プルーストに関する本おすすめ5選!『失われた時を求めて』を読み解くには

更新:2019.9.15

20世紀を代表する世界的な作家、プルースト。そして、読書好きであれば1度は読んでおきたい彼の名作『失われた時を求めて』。長大で難解ゆえに研究者による解説本も多数発表されています。この記事では、プルーストの『失われた時を求めて』を読み解く鍵になるおすすめ本を紹介していきます。

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プルーストはどんな人?名言も紹介!

 

1871年生まれ、フランス出身の小説家マルセル・プルースト。裕福な家庭で育ち、幼い頃から文学や芸術を好んでいたそうです。持病を抱えながらもパリ大学に進学し、卒業後はほとんど定職に就くことはなく、小説の執筆に専念しました。

30代後半から51歳で亡くなる直前まで書き続けたという大作『失われた時を求めて』は、文学界に新たな地平を切り開いた歴史的作品です。その複雑かつ画期的な物語構造は、後世の作家に大きな影響を与え、時代の波に埋もれることなく語り継がれています。

そんなプルーストですが、人間の心理の機微に対する洞察が鋭く、数々の名言を残しています。 

「欲する心にはすべてを開花させる力がある。所有したという事実はすべてをしぼませ枯らしてしまう」
「発見の旅とは、新しい景色を探すことではない。新しい目で見ることなのだ」
「我々の忘却してしまったものこそ、ある存在をいちばん正しく我々に想起させるものである」

思わずはっとさせられるような言葉たち。日頃から物事を深く考えるタイプで、それが小説にも表れていたようです。

 

『失われた時を求めて』を読む前に『楽しみと日々』

 

『楽しみと日々』は、プルーストが20代前半に書いた短編小説、散文、詩をまとめたもの。1896年に刊行された最初の著作で、彼の原点ともいえる作品です。

繊細な感性と鋭い観察力、情熱や嫉妬といった普遍的な人間心理の探求など、後の大作『失われた時を求めて』でもみられるプルーストの特徴を感じられるでしょう。

著者
プルースト
出版日
2015-01-17

 

なかでも「嫉妬の果て」は、主人公の心の動きが細かく描写されていて秀逸。知らず知らずのうちに嫉妬の渦に飲み込まれていく様子、そしてコントロールできない自分自身の感情に悩まされる様子がありありと伝わってきます。

うら若きプルーストが何を考え、自問自答していたのかを感じられる一冊。いきなり『失われた時を求めて』を読むのはハードルが高いと感じている人にとっても、チャレンジしやすいでしょう。

言わずと知れたプルーストの代表作『失われた時を求めて』

 

プルーストが半生をかけて執筆した代表作。彼自身の体験が表れている自伝的作品で、その長さはフランス語の原文で3000ページ以上、日本語訳では400字詰め原稿用紙1万枚というボリュームです。

社交界の人間模様、恋愛とそれにともなう苦痛、芸術、老い、死など多種多様なテーマが語られています。物語の始めと終わりは円環のような関係になっていて、「小説についての小説」というメタフィクション要素も含んでいるのが特徴です。

著者
プルースト
出版日
2010-11-17

 

この長い物語は、プルーストの分身ともいわれている語り手が、ある日紅茶に浸した一片のマドレーヌを口にして、幼少期の記憶が蘇ってくるところから始まります。これは『失われた時を求めて』におけるもっとも有名なシーンで、このように自分の意志とは関係なく蘇るものを「無意志的記憶」というんだとか。

人間の記憶、意識、深層心理にスポットをあてて物語を展開していくのは、プルーストならではの手法だといえるでしょう。

読み切るのに一筋縄ではいかない作品ですが、それだけに忘れられない濃い読書体験になるはずです。

『失われた時を求めて』の翻訳者が解説『プルーストを読む』

 

『失われた時を求めて』は、とても難解で奥深い小説です。「1度読んだけれど理解できないところがある」「これから読もうと思っているけど読解の手引きがほしい」などと思っている方もいるでしょう。

そんな方におすすめなのが本書です。作者の鈴木道彦はフランス文学者で、1992年には『失われた時を求めて』の翻訳も手がけています。

著者
鈴木 道彦
出版日
2002-12-17

 

『失われた時を求めて』を深く読み込むにあたって欠かせない知識となる、パリの歴史や文化、当時の社会情勢について詳しく解説しながら、物語を紹介していく構成。長大な作品の全体像を俯瞰できるだけでなく、面白さを教えてくれるのが魅力です。

スノビズムや同性愛、芸術論など作中で語られるテーマについても触れていて、後の世界の文学史にどのような影響を与えていったのかを知ることができます。

初心者が読んでも研究者が読んでも満足できる一冊です。

エッセイ風の解説が読みやすい『プルースト 読書の喜び』

 

『失われた時を求めて』を読解するための足掛かりになる作品。作者の保苅瑞穂はフランス文学者で、本書以外にも『プルースト-印象と隠喩』『プルースト-夢の方法』などの著作を数多く発表している研究者です。

著者
保苅 瑞穂
出版日
2010-12-09

 

「紅茶とマドレーヌ」や「海と娘と薔薇」「祖母の死」など『失われた時を求めて』内の有名なエピソードをひとつひとつ丁寧に読み解くような形で、エッセイ風に解説しています。

私たちがひとりで読むだけでは見過ごしてしまいがちな、細かい要素に触れているのもポイントです。

極限状態で語られる文学の本質『収容所のプルースト』

 

『失われた時を求めて』に関する他の作品と比べても一線を画す強烈なインパクトを放っている本書。作者のジョゼフ・チャプスキは、ナチスとソ連による「ポーランド侵攻」の際に強制収容所に連行され、零下40度という極寒と厳しい監視のもとに置かれながら、『失われた時を求めて』の講義を始めました。

著者
ジョゼフ チャプスキ
出版日
2018-01-27

 

当然ながら収容所にプルーストの本があるわけはなく、作者は自分の記憶だけを頼りに『失われた時を求めて』の物語を語ったそう。このエピソードだけでも読み込みの深さがうかがえます。

収容所の仲間たちは、厳しい労働を終えた後にもかかわらず、自分たちの現実とはかけ