和田竜おすすめ文庫本ランキングベスト4!壮大な時代小説

更新:2021.12.14

ベストセラー『のぼうの城』の作者であり、脚本家でもある和田竜の文庫化された作品をご紹介します。時代小説というものはすこし敷居が高いと感じる人も多いでしょうが、和田竜の作品は現代に生きる人にも参考になる普遍的人間像を描きます。

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時代小説という手法で現代人にも通ずる人間性を表現する、和田竜

和田竜は1969年に大阪で生まれ、広島県で育ちました。早稲田大学卒業後、番組制作会社や繊維業界紙の編集に携わります。その仕事の傍ら書いた脚本『忍ぶの城』によって城戸賞受賞、その脚本をノベライズしたのが大ヒット作『のぼうの城』です。

この作品で和田竜は第139回直木賞候補作に登るなど脚本、小説にとらわれない時代劇の手法による稀代のストーリーテラーとしてその地位を確立しました。そして彼は小説『村上海賊の娘』によって本屋大賞、吉川英治文学新人賞を同時受賞するなど様々な文学賞を総なめにする確かな実力を持った作家と言えるでしょう。

ここでは、そんな和田竜の文庫化された代表的な作品4冊をランキング形式でご紹介します。

4位 心根優しい少年と激動の時代との軋轢を描く『小太郎の左腕』

時代は1556年、群雄割拠の戦国時代を舞台にした和田竜のエンターテイメント小説です。西国においてその勢力拡大を続ける両雄、戸沢家と児玉家が対立していました。それぞれの陣営には上昇志向の強い武功者、「功名あさり」こと林半衛門、「功名餓鬼」こと花房喜兵衛というそれぞれに似たような異名を持つ個性豊かな人物同士が様々な策謀によって争いを続けていたのです。

そんな中にあってまるで注目をあつめる事のなかった11歳の左構えの鉄砲の名手、雑賀小太郎が「最終兵器」として急にその名をはせるようになります。
著者
和田 竜
出版日
2011-09-06
この物語は凄腕の鉄砲の名手でありながら、無垢で心優しい小太郎が両陣の命運を握ることになるというある種数奇な物語と言えるでしょう。小太郎の優しい心根と激しい戦いの時代背景の中で生まれる人間模様を描く痛快時代エンターテイメントです。

人間臭さのようなものを描かせたら右に出るものがいない、和田竜の渾身の作品と言っていいでしょう。

3位 破天荒な忍者が、策謀渦巻く戦闘を繰り広げる『忍びの国』

和田竜が書いたこの作品は、日本の特殊な技術者集団である忍者と織田信雄の軍勢の策謀が繰り広げられる物語です。まさに日本ならではの痛快無比の娯楽作品と言えるでしょう。

生来の怠け者でありながら伊賀忍者一の腕を誇る無門という人が主人公です。何かキャラクター設定としては「のぼうの城」に通じるものがあります。茫洋としながらも実は切れ者であるという無門という人物が生き生きとした描写によって迫力を持って描かれた作品です。
著者
和田 竜
出版日
2011-02-26
普段は無類の怠け者でありながら「やる時はやる」という凄腕の忍びの姿が描かれます。織田信雄軍との激しい騙し合い、化かし合いが息もつけない攻防戦として描かれる様はまさに圧巻の戦国歴史絵巻と言えるでしょう。突飛な無門の数々のアイデアやスリル溢れる策謀の数々、臨場感溢れる戦闘シーンなどページを捲る手が止まらない、そんなことがうけ合いの和田竜の一作です。

2位 歴史の舞台裏での心震える攻防戦『村上海賊の娘』

これも『のぼうの城』と並ぶ和田竜の大ヒット作品のひとつです。この作品も戦国時代を描いていますが、群雄割拠の有力武将の物語ではありません。そんな時代の中にあって時代の外側にでもいるかのような独自のやり方でその名を世に轟かせた、村上海賊という海賊衆に焦点をあてた作品です。和田竜の自由な発想がきらめく作品でありながら史実に基づいた歴史大作です。

瀬戸内海の各地に根城を持ち、人々に恐れられた村上海賊の当主である村上武吉は娘の景(きょう)にその立場を引き継がせます。景はお世辞にも美人とはいえない、いわゆる醜女ですが、男顔負けで父親譲りの勇敢さと荒々しいまでの気性の激しさを受け継ぎます。
著者
和田 竜
出版日
2016-06-26
そんな海賊家業に明け暮れた姫の活躍を描く、戦国時代の花型とは言えないが痛快無比な和田竜の歴史エンターテイメントです。姫の豪快さ、勇敢さは性別を超えたしたたかな人間というものの姿を思い出させる契機となり得ると言えるでしょう。

1位 新しいヒーローの在り方『のぼうの城』

この作品は、アンチヒーロー小説ともいうべき和田竜の代表作です。主人公の成田長親は領民から「のぼう様」と呼ばれ親しみを持たれています。従来の時代小説では決して描かれることのなかった英雄としてでは無い、飄々とした人間臭い人物像が描かれます。

プライドや上昇志向とは無縁であるが、だからこその自由で意表を付いたアイデアの数々で自分の領土、領民たちを守っていく姿を描きます。彼の住まう城は「浮城」と呼ばれ、まさにのぼう様が根城にするにふさわしい城です。
著者
和田 竜
出版日
2010-10-11
のぼう様のかつて無い戦国時代の武将としての描かれ方は、読者に肩肘張らないある種の生き様を提示してくれ、また人間としての魅力で民衆から愛されてやまない姿は自分たちのあくせくとした生き方を省みる機会を与えてくれます。

和田竜の最初に書かれた脚本「忍ぶの城」を小説化した今作によって、彼は本格時代エンターテイメント作家としての人気と実力を不動のものにしていきます。まさに彼の原点とも呼べる作品と言っていいでしょう。

人に愛される人間の魅力を最大限に表現する、和田竜という作家

和田竜という人は、普通に見れば人間的な弱点とも取れる人の泥臭い性格やその特質を多く描く作家です。しかし彼の視点によって切り取られたそんな人間臭さは、読むものにある種の嫉妬や羨望をいだかせるほどに何とも魅力的なのです。

和田竜の作家としての想像力と独自の洞察力によって切り取られた、それら人を引きつけずにはおかない物語は読んでいてとても為になるとも言えます。現代人が忘れがちな人の心の力や、創意工夫などが散りばめられたそんな作品たちは、本来持っている人の生きる力を引き出してくれるでしょう。

ここでは文庫化された彼の代表作と言っていい作品4冊について見てきました。これら作品を入り口として是非和田竜の作品に触れてみてください。はっとさせられる登場人物の行動や性格、また力強い言葉の数々に心動かされることでしょう。

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