友人関係、恋人関係、夫婦関係、家族関係、生きていく上で誰かとの関係は切っても切れないもの。しかし、誰かと交流を深めるということは、それだけ悩みを抱えることにもなります。本作は、そんなちょっと疲れた時に読むのにおすすめな作品です。 2019年10月から、TBSテレビでドラマが放送されます。そんな本作の魅力についてご紹介します。ネタバレも含まれますので、苦手な方はご注意ください。
寿退社間近のOL・小暮也映子は、婚約者に式を間近に控えていたにも関わらず、婚約破棄されてしまいました。
愛する人も仕事も失くした彼女は失意のなか、たまたま管弦楽組曲「G線上のアリア」を耳にします。「G線上のアリア」を弾いてみたいと思った彼女は、どうせ暇だからと思い切ってバイオリン教室に通うことに。
彼女はそこで、新たな出会いを果たすのですが……。
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2014-04-25
本作は、集英社が刊行している月刊雑誌「ココハナ」で、2013年1月号に読切として掲載されました。その後、不定期に続編が掲載され、2018年6月号まで続いた作品です。
単行本は全4巻で、嫁姑問題、浮気、歳の差、婚約破棄など現実的な悩みを抱えるキャラクター達が、互いに相談や悩みを打ち明けながら、前を向いて生きていく姿を描いた作品です。
2019年10月の火曜10時からTBS系列でドラマの放送が決定しており、主人公の小暮を女優の波瑠が演じます。漫画での小暮は眼鏡にロングヘアが特徴ですが、テレビドラマではショートに裸眼のようです。どんな物語が展開されるのか、期待が高まります。
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2012-11-08
作者は、1964年10月2日生まれの北海道名寄市出身です。血液型はA型で、東海大付属第四高等学校を卒業しています。
デビュー作は、1979年に別冊マーガレットで連載された『マギー』。その後、『潔く柔く』で講談社漫画賞少女部門を受賞し、2013年には実写化もされました。さらに、2017年には不倫をテーマにした『あなたのことはそれほど』がテレビドラマ化されます。
作者は、現実にある人間関係を主体に書いた作品が得意なようで、とくに男性の描き方がリアルです。俺様キャラや王子キャラなどではなく、どこにでもいそうな男性が多く登場するため、とくに女性からの共感を呼び、人気を集めています。
本作は「バイオリン教室」が物語の舞台となっており、作者自身もバイオリンを習っていた経験があるようです。「バイオリンを弾くのは大変だけれど、思ったよりも楽しかったので書いてみよう」と思ったのが本作を書くきっかけだったと話します。
2019年8月現在も習っているかは不明ですが、本人が述べるにはバイオリンの腕はそれほど高くないようです。そんな作者だからこそ描ける、リアルなお教室での人間関係の様子を楽しめる作品となっています。
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2015-08-25
主人公の也映子は、喜怒哀楽がはっきりとした女性です。
彼女は、元婚約者への思いを忘れられずに悩んでいました。「G線上のアリア」を演奏できれば思いを吹っ切れるのではないかとバイオリン教室に通いだしますが、そこでも彼女の悩みは増えていくばかりです。
彼女は家ではグダグダと悩んでいても、誰かの前ではいつでも笑顔を見せたり、泣きたいときは泣いたりと自分の気持ちに嘘をつきません。ときには同じバイオリン教室に通う年下の男の子の前で大号泣してしまい笑われることも……。
自分が辛いときは誰かに相談したり、誰かを励ましたり、空回った言動をする彼女は、変なところもあるけれどそんな正直な姿が周りの人に好かれます。
自分の考える通りに行動する彼女の姿を見ると、今悩んでいることも吹き飛ぶでしょう。
小暮が通う大人のバイオリン教室には、3人の生徒がいます。1人は主人公の小暮(25)、2人目は主婦でパートの北河幸恵(41)、大学生の加瀬理人(19)。そして、講師の久住真於(26)。
月曜の午後7時から始まる小さな教室には、年齢も抱えている悩みも異なる人たちが集まり、楽しく練習に励んでいました。
いままでは教室で会うだけの関係でしたが、発表会に向けて小暮達生徒3人は、教室以外の時間でも集まってバイオリンの練習を始めることに。そこから、彼らはお互いの悩みを共有しながら、急速に仲良くなっていきます。
そんな彼らの教室内の人間関係も見所です。
加瀬は講師である久住に思いを寄せています。しかし彼女は、自分の兄の元婚約者という立場。それを知った小暮と北河の女性2人が、アドバイスをしたり応援したり慰める姿は、少しお節介なおばちゃんを連想させます。しかし境遇が違うからこそ、お互いの意見を聞くことができるのかもしれません。
お互いに考え方や悩みが違うけれど、励まし合いながら笑い合う3人に「こんな友人がほしい」と思ってしまいます。世代を超えて関わりあい影響し合う彼らにもぜひ注目してみてください。
小暮達は、バイオリンを触ったことも無い初心者の集まりです。バイオリンは聞いている人の耳に心地よい音を届ける楽器ですが、技術は簡単には身に付けられません。
うまくできないと投げ出したいと思ったことは、誰しもあるはず。しかし彼らは少し違うようです。小暮達はうまくできなくても、バイオリンが弾ければそれでよいのです。出来なかったことが出来るようなるともちろん嬉しいですが、それよりも弾くことに喜びを感じている姿がとても楽しそうで読んでいる者も楽しませてくれます。
本格的な音楽漫画ではありませんので、専門的な用語は出ず、人間関係に重きを置いた内容になっています。何か新しいことを始めてみたいと思っている人には、ぜひおすすめしたい内容です。
教室に通いだしてからおよそ1年。
元婚約者のことを吹っ切り、加瀬と恋人同士になった小暮。北河と加瀬はバイオリン教室に通うのを辞め、講師の久住は結婚することが決まります。
バイオリン教室が開かれていた場所も老朽化のために取り壊しが決まり、教室の場所も新しくなることに。小暮達は、結婚する久住のためにある計画を実行しようとします。その計画とは……?
- 著者
- いくえみ 綾
- 出版日
- 2018-06-25
大人になってからの出会いは、希薄なもの、という意見を耳に挟むことがあります。しかし彼らには、そんな気配がありません。きっと「バイオリン教室」という、仕事も地元も関係ない出会いは特別な絆を生むのでしょう。
彼らの作戦は、大人ながらにグッと胸にくる内容です。読後にはきっと、「新しい出会いを見つけてみたいな」と思わせてくれます。
人生はうまくいかないことの連続です。本作のキャラクターも、婚約破棄をされたり、旦那が浮気をしたり、年上の女性には振られたり嫌なことばかり起こります。それでも時間は過ぎ、変化しないものはありません。
置いていかれないように、自分も前に進まなくてはいけない。そんな主人公たちの足掻く姿に、勇気がもらえるでしょう。
本作は、人生に疲れた時、嫌気がさしたときに読んでみることをおすすめします。いつも笑って、ときに泣きながらも、好きなことに取り組む姿に元気が出るでしょう。