本当にそこにいるかのような没入感が魅力的なVRゲーム。本作はVRよりもさらなる体験ができる、五感を共有できるダイブ型ゲームを題材にしたファンタジーライトノベルです。そのゲームの名は「Infinite Dendrogram(インフィニット デンドログラム)」。 「小説家になろう」の投稿からHJ文庫で書籍化が決定し、漫画も発売されました。アニメ化も決定し、2019年最高に熱いライトノベルです。本記事では、作品の魅力や各巻の見所をご紹介していきます。この記事ではネタバレも含まれますので、未読の方はご注意ください。
2043年7月15日、自分がその世界の住人になったかのような体験ができるゲーム「InfiniteDendrogram(インフィニット・デンドログラム)」が全世界で発売されました。このゲームは、プレイヤーの人格や経験値などによって無限の進化を遂げる「エンブリオ」という独自システムが搭載されています。
主人公の椋鳥怜二(むくどりれいじ)は、大学受験を終え、念願叶って東京での一人暮らしを手に入れ、兄から誘われていたInfinite Dendrogramをプレイすることに。
玲二はレイ・スターリングとしてゲームの世界に降り立ち、兄のシュウと合流します。プレイヤーの目の前に広がるのは、現実と思わせるような世界。玲二もといレイ達は、手始めに「ティアン」(この世界でのNPCの総称)のリリアーヌのクエストを受けることにしました。
難なくクリアしたかと思われたその時、レイ達の前に敵が現れ……。
彼らはどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。エンブリオとともに熱いバトルがくり広げられます!
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2016-10-29
本作の舞台は、Infinite Dendrogramというゲームの世界です。
エンブリオは、プレイヤーの性格や経験値、バイオリズムなどを読み取りプレイヤーにあった形態へと進化するいわば相棒のような存在です。王道ストーリーの中に、ゲームとは思えないようなティアンとの関わりや、ハイレベルな戦闘がくり広げられることにより、ファンが増え続けているのでしょう。
2015年に作者・海道左近が、小説投稿サイト「小説家になろう」で投稿したのが始まりの本作。2019年現在も連載中です。人気の高さから、2016年にHJ文庫での書籍化が決定し、翌年の2017年には漫画化もされています。アニメ化も決定され、2019年の注目作品となっています。
本作の魅力は、ゲームの世界であるのに、時間が進み続けることです。
Infinite Dendrogramはプレイのやり直しはできません。たとえば、ラスボスと戦う前に、レベル上げや装備品を整えるなど、事前準備をおこなう人もいるでしょう。しかし、Infinite Dendrogramではそんな時間はありません。
ゲーム内では常に時間が流れ、準備をしている内にクエストは消滅するかもしれないし、仲間やティアンが死ぬかもしれない。ティアンはプレイヤーとは異なり、一度死んでしまえば生き返ることはありません。
王が死ねば次の王が即位し、新しい命が生まれれば、その子は育っていく。タイミングを逃したら、リセットすればいい……という考えが通用しないのです。
常に時間が流れていく中で、どのようにこの世界を過ごしていくのかを考えるレイ達の姿が、本作の魅力となっています。
リリアーヌのクエストを終え、レイは自分のエンブリオのネメシスを覚醒させました。
シュウと別れレベル上げを始めたレイは、同じくプレイを始めたばかりのルークと出会います。 ルークとお互いの健闘を祈り別れた後、ネメシスと徐々にレベル上げをしていた矢先に、何者かに攻撃されて……。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2016-10-29
1巻の見所は、右も左も分からない状態のレイが、相棒の少女・ネメシスとともに自分よりも何倍もレベルの高い敵と戦うシーンです。
たとえば、レベル5のプレイヤーが、レベル50の敵に出会ったらどうするでしょうか。勝てないので逃げるか、一度ゲームオーバーにしてやり直すでしょう。しかし、彼は逃げません。 たとえゲームだとしても、逃げれば誰かが襲われて被害が出てしまうかもしれない。
そんな後味の悪いことに耐えられないレイは、相棒とともに強敵を倒していくのです。レイの優しさと、心の強さが伝わってくるようで、胸に熱いものを感じる第1巻です。
決闘都市ギデオンに到着したレイは、路地裏で攫われそうになっている女性を助けます。 彼女が言うには、最近ギデオンの周辺で、「ゴゥズメイズ山賊団」が徘徊し子供を攫っているそうです。
それを聞いたレイは、たまたま居合わせたプレイヤーのユーゴ―とキューコとともに、攫われた子供達を助けに行くことに。
謎のペンギンに、犬耳を生やされたレイがまたもや強敵と戦う第2巻。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2016-12-28
本作の舞台はゲームの世界のため、プレイヤーはいくらゲームオーバーになっても、しばらくすればゲームに復帰できます。 しかし、ティアンは生き返りません。
たとえNPCだとしても、レイは一つの命として考え、子供達の命を絶対に助けると決意します。命の重みを考えるレイの優しさに、ユーゴーも共感しました。
ユーゴーには秘密があるようですが、子供を助けたいという気持ちに偽りはありません。レイの真っすぐな心が伝わる2巻となっています。
ギデオンの町で盛り上がりを見せているイベント「超級激突」が闘技場で始まろうとしていました。対戦するのは、墓標迷宮でレイと出会ったフィガロと、黄河帝国で四人しかいない「超級(スペリオル)」の一人である迅羽。
ゴゥズメイズ山賊団の戦いが終わったレイは、途中から行動をともにしているマリーとルークの3人で、超級同士の戦いを見に行くことにしました。 超級激突で盛り上がる中、ギデオンの町の水面下ではある計画が実行されようとしていました。
その計画とは、一体……。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2017-03-31
最強ランクの超級同士の激突や、レイの周りのキャラクター達の掛け合いが見所の第3巻。プレイヤーの誰もが目指しているInfinite Dendrogramの高み、超級同士の戦いに町は大いに賑わいます。
「超級」へとたどり着いた者たちの戦いとはどれほど凄まじいのか。そして、理知的に見えて能筋のフィガロは同じ超級である迅羽にどのようにして戦うでしょうか……。
手に汗握る超級同士の戦いに、熱くなること間違いなしです。
フィガロと迅羽の決闘が終結した直後、闘技場に現れた白衣の男・「大教授」フランクリン。彼はギデオンの町を舞台に、あるゲームを持ち出し第二王女を誘拐しました。
頼みの綱である上級プレイヤー達は闘技場から出ることができない状態にされ、戦えるのはレイ達のようなルーキーのみ。 果たして王女を奪還し、アルター王国を救うことはできるのか?
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2017-06-30
ルークとユーゴーの戦いにも目が離せません。一方レイ達は、フランクリンの持つスイッチを破壊し、町にモンスターが放たれるのを防ごうと奮闘します。彼の不屈の精神が垣間見える第4巻となっています。
超級相手でも諦めないレイに、心を打たれる人が続出するでしょう。また、今まで戦闘シーンのなかったマリーとルークも、その力を発揮します。
戦闘シーンだけでなく、キャラクター達のリアルな家庭環境や本作のゲームをプレイすることになったきっかけなどが描かれ、個々のキャラクターへの見方が変わるでしょう。
様々な思惑が行き交い、激しい戦いをくり広げる本巻に注目です。
レイ対策として用意していたモンスター・RSK(レイ・スターリング・キラー)を倒されたフランクリン。 ゲームはレイ達の勝ちに思えましたが、手段を選ばないフランクランは、さらに大量にモンスターを解き放ちました。
レイの左腕はすでに使い物にならない状況……モンスターを止めることができるのでしょうか?そして、ついにあの男にも動きが……。
『今夜お前が開いたゲームで、お前は最大のミスを犯した、――それは“弟”と“俺”を敵に回したことだ』
(『<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム-』5巻より引用)
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2017-09-30
5巻では、ついにレイの兄・シュウの無双劇が始まります。当初からただ者ではない風格を見せていたシュウですが、王国の危機についに動き始めました。
レイも逆境に強いですが、シュウは才能の塊であり、兄弟揃ってただ者ではありません。謎の語尾を付けて話す、クマの着ぐるみを着ているシュウの無双劇に、ファンが増えること間違いなしです。
いよいよ春休みも終わりに近づき、新しい大学生活が始まった玲二。彼は大学が始まる前に、ゲームの中でマリーとルークと一緒に海に行く約束をしました。
しかし、約束の日の前日。宿で眠っている間にアルター王国最大の宗教クラン「月夜の会」に拉致されてしまいます。 フィガロのお陰でなんとか月夜の会を脱出したレイは、次の日無事に大学へ向かうのですが……。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2018-02-01
今まで描かれなかった、玲二の現実での生活が描かれます。 新しい大学の先輩や、プレイヤー仲間も増えたレイですが、ゲームの中だけでなくリアルの生活も前途多難な予感……。
また、ギデオンの一件で「不屈のレイ」として有名になった彼の周囲の変化にも注目です。 1巻から強敵を倒し続け、フランクリンにも勝利した彼が有名になるのは当然のことでしょう。 有名なったレイは、平穏な日常とは程遠いようです。
新たなキャラクターや、不屈のレイといわれるにふさわしい活躍が見所の6巻となっています。
クエストを探してる中で出会った少年・リューイの住むトルネ村に着いたレイと、現実世界の先輩であるビースリー(現実世界の名前は藤林梢)。 リューイの義父・シジマの行方を捜していたレイ達の前に、風星祭のきっかけになった古代伝説級のUBM「黒天空亡モノクローム」が現れます。
モンスターを討伐するために動き出すレイ達の前に、混乱に乗じたPKクランが立ちはだかって……。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2018-06-01
7巻ではとうとう、ネメシスの第3形態が解放されます。 剣、槍と続いて、今度は大円盾の形態になったネメシス。 序盤ではどのような能力があるか判明しませんが、黒天空亡モノクロームの討伐で大いに活躍します。
7巻の奥深いところはティアンとプレイヤーの恋愛が可能かという点です。 Infinite Dendrogramは没入型のリアルさが売りなだけに、本当にティアンと恋愛をしてしまうケースがあります。
6巻からティアンとの恋愛について描かれますが、7巻はリアルとゲームの現実を思い知らされるような内容になっています。読者もInfinite Dendrogramのようなゲームができたとき、思わず考えさせられるようなストーリーになっています。
聖騎士のジョブがレベルMAXになったレイは、何かよいジョブはないかと探していました。そんな時、遺跡の発見とともに、失われたジョブが発見されたという報せを受けます。
新しいジョブの名は煌騎兵、レイはジョブチェンジのためにドライフ皇国との国境付近にあるカルチェラタン伯爵領に向かうことに。
カルチェラタンに向かう最中に、謎の仮面をつけた女剣士・アズライトと出会い動向をともにします。 遺跡にたどり着いた2人は、遺跡に隠された思わぬ事実を知ってしまうのでした。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2018-10-01
8巻は戦闘シーンよりも、プレイヤーとティアンの確執が深く表現されています。 ティアンであるアズライトはプレイヤーによい感情を持っていません。 レイはそれを分かった上で、プレイヤーとは何かをアズライトに伝えます。
レイの気持ちを知って、考え方を改めるアズライトの心情に注目です。また、遺跡の発掘物を巡って、レイ達の前に怪しい人物も現れます。
アズライトの正体や不屈のレイを狙う影など、見所が満載の8巻です。
遺跡の戦いは混戦を極め、超級職も出張って事態は激化の一途を辿っていました。 レイは、魔将軍ローガン・ゴットハルトとの戦いのさなか、新たなスキルを発動するためガルドランダの篭手を構えます。
そんな中、先々期文明の決戦兵器が目覚め……。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2019-02-01
ベルドルベルからローガンとの戦いをバトンタッチされたレイは、ローガンの召喚した悪魔達と戦う中、1巻で手に入れたガルドランダの武具の新たなスキルを発動します。
9巻では、レイの意識の中で登場し、たどたどしい話し方が可愛らしかったガルドランダがついにInfinite Dendrogramの世界に召喚されました。可愛らしくも、強いガルドランダの戦いに注目です。
カルチェラタンでの騒動も収まり、リアルの大学生活を満喫している玲二。一方、フランクリンの元を去ったユーゴーは、カルディナで新たな超級の師匠と一緒にレベル上げにつとめていました。
- 著者
- 海道左近
- 出版日
- 2019-06-01
10巻は前巻までとは異なり、外伝が詰まった内容です。 本編ではあまり語られていない玲二の学生生活や、叡智の三角を去った後のユーゴーのその後などが描かれています。
本巻の見所は、自分の世界を広げるために旅を始めたユーゴーの話です。元叡智の三角のメンバーでフランクリンの友人である撃墜王A・RI・CA(アリカ)を師匠とし、自由気ままな師匠に振り回されながらもカルディナでレベル上げをしていました。
そこに、マフィアや国が絡んだ大規模な抗争に巻き込まれて……。
ギデオン戦よりも成長したユーゴーや、A・RI・CAの特別なエンブリオにも注目です。
本作は、常に逆境に打ち勝つレイの戦いにも熱くなりますが、彼の周りのキャラクターも物語に必要な役割を担っています。ティアンやネメシス達との交流で、成長していくレイ達の活躍。 ぜひ、お手元で読んでみてはいかがでしょうか。