『ペット・セマタリー』をラストまでネタバレ解説!怖い?悲しい?【映画化】

更新:2021.11.17

埋めた者が蘇る、不思議なペット霊園。そこに猫を埋めたことが、すべての始まりでした。 不気味な霊園を舞台に、人間の愛や悲しみが描かれるアメリカのホラー小説『ペット・セマタリー』。過去に映画化された作品ですが、2019年に再映画化が決定した、今なお人気の作品です。 今回は、そんな本作の魅力、見所をご紹介しましょう。その怖さ、そして途轍もない哀しさに、胸が震えるはずです。

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原作小説『ペット・セマタリー』が面白い!不思議な愛のストーリー、タイトルの意味とは?【映画化】

アメリカのホラー小説家スティーヴン・キングによって書かれた本作。

主人公ルイス・クリードは、妻と娘、息子、そして愛猫チャーチともに暮らしていました。それは絵に描いたような、幸せな暮らし……。しかし、ある日チャーチが車に轢かれて死んでしまったことから、その幸せは徐々に崩れていくのです。

ルイスの家の奥にある動物霊園「ペット・セマタリー」。ルイスは向いに住む老人ジャドに連れられて、そこへチャーチを埋葬します。しかし翌日、驚くべきことに、なんとその埋めたはずのチャーチが蘇って家へ帰ってきたのです。

そこから一家を、悪夢のような日々が襲うことになるのでした。

著者
スティーヴン キング
出版日

 

本作は1983年に発表された後、1989年にスティーヴン・キング自身が脚本を書いて映画化。主題歌は作者がファンだったことから、今でも伝説のように語られるバンド「ラモーンズ」が担当しました。

妙な不気味さを感じる本作は、とても静かなホラー作品。じっとりとした恐怖を味わいたい方におすすめです。
 

ちなみにスティーヴン・キングの他作品では、『キャッスルロック』もおすすめ。一見普通の田舎町が、無数の暗い秘密を抱えていて……という、こちらも静かでゾクゾクくるようなホラー作品です。WOWOWで放送された海外ドラマ版もあるので、気になる方はそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

登場人物を解説!

 

主人公のルイスには、妻のレーチェル、娘のアイリーン、まだよちよち歩きで幼い息子のゲージ、そしてペットの猫チャーチがいます。本作では、この家族に降りかかる悲劇が描かれていくのです。

猫のチャーチは、この家族の中で1番最初に死んでしまうキャラクターであり、なおかつ家族に降りかかる悲劇のきっかけにもなってしまう存在です。

車で轢かれて死んでしまったチャーチを、ルイスは霊園に埋めました。しかし翌日、チャーチは変わり果てた性格と姿で、墓場から蘇ってくるのです。そのことが後に、事故で亡くなったゲージを蘇らせるという行動へと繋がっていくことになります。

アイリーンは、ゲージやレーチェルとは少し違う形で、悲劇に関わってくることになります。ルイスがゲージを蘇らせた時、レーチェルとアイリーンは、レーチェルの実家へと帰っている最中でした。しかし、アイリーンが突然ルイスのことを心配したために、レーチェルは1人でルイスのもとへと帰ることになるのです。

しかしこれが、また新たな悲劇を生み出すことに繋がってしまうのでした。

メインとなるキャラクターは限られていますが、それぞれの行動がからみ合い、新しい悲劇へと繋がっていってしまうストーリーは、読んでいるとじわじわと胸に恐怖がしみ込んでくるような印象を受けるでしょう。

 

『ペット・セマタリー』をネタバレ考察:不気味すぎるペット霊園!

タイトルの『ペット・セマタリー(Pet Sematary)』は、「ペット霊園」を意味する「ペット・セメタリー(Pet Cemetery)」のこと。ただ作中では、ペット霊園を作った子供達がスペルを間違えて看板に「Pet Sematary」と書いたことから、それがそのままタイトルになっています。

そんな霊園は、昔から不気味な言い伝えがありました。それは、埋めた者が蘇るという伝説です。それを知ったうえで、ジャドはルイスに、そこにチャーチを埋葬することを勧めるのです。そして翌日チャーチが蘇って帰ってくるのですが、その様子は異様なものでした。

具体的には、このような変化が起こっていたのです。

 

  1. 性格が非常に凶暴になる。場合によっては愚鈍になるものも。
  2. 生ゴミのような悪臭がする。洗っても取れない。

このことから、チャーチを可愛がっていたアイリーンも、その存在を避けるようになっていきます。あの霊園に埋めて蘇らせてはいけない、と思い知らされるのです。

しかし、そんななか幼い息子ゲージが、チャーチと同じように車に轢かれて亡くなってしまいます。悲しみに暮れるルイスは、ジャドが止めるのも聞かずにゲージを霊園に埋めてしまい……。

『ペット・セマタリー』をネタバレ考察:ストーリー豹変のきっかけは猫?怖すぎる展開!

 

世の中のホラー作品には、ゾンビが襲ってきたり、怨霊が襲ってきたりと、息つく間もなく恐怖が迫ってくるものも多くあります。しかし本作は、どちらかというと足音を立てずに恐怖が近づいてくるような、そんな静かなホラー作品なのです。

物語のすべての始まりは、猫のチャーチが死んでしまったことでした。車に轢かれて死んでしまったチャーチがペット霊園に埋められて蘇ったことから、得体の知れない恐怖がじわじわと訪れてくるのです。

本作では、ペット霊園に埋められた者は蘇ると言われていますが、蘇ったからといって生前のままというわけではありません。蘇ったチャーチの体からは腐臭のような嫌な臭いが漂い、動きも鈍く、かと思えばネズミや鳥などを捕まえるなど、以前とは明らかに様子が異なっていたのです。

そんなチャーチを、それまで溺愛していたアイリーンも嫌がるようになっていきます。このチャーチの変化だけでも十分怖いですが、これは後のストーリーへ続く伏線に過ぎなかったのです。

 

『ペット・セマタリー』をネタバレ考察:その蘇りは幽霊なのか?蘇生に関わる秘密、謎

本作では「ペット・セマタリー」という存在がとても重要になってきます。スペルの間違った言葉で書かれた看板の掲げられたペット霊園は、町の子供達によって作られたものです。

そこには昔から、ある方法で埋葬をすると、その者が蘇るという伝説がありました。ルイスは、そのことを向かいのジャドから聞いたことをきっかけに、猫のチャーチ、そしてゲージを蘇らせてしまったのです。

すでにご紹介したように、蘇ったからといって、生前と同じようになるわけではありません。それなのにルイスは、チャーチ、ゲージと、次々に蘇らせてしまいます。

呪いのようなペット・セマタリーの存在がどういうものなのか、さまざまな解釈ができるところも面白いところでしょう。

『ペット・セマタリー』をネタバレ考察:愛ゆえに狂っていく悲しさ

本作はホラー小説ですが、作者であるスティーヴン・キングは、人の家族愛や、愛ゆえの愚かさなどを描いのだといいます。蘇ったチャーチやゲージは幽霊のようなものとは違い、実体がありました。そのことが、後にゲージが蘇った際に、また新たな悲劇を生み、ルイスにさらなる過ちを犯させることになるのです。
 

ルイスの行動は客観的に見れば間違っていますが、彼の行動の根底には、家族への深い愛情があったのです。

そもそもの悲劇の始まりは、猫のチャーチが死に、蘇ったことでした。このチャーチは、アイリーンが溺愛していた猫。そのことを知っていた向かいのジャドが彼女をかわいそうに思うあまり、ルイスにチャーチを霊園に埋めるように勧めたのです。

冷静に考えれば、霊園にまつわる過去を知っているジャドがルイスにそのことを教えなければ、一家が悲劇に見舞われることもなかったでしょう。実際ジャドは、ゲージが死んだ時、彼を蘇らせるようなことを考えるなと、くぎを刺しています。

しかし、ルイスは忠告を無視し、ゲージを蘇らせてしまいました。それは愛する息子を失った悲しみと、もう1度会いたいという深い愛情から生まれた行動です。しかし、その愛から生まれたものは、さらなる悲劇と恐怖でしかありませんでした。

本作は恐怖を感じるものだけではなく、人間が愛ゆえに愚かになり、悲しみを生み出していく姿を描いたものなのです。わかっているけど、わからない。そういった、人間の理屈ではどうにもならない部分が描かれていきます。

『ペット・セマタリー』をネタバレ考察:ラストは衝撃の展開!最後まで怖くて、悲しい……

 

死者が蘇り、幸せなルイス一家が壊れていく様子を描いた本作。そのラストは、予想の上をいくような、衝撃的なものでした。

ルイスの手によって蘇ったゲージは、猫のチャーチと同様、生前のような可愛いとはまったくいえな存在になっています。子供らしい無邪気さが余計に恐怖をかきたてるような、恐ろしい化け物へと変貌してしまったのです。

彼は、ジャドを殺害します。そんななか、アイリーンの言葉で家に向かっていたレーチェルが帰宅し……。

 

著者
スティーヴン キング
出版日
1989-08-17

 

一方、ゲージが蘇ったことを知ったルイスは、ゲージがゲージでなくなったいた時のことを考えて、あるものを用意していました。チャーチのことがあるので、生前とまったく同じではない可能性を考えていたのです。

それでも蘇らせずにはいられなかったあたりにも、ルイスの深い悲しみを感じることができるでしょう。

そんな彼の考えは、無慈悲にも的中してしまうこととなります。息子は、恐ろしい存在になってしまっていたのです。ルイスが彼のもとへ駆けつけた時、そこにはジャドの死体が……そして、レーチェルは……。

彼は、最後に衝撃的な行動を取ることとなります。ここから感じられるのは、やはり彼の深い深い悲しみです。もし彼と同じ立場なら、あなたはどのような選択を選ぶでしょうか?

その胸が締め付けられるような結末は、ぜひ本作を手に取って確認してみてください。

 

いかがでしたか?ホラー作品ではありますが、人間の愛や悲しみ、そして愚かさを感じることができる本作『ペット・セマタリー』。ただ怖いだけではない、人間の本質を描いたストーリーを、ぜひじっくり読んでみてください。

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