パパは人間で、ママはキツネ……不思議な5人家族を描いた人気シリーズ「シノダ!」は、ドタバタのホームコメディの面白さがあり、子どもたちに大人気です。この記事では、登場人物やおすすめの巻のあらすじと魅力を紹介していきます。
2003年に第1巻が刊行された児童書「シノダ!」シリーズ。富安陽子が文、大庭賢哉が絵を担当しています。
富安陽子は1959年生まれ、東京都出身の児童文学作家です。日本の神話や伝承を生かした和製ファンタジーを数多く生み出していて、「日本児童文学者協会新人賞」や「新美南吉児童文学賞」「野間児童文芸賞」など、さまざまな賞を受賞しています。
「シノダ!」シリーズは、とある秘密を抱えた信田家の5人が巻き起こす人気のドタバタホームコメディ。一見普通の家族に見える信田家ですが、実はママが人間ではありません。キツネのママと、人間のパパ、そしてキツネの不思議な力を受け継いだ3人の子どもたちで暮らしています。
「葛の葉」という日本の伝承が物語のベースにあり、また各話にも土地の神様や河童伝説など、さまざまな民間伝承が散りばめられているのが特徴です。
対象年齢は小学校高学年からとありますが、伝承や言い伝えに触れるよい機会になるのではないでしょうか。事件を解決する謎解きの面白さもあり、読書の楽しみを十分に味わうことができるでしょう。
ユイ
信田家の長女で、しっかり者の小学5年生。匂いや音、気配などから風の言葉を聞きとる「風の耳」の持ち主です。
タクミ
信田家の長男で、生き物が大好きな小学3年生です。過去や未来の出来事を見る「時の目」の持ち主です。
モエ
信田家の次女で、ハーモニカとおゆうぎが好きな3歳の末娘です。一家のなかでもマスコットのように愛されています。人間以外の生き物の言葉を伝える「魂よせの口」という能力をもっています。
夜叉丸おじさん
キツネ一族のひとり。ママのお兄さんキツネで、ちゃらんぽらんな性格をしています。いつも信田家に厄介ごとを持ち込んでくる、人騒がせなキツネです。
鬼丸おじいちゃん
キツネ一族のひとり。ママのお父さんキツネです。普段は一族とともに山で暮らしていますが、キツネの姿のまま突然信田家のリビングに登場して、みんなをソワソワさせることも。
信田家は、人間のパパとキツネのママ、そして3人の子どもたちで暮らす5人家族です。不思議なキツネの一族を親戚にもつ信田家には、いつもトラブルが絶えません。
ある日一家は、ひょんなことからマンションで竜を育てることになってしまいました。こっそり犬を飼うように隠しながら育てるのですが、竜はどんどん巨大化し……。
- 著者
- 富安 陽子
- 出版日
- 2003-07-01
『チビ竜と魔法の実』は、「シノダ!」シリーズの第1巻です。
できる限り普通に暮らすことを望んでいる信田家ですが、キツネ一族によってもたらされるトラブルに悪戦苦闘……思いっきりファンタジーな世界で「普通」を目指す様子がユニークに描かれています。
近所に住む口うるさいおばさんが登場したり、不審に思った警察が家を訪ねてきたりするのを何とかごまかす様子が文句なしに面白く、どんどん読み進めることができるでしょう。
普通を目指す彼らにはたびたびトラブルが襲いかかるのですが、「災い」と「不幸」は違うということを、キツネのママが教えてくれます。タクミは「時の目」の能力を疎ましく感じることさえあるようですが、今後その葛藤をどのように乗り越えていくのかも注目です。
いつもはユイたち家族が会いに行く、信田家のパパ方のおばあちゃん。今日はおばあちゃんが一家のところへ来ることになりました。
パパの親戚にはママの正体を秘密にしているので、さあ大変。いつものようにキツネ一族が突然現れて、おばあちゃんと鉢合わせしないかやきもきしっぱなしです。
さらに、おばあちゃんの家の物置に長い間眠っていた、古い鏡が家に届いてからというもの、次々と怪しい出来事が起こり……。
- 著者
- 富安 陽子
- 出版日
- 2006-11-01
『鏡の中の秘密の池』は、「シノダ!」シリーズの第3巻です。
おばちゃんの家から送られてきた鏡は、パパがその昔にいじめっ子からもらったものでした。中から水があふれてくるなど次々と不思議なことが起こり、さらにはモエが、中に男の子の姿が見えると言うのです。
永遠に止まった時間のなかにいるのか、流れる時間のなかで大人になったほうがいいのか……もう戻れないあの夏に思いを馳せる、少し切ない怪談話です。大人が読んでも心がじーんとして、ほろりとしてしまうでしょう。
今回は、キツネ一族のなかでも1番のトラブルメーカーな夜叉丸おじさんと、京都へ行くことになりました。
旅の目的は、宝探し。都ギツネから、300年前になくなった宝を見つけてほしいと頼まれたのです。モエの「魂よせの口」の力を借りたいとのことで、ユイとタクミも協力するのですが……。
- 著者
- 富安 陽子
- 出版日
- 2014-10-15
『都ギツネの宝』は、「シノダ!」シリーズの第8巻。街に隠された暗号の謎解きと、宝探しを楽しめます。魑魅魍魎がはびこる京都という土地の世界観も堪能できるでしょう。
いつもは厄介事しか持ち込まない夜叉丸おじさんですが、本作では豊富な知識と推理力で大活躍。またユイ、タクミ、モエもそれぞれの能力を活かして奮闘します。
宝探しは、300年前の人間とキツネの恋のお話でした。時を超えた絆について考えさせられる一冊です。
夏休みのある日、初めて2人だけでパパの故郷へ行くことになったユイとタクミ。降りる駅を間違えたりしながらも、なんとか到着することができました。
河原へホタルを見に行くと、そこでキツネのお面をかぶった兄弟と出会います。彼らは、もうすぐ山で開かれる「ナツギ祭り」に参加するために来たそうなのですが……。
- 著者
- 富安 陽子
- 出版日
- 2015-06-16
『夏休みの秘密の友だち』は、「シノダ!」シリーズの第9巻。今回はいつものようなキツネ一族のドタバタはなく、特別な夏休みの出会いと別れの物語が描かれています。
これまでユイたちがパパの故郷に行くのは冬と決まっていたのに、今年はなぜか夏。500年に1度のお祭りである「ナツギ祭り」に、知らないうちに招待されていたのです。キツネの兄弟と楽しくも神秘的な時間を過ごした2人。きっといつかまた会えると信じて別れる姿に、胸がきゅっとしてしまうでしょう。
また、富安陽子が表す情景が秀逸。青すぎる空に蝉の声、顔をなでる風、ソーダ味のアイス、縁側からの風景……目の前に浮かんでくるような日本の夏を満喫できます。
信田家の末っ子モエ。ある日幼稚園で、知らない男の子から「いいところにいこう」と誘われました。園長先生の庭を抜け、2人で池を見ます。男の子は、池を見たことを内緒にしておくようにと言い、「うそをついたら、カエルの口になあれ」と呪いをかけて指切りをしました。
しかしモエはまだ3歳の女の子。そんな約束は守れるはずががありません。指切りと呪いのおかげで、信田家はとんでもない大騒動に巻き込まれることになり……。
- 著者
- 富安 陽子
- 出版日
- 2016-11-10
『指きりは魔法のはじまり』は、「シノダ!」シリーズの第10巻です。シリーズお得意の爆笑ホームコメディで、モエが中心となって進みます。
かけられた呪いを解くために、その土地の伝承や言い伝えを調べる信田一家。男の子は何者なのか、なぜカエルの口なのか……すべての謎が明らかになり、カエルが竜とともに天高く飛んでいく場面は感動的です。
また「シノダ!」シリーズの第1巻に出てきた竜が登場するので、全巻を通して読んできた読者はより楽しむことができるでしょう。