漫画『食い詰め傭兵の幻想奇譚』は、「小説家になろう」で9,500万PV突破のライトノベル小説のコミカライズ作品です。主人公の見た目とのギャップや、テンポの良いツッコミに思わず笑ってしまいます。相棒の少女と一緒に、どんな冒険を見せてくれるのでしょうか。冒険物や、テンポよく読める漫画が好きな方には、とくにおすすめしたい作品です。
物心ついた時分から、とある傭兵団に拾われ傭兵として活動していた青年・ロレン。ところが、傭兵団は負け戦によって壊滅状態になってしまい、命からがら逃げおおせる羽目に……。生き残った仲間達ともはぐれ、たどり着いた街で路頭に迷うのを避けるため、ロレンは冒険者となる決心をします。
しかし、装備は身に付けた革鎧と大剣だけ、所持金は銀貨が数枚という現状に加え、冒険者としてのランクは登録したての最下級。勝手の分からない新稼業に、ソロで挑むのはいかがなものか……。悩む食い詰め傭兵・ロレンの冒険者生活は幕開けから前途多難で……!?
傭兵としては、かなりの強さを持つ主人公・ロレン。しかし、冒険者としては全くの素人状態です。元スゴ腕傭兵が、懐事情から新米冒険者となって活躍する、バトルアクションファンタジー作品です。
- 著者
- まいん 池宮アレア
- 出版日
- 2019-01-26
- 著者
- まいん
- 出版日
- 2014-11-22
原作者・まいんは、小説投稿サイト「小説家になろう」にて、複数の作品が連載中という人気のライトノベル作家です。商業小説化された作品は『二度目の人生を異世界で』『食い詰め傭兵の幻想奇譚』の2作品となっており、両作品ともにコミカライズされています。
イラストレーター・peroshiはゲームグラフィック会社gloopsの社内イラストレーターとして働いているようです。作品によって異なるテイストのキャラを描くという実力のある作家。本作ではキャラクター原案を担当しています。
コミカライズの作画は池宮アレアが担当し、本作品が初単行本となっています。バトルシーンなども迫力のある絵柄で描き、キャラクターの描き分けもしっかりされています。彼女の絵柄を好む人も多くいるのではないでしょうか。
本作は、実力派である3人が集結しているので、物語も絵柄も、満足して読み進めることができるでしょう。
傭兵として戦い続けてきただけあって、剣士としてはスゴ腕レベルの元傭兵で、本作の主人公・ロレン。
整った顔立ちながらやや強面で長身、そして彼の主要武器・大剣に見合う体格の持ち主です。ドライな面もありますが、意外にユーモアもあり、脳筋のような見た目ですが、比較的常識人でまっとうな考え方をしています。そんな彼は第1巻での立ち位置は相当な苦労人。突っ込みが炸裂する展開には思わず笑ってしまうでしょう。
また女性や子供、お年寄りには優しくお人好しな一面を持っています。す筋が通らない事に居心地の悪さを感じたり、物事に真摯に対応しようという気持ちが強かったり、強面な見た目とのギャップが何とも言えない親近感のある主人公です。
身の丈に合わない冒険は性に合わないと思いつつ、情によって厄介事を抱え込む事もしばしばありますが、ロレンの行動や感情には嘘がなく、安心して読み進めることができます。そんな所も彼の魅力であり、本作の魅力といえるのではないでしょうか。
本作品の主人公・ロレンの相棒となっていくのが、訳あり神官・ラピスです。一見おっとりとした美少女ですが、どこかミステリアスな雰囲気を持つ彼女。
ロレンが臨時メンバーとしてパーティに「知識の神」の神官として加入ていた彼女。そんな経緯で出会った彼らは、とある事情から相棒として行動を共にしていく事になります。
豊富な知識を持つ策士の彼女ですが、意外にも力業での解決が得意です。それいうのも、彼女は人族よりも強大な種族……「魔族」だったのです。
人族から忌避される事も多い魔族ですが、ラピスが魔族と知っても態度を変えることがなかったロレンに、好感を持つようになっていきます。
行動を共にする事で、彼女の意外な腹黒さや辛辣な一面も見えてきますが、そんなちょっと小賢しいラピスのほうが魅力的。特にロレンとの掛け合いは、本気なのかボケなのか判別のつきにくい発言でしょっちゅうロレンにツッコミを入れられています。
強かでタフ、かつ面の皮が厚いラピスの魅力は、ロレンとセットで本作の面白さを担っているのではないでしょうか。
コミカライズ作品ならではの魅力としては、絶妙な漫画表現の妙味が挙げられます。
ロレンがひたすらツッコミを入れまくるシーンや、ラピスをとある事情で持ち運ぶシーンなど、文章で読む時と印象を異にする事なく、コミカルな仕上がりに表現されており、原作を読んだ方も楽しめる作りになっているのではないかと思います。
また、第1巻には「目は口ほどに物を言う」場面があるのですが……中々に、原作の文章を汲んだ「顔」のラピスが見られます。
そして、バトルアクションファンタジーらしくアクションシーンも臨場感があり、文章で読む時とは違った迫力を感じられます。ロレンやラピスの表情、動き……それらは漫画版ならではの楽しみであり、魅力といえるでしょう。
生活費を稼ぐため、やむなく冒険者として活動することになった元傭兵・ロレン。しかし冒険者としての勝手が分からず、ソロでの活動にためらいを覚えていました。そこへ渡りに船とばかりにパーティ加入の申し出が……。
その申し出を受け、イケメン優男の剣士・サーフェと彼を慕う2人の少女、そして知識の神の神官少女・ラピスとともに、ゴブリン退治へと向かう事になったロレン。
しかし、サーフェの行動は、依頼の内容確認はザル、野営でイチャラブ見張りは適当、現地での情報収集もしないというお粗末なもの……。ロレンはパーティ唯一の常識人・ラピスと共に呆れと諦めを感じつつ不安しかない初仕事に挑むのでした。
元スゴ腕傭兵の、前途多難な冒険者生活の始まりです。
- 著者
- まいん 池宮アレア
- 出版日
- 2019-01-26
第1巻の見所は、神官少女・ラピスの正体が明かされるくだりでしょうか。
常識人的言動で、ロレンとの連帯感を感じているようなラピスですが、彼女の正体は実は魔族。得体の知れない恐ろしさを感じさせるその本性……素の言動と、それを戸惑いつつも受け入れるロレンのやりとりは、緊張感と面白味を持っています。
この物語の軸となり、相棒となっていくロレンとラピス。彼らの関係は、一体どのような形で変化していくのか……。今後も注目していきたい部分です。
そして、ラピス以外の言動も行動も好感が持てない初期パーティ。受けた依頼はゴブリン退治、難しい依頼ではありませんが、パーティのメンバーに問題がありまくり。出発当初から前途多難なフラグを感じます。
テンポの良いボケ発言連発なリーダーに、当たり前なロレンの脳内ツッコミ。テンポの良い展開に、サクサク読むことができます。
コミカライズはまだ第1巻のみですが、ロレンとラピスの旅は始まったばかりです。彼らの旅はどうなっていくのか、そして魔族のラピスは何を考えているのか。続きが楽しみな作品です。