本作は、東村アキコの原点ともいえる作品。個性的なキャラクターや随所にちりばめられたギャグに定評があり、長きにわたり老若男女問わず愛されています。今回は『きせかえユカちゃん』の魅力や、登場人物たちが巻き起こしたトラブルエピソードをネタバレしながら紹介します。 本作は、スマホの漫画アプリでも無料で読むことができるので、気になった方はそちらからもどうぞ!
夏休み、家業の弁当屋を手伝う茂雄のもとに毎日日替わりの衣装に身を包んで弁当を買いに来る女性がいました。スレンダーで長身、顔立ちの可愛い彼女はいつもまったくテイストの違う恰好であらわれては謎を残したまま帰っていきます。
彼女の正体は?目的は?不思議に思う茂雄。
実は彼女は久木井(くきい)小学校に通う6年生、湯川ユカという女の子でした。ユカちゃんは、古着屋GREENの娘で親友のみどりちゃんとともに、夏休みの自由研究をしていたということが発覚。その内容は「男性はどんなファッションの女性が好きなのか」を調べるため、茂雄のもとへ通っていたのです。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
調査対象として彼を選んだのには理由があります。それはユカちゃんの姉である、ユミ姉ちゃんのため。茂雄とユミはお互いに好意を持っていて、お姉ちゃんのために茂雄の好みを探ろうとしていたのでした。
お姉ちゃんと茂雄だけでなく、担任の貞子先生や茂雄の後輩・ボインなど、周囲の大人たちの恋愛事情に首を突っ込みまくり、巻き込み、時には子供ならではの発想で問題を解決してみせたり……。
本作は、そんなユカちゃんをはじめとする強烈なキャラクター達のドタバタ劇と、様々なファッションが楽しめるラブコメディです。
ここから先は、主要人物のトラブルエピソードの一部を紹介します!ネタバレを含みますので、苦手な方はご注意ください。
すでに『きせかえユカちゃん』が気になった方は、まずはスマホの漫画アプリで読むことをおすすめしています。下のボタンから簡単にインストールできるので、ぜひ利用してみてください。
子供のころからマンガ家を夢見て美術大学に進学。卒業後は通信会社に就職し、美術教室の講師、マンガの執筆と3足のわらじで活動します。「ぶ~けデラックス」NEW YEAR増刊にて投稿作品『フルーツこうもり』でデビューし、以降、専業マンガ家となります。
その波乱に満ちた経歴は『ひまわりっ~健一レジェンド~』や『かくかくしかじか』でフィクションとノンフィクションを織り交ぜた形で描かれていますので、気になる方はぜひそちらもお楽しみください。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2006-05-23
当時から絵柄やテーマがおしゃれで、目で見るだけでも楽しめましたが、作中で突然始まる寸劇やギャグのジャンルはとにかく幅広く、豊富な知識やセンスが垣間見えます。
いくつもの連載を並行し、息子のごっちゃんを育てつつ、京都精華大学の客員教授を務めるなどその活躍は多岐に渡ります。
Cookieの読み切り『きせかえサマー』から始まり連載となったこの作品。当初の淡々とした絵柄に、ほんのりと甘酸っぱい展開はまさしく少女マンガそのもの。ですが、話数が進むごとにシュールなギャグや懐かしいモノマネなどが増えて、徐々にギャグマンガとしての魅力が開花していきます。
いわゆる少女向けではない、対象は大人の女性や男性です。わかる人にはわかるようなマニアックなネタが多く使われています。
おしゃれでちょっぴり生意気な美少女・ユカちゃんは、デザイナー志望であるみどりちゃんがコーディネートした古着屋GREENの借り物により毎日抜群のファッションで決めています。大人っぽい容姿の彼女は女子高生か大学生に間違われることも多いのですが、精神年齢は実年齢よりも幼いのです。
天真爛漫で好奇心旺盛、かなりの食い意地を持ち、食に関することでの行動力も目を見張るものがあります。隣のクラスにまで給食のおかわりをもらいに行ったり、お父さんが洋食屋を営む真澄くんの家に残飯を漁りに行ったり、社会科見学中に工場長の顔にかぶりついたり……。動物的なところのあるユカちゃんの見た目とのギャップが面白いです。
そんな彼女の無邪気さや好奇心旺盛さも魅力の一つですが、周りの大人たちが葛藤している姿に共感できたり、くり広げられる寸劇に笑えたり……今の東村作品に繋がっていく軌跡が見られる作品です。
ユカちゃんのクラス担任、通称・貞子はバブルの残り香漂う黒髪美人。アラサーの独身女性です。
ある日貞子先生の家に突然押しかけて来たのは、甲斐性なしのダメ男で元恋人のスグルでした。投資を始めたばかりで、お金も住むところもないから、と貞子を頼ってきたのです。上手い話に騙されては借金を作ってお金を借りに来る彼を追い出そうとするも、なかなか出ていきません。
スグルは勝手に住みつき、貞子が留守の間に訪ねてきたユカちゃんとみどりちゃんを家に上げ、テレビゲームを楽しみます。帰ってきた貞子は、驚き問い詰めるのですが、そこで子供たちに2人は元恋人だということがバレてしまいました。
そんなドタバタした日の夜、また詐欺にあってしまい傷心のスグルと酒を飲み、なんとなくキスをする流れに……そこにユカちゃんとみどりちゃん、さらにはユカ母とみどりママがタイミングよく乱入するのでした。
次の日、仕事と住むところが見つかったから出ていく、と学校に報告に来たスグルを貞子先生は止めません。今も彼のことが好きなくせに、行かないでって言えない貞子先生に、大人ってよくわかんないなーと首をひねるユカちゃんなのでした。
大人になってしまったら、「好き」な気持ちだけでは、ずっと一緒にいることはできない。子供の純粋な疑問に、あらためてそのことを実感させられるでしょう。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2003-01-15
茂雄の大学の後輩で、彼にアプローチをする胸の大きな小悪魔的な女の子は、そのスタイルからユカちゃんたちに「ボイン」と呼ばれています。ことあるごとに彼を映画や食事に誘い、ユミのライバルとして警戒されていました。ユカちゃんたちはボインの邪魔をしようとするのですが、なかなか手ごわい様子。
ユミも胸は大きいのですが、ボインに負けないようにと背中やわき腹など全身の肉をかき集められ、さらに胸が強調される服を着せられます。そしてついに直接対決。対面したボインとユミ。
しかしこのエピソードで注目して欲しいのは、ユミ本人よりもユカちゃんやみどりちゃん、みどりママや貞子のほうが闘志を燃やしているところ。貞子がボインを威嚇し詰め寄ったり、この問題に真澄が割って入ったり……。直接は関係ないものの、周りの人が協力してくれるのは読んでいて羨ましいものがあります。
そして真澄はボインの周辺を張り込み中、あることに気が付きます。混乱の中、彼女の胸元から何かが落ち……。結果、この戦い(?)をきっかけにボインとユカちゃんたちは仲良くなるのでした。
昨日の敵は今日の友とはよく言ったもので、自分の悩みを共有すると、そのまま友情が芽生えることもありますよね。ユカちゃんたちの、そんな爽快なドタバタ劇を楽しめるエピソードです。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2003-10-15
ユカちゃんをはじめとする強烈なキャラクターに振り回され続けてきた茂雄とユミ。
付き合っていくうちに、2人はコミュニケーションが行き違い、ぎくしゃくするようになりました。疎遠になったまま、ユミは美術の勉強のためベルギー留学を決め……。
ユカちゃんたちは、ユミを引き留めるべく「留学なんてまっぴら」と思わせるためにユミの大学まで行って呼びかけます。
いつもユカちゃんたちの行動に振り回されてばかりの茂雄も、今回ばかりはほのかな期待を寄せ、その企みに乗っかるのですが……。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2007-10-15
とうとうユミの出発の日が来てしまいます。
その日はなんと、みどりちゃんの母・スミレの第二子出産日でした。ユミに何も伝えられず落ち込んでいた茂雄に産まれたとの報告があり、スミレからこう言われます。
「こんなに小さいのに
すごく 頑張ったのよ」
「ほら 聞こえるでしょ?
赤ちゃんも頑張れって言ってるわよ」
(『きせかえユカちゃん』11巻より引用)
思いを決めた茂雄は空港で出発直前のユミに「何年でも待ってる」ということを伝え、見送ることに。ようやく気持ちを通じ会うことができたのでした。
いまだ未完結の『きせかえユカちゃん』。この後の展開はどうなっていくのかと気になるところですが、不定期連載となっていて事実上の休載状態のよう。
連載再開してさらにパワーアップしたユカちゃんたちの活躍が見られる日が来ることを楽しみに待ちましょう!