2017年から「週刊ヤングマガジン」で連載が始まった漫画『ソウナンですか?』。4人の女子高生達が無人島で遭難生活を送る様子を描いた本作は、本格的なサバイバル知識と、女子高生同士の絡みが見どころの作品です。 2019年7月からはテレビアニメも放送開始!これからますます注目度が高くなっていくであろう本作。あらすじと作品の魅力をご紹介します。ネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。
修学旅行に行く途中、飛行機事故で海に落ちてしまった女子高生達。何とか生き残った鬼島ほまれ、鈴森明日香、九条紫音、天谷睦の4人は、海上を漂ったすえに、島へとたどり着くことができました。やっとの思いでたどり着いたそこは住人が誰もいない無人島で……。
こうして、元軍人の父親からサバイバル術を教え込まれていたほまれを中心に、それぞれの個性を活かした女子高生達によるサバイバル生活が始まります。
- 著者
- さがら 梨々
- 出版日
- 2017-08-04
事故に巻き込まれた挙句、無人島に漂着したなんてシチュエーションは、普通に考えればとても深刻。話もさぞシリアスになるのだろうかと思いきや、本作では、深刻な状況であることは間違いないのに、不思議と明るくて笑える内容になっているのが特徴です。
序盤では、主に4人の生活が描かれていきますが、ストーリーが進むにつれて他の漂流者達の存在も明らかになってきます。メリハリのある展開で、読者を飽きさせることがありません。
また、本作は2019年7月よりTOKYO MX系列にてテレビアニメが放送されます。キャストにはM・A・Oさん、河野ひよりさんなどが発表されています。盛り上がりを見せる本作に、さらなる期待が膨らみます。
原作を担当する岡本健太郎は、岡山県の集落に生まれた漫画家。東京で漫画家になりましたが、その後再び故郷である岡山県に戻り、そこで猟師の資格を取って、猟師と漫画家を兼業するようになりました。
その異色な経歴と経験をもとにした漫画『山賊ダイアリー』を発表し、他にはあまり存在しないその人生経験を存分にいかしています。
『山賊ダイアリー』や本作などでは、雑学とも実用的ともいえそうな豊富な知識を作中で読むことができます。裏打ちされた情報が、さらに作品を面白くしていることは間違いありません。
- 著者
- 岡本 健太郎
- 出版日
- 2011-12-22
作画を担当しているさがら梨々は、本作の他に、『英雄伝説閃の軌跡』や、人気アプリのコミカライズ作品『逆襲のドラゴンライダー』などを描いている漫画家です。
ハイファンタジーの作品を多く描いている漫画家で、キャラクターの描き分けに定評があります。表情や仕草などの細かな描写もとても丁寧に描くので、読者は登場人物の個性をよりわかりやすく把握することができるでしょう。
本作でメインとなるのは4人の女子高生です。彼女たちはサバイバル生活を余儀なくされ、それぞれの強烈な個性が発揮されていきます。
鬼島ほまれ
4人のサバイバル生活の要となる存在。元軍人の父親と世界各国を周り、砂漠や湿地帯、極寒地など、様々な場所でサバイバル技術を教えられて育ちました。
そのため、サバイバル知識はもちろんのこと、海に入って直接魚を捕ったり、宙でバッタを摑み取りしたりと高い身体能力を持ちます。さらに虫や魚の生き血を躊躇なく食べるなどタフな精神力を兼ね備えています。
鈴森明日香
バスケ部に所属する体育会系の女の子。4人の中ではムードメーカー的存在でもあり、元気で明るい性格ではありますが、怖いことと頭を使うことは苦手なようです。
九条紫音
お嬢様気質で、我がままなところがあり、空気を読まないせいでまわりを困らせることもしばしば。しかし、脱水症状でダウンした仲間のために飲めそうなものを探しにいくなど、基本的には優しい性格をしています。ロングヘアがチャームポイント。
天谷睦
眼鏡をかけた、一見すると地味でおとなしいタイプの女の子。しかし、食料としてカエルやウサギを捕らえる中で、紫音や明日香がなかなかそれらを受け入れらない中、率先してウサギの解体をおこなうなど、実はほまれの次にサバイバル向きの性格をしています。
ストーリーが進むにつれて他のキャラクターも登場しますが、まずはこの4人で描かれていく、ドタバタな遭難生活を楽しんでみてください。
サバイバルの知識は主に、元軍人の父親から教えられたほまれを中心に披露されていくわけですが、それらはどれも現実的で、読んでいると思わず「へえ~」と思ってしまうことも多いもの。
たとえば、1巻で飛行機から落ちたほまれ達が海上で漂っている際、水分の摂取ができずにピンチに陥る場面があります。その際に語られるのは、人間は1日に2リットルの水分を摂取する必要があることや、3%失うと脱水症状が始まり、5パーセント失えば身体的な症状が現れるなどといったこと。
海上で遭難するというシチュエーションはなかなか遭遇することはないかもしれませんが、こういった知識は熱中症対策としても役に立ちそうです。
本作では他にも、蝉の食べ方や汚染水を飲む方法など、実用的なようなそうでないような……そんなサバイバル知識が満載。読んでおけば、もしかしたらいざという時に役に立つかもしれません。
様々なサバイバル知識を学べたり、個性的なキャラクターが楽しかったりする本作ですが、実は百合な話としても読みごたえがあります。とはいえ、4人とも誰かに恋愛感情を抱いているわけではありません。サバイバル生活のため、仕方ない行為ではありながら、女の子同士の絡みが激しめです。
たとえば、遭難して海上をただよっている時、喉の渇きを訴える紫音に、ほまれがおもむろに尿を直接飲ませようとしたり、遭難中「口の中に唾液がない」と訴えた睦にほまれがキスをしたり……と、シチュエーションはともかく、随所に百合を思わせる絡みが存在しています。
巻が進むごとにどんどん盛り上がっていくので、女の子同士の絡みも期待したい方は、ぜひ先へ読み進めてみてください。
前巻の最後で、食料の確保の一環で仕掛けておいた罠にイノシシがかかりました。そのイノシシを捕らえるところから始まります。
罠にかかったとはいえ、イノシシはまだまだ元気。むしろ危険度が増しているともいえる状態で、そんなイノシシにとどめを刺すのは至難の技でした。それでも4人は、ほまれを中心にイノシシに立ち向かいます。
また、4人以外の漂流者の存在が明らかになります。しかしこれが、4人の仲に亀裂をいれることにもなって……!?
- 著者
- さがら 梨々
- 出版日
- 2019-03-06
ほまれはともかく、普通の女子高生だった4人が、怖がりながらもイノシシを仕留める様子には思わず拍手を送りたい気持ちになるでしょう。また、お嬢様な紫音の活躍も見逃せません。
これまでもさんざん危機的な状況に陥り、女子としてのピンチにも見舞われてきた4人ですが、本巻でもそのドタバタぶりは変わりません!
紫音の「お刺身を食べたい」という一言は、イカダ漁の最中に訪れることになったり……。ピンチを乗り越え、精神的にも成長してく彼女たちは、読んでいて微笑ましいものがあります。
これまでとはまた違った波乱万丈な展開で、最後まで飽きることなく読むことができます。気になる方はぜひ手に取って、その内容を確認してみてください。
遭難とかサバイバルとか聞くと、ついシリアスなもののイメージが先行するかもしれません。しかし、本作ではそういったものはなく、深刻な状況なはずなのに明るくて笑えて、それでいてサバイバル知識を得ることができます。読んでいて暗い気持ちになるなんてことはないので、ぜひ安心して読んでみてください。