『ピアッシング』4の見所をネタバレ!村上龍のサイコ・ホラー小説が映画化

更新:2021.11.17

小説家としてはもちろん、テレビ番組やメルマガなどの活動でも知られる村上龍。彼の作品は、性描写や暴力シーンが多いことで有名です。そのひとつが、本作『ピアッシング』。このサイコ・ホラー小説は2019年に映画化されることが決定しております。 今回の記事では、そんな『ピアッシング』のあらすじや見所をご紹介。あなたも村上龍の衝撃作品を手に取ってみてはいかがでしょうか。

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小説『ピアッシング』あらすじを紹介!2019年映画化!

 

主人公・川島昌之は、殺人願望を抱えていました。息子の寝顔を見ていると、アイスピックで突き刺したいという願望に襲われてしまうのです。彼はその願望をどうにかするために休暇をとり、ホテルに風俗嬢を呼び出して、殺害することにします。

現れたのは、佐名田千秋。彼女は精神が不安定で、自傷行為をくり返していました。そんな彼女は入浴中に発作が起こり、そこで自傷行為をしてしまいました。

その時に彼女の異変に気づいた川島が彼女を介抱するところから、物語は始まります。

 

著者
村上 龍
出版日

 

本作は川島と千秋の2人の視点で描かれ、交互に入れ替わることで読者を引き込みます。終盤には思いもよらないトリックが潜んでおり、読んでいて衝撃を受けること間違いなし。

アメリカで映画化され、日本では2019年に公開することが決定しています。風俗嬢役は『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』で有名なミア・ワシコウスカ、殺人衝動を抱える男は『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』で有名なクリストファー・アボットが演じます。

日本の小説が海外でどのような作品になるのか、要注目です。

 

『ピアッシング』の見所1:村上龍が描くサイコ・ホラーはすごい!作者のおすすめ作品も紹介

作者・村上龍の小説は、サイコ・ホラー的な内容が多いのが特徴。なかでも本作は際立っており、殺人衝動を抑える男と、不安定な精神状態の女の描写が真に迫っています。

主人公の川島は、息子のことを間違いなく愛しています。しかし、どうしても殺人願望を抱いてしまうのです。愛する息子を殺したいと思ってしまう衝動。この相反する気持ちは常人に理解することはできませんが、もし自分も同じような境遇だったら……と思って読むと、そのおそろしさは実にリアルなものとなるでしょう。

しかし、本作はただのホラーではなく、読後には爽やかな気持ちになるのも特徴なのです。

先ほどもお伝えしたように、村上作品にはサイコ・ホラー的な内容が多く存在しますが、そういったものだけではありません。ここからは本作とは異なる味わいの、おすすめ作品もご紹介しましょう。

著者
村上 龍
出版日

こちらは、恋愛について書かれたエッセイで、作者の代名詞的な作品となっています。村上は、この『すべての男は消耗品である』の中で、「ブスは死ね」「バカでブスな女は銃殺でいい」などの暴言を連発。しかし、それは言葉だけの見せかけに過ぎず、本当は女性を尊重していることも感じられます。過激な中に人への尊重があることが感じられるのが、作者の特徴でもあるでしょう。

また、普遍的なテーマも扱っており、数々の著名人一読の価値はあるエッセイとなっています。過激なのに、どこか整然としている村上ワールドを、ぜひご堪能してみてください。

『ピアッシング』の見所2:殺人衝動を持つ男の葛藤!子供をアイスピックで…

 

川島は、殺人衝動を抱えている男です。彼は自分の子どもをアイスピックで刺したいという衝動に駆られ、それを解消するために娼婦の腹を刺すことを思いつくのです。

偽名でホテルをと取り、詳細な犯行計画をノートに書き込みます。そこまでして人を殺すことを計画するなんて異常ですが、村上龍の筆致が、そこにリアリティを持たせているのです。

実は本作の登場人物は、精神的外傷を負っています。現実世界でも、虐待などでトラウマを持っている人が自傷行為に走ることがあります。作者は説得力のある描写でそれを描いて、物語に厚みを持たせているのです。

本作の見所はグロテスクな描写だけでなく、登場人物の会話が錯綜するところにもあります。緻密に練られた構成で、思い違いによってすれ違う様子が非常にスリリング。終盤の怒涛の展開は、まさに圧巻の一言でしょう。

 

『ピアッシング』の見所3:疾走感のある内容!独自の文体で描くサイコ・ホラー

本作は、「自殺願望のある人間と、殺人鬼が出会う」物語です。内容は重厚ですが、単行本で170ページほどと短い作品になっています。そのため、作風とあいまって心地よい疾走感があります。

話は短くても必要な情報はきちんと書き込まれ、逆に余分なことは書かれていません。川島と佐名田の視点が交互に入れ替わるという手法でもあって、手に汗握る展開がくり広げられていくのです。グロテスクな内容もありますが、最後には救済とも呼べる結末が待っています。

著者
村上 龍
出版日

村上龍は、他の作品においても独自の文体で知られています。『五分後の世界』ではゲリラ戦を緻密な描写で書き、話題となりました。その独自性による実力は本作でも発揮されていて、2人の異常者の交流がリアリティのある筆致で描かれているのです。

デビュー時から、独自の文体で文壇での地位を築き上げてきた村上ならではの世界観が本作でも存分に感じられます。

『ピアッシング』の見所4:幼児虐待が作品のテーマ?

本作は、グロテスクな要素があります。それは読む人を選ぶかもしれません。しかし、本作のテーマを描くためには、必要なことでもあるのです。

本作の登場人物である川島と佐名田は、2人とも幼児虐待の被害者です。川島は他者を傷つけたいという欲求を抱いていますが、自分自身も傷つけられた過去を持っていたのでした。

佐名田も父親から性的虐待を受けており、それが原因で自傷行為に走ってしまいます。彼らの過去と異常性を描くためにも、本作に痛みは必須の要素なのです。

本作では、アイスピックで人を刺す行為と、ピアッシングで体を傷つけるという行為の対比で、痛みをとおして他者と関わる人間の姿を描いています。作者が「幼児期に蒔かれた犯罪の種は、容易には摘み取れない」とあとがきで語っていることからも、本作がただの暴力小説ではないことがわかるでしょう。

物語上、幼児虐待が重要な要素として描かれていますが、社会問題として読者に説教をするような様子は感じられません。淡々とその場面を描くことで、作品にリアリティをもたらされ、読者はただその様子を見ているという印象を受けるでしょう。

幼児虐待というテーマをリアリティを持って描いてはいるものの、おしつけがましくないところが魅力でもあります。

小説『ピアッシング』の結末をネタバレ紹介!

 

川島は佐名田を殺そうと計画していましたが、彼女は入浴中に倒れてしまいます。綿密に練られていた犯行計画は失敗し、予想外の展開を迎えることになるのです。

物語の終盤では、2人の会話や思惑がすれ違い、思いもよらぬことになります。本作は2人の視点を交互に入れ替える手法がとられていて、その特徴を活かした仕掛けも用意されています。

最後まで読んだ時、作者の手腕に驚くこと間違いありません。

 

著者
村上 龍
出版日

 

本作は、決して明るい話ではありません。暴力描写があり、テーマも重いです。しかし読後には、不思議と爽快な気分になり、救われたような気分になるはずです。村上龍の作品はそのような傾向が強いのですが、本作は特にそれが顕著だといえるでしょう。

ダークな内容なのに、希望を感じる。そんな『ピアッシング』を、どうぞご覧ください。

 

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