世界中で愛されている「ナルニア国物語」シリーズ。児童文学ながら大人にも親しまれ、映画化もされています。この記事では、おもな登場人物と映画版のキャスト、『ライオンと魔女』『銀のいす』のあらすじ、作中に登場するお菓子などを紹介しながら、シリーズの魅力をお伝えしていきます。
イギリスの文学者C・S・ルイスが手掛けた児童文学「ナルニア国物語」シリーズ。1950年に1巻の『ライオンと魔女』が刊行されました。
主人公の少年少女たちが、冒険をとおして成長していく過程が鮮やかに描かれ、子どもだけでなく大人も魅了されています。各国で翻訳され、世界中で1億2000万部以上が刊行されたそう。ハリウッドで映画化もされました。
物語の舞台となるナルニア国は、創造主であるアスランというライオンがつくった世界。イギリスで暮らすペベンシー家の4人のきょうだいは、アスランの導きで古い衣装ダンスを通じてナルニア国へと呼ばれ、人々を苦しめる悪と戦いながらたくましく成長していきます。
C・S・ルイスは、作家であると同時に、キリスト教の教えを伝える「信徒伝道者」でもありました。そのため「ナルニア国物語」シリーズにも、聖書の世界観が色濃く反映されています。しかし教訓めいたものはなく、魔法世界の楽しさと、試練に立ち向かっていく子どもたちの勇気が描かれているのが魅力でしょう。
ちなみに「ナルニア国物語」シリーズは、出版された順番と、物語の時系列が異なっています。たとえば6巻の『魔術師のおい』は、時系列でいうと1巻の『ライオンと魔女』よりも前の物語なのです。作品を時系列順に並べてみると、下記のとおりです。
『魔術師のおい』(6巻)
『ライオンと魔女』(1巻)
『馬と少年』(5巻)
『カスピアン王子のつのぶえ』(2巻)
『朝びらき丸 東の海へ』(3巻)
『銀のいす』(4巻)
『さいごの戦い』(7巻)
- 著者
- C.S.ルイス
- 出版日
- 2000-06-16
では「ナルニア国物語」シリーズ『ライオンと魔女』でもっとも重要な、ペベンシー家の4きょうだいを紹介します。
ピーター
『ライオンと魔女』の主人公のひとり。ペベンシー家の長男です。2005年に映画化された際は、ウィリアム・モーズリーが演じました。
冷静で我慢強く、少年とは思えない行動力の持ち主。白い魔女の軍団と戦った際には、アスランがいなくとも見事に軍を統率します。
スーザン
『ライオンと魔女』の主人公のひとり。ペベンシー家の長女です。映画ではアナ・ポップルウェルが演じました。
真面目な性格で、皮肉屋のエドマンドとよく口論をしています。少しだけ心配性でネガティブな面もありますが、常に慎重な判断ができる美少女です。
エドマンド
『ライオンと魔女』の主人公のひとり。ペベンシー家の次男です。映画ではスキャンダー・ケインズが演じました。
白い魔女から「あなたは兄よりも偉大な王になる」とそそのかされ、きょうだい3人を裏切る行為をしてしまいます。しかし本当は感受性豊かで、人一倍繊細な感性をもった少年。誰よりもきょうだいを想っているのです。
ルーシィ
『ライオンと魔女』の主人公のひとり。ペベンシー家の次女で、末っ子です。映画ではジョージー・ヘンリーが演じました。
とにかく無邪気で可愛らしく、好奇心旺盛。ナルニア国への旅も、彼女が衣装ダンスに興味をもったからこそ始まりました。
原作の『ライオンと魔女』では、きょうだい4人の心の動きがとても丁寧に描かれています。映画しか観ていない方は、ぜひ1度読んでみてください。ひとつひとつの行動の理由が明確にわかり、より物語に没頭できるはずです。
アスラン
ナルニア国の創造主。大きなライオンの姿をしています。映画ではリーアム・ニーソンが声を、フランク・ウェルカーが鳴き声を担当しました。
イギリスの各地から子どもたちを呼び寄せ、ナルニア国の問題を解決させようとする物語の導き手。イエス・キリストを象徴しているのではないかともいわれています。
タムナス
1巻の『ライオンと魔女』、7巻の『さいごの戦い』に登場。映画ではジェームズ・マカヴォイが演じました。
上半身が人間、下半身がヤギの姿をしています。白い魔女から、人間の子どもを見つけたら引き渡すよう命じられていましたが、ルーシィを見逃してしまったため、捕らえられ石にされてしまいました。
白い魔女
自身の魔法によって「チャーンの国」を滅ぼしてしまった女王です。ジェイディスという名前をもっています。映画ではティルダ・スウィントンが演じました。
