『憂鬱くんとサキュバスさん』鬱がテーマなのに、ほっこり。隠れた名作が無料

更新:2019.3.17

本作はウェブコミック配信サイト「となりのヤングジャンプ」で連載されている、さかめがねの作品です。 ある男性の下へ精を求めて現れたサキュバス。しかし、その男性はブラックな会社のせいで鬱病になっており、性欲が湧くどころではなくて……!? サキュバスは、そんな彼の身の回りの世話を焼きつつ、彼の快復のために奮闘していくことになるのです。 本作は、下のボタンからダウンロードできるスマホアプリから読むことが出来ます。気になった方はぜひどうぞ。

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『憂鬱くんとサキュバスさん』が面白い!【あらすじ】

 

女性悪魔のサキュバス。別名「淫魔」ともいわれるこの悪魔は、人間の男性を狙って襲い、その精を奪い取って生きる恐ろしい存在です。

現代の日本のどこか。あるサキュバスが、普通のアパートに住む一般的なサラリーマン・憂(ゆう)をターゲットにし、彼を犠牲にしようとしていました。

が、実はこの彼、重度の鬱病を患っており、まったく性欲のない青年だったのです。

 

著者
さかめがね
出版日
2016-09-16

 

性欲ゼロが相手では、さすがの淫魔も形なし。サキュバスは憂を諦め……たかに見えましたが、途轍もなく前向きな彼女は鬱病について勉強し、再度彼の前に現れます。現れるというか、彼に取り憑くのです。別称で同棲ともいいますが。

サキュバスは憂に寄り添い、鬱の現状を肯定し、精神的な苦痛を取り払うために世話を始めます。最初は復調した彼の精を取り込むためでしたが、段々と2人での生活が楽しくなってきて、やがて彼らは同居生活を自然なものと受け入れていくのです。

 

作者・さかめがねの現在は?

作者のさかめがねは詳しいプロフィールを公表しておらず、その経歴は不明です。

2018年2月ごろに鬱病を啓蒙する意図で描いた漫画が評判を呼び、それが原型となって『憂鬱くんとサキュバスさん』が生み出されました。

鬱病に関するリアルな描写と、患者に必要なのは励ましではなく心の余裕という表現。ともすれば深刻になる病状に対して、世話焼きのサキュバスというミスマッチな登場人物と組み合わさり、不思議な癒やし効果のあるラブコメとなりました。

2018年初頭までは「となりのヤングジャンプ」にてコンスタントに更新されていましたが、不定期掲載のお知らせが出た後、作品の更新が途絶えています。

作者自身のTwitterも同時期から止まったままで、現在は音信不通となっているようです。

『憂鬱くんとサキュバスさん』の魅力1:現代人なら思わず共感!

 

主人公の憂は真面目で大人しい、いわゆる草食系の男性。律儀な性格でなんでも抱え込み、それが祟って塞ぎ込むタイプです。

鬱病は、真面目で責任感のある人ほど患ってしまいがち。しかも彼の場合はそこに加えて、ブラック会社に勤務していた事情もあって、身も心もボロボロです。睡眠障害は当たり前、わけもなく不安になって落ち込むこともしばしば。

昨今はようやく鬱病の実情が知られ始めたこと、また日本社会に根深く食い込むブラック会社が何かと問題視されることから、彼のキャラクター設定は現代社会人にとっては身近なものではないでしょうか。

そんな彼がサキュバスと暮らし始め、少しずつ前向きになっては時々落ち込むというのが、本作の基本的な内容。本来もどかしく感じるような、そんな1歩進んで2歩下がる的な展開が、本作においては心地のよいものとして感じられるでしょう。

 

『憂鬱くんとサキュバスさん』の魅力2:悪魔なのに天使みたいなサキュバス!

 

この作品のヒロインとなっているのが、サキュバスの「さくま」。この名前は人間社会に溶け込むための偽名なので、彼女の本名は不明です。

淫魔サキュバスという割りには体型が貧弱で、言動もエロチックというよりはゴテゴテの関西人。おまけに、悪魔なのに陰鬱さが微塵もなく、面倒見がよくて非常に前向きです。翼や尻尾、淫魔の正装らしい過激なコスチュームを除けば、陽気な関西人のお姉さんといった感じでしょう。

憂と出会ってからは、なぜか彼に取り憑き、押しかけ女房のごとく甲斐甲斐しく世話を焼きます。感受性が強くて涙もろいところがあり、鬱で怒る気力も湧かない憂の代わりに彼女が怒って、感極まって涙するといったシーンも出てきます。

憂がブラック企業に勤めてることを知り、独断で退社させてからは、自らパン屋に働きに出て彼を養う生活を始めました。

もはや、悪魔というより慈悲深い天使。

サキュバスだからなのか、何かにつけてエロネタに絡めてくるところが玉にきずです。命は奪わないが1発3億の命は絞る、やれば出来る(別の意味で)などなど。

こうした下ネタはサキュバス的に嗜みのようですが、逆に純愛や清い交際は彼女達の価値観ではハレンチに当たるようで、赤面してしまうところなどが可愛らしいところです。そういった反応から、サキュバスなのに男性経験が皆無なことが窺えるでしょう。

 

『憂鬱くんとサキュバスさん』の魅力3:主役2人を食う強烈な個性の脇役達!

 

本作は、基本的に憂とさくまのかけ合いがメインですが、それに介入してくる準レギュラーが何人か登場します。

その1人は、ツグナエルという名前の天使。彼女はかなりのポンコツで、憂の病状に関しては完全に無知であり、病を悪化させる行動をすることもしばしば。

さくまとは正反対に、天使なのに無自覚な悪魔といえます。体型の方も対称的で、彼女はかなりのナイスバディ。基本的に労働意欲と恥の概念がなく、ご飯をたかりにやってくる駄目天使です。

さらに、さくまの後輩に当たるサキュバス・メタ助という少女も出てきます。さくまと違って肉食系の淫魔で、変身能力を駆使して活動していました。憂を、さくまの保存食か何かと勘違いしています。

そして、さくまのバイト先、パン屋「パンデミック」の店長も魅力的。仕事先の人なので憂とは関わりませんが、さくまに対して何かと気を遣ってくれる人のよい人間です。さくまが説明不足なせいで、彼らの関係を盛大に誤解しています。

さくまと憂はまさに「割れ鍋に綴じ蓋」といえるほど相性ぴったりなのですが、2人だけだと話が安定してしまいがち。賑やかしの脇役が引っかき回すことで、彼らがより輝くようになっているのです。

 

『憂鬱くんとサキュバスさん』の魅力4:リアルな鬱症状と、癒やされる日常

 

基本的に外見からは判断出来ないので、鬱病は厄介です。身近で接することで、いくつかの症状にようやく気付けます。

無気力で1日中部屋の隅に座り込んだり、睡眠障害で一睡も出来なかったり、あるいは意味もなく不安になって泣き伏したり。そういった鬱症状が、憂の日常として描かれます。

 

著者
さかめがね
出版日
2016-09-16

 

鬱病は今でこそ広く一般に知られるようになりましたが、ざっくりと「心の病気」という認識の人がほとんどでしょう。

しかし実は精神活動と脳の活動の間には密接な結びつきがあり、鬱によって脳の機能が著しく低下することもあります。症状によっても違いますが、鬱病とは脳の病気と捉えることも出来るのです。

従って、鬱だから甘えるなといった批判や、気持ちが弛んでる、頑張れといったアドバイスはナンセンス。鬱病は体に怪我を負ったのと同じか、それ以上に動けなくなってしまうものなのです。

この病気は自己否定に陥ることが多く、まず必要なのは自己肯定。さくまが憂におこなっていることが、まさにそれです。

出来るだけ外に目を向けさせ、沈みがちなら話題を変えて気を逸らし、あまりにも重度な時は黙って寄り添う。それらが、症状を和らげます。

さくまはサキュバスだけに、いやらしいことを目論見ますが、それが結果的に癒やしに繋がっていくのです。ほのぼのした彼らの日常は、読んでいるだけで憂鬱に効く薬となるでしょう。

 

いかがでしたか?本作はラブコメのなかに、確かに鬱病の啓蒙が含まれており、読んでいるだけで癒やされる作品。憂鬱さが薄らいでいくようです。そんな『憂鬱くんとサキュバスさん』はスマホアプリから読むことが可能。この機会に、ぜひ!

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