1978年に1作目が発表されて以来、世代を超えて愛されている児童書「ズッコケ三人組」シリーズ。ドラマ化やアニメ化、映画化もされたうえ、続編の「ズッコケ中年三人組」シリーズも刊行され話題となりました。この記事では、登場人物や作品の魅力、シリーズ内で特におすすめの3冊をご紹介します。
1978年に1作目が刊行された「ズッコケ三人組」シリーズ。那須正幹の児童文学小説です。作品の舞台は中国地方にある稲穂県ミドリ市花山町。広島県広島市をモデルにしています。
性格の違う3人の小学6年生が、クラスの友達や周りの大人たちを巻き込みながら壮大なドタバタ劇をくり広げる、一話完結の連続作品です。少年たちが幼少期の冒険心を忘れず、人生をもっと楽しめるようにという思いが込められた物語は、2004年に50冊目となるシリーズ最終巻『ズッコケ三人組の卒業式』の刊行をもって完結しました。
取りあげられるテーマは幅広く、運動会や文化祭、修学旅行など学校行事を主軸にしたものから、タイムトラベルやポルターガイスト、宇宙人との遭遇など少し変わったものまで網羅しています。
対象年齢は小学生ですが、明るくユーモアに満ちた内容から世代を問わず人気を博し、テレビドラマ化やアニメ化、映画化もされました。
ハチベエ
本名、八谷良平。花山商店街にある八百屋のやんちゃなひとりっ子です。考える前に身体が動く性格で、何事にも飽きっぽく、大の女好き。その一方で正義感が強く、友人を大切にする憎めない少年です。
ハカセ
本名、山中正太郎。花山町の市営アパートに住むサラリーマン一家の長男で、妹がひとりいます。頭脳明晰で機械にも強いのに、小心者。いつもテストで満足な点数がとれません。考えごとをするときはトイレにこもります。
モーちゃん
本名、奥田三吉。ハカセと同じアパートの別棟に住む少年です。幼いころに両親が離婚していて、母親と姉の3人で暮らしています。おおらかで優しい性格をしていて、クラスの人気者。すぐに喧嘩を始めるハチベエとハカセの仲介役です。
ヨッコ
本名、荒井陽子。長い髪を2つ結びにした大きな目の美少女です。頭もよくてスポーツも万能な優等生ですが、性格はややキツめ。父親は稲穂県庁の職員です。
ケイコ
本名、安藤圭子。ショートカットでボーイッシュな見た目をしています。面倒見のよい姉御肌で、いつもハチベエと口論をくり広げています。
ユッコ
本名、榎本由美子。ヨッコ、ケイコとともにクラスの美少女トリオして扱われています。顔立ちは日本人形のよう。明るく社交的で、おっとりとした性格の持ち主です。
2005年、「ズッコケ三人組」シリーズの続編が発表されました。40歳を迎えたハチベエ、ハカセ、モーちゃんの3人が描かれていて、大人向けの内容のため、児童書ではなく一般書として刊行。こちらもシリーズ化しています。
小学校を卒業してから28年。何だかパッとしない3人は、子育てや介護などの問題と向き合わなければなりません。
ハチベエはいつも口げんかをしていたケイコと結婚し、一平と良介という2人の子どもをもうけました。両親の反対を押し切り、継いだ八百屋をコンビニに変えて経営しています。
ハカセは史学科の大学院まで進学した後、袋町中学校の社会科教諭になりました。彼のことが好きだったヨッコと交際を続け、結婚。長男の翼が生まれています。
モーちゃんは大阪出身の女性と結婚し、娘がひとりいます。鉄工所に勤務していましたが、会社が倒産したため職を失いました。仕事を転々とする生活をしていて、一家は母親のもとに身を寄せています。
- 著者
- 那須 正幹
- 出版日
1978年に刊行された「ズッコケ三人組」シリーズの1作目です。
第 1話では、自宅のトイレで勉強しているハカセのもとに、泥棒が侵入。幸い泥棒には気づかれなかったものの、逃げることのできないハカセを、偶然通りかかったハチベエとモーちゃんが助けようとして大騒ぎになります。
ストーリーが明快でテンポよく進み、どんな事件も最後には必ず一件落着するのが本作の特徴。登場人物がたくさんいますが、メインの3人だけでなく脇役にも設定がしっかりとあって、愛着をもちながら読むことができます。
また物語に悪意や翳りはなく、純粋に子どもが楽しく読める作品だといえるでしょう。
- 著者
- 那須 正幹
- 出版日
1980年に発表された「ズッコケ三人組」シリーズの4作目です。
冒頭、3人の小学生が海で行方不明になったという臨時ニュースが入ります。もちろん行方不明になったのは、あの3人。しかし当の本人たちは、漂流したボートの上で、責任をなすりつけあって口喧嘩をしていました。
やがて無人島に上陸した3人は、食料を探したり、砂浜にSOSの印になる旗を立てたりしながら、いつもと変わらぬ大騒ぎ。さてどんなことが起こるのでしょうか。
- 著者
- 那須 正幹
- 出版日
- 1988-11-01
1986年に発表された「ズッコケ三人組」シリーズの13作目です。
「千人も釣り客がくるなら、ジュースとかべんとうを売って商売してみたらいい」というハチベエの父親の発言から、いきなりお弁当屋を開くことになります。株式会社の仕組みなど、経済について児童向けにわかりやすく書かれているのもポイントです。
何よりも、子どもは学校で勉強したり遊んだりする、大人になったら働く、という常識をひっくり返した設定が魅力的。3人はあれやこれやと試行錯誤し、働くことの苦労や面白さを学んでいきます。
最終的には商売が成功して、自信もつけた3人。その時どんな言葉を発するのでしょうか。シリーズのなかでも人気のある本作、ぜひ読んでみてください。