小野寺史宜のおすすめ書籍5選!本屋大賞候補『ひと』や文庫で読める本まで

更新:2021.11.17

「みつばの郵便屋さん」シリーズで人気を博している小野寺史宜。小学校の頃から作家になるという夢を抱き、さまざまな本を読んできたそうです。2019年には『ひと』が本屋大賞にノミネートされ、話題となりました。ますます注目の集まる彼の作品のなかから、特におすすめの作品をご紹介します。

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小野寺史宜とは

 

1968年生まれ、千葉県出身の小野寺史宜。法政大学の文学部を卒業しています。

2006年に短編「裏へ走り蹴り込め」が小説誌「オール讀物」の公募新人賞を受賞し、デビューしました。2008年には、ロックをテーマにした青春小説『ROCKER』で「ポプラ社小説大賞」の優秀賞を受賞しています。

気が弱いけれども優しくてイケメンな郵便屋を描いた『みつばの郵便屋さん』は、人気が出てシリーズ化に。2019年には『ひと』が本屋大賞にノミネートされるなど、今後も活躍が期待される作家のひとりです。

小野寺史宜の本屋大賞ノミネート作品『ひと』

 

大学入学前に調理師の父親を亡くした主人公。以降は母親が女手一つで育ててくれ、東京の大学に進学することができました。しかし、ある日突然、その母親も急死したという連絡が入ります。

たったひとりになった20歳の主人公に残されたのは、150万円のみ。大学を中退し、職探しをしようにもなかなか動き出せずにいた時、ふと総菜屋に立ち寄りました。それが彼の人生を変えることとなったのです。

著者
小野寺 史宜
出版日
2018-04-11

 

ひとつ残っていたコロッケを、たまたま居合わせたおばあさんに譲った青年。これをきっかけに店主に気に入られ、総菜屋でアルバイトをすることになりました。

天涯孤独で蓄えもないけれど、優しい気持ちをもっている青年と、彼の周囲の人々の1年間が綴られている小説です。主人公は両親の死により、いろんなことを諦めなければならなくなりますが、ひとりきりではないことに気付き、新たに自分の道を進み始めるのです。

じんわりとあたたかな気持ちになれる一冊。2019年の本屋大賞にもノミネートされた、おすすめの作品です。

小野寺史宜が描く心の闇『夜の側に立つ』

 

高校時代のバンド仲間と酒を飲み、酔っ払ったままボートに乗り、ひとりが湖に落ちて溺死します。

この事故をきっかけに、主人公の了治を中心に5人の仲間の10代~40代が描かれていく小説です。

著者
小野寺 史宜
出版日
2018-08-22

 

了治以外のバンドメンバーは、生徒会長や副会長、バスケ部のエース、吹奏楽部の華など学校の誰もが知っているような人たち。了治は歪んだ劣等感を抱き、自分の心に決着をつけることができないまま大人になっていました。

物語は高校時代から現在の40代にいたるまでの出来事が順不同で語られます。読みづらさはまったくなく、どんな出来事がターニングポイントだったのか、高校時代と何が変わり、何が変わっていないのかがよくわかる構成です。

誰もが暗い過去や秘密を抱えているという、切なさや辛さを感じる作品。「夜の側」に立つことの意味がわかると、読後もモヤモヤとしてしまうかもしれませんが、心の闇を秀逸に描いた一冊です。

小野寺史宜が夫婦の在り方を描く『近いはずの人』

 

33歳の北野。4年間暮らした妻を事故で失い、それからというもの、ビールを片手に妻の携帯電話に4桁の数字を打ち込む日々を送っています。

ついにロックの解けた携帯電話のなかには、北野の知らない妻の姿がありました。1番近くにいたはずなのに、まったく知らない妻の秘密を探っていきます。

小野寺史宜の『その愛の程度』『それ自体が奇跡』とあわせて「夫婦三部作」と呼ばれている作品です。

著者
小野寺 史宜
出版日
2016-02-17

 

妻は友達と温泉旅行に行くと言って出掛けていましたが、事故当時彼女はひとりでした。妻は、北野が知らない「誰か」を頼り、その「誰か」と会うための事故だったということがわかり、その謎を探っていきます。

同じ家で暮らし、一緒に食事をし、誰よりもそばにいた妻。それなのに知らない顔があり、自分の気付かないうちにすれ違っていたことが死後にわかったら……。それは知るべきことだったのか、知らなくていいことだったのか、考えさせられる作品です。

仕事も家もなくした青年の放浪生活『東京放浪』

 

主人公は26歳の森くん。顧客とトラブルを起こして会社を辞めることになったのですが、会社の寮に住んでいたため仕事だけでなく家も失うことになりました。

同じく東京で暮らしている姉を頼ろうと考えますが、姉は恋人と海外旅行中……帰国するまでの1週間、知人の家を渡り歩いて自分自身を見つめ直す物語です。

著者
小野寺 史宜
出版日
2016-08-05

 

主人公の1週間の放浪生活を描いた青春小説。手当たりしだいに友人や知人を頼るなかで、5歳の少女の子守を頼まれることになります。これが彼の生き方を変える転機となり、物語は進んでいくのです。

登場する人物はみな特別な何かをもっているわけではなく、本当に普通の人たち。でもだからこそ、そんな普通の人たちが関わりあうことで人に影響を与えること、1歩1歩前に進むことが人生を変えていくことなんだと気付かせてくれるでしょう。

1週間のうちに小さなドラマが詰め込まれた、爽やかな作品です。

小野寺史宜のおすすめ小説シリーズ『みつばの郵便屋さん』

 

「みつば町」が担当区域の郵便配達員・平本秋宏には、人気タレントをしている兄がいます。

秋宏はいたって地味な性格で、日ごろから目立たないように暮らしているのですが、行く先々で「誰かに似てない?」と言われがち。

本書は、そんな秋宏を主人公にした物語です。配達先の人とのふれあいや、郵便配達員の目から見た町の様子があたたかく綴られます。

著者
小野寺 史宜
出版日
2014-08-05

 

人のよい秋宏が遭遇する小さな出来事が丁寧に描かれるほのぼのとした作風で、読んでいると気持ちがじんわりとあたたかくなります。

郵便配達員は単に物を届けるだけでなく、人と人を繋ぐ仕事だということもわかるでしょう。そしてそれを成しえる秋宏の、真面目で優しい性格が魅力です。

本作はシリーズ化され、小野寺史宜の代表作のひとつになっています。ぜひ続きも読んでみてください。

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