見開きで解説と図説が付いていて、まるで教科書のような情報量です。より深くクトゥルフ神話を理解したい人におすすめの一冊です。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る