ナルニア国を支配し、冬に閉じ込めている張本人。ケア・パラベル城の王座に「2人のアダムのむすこ」と「2人のイブのむすめ」が就くと、白い魔女の冬が終わるといわれているため、ナルニア国にやってきたペベンシー家の4きょうだいを捕えようと画策します。
- 著者
- C.S.ルイス
- 出版日
- 2000-06-16
『ライオンと魔女』は、「ナルニア国物語」シリーズの1巻。イギリスでは1950年に刊行され、日本では1966年に翻訳されました。
時は戦乱の世。ペベンシー家の4きょうだい、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィは、子どもたちだけでロンドンから田舎町に疎開をします。大きな古い屋敷で暮らすことになりました。
その屋敷はとても広く、好奇心旺盛な彼らは探検を始めます。部屋を確認していくと、古い衣装ダンスがぽつんと置かれている部屋を発見。他のきょうだいたちが部屋を出ていくなか、末っ子のルーシィは、掛かっている毛皮のコートが気になって、タンスの中に入るのです。するとタンスの奥には道があり、足元には雪が積もり、向こうのほうに街燈が見えていました。
こうして別の世界へつながる道を見つけた彼らは、異世界へと足を踏み入れることになるのです。4人が訪れた世界は「ナルニア国」と呼ばれていました。魔法があり、妖精がいて、獣たちが言葉を話す世界です。
しかし白い魔女が支配をしていて、永遠の冬に閉じ込められているそう。魔女に逆らうと石にされてしまうので、ナルニア国の住民たちは怯えながら暮らしていたのです。4人は、ライオンの姿をしたアスランに導かれ、白い魔女からナルニア国を救うために、戦うことを決意しました。
『ライオンと魔女』の魅力は、なんといっても衣装ダンスの奥に別世界があるというワクワク感。子どものころに誰もが想像した魔法の国の入り口が、どこの家にもあるような家具に隠されているなんて……夢が広がりますよね。
読んでいて心が苦しくなるのは、きょうだいのひとり、エドマンドの裏切りです。白い魔女にそそのかされ、間違いを犯してしまうのです。ワクワクする冒険譚とともに、正義や悪についても考えさせられる作品となっています。
- 著者
- C.S. ルイス
- 出版日
- 2000-06-16
1953年に刊行された、「ナルニア国物語」シリーズ4巻の『銀のいす』。2016年に映画化の発表がされたものの、1度白紙に戻り、2018年に「Netflix」が権利を獲得したと報道されました。
『銀のいす』でナルニア国に向かうのは、3巻の『朝びらき丸 東の海へ』にも登場した4きょうだいの従弟、ユースチス・スクラブと、いじめられっ子のジル・ポールです。
学校生活があまりうまくいってない2人。ユースチスはジルに、かつて自分が訪れたナルニア国の話をし、「一緒に行けたらどんなにいいだろう」と言いあうのです。
そんな2人の願いは、アスランの導きによって叶えられました。そして、行方不明になっているナルニア国のリリアン王子を探すよう命じられるのです。使命を果たせるように、アスランはジルに4つの「しるべ」を託します。しかし2人は、次々とその「しるべ」を失ってしまうのです……。
ペベンシー家の4きょうだいは、勇敢で優秀な子どもたちでした。しかし今回のユースチスはジルは、どこにでもいる普通の少年少女。「しるべ」を見逃しても、それが大変なことだと気付きません。果たして無事にリリアン王子を見つけることができるのか、読者はハラハラしながら物語を読み進めることになります。
『ライオンと魔女』にて、白い魔女から誘惑をされ、結果的に他のきょうだいを裏切ることになってしまったエドマンド。この時に白い魔女が用いたのが、「ターキッシュ・デライト」というお菓子です。
日本語に翻訳された際は「プリン」になっていましたが、実はまったくの別物。トルコ発祥の伝統菓子なんだそうです。イギリスではクリスマスの時期によく食べられるんだとか。
材料は、グラニュー糖とコーンスターチに、好きな色味と香りを加えたもの。鍋で煮詰めると、ねっとりと柔らかいグミのような食感になります。それに粉砂糖をたっぷりとまぶすそうです。とにかく甘くて、食べて食べても、また食べたくなるおいしさだそう。
家で簡単に作ることができるので、ぜひ試してみてください。エドマンドが誘惑されてしまう気持ちがわかるかもしれません。