スティーヴン・キングの名作『シャイニング』の続編として発表された『ドクター・スリープ』。『シャイニング』から30年後の世界を描いた本作は、日本では2015年に翻訳版が発表されました。2019年11月には映画も公開されます。今回は、そんな『ドクター・スリープ』のあらすじと魅力をご紹介します。
ホラー小説の名作『シャイニング』から30年後の世界を描いた続編『ドクター・スリープ』。主人公は、『シャイニング』に登場した主人公の息子・ダニーです。前作では子供だったダニーが大人へ成長し、ある少女と出会い、新たな戦いに身を投じていくことになります。
『シャイニング』の惨劇から30年、ダニーは様々なトラウマや苦悩からアルコールに溺れ、人生のどん底のような生活を送っていました。そんな中、自分と同じ超能力である「かがやき」を持つ少女・アブラと出会います。しかし、その出会いは新たな敵「真結族」との戦いの始まりでもありました。
- 著者
- スティーヴン キング
- 出版日
- 2015-06-11
「かがやき」を持っているがゆえに狙われることになってしまったダニーとアブラは、戦いを経てどこへ向かうことになるのか……怖さだけではない、新しいホラー小説ともいえる内容です。
2019年に映画化がなされる本作。公開日は、アメリカでは11月8日、日本では11月29日に決定しました。前作の映画『シャイニング』では、スタンリー・キューブリックが監督を務めましたが、本作ではマイク・フラナガンが監督を務めます。そのほかのキャストは、大人になったダニーを演じるのは、「スター・ウォーズ」など数々の有名作に出演したユアン・マクレガーです。
マイク・フラナガンは数々のホラー映画を手掛けている監督。キューブリックとはまた違う世界を楽しむことができるでしょう。
- 著者
- スティーヴン キング
- 出版日
- 2008-08-05
『ドクター・スリープ』の前作である『シャイニング』。
この作品は、スタンリー・キューブリックによって映画化されたものが有名で、読んたことがなくても映画を見た人や、タイトルは知っているという人も多いのではないでしょうか。
『シャイニング』は、コロラド州の雪深いロッキー山にあるホテルが舞台のホラー小説。主人公は、このホテルで冬の間だけ管理人をすることになった小説家志望のジャックです。彼は妻のウェンディと息子のダニーを連れて、ホテルへやってきました。
しかし、このホテルはジャックと同じように、過去に家族とともに管理人としてホテルに訪れた男、グレディが家族を皆殺し、その後自殺したという惨劇の過去がありました。そして、その亡霊は未だにホテルをさまよっていたのです。
最初はホテルの過去に関心を持たなかったジャックでしたが、ホテルの過去や亡霊に取り込まれてしまい、遂にはウェンディやダニーに襲い掛かり……とラストに繋がっていくのが大まかなストーリーです。
一見、王道のホラーですが、ホテルの過去を知っていく様子やダニーが自分達以外の存在に気付くシーンなど、じわじわと足元から這い上がってくる恐怖は、ぜひ読んで味わって頂きたいと思います。
『シャイニング』に登場する息子のダニーが、『ドクター・スリープ』の主人公になります。ダニーは、幽霊や幻想を見たり、テレパシーのような会話ができたりする超能力「かがやき」を持っていました。
「かがやき」を持つダニーは、この能力を生かし『シャイニング』では重要な役割を担います。「かがやき」は『シャイニング』でも『ドクター・スリープ』でも物語の根本に関わる重要な超能力ですので、ぜひチェックしておきましょう。
前作で登場した時はまだ小さな少年だったダニーは、30年経ち、すっかり大人になっていました。しかし、壮絶な事件を経験し、親を亡くしたダニーは、父親と同じようにアルコール中毒になり、まさにどん底のような人生を送っています。
本作の前半では、そんなダニーの人生が淡々と描かれていきます。まだ子供だった彼が、事件のトラウマを抱え、父親とそっくりな弱い精神力、そして「かがやき」を持っているゆえの苦しみを感じ、堕落しながら成長していく姿には胸が締め付けられます。
しかしそのつらい経験があるからこそ、少女・アブラの存在や、彼女と一緒に戦いに身を投じていく姿、過去と決別する覚悟が、際立って読者の胸を打つのかもしれません。また前作を読んだ人にとっては少し辛い場面もあるかもしれませんが、ダニーが戦いを経て新たな一歩を踏み出していく姿に、きっと感動できることでしょう。
本作で主人公のダニーとともに重要なキャラクターは、ダニーと同じ力「かがやき」を持つ女の子、アブラ。しかし同じ能力といっても、力の強さはダニーを遥かに超えています。そんなアブラとダニーは、「かがやき」がお互いに引き寄せ合うのか、運命的な出会いを果たします。
このアブラとの出会いが、ダニーとにっては新たな戦いの始まりだったのです。本作には、「かがやき」を食べる一族「真結族」が登場します。アブラは自身の力の大きさゆえに、一族に狙われてしまいました。
ダニーはそんな彼女とともに「真結族」と戦います。彼も捕食の対象です。彼は自分のためでなく、アブラを守るために敵に立ち向かいます。
アブラの力の強さは、後半の戦いの中で、いかんなく発揮されるので、ぜひ注目してみてください。
「真結族」は、本作で登場するダニー達の敵となる一族。
「真結族」は、人の超能力、つまりダニーやアブラの持っている「かがやき」を食べて長い時間を生きています。イメージとしてはヴァンパイアに近いでしょう。
捕食対象として狙われることになったダニーとアブラは、この「真結族」と戦うことになるのですが、その戦いが本作の後半のメイン。彼らは、アブラを支える人間達と協力して「真結族」と戦っていきます。アブラやダニーが真結族と直接対決する場面は、戦いの緊迫感がこちらにも伝わっていきます。
アブラの力がかなり強いため、敵との戦闘シーンでは爽快感があります。また、上巻と比べるとかなりスリル満点な雰囲気なので、ハラハラしながら一気に読み終えることができるはずです。
下巻では、すでにご紹介したとおり、「真結族」とダニーとアブラ達の戦いがメインとなっています。しかし戦い以外にも焦点が当てられ、ハートフルで泣けるようなエピソードや、「真結族」の絆を表現するシーンがあります。
『シャイニング』の続編のため、ゾワゾワする怖いホラー小説をイメージする方も多いと思いますが、本作はホラーだけではない親子愛や仲間との絆といったハートフルな部分が多いのも、特徴の1つといえるでしょう。
- 著者
- スティーヴン キング
- 出版日
- 2015-06-11
特別な力である「かがやき」を持ったアブラの両親の苦悩やダニー自身が自分の過去を乗り越え成長しようとする姿を描くことで、単純なホラーで終えず、物語に奥行きを出すスティーヴン・キングの魅力でしょうか。
ラストでは、ダニーとアブラの思いがけない関係なども明かされ、その意外な展開に驚く方も多いかもしれません。下巻は一気に読み進めたくなる一冊なので、ぜひお休みの日などまとまった時間の時に読んでみてはいかがでしょうか。
『ドクター・スリープ』は、『シャイニング』を知っている方はもちろん、読んだことのない方でも十分に楽しむことはできるでしょう。ただ、『シャイニング』の基本設定や登場したキャラクターなども出てくるので、読んでおくとより楽しめることは間違いありません。これを機会に、ぜひ前作と合わせて読んでみてはいかがでしょうか。