1996年に1巻が刊行された「怪談レストラン」シリーズ。全50巻の累計発行部数は900万を超える大ベストセラーになっています。この記事では、シリーズのなかでも特に人気があっておすすめの作品をランキング形式で紹介していきます。
作家の松谷みよ子が責任編集を務めている児童文学「怪談レストラン」シリーズ。1996年に1巻の『幽霊屋敷レストラン』が刊行され、2007年の『真夜中の学校レストラン』で50巻に達しています。
物語ごとに作者が異なる共作で、国立歴史民俗博物館博物館の副館長や外国民話の研究家、民話の語り手などさまざまな人物が参加。日本だけでなく、世界に伝わる民話や神話をベースに作品づくりがされています。
独特のかわいらしさがある挿絵も特徴です。イラストレーターのたかいよしかず、かとうくみこが担当しています。
「怪談レストラン」シリーズの主人公は、東京郊外の小学校に通う大空アコ。アンコというあだ名で呼ばれていて、将来は小説家を目指しています。
そんな彼女のクラスに、甲本ショウという男の子が転校してきました。帰国子女のショウは、世界中の怖い話を集めている変わり者。ある日、アコを街はずれの朽ち果てたレストランに誘います。そこは通称「怪談レストラン」と呼ばれる廃屋で、その日からアンコの周りでは奇妙な出来事が起こるようになるのです。
もうひとり知っておきたいのが、「ギャルソン」と呼ばれる蝶ネクタイに白い蝋燭を持ったお化けです。「怪談レストラン」シリーズのナビゲーターとしてたびたび登場するので、注目してみてください。
対象年齢は小学校中学年以上。物語はどれも1話5~10分で読めるので手に取りやすく、コラムや豆知識など、本編以外の部分も充実しているのが魅力です。目次もレストランのメニューのようになっていて、コース料理を堪能するようにストーリーが進んでいきます。
ではここからは、「怪談レストラン」シリーズのなかから特におすすめの作品をランキング形式でご紹介しましょう。
まるでカメラのような見た目をした心霊写真レストラン。レンズの部分が開いて中に入ることができます。
入口には、チェルノブイリ原発事故で亡くなった女の子の心霊写真が大きく掲示されていました。奥には、ディズニーシーへ行きたいと願いながら亡くなった男の子の心霊写真も……。
- 著者
- 出版日
- 2003-06-20
『心霊写真レストラン』は「怪談レストラン」シリーズの26作目。2003年に刊行されました。「へんな夢」「奈落」「黒い礼服の男」「兵隊さんと子どもたち」など、心霊写真にまつわる話を集めた短編集です。
レストランにあるすべての写真にエピソードが込められていて、生命の尊さや戦争の悲惨さがひしひしと伝わってくる内容。児童書ながら、語り継いでいかなければならないと思わせてくれるのです。
ただ怖いだけでなく、心にずしんと響く一冊です。
ぞっとする話や切ない話、正体がわかって笑える話など、さまざまな怖い話が収録されている短編集です。
絵の中に描かれた列車が谷底に落ちていた次の日、テレビのニュースから同じように列車が落ちた事故の様子が流れてきて……。
- 著者
- 出版日
- 1996-09-10
『幽霊列車レストラン』は「怪談レストラン」シリーズの4作目。1996年に刊行されました。「もうひとり、おのりになれますよ」「幽霊トンネル」「幽霊船」「やすい車にご用心」など、乗り物が舞台の物語が多数収録されています。
印象的なのは「メリーちゃんの電話」。メリーちゃんは、友人と夏休みの宿題を一緒にやろうと約束していたのに、飛行機の墜落事故で亡くなってしまいました。そんなメリーちゃんから電話がかかってくるのです。幽霊やお化けの姿が形として登場しなくても、怖さを与えることができると実感するでしょう。
河童や天狗、口裂け女など、馴染みの深い妖怪たちがたくさん登場する作品です。
天狗のパーティーに遭遇した人物。こっそり覗き見をしていたのがバレてしまいました。そしてふと気がつくと、公園のベンチに座っています。パーティーの会場になっていた場所にもう1度行ってみますが、そこには古いお寺があるだけでした……。
- 著者
- 出版日
- 1996-10-20
『妖怪レストラン』は「怪談レストラン」シリーズの5作目。1996年に刊行されました。「人面犬」「吸血鬼に恋したむすめ」「つぎはおまえだ」「首つらせタヌキ」などの物語が収録されています。
怪談というのは、語られる時代によって表現や設定が少しずつ異なるもの。大人の読者も、馴染みの深い妖怪たちがどのように描かれているのか読んでみると楽しめるでしょう。
怨霊がホタルになって帰ってくるなど、幻想的な雰囲気で想像力が掻き立てられる物語も魅力です。
「あの猫はわたし」「黒猫の家」「猫の王さま」「猫、学校へいく」など、猫にまつわる怖い話を集めた短編集です。
日本でも海外でも、昔から猫に悪さをするとバチがあたったり、仕返しをされたりする言い伝えがありますよね。本書を読んだ後は、猫に優しくしたくなるかもしれません。
- 著者
- 出版日
- 1996-07-10
『化け猫レストラン』は「怪談レストラン」シリーズの2作目。1996年に刊行されました。
本書の舞台は、戦時中に生きたままの人間を解剖していたという噂の病院がレストランになったものです。建物の中に入ってみると、真っ赤な口が耳まで裂けた猫がいて……。
どのお話も、人間が悪さをした結果猫が仕返しにやってきて怖い思いをするという、身から出た錆の内容。日頃のおこないを見直したくなる作品です。
住んでいた家族が引っ越してからもう2年になるのに、なぜか空き家のままの屋敷。小学校でも、「幽霊の顔が窓にうつっていた」「部屋の明かりがついていた」など、幽霊屋敷の話でもちきりです。
同じクラスの文太と雄一は、幽霊屋敷の探検に行くことにしました。しかし誰もいないはずなのに、テープレコーダーに人の声が入っていて……。
- 著者
- 出版日
- 1996-07-10
堂々のランキング1位は、「怪談レストラン」シリーズの1作目『幽霊屋敷レストラン』です。1996年に刊行されました。「予約席」「ゴロンゴロン」「おいで」「氷をください」など、背筋がぞっとする怖い話をまとめた短編集です。
長めの物語が読めるようになって、怖い話にも興味が出てきた小学生におすすめです。幽霊を供養するためにテーブルに綺麗なクロスをかけ、毎日コップ2つ分の水を入れ替えて供えているオーナーの話など、心があたたかくなる内容のものも。
50作続く「怪談レストラン」シリーズの最初の物語を、ぜひ読んでみてください。