小説「アルテミス・ファウル」シリーズをネタバレ!妖精文字も解説【映画化】

更新:2021.11.18

天才犯罪少年・アルテミスが、人間よりも進んだ科学技術を駆使する妖精たちから「黄金」を奪おうとしたことで始まった戦い。それをきっかけに、妖精が住む地下世界と、人間界に関わる数々の事件が展開されるSFファンタジー作品。主人公にしては冷酷な面をもつアルテミスと妖精の頭脳戦に目が離せません! 今回は、そんな本作の魅力をシリーズ全編ご紹介します。ディズニーによる映画も制作されており、2019年夏に公開される予定です。

ブックカルテ リンク

小説「アルテミス・ファウル」シリーズをネタバレ紹介!2019年8月ディズニーで映画化

「アルテミス・ファウル」シリーズは現代のアイルランドを舞台に、伝説的な犯罪一家で育った12歳の天才少年・アルテミスと、妖精たちとの戦いを描いた子ども向けのSFファンタジー作品です。

今回は、角川文庫で出版されている翻訳版「アルテミス・ファウル」シリーズについてご紹介します。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2007-07-22

イギリスの作家オーエン・コルファーによって2001年に第1巻『妖精の身代金』が出版されて人気を博し、2019年時点で8冊の本編と3冊の外伝を発表しています。

日本では2007年に角川文庫から翻訳された書籍『妖精の身代金』が出版されたのを皮切りに、第2巻『北極の事件簿』、第3巻『永遠の暗号』、第4巻『オパールの策略』、第5巻『失われし島』が発売されました。

シリーズの人気は衰えることがありません。2019年5月現在では、2019年8月にディズニーによる映画が公開されることが発表されました。日本では、2019年秋頃公開予定となっています。 

妖精文字とは?内容を解説!

アルテミスが妖精のことを詳しく知る上で、「妖精の書」が重要な役割を果たします。妖精の歴史や、暮らしの基準となる戒律が詳しく書かれている聖書のような本で、妖精たちは1人1冊ずつこの本を持っています。

妖精の書は妖精文字で書かれており、エジプトの象形文字に似たような形をしています。実際には古代エジプト人が妖精文字を自分たち向けに書き換えたのが象形文字であり、古代の時点で妖精の文明は人間よりも発展していたという設定。

太陽や鳥などの誰でも知っている物を意味する文字は同じですが、独自の意味で解釈する必要があるものもあります。象形文字では山犬の頭を持つ神「アヌビス」を意味する文字は、妖精文字では「妖精の王」を意味します。

アルテミスは、人間界に潜んでいた妖精の老婆からこの本を手に入れ、地底警察偵察隊の一員である女性妖精のホリー誘拐計画を実行し、妖精との戦いをくり広げるのです。

『アルテミス・ファウル 妖精の身代金』をネタバレ解説!

伝説的な犯罪一家ファウル家に生まれた天才少年アルテミスは、父親が行方不明になったことで傾いた家運を立て直すため、妖精の黄金を盗む計画を立てます。

その頃、地底警察偵察隊(通称LEP)に所属する妖精のホリー・ショート大尉は、魔法の儀式をおこなうため人間界の人目のない場所へと来ていました。しかしそこには、妖精の書を奪ったアルテミスが待ち構えており……こうして、彼女は誘拐されてしまいました。

ホリーが誘拐されたことに気づいたLEP。アルテミスは彼らに身代金として黄金を要求し、LEPはホリーを取り戻すため、様々なテクノロジーを駆使して戦うことになるのです。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2007-07-22

本作の魅力は、何と言っても科学技術を駆使した人間と妖精との戦いという、ファンタジー作品の型を破った設定。

妖精は魔法を使って空を飛ぶような可愛らしい存在ではなく、人間より何十年分も進んだテクノロジーで武装した危険な存在です。そんな妖精たちのテクノロジーや作戦内容に先回りして対策を立て、妖精を欺くアルテミスの天才ぶりには思わず舌を巻いてしまいます。

しかしそのような対立があるにも関わらず、アルテミスとホリーの間には友情のような感情が芽生えていき……この2人の関係は、後のシリーズに繋がる重要なきっかけとなります。

『アルテミス・ファウル 北極の事件簿』をネタバレ解説!

妖精から黄金を手に入れることに成功したアルテミスは、13歳になるまでに家運を立て直し、父親の行方を探していました。そんな時、アルテミスのもとに「ロシアのマフィアが父親を誘拐した」という情報が飛び込みます。

同じ頃、妖精のゴブリンの一部が、妖精の地下世界を支配するために人間と違法な取引をしていることをLEPは突き止めました。

ホリーは、背後にアルテミスが関わっているのではないかと疑います。彼女がアルテミスの元へ向かい、事件に関わっていないことが判明。妖精たちに協力を頼まれた彼は、ゴブリンの反乱を収める手助けをする代わりに、父親の救出に協力するという取引をもちかけます。

LEPはこの取引に同意することに。対立していたアルテミスと妖精たちは、どんな戦いを見せるのでしょうか。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2007-11-21

アルテミスと妖精が協力関係を築くという予想外の展開を見せます。

今回は、人間と妖精でチームを組むことに。アルテミスとボディーガードのバトラー、妖精のホリーと、彼女の上司・ルート司令官、ケンタウルスの天才科学者フォーリー、妖精界の窃盗魔・マルチという奇妙なチームが結成されました。

敵対していたと思えない息のあったやり取りで敵を倒しにいく姿が清々しく、読んでいても面白いところ。2人の関係はどうなるのか。そんなことにも期待指定しまうシリーズ2作目です。

『アルテミス・ファウル 永遠の暗号』をネタバレ解説!

アルテミスは、ホリーを誘拐した時に盗んだ妖精のテクノロジーを改造して、アメリカ人ビジネスマンのスピロから大金をせしめようとします。

しかし返り討ちに遭ってしますアルテミス。発明品のスーパコンピューター「Cキューブ」は奪われ、取り返そうとしたときにバトラーが瀕死の重傷を負ってしまうのでした。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2008-07-24

ホリーに助けを求めてバトラーの一命を取り留め、再び妖精と協力してCキューブを取り戻すことになります。しかし妖精側がアルテミスに交換条件として提案したのは、妖精に関するすべての記憶を消去することでした。

自身の不注意で、妖精の技術が盗まれたという罪悪感と、従者でありながら友達ともいえるバトラーを失うかもしれないという恐怖を味わったことで、アルテミスが人間的に大きな成長を遂げる巻でもあります。

さらにホリーやルートなど、妖精たちと路確固たる友情を築き、生まれて初めて忘れたくない大切な仲間を得るのです。

『アルテミス・ファウル オパールの策略』の結末をネタバレ解説!

ゴブリンと手を結び、地下世界を支配しようとして失敗した犯罪集団の一員のオパールは、自分の陰謀を阻止した人物たちに根深い憎悪を抱きました。復讐を決意して、LEP内部の者を殺害。さらには、ホリーに殺人の濡れ衣を着せ、アルテミスとバトラーの命を奪うことまで計画していました。

地下世界から逃げ出したホリーと、彼女の危機を知ったマルチは、アルテミスとバトラーの元へ行って助けを求めます。

しかし、彼らには妖精に関する記憶が一切ありません。ホリーは、冷酷な犯罪少年に戻ったアルテミスと取引をしてオパールの行方を追うことにしました。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2019-02-23

アルテミスは妖精と関わる前の性格に戻っていますが、自分が何かを忘れているという違和感を感じています。そしてホリーやマルチ、フォーリーと協力していくなかで、彼らとの記憶を必死に思い出そうとするのです。

しかし、さすがは天才少年のアルテミス。記憶を取り戻すことがあることを前提に、事前に対策をしていたようです。大人よりも先が読めている彼の用意周到さに、思わず脱帽するでしょう。

今までの物語の中でアルテミスがどのような成長を遂げたのか、記憶を失った彼が再登場することで、再確認できる巻になっています。

『アルテミス・ファウル 失われし島』の結末をネタバレ解説!

14歳になったアルテミスは、妖精の書に含まれていたデーモンの福音書を見つけ、興味本位でデーモンが出現する場所を予測して待ち伏せることにしました。

デーモンとは、妖精の種族の1つ。彼らは、妖精たちが人間の目から逃れるために地下世界に移ろうとしたとき、それを拒否。自分たちが住むハイブラス島を、魔法で別次元に飛ばし暮らしていたのです。

しかしハイブラス島にかけられた魔法に綻びが生じ、デーモンたちが人間の住む世界に現れ始めていたのでした。

その頃、マルチと組んで私立探偵となったホリーは、ある依頼を受けます。それは、アルテミスと連絡を取り、妖精でさえ予測できないデーモンの出現場所を教えてほしいというものでした。

ホリーとアルテミス、バトラーが予想された時間にデーモンの出現場所へ向かった所、12歳のフランス人の少女ミネルバが待ち構えており、現れたデーモンを誘拐してしまいます。

著者
オーエン・コルファー
出版日
2010-09-01

彼女は自身の研究のため、デーモンを捕獲。アルテミスたちは、誘拐された「ナンバー1」という名前のデーモンを救出するため、アルテミスと同じくらい天才的な頭脳を持つミネルバと対立するのです。

思春期に突入したアルテミスは、妖精と出会う前の自分にそっくりなミネルバに興味を持ちます。そして自分の心境の変化に戸惑うという恋愛要素も入ってきて、健全な成長を見せるアルテミスの姿を微笑ましく読み進めることができます。まだ子どもっぽさが残るミネルバのことも、温かく見守りたくなってしまいます。

また、今まで出てきたキャラクターとは違う種族のデーモンが登場し、人間界に侵略しようとしている敵が他にもいることが明らかに。次元を超える前代未聞の出来事や、その中で勃発した戦い、戦乱の中でアルテミスが気づいた大切な物。それらに注目しながら、読んでみてください。

科学技術を駆使する妖精と天才犯罪少年が関わる事件を描いた「アルテミス・ファウル」シリーズ。種族の違いを超えたチームの冒険から、ますます目が離せません。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る