アメリカの西部開拓時代を大自然のなかで生きたインガルス一家。彼らの強い絆と1年間の暮らしぶりを描いたのが、児童文学小説『大きな森の小さな家』です。テレビドラマ化された「大草原の小さな家」というタイトルに聞き覚えがある方も多いでしょう。この記事では、主な登場人物やあらすじ、作中に登場する料理や絵本などをご紹介していきます。
アメリカの小説家、ローラ・インガルス・ワイルダーが手掛けた『大きな森の小さな家』。1932年に刊行され、日本では1972年に初めて翻訳、出版されました。西部開拓時代を大自然のなかで生きたインガルス一家の1年間を、作者自身の幼いころの思い出をもとに綴っています。
後に「大草原の小さな家」シリーズとなり、インガルス一家が新天地を求めて移住していく足跡をたどり、さまざまな困難を乗り越え、主人公のローラが18歳で結婚するところまで描かれました。アメリカでベストセラーとなり、テレビドラマ化されると、こちらも大ヒット。日本でもたびたび放送されています。
『大きな森の小さな家』の舞台は、南北戦争が終わったばかりのアメリカ。主人公のローラが5歳の時のお話です。新しい時代の訪れに人々は期待を抱き、未開の地を目指して次々と移住をしていました。インガルス一家も新天地を求め、ウィスコンシン州へとやって来ます。
彼らは決して裕福ではなく、また広大な自然は時に厳しい表情も見せますが、家族のあたたかさにいつも包まれているローラは、不自由を感じることはありません。四季の移り変わりを全身で感じながら、のびのびと育っていくのです。
- 著者
- ローラ インガルス ワイルダー
- 出版日
- 2002-06-20
インガルス一家の5人と、ペットたちを紹介します。
ローラ
『大きな森の小さな家』の主人公で、釣りや木登りが大好きな5歳の女の子。優等生の姉に少しだけコンプレックスを抱いています。好奇心が旺盛で、自然豊かな森での生活を全身全霊で楽しむ姿がかわいらしいです。
クリスマスにプレゼントをしてもらった、かあさん手作りの布人形を宝物にしています。
とうさん
家族思いで頼もしい、インガルス家の大黒柱です。もともと開拓民の生まれのため、狩りや釣りが得意で、家も自分で建ててしまうほど自給自足の術に長けています。特技はヴァイオリンを弾くことです。
かあさん
料理や裁縫が得意で、とても優しい女性です。控えめながら芯は強く、いつも子どもたちをあたたかく見守っています。
メアリー
ローラの姉。金色の巻き髪がとてもよく似合う美少女で、頭もよくしっかり者です。長女として、家の手伝いや妹たちのお世話も率先しておこないます。
キャリー
生まれたばかりのインガルス家の末っ子です。
ジャック
ぶちのブルドッグ。家の周りをうろつくオオカミや獣を追いはらう、頼もしい番犬です。
ブラック・スーザン
クロネコ。昼も夜も気ままに行動しています。
南北戦争が終わったばかりのアメリカ。中西部ウィスコンシン州の、ぺピンという町の近くにある大きな森の中に、小さな丸太小屋がありました。5歳のローラと、とうさんかあさん、姉のメアリーと赤ちゃんのキャリーの5人が暮らしています。
冬は寒さが厳しいため秋のうちにハムやベーコンなどの保存食を準備したり、バターを丁寧に作ったりと、自給自足の生活です。遊び道具も手作りの人形や、豚の膀胱を膨らませて作った風船など、野性味にあふれています。
四季を感じながら生きる彼らですが、自然は時に厳しく彼らを襲います。森にはクマやヒョウがいるし、冬を乗り超えるためには暖炉の薪も割らなければなりません。一家は力をあわせて暮らしていくのです。
物語の終盤。ローラは寝床から、暖炉際に座りバイオリンを弾くとうさんと、ロッキング・チェアで編み物をするかあさんを眺めていました。そして、この住み心地のいい家も、とうさんも、かあさんも、暖炉のあかりも、音楽も、みんなが「いま」でよかったと、幸せを感じながら眠りにつくのです。
- 著者
- バーバラ・M. ウォーカー
- 出版日
- 1980-12-20
『大きな森の小さな家』の特徴として、料理にまつわる描写が非常に多いことが挙げられます。本書は、ライターやグラフィックデザイナーとして活躍するバーバラ・M・ウォーカーが「小さな家」シリーズに登場する料理を再現し、一冊の本にまとめたもの。作中でローラが胸をときめかせながら食べた料理を、なんと103点も掲載しています。
豚の丸焼きに野うさぎのシチュー、とうもろこしパン、ジャム、バター、アップルパイ、プリン、レモネード……。次々と登場するおいしそうなレシピを眺めていると、自然と心が華やぐでしょう。
作者は、関係者の著作や伝記、当時の開拓者の日記や料理人が書いた本を調べあげたそう。食べるために狩りをし、シンプルながらも工夫を施していたインガルス一家。十分な食べ物を手に入れることさえ難しかった開拓時代の人々への、尊敬と愛にあふれたファン必見の一冊です。
- 著者
- ローラ・インガルス・ワイルダー
- 出版日
- 2017-03-09
約50年間も第一線で活躍している、日本を代表する画家で絵本作家の安野光雅。本書は、そんな彼が『大きな森の小さな家』を自ら翻訳し、絵本として書き下ろした一冊です。
淡い色調の水彩画で描かれた挿絵からは、現代とはまた違った「豊かさ」を感じることができます。ローラの家の断面図や、「物語にでてくるひとたち」の系統図など、物語を理解しやすい工夫がされているのもポイントです。
日本人になじみづらい部分は、原文を損なわない程度に簡略化することを心がけたそう。違う国、違う時代の物語ですが、日本の幼い子どもでも読みやすくなっています。『大きな森の小さな家』の世界をより身近に感じられる一冊です。