全20巻で構成される人気児童文学「かいぞくポケット」シリーズ。1度は見かけたことがあるという方も多いのではないでしょうか。個性的なキャラクターたちがくり広げる大航海の物語は、全国の子供たちに愛されています。この記事では、物語の世界観やキャラクターたちの魅力、そしてシリーズのなかでも特におすすめの作品を紹介していきます。ポケットと一緒に冒険の旅に出かけましょう。
児童文学作家の寺村輝夫が文、永井郁子が絵を担当している「かいぞくポケット」シリーズ。1989年に1作目が発表されています。魅力的なキャラクターたちがくり広げる冒険と、かわいらしい挿絵により、あっという間に子どもたちに愛される人気作となりました。1998年に全20巻で完結しています。
主人公は、いきなり海賊になってしまった少年、ポケット。ジャン、ケン、ポンという3人の子分と、人の言葉を話す白猫のアイコとともに、海賊船ポケット号に乗って宝探しの大航海へ出発します。各巻とも最後に宝物を手に入れ、新たな冒険に出る流れです。
自力で読むのであれば、対象年齢は小学校低学年くらいから。絵本から児童書へのステップアップに最適です。
海賊船のポケット号が大海原を冒険する物語「かいぞくポケット」シリーズ。理屈にとらわれない、奇想天外な出来事が次々と起こります。
「ポケットケポットトッポケト」とは、猫のアイコが唱える魔法の呪文。彼女がこれを唱えると、船酔いが治ったり、空から流れ星が降ってきたりと、不思議なことが起こるのです。
かいぞくポケットのはなしを、ききたくないかい?
うん、よし。
ききたかったら、この本をいったんとじて、つぎのじゅもんを、三かいいってごらん。
ポケット ケポット トッポケト
うまくいえたら、よみはじめてよろしい。(『なぞのたから島』より引用)
このように、読者に指令が出されるのもお馴染みの展開。子どもの遊び心を刺激して、一緒に冒険をしている気分を味わえます。かけがえのない読書体験となるでしょう。
では主なキャラクターを紹介していきましょう。
ポケット
「かいぞくポケット」シリーズの主人公です。まだ小さな子どもで、1巻の冒頭でいきなり海賊になってしまいます。左目に眼帯をあて、ドクロが描かれた大きな帽子をかぶり、短剣を手にして……と、いかにも海賊らしい格好がよく似合っています。
子どもなのでお酒は飲めず、またすぐにポケットに手をつっこんでしまう癖がありますが、人を惹きつける魅力があり、ジャン、ケン、ポンという3人の子分を従えています。
ジャン
大砲打ちの名人。たとえ嵐のなかでも、狙いを定めた標的は絶対に外しません。目が悪く、牛乳瓶の底みたいなぶ厚い眼鏡をかけています。
ケン
大男で力持ち。目が隠れるほど帽子を深くかぶり、長いひげをはやしています。甲板で眠っていて、1度眠りにつくと水がかかっても起きません。
ポン
大きな鼻が特徴のポン。名コックですが、厨房に本棚を並べるほどの読書家で、とても物知りです。常識的な性格をしています。
アイコ
緑の瞳が美しい、人間の言葉を喋れる猫です。アイコが「ポケットケポットトッポケト」と魔法の呪文を唱えると、不可思議なことが起こります。
4人と1匹で構成されているポケット海賊団は、強い絆で結ばれています。力をあわせて困難を乗り越え、たくさんの人と出会いながらたくましく成長していくのです。
ポケットという、子どものかいぞくがいた。
どうして、なぜ、かいぞくになったのか、ポケットは知らない。
ある日、とつぜん、
ポケット ケポット トッポケト
という、みょうなじゅもんをきいた。すると、かいぞくせんのブリッジにいた。(『なぞのたから島』より引用)
不思議な白猫アイコの呪文を聞いたポケットは、海賊のお頭になっていました。困惑するのも束の間、立派な船と優秀な子分を与えられ、宝探しの冒険に出発します。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
- 1989-06-01
「かいぞくポケット」シリーズの記念すべき1作目。海賊になりたてのポケットの、初めての冒険の物語です。
物語の序盤は初々しく、頼りなさが目立つポケットですが、徐々に船長らしい威厳が出てきます。3人の子分やアイコとの連携も抜群。ドキドキとワクワクが止まらない大冒険を存分に楽しむことができるでしょう。
表紙を開くと見開きいっぱいに描かれている、ポケット号の断面図にも注目です。大砲にマスト、ブリッジ、火薬庫……と細部まで書き込まれていて、想像力を膨らませてくれます。
前作『なぞのたから島』の冒険で古いカメラを手に入れたポケットたち。大きな港町にたどり着きます。
しかし、モーターボートに乗っている女の子をカメラで撮影すると、その中に吸い込まれてしまいました。なぞのたから島で見つけたカメラは、魔法のカメラだったのです。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
- 1989-09-01
「かいぞくポケット」シリーズの2作目。前作で手に入れた古いカメラをきっかけに、物語が動き出します。タイトルのとおり海賊船が空を飛ぶなど、よりスケールの大きい冒険に心躍らされるでしょう。
また、実は女の子に弱いポケットや、彼が女の子と仲良くする姿にヤキモチを焼くアイコなど、キャラクターたちの新しい一面を見ることができるのも楽しいポイント。
前作からの続編ですが、ストーリー自体は独立しているので、本作から読んでも大丈夫です。
ながれ星の雨だ。
ポケット号にも、ふってきた。(『ながれ星のひみつ(かいぞくポケット20)』より引用)
ある夜、ポケットたちは目を覚まして驚きました。空中の星が、緑や赤、青、茶、オレンジ、ピンク、白、黒、金色、銀色……いろんな色にちかっとうなりながら、ながれ星になって降ってきたのです。
海賊船にぶつかったながれ星は、きれいな女の人の声で話しはじめます。
- 著者
- 寺村 輝夫
- 出版日
- 1998-11-01
『ながれ星のひみつ』は「かいぞくポケット」シリーズの20作目で、最終巻です。見開きいっぱいに描かれた流星のシーンはカラフルで美しく、幻想的で見入ってしまいます。
女の人の声で話し出すながれ星と、眠ったまま起きないアイコ。次々と海賊船を襲うトラブルに、ポケットたちは大慌てです。物語の結末が一体どうなってしまうのかは、ぜひ実際に確かめてみてください。
ポケットは、さけんだ。
「ケン。ほを、はれっ!」
こうして、ポケットごうは、あたらしいぼうけんに、しゅっぱつした。(『ながれ星のひみつ』より引用)
シリーズは終わっても、彼らの愉快な冒険はこれからも続くのでしょう。これまで作品をとおして一緒に冒険してきた読者たちに、今後の活躍を期待させながら「かいぞくポケット」シリーズは完結します。