『窓ぎわのトットちゃん』の魅力とは。内容やあらすじ、独特な学校教育を紹介

更新:2021.11.18

戦後最大のベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』。黒柳徹子の自伝的物語です。この記事では、内容やあらすじ、売れた理由、トットちゃんが通っていたトモエ学園の教育などを解説。続編や絵本もご紹介します。

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『窓ぎわのトットちゃん』の作者、黒柳徹子とは

 

女優、タレントとして活躍する黒柳徹子が手掛けた『窓ぎわのトットちゃん』。1981年に刊行され、戦後最大のベストセラーといわれているほか、世界35ヶ国で翻訳されています。

黒柳徹子は、1933年生まれの東京都出身。テレビの草創期から活躍し、ユニセフ親善大使としても知られています。作家としては、エッセイをメインに多くの作品を発表。彼女の文章は一説が長くて句読点が多く、まるでお話を聞いているように感じられるのが特徴です。

『窓ぎわのトットちゃん』は黒柳の自伝的物語で、彼女自身が通った「トモエ学園」が舞台です。小学生だった黒柳は、「徹子」という自分の名前をきちんと言えず、「トット」と発音していたことから、このタイトルが付けられました。友人や教師なども実名で登場する、ノンフィクション作品になっています。

著者
黒柳 徹子
出版日
1991-06-15

『窓ぎわのトットちゃん』の内容とあらすじを紹介!

 

物語の舞台は、1937年に創設された「トモエ学園」。大井町線の自由が丘駅を降りた先にあります。

主人公のトットちゃんは、小学1年生。活発すぎて、以前通っていた小学校を退学になっていました。そして母親がなんとか探し出したトモエ学園に転入することになったのです。トモエ学園は、電車の車両を教室に使っているというユニークなところ。全校生徒は約50人、1年生は9人です。

校長先生の名は、小林宗作。初めて学園を訪れたトットちゃんのとりとめのない話に4時間も耳を傾け、やっと話が終わった時に、「これで、君は、この学校の生徒だよ」と告げたそうです。前の学校で問題児扱いされていたトットちゃんは、生まれてはじめて本当に好きな先生に会えたと思いました。

トモエ学園の授業は、子どもたちの興味や個性を尊重したユニークなもので、席も時間割も自由です。その日の気分で好きな席に座り、おのおののペースで勉強しました。リトミックや校外学習なども積極的に取り入れています。

斬新で自由すぎる教育方針には、トットちゃんの両親さえ心配に思うこともありましたが、当の本人は友達とともにのびのびと元気よく育っていったのです。

その一方、世間では戦争が進んでいました。トットちゃんの家の近所に住むお兄さんたちも毎日のように出征し、空にはアメリカの飛行機が現れて、爆弾を落としはじめます。

B29からいくつも焼夷弾が落とされた夜、トモエ学園は焼けました。その様子をじっと見つめていた校長先生は、隣に立つ息子に「おい、今度は、どんな学校、作ろうか?」と声をかけます。彼の子どもに対する愛情と教育への情熱は、学校を包む炎よりもずっと大きかったのです。

その頃、トットちゃんは東北に向かう疎開列車の中。校長先生がいつも言ってくれていたた「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」という言葉を忘れないと誓い、いつかまた、すぐに校長先生と会える日が来ると、安心して眠りにつくのでした。

『窓ぎわのトットちゃん』の初版からの累計発行部数は?なぜそんなに売れたのか

 

1981年に初版が刊行された『窓ぎわのトットちゃん』。単行本、文庫本、絵本をあわせた累計発行部数は800万部を記録しています。

作者が黒柳徹子ということで発売前からメディアで宣伝をされていましたが、彼女がトモエ学園で過ごした感動の物語は、世間の期待を裏切りませんでした。口コミで評判は広がり、発売からわずか1ヶ月半で100万部を達成したのです。

また刊行当時の時代背景も、売り上げを伸ばす追い風となりました。当時は中学校や高校における校内暴力が盛んで、荒れた時代だったからこそ、トモエ学園ののびのびとした教育方針は憧れや共感を呼び、ひとつの教育論としても広く浸透していったのです。

トモエ学園の教育とは

 

トモエ学園は、明治期から続いていた画一的な教科書やテストを中心とした教育スタイルではなく、創設者の小林宗作の意向のもと、子どもの興味や関心を大切にした自由で新しい教育に取り組みました。

なかでも斬新だったのが、「リトミック」です。リトミックはリズムに合わせて身体を動かすことで、子どもたちがもっている「潜在的な基礎能力」を発達させ、豊かな人格形成を促す効果があるといわれています。

現代では当たり前のように知られ、習い事の定番にもなっていますが、当時は珍しいものでした。小林宗作は「日本におけるリトミックの第一人者」といわれています。

トモエ学園ではリトミックの授業が毎日おこなわれていたそうです。『窓ぎわのトットちゃん』の作中では、講堂のステージの上で、校長先生が弾くピアノにあわせて生徒が手足を動かし、気持ちよさそうに飛び跳ねる様子がいきいきと描かれています。

『窓ぎわのトットちゃん』の続編を紹介!

著者
黒柳 徹子
出版日
2016-02-27

 

1984年に刊行された、黒柳徹子の自伝エッセイ『トットチャンネル』。『窓ぎわのトットちゃん』の続編ともいえる作品で、1987年に映画化、2016年にテレビドラマ化もされています。

物語の舞台は、終戦から高度経済成長期に向かっていく、活気あふれる日本。NHK専属女優の第1号として放送の世界に入ったトットちゃんは、失敗を乗り越えながら大きく成長していました。

当時は、生放送でトラブルが起こりどうしようもなくなると、「終」と書かれた紙をカメラに張りつけて、強制的に番組を終わらせていたそう。現代では考えられないようなハプニングがたくさん起こります。そんななかで泥臭く、しかし情熱を燃やして仕事に取り組む人々の姿は、読者を強く惹きつけるでしょう。

歳を重ねてもお転婆でキュートなトットちゃんは、波乱万丈なテレビ業界でさまざまな人と出会い、経験を重ねていくのです。『窓ぎわのトットちゃん』の頃と変わらぬ個性をもちながら、たくましく生きていく姿が魅力的な作品です。

『窓ぎわのトットちゃん』は絵本で読むのもおすすめ!

著者
["黒柳 徹子", "いわさき ちひろ"]
出版日
2014-07-16

 

小さい子どもでも読みやすいよう細かい描写を省略し、すべての漢字にふりがながふってある絵本です。小さい手でも読みやすいようにと、2巻に分けられました。

いわさきちひろの可憐なイラストの数は100点以上。にじむ水彩で描かれた柔らかなイラストが文章とマッチしています。その美しい世界に、大人もおもわず見入ってしまうでしょう。プレゼントにもおすすめです。

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