物語の舞台は、新設高校のサッカー部。自身の成長・理想のチームの実現のために、一人ひとりの登場人物が情熱を傾けています。特別な才能も、強者に立ち向かう前向きさもない、おどおどした主人公・柚樹。彼自身の成長や、チームメイトたちの熱い想い、またサッカーの戦術解説からも目が離せません。今回は、異色のサッカー漫画『TIEMPO―ティエンポ―』の見所を紹介していきます。
中学からサッカーを始めた主人公・瀬戸柚樹(せとゆずき)。初心者なりに楽しくサッカーをしていましたが、突如現れた先輩・朝美圭右(あさみけいすけ)の入部により、状況は一変します。
朝美のテクニックは抜群ですが、思い通りにならないとすぐに「Dumb Ass!(クソ野郎)」など、過激な言葉(スラング)で悪態を吐き、チームメイトに対して怒鳴り散らすことも。
柚樹は朝美への恐怖心に怯えながらも、彼を怒らせないようなプレーを心がけていき、結果的に格段にサッカーがうまくなっていきます。
その後、進学した春日高校で「今度こそ楽しくサッカーができる!」と期待に胸を膨らませる柚樹でしたが、なんと他校に進学したはずの朝美が再び現れて……。
- 著者
- 飯野 大祐
- 出版日
- 2018-11-19
春日高校では、ドリブルやシュートなどのコントロール技術だけでなく、状況を見て適切な対応をしていく「頭脳プレー」が求められています。
そのため、柚樹の成長はもちろん、高度なチームワークが求められる「サッカーの戦術」も本作の見所のひとつ。巧みなチームプレーによってフィールドを掌握していく様子は、感心するとともに、まるでパズルが解けたときのような爽快感を味わえます。
このチームで主人公はどのように活躍していくのか……?先の展開がつい読みたくなるサッカー漫画です。
主人公の柚樹は、朝美に怒鳴られると恐怖で失神してしまうほどの小心者。中学時代は朝美の怒号に毎日怯えていました。「どうしたら朝美に怒られないのか」ばかりを考え、柚樹は彼について研究を始めます。
その集中力は凄まじく、試合の録画映像を何度も見直して、朝美の目線や身体の動き、ボールに触った回数、走ったコースなどを詳細に分析。部屋の壁を、朝美の写真やメモで埋め尽くしてしまうほどでした。
そうした努力のおかげで、彼は「どこにボールを蹴れば、朝美がシュートできるのか」が少しずつ見えるようになります。
- 著者
- 飯野 大祐
- 出版日
- 2019-02-19
柚樹のサポートのおかげで、朝美も試合での活躍が注目されていき、 このストイックな集中力や分析力は、高校でも発揮されることに。
分析と練習をくり返す柚樹の姿勢や、着実にサッカーが上達していく様子は、彼がこれから素晴らしいサッカー選手になっていくことを予感させます。今後どのような成長を遂げていくのか、読者は楽しみで目が離せなくなってしまうことでしょう。
柚樹が入学した春日高校は、2年前に新設されたばかり。サッカー部は、部長である曾澤要(あいざわかなめ)と、副部長の藤ヶ谷リキ(ふじがやりき)の2人が立ち上げました。
スペインからの帰国子女である要は、あえて新設校で、一からチームを作りあげようとしているのです。
彼が目標に掲げる「ポジショナルプレー」と呼ばれるスタイルでは、選手一人ひとりが状況を的確に判断し、チームを優位に導く「ポジション取り」が必要不可欠。
そこには、不確定な要素を最小限に抑えた「美しさ」があると語る要……。彼の表情からは、冷静さのなかに秘めた情熱を感じられます。
その美学と信念にもとづき、理想のチームを目指しているわけですが、もちろん一朝一夕にできるようなものではありません。しかし、困難な目標こそ、達成に向けて心が燃えるというもの。
要がポジショナルプレーへの理想を語るシーンでは、柚樹とともに読者もワクワクを感じてしまうことでしょう。「美しく勝利する」という要の目指すサッカーが、どのように実現していくのか注目です。
レギュラーを目指して一念発起した柚樹は、朝美への恐怖を克服しようと決意。毎日ひと言でも話しかけることを目標にし、少しでも朝美のことを理解しようと試みます。
まだまだ朝美への恐怖を打ち消すことはできず、引きつった表情ではありますが、勇気を出して朝美に近づいていく柚樹の姿は、つい応援したくなってしまうことでしょう。
また朝美も、今まで自分に歩み寄ろうとする人間がいなかったので、柚樹が声をかけてくるようになったことに驚かずにはいられません。いつも苛烈に怒鳴っている彼が困惑している様子は、コミカルな面白さも感じられます。
いつか柚樹の努力が実り、2人が「真のチームメイト」になる日は来るのでしょうか。そして、それが叶ったとき、フィールドではどのようなプレーが展開されるのか……。柚樹と朝美、2人の今後の関係も見所のひとつです。
楽しくサッカーができると期待して、春日高校に進学しましたが、思いがけず朝美と再会してしまった柚樹。
朝美への恐怖心に囚われた柚樹のプレーは、中学のころと同じように、彼が求めるパスばかり。そのことを要から指摘され、「サッカーなめてる?」という厳しい言葉を突きつけられ……。
要の言葉を受けて、柚樹は朝美に対する恐怖の克服とレギュラー入りを目指し、強い瞳で前を向き始めます。
小心者な性格は相変わらずで、レギュラー争いのライバルになる先輩にも、思わずビビッてしまう柚樹。しかし、怖がりながらも頑張って立ち向かっていこうという姿勢を見せるようになり、少しずつ成長が感じられていきます。
サッカーの技術的な上達はもちろんですが、柚樹が精神的に成長していく様子も見所のひとつです。
- 著者
- 飯野 大祐
- 出版日
- 2019-05-17
3巻では、公式のリーグ戦が始まり、春日高校は強豪・西浦高校と対戦します。西浦高校のエースは、要とリキのかつてのチームメイトであった、千住一仁(せんじゅかずひと)。
ポジショナルプレーの戦術を重視する要に対し、千住は個人のドリブルやシュートなど、技術的な能力こそが重要だと考えています。
それぞれのサッカーに対する考えの違いから、べつべつの道を歩んだ要と千住。この試合は、2人のプレースタイルの戦いでもあります。それぞれの信念がぶつかり合う「熱い展開」からは目が離せません。
白熱した展開が続く西浦高校との試合。春日高校は反撃のゴールを決め、勢いに乗った状態で前半戦が終了します。
強豪校に引けをとらない試合運びには、取材陣やスカウト関係者も驚きを隠せません。 春日を新設校と思って油断していた西浦高校でしたが、後半は気を引き締めてきます。
- 著者
- 飯野 大祐
- 出版日
- 2019-08-19
2年生レギュラーの間瀬亮(ませりょう)の登場や、要とリキの過去を振り返るシーンもあり、彼らのサッカーに懸ける熱い気持ちへの理解が深まるでしょう。
また、感情移入できるエピソードがあるぶん、試合の展開にドキドキする気持ちも高まります。
とくに、リキと西浦高校キャプテン・竜胆享(りんどうあきら)のゴール前の争いは、圧巻のひと言。たくましい体格の2人が激しくぶつかり合い、競り合う姿は迫力満点で見ごたえがあります。
大事な公式戦がいよいよ始まります。春日高校は勝利できるのでしょうか。そして、柚樹や朝美に活躍のチャンスはくるのか……?今後の展開に目が離せません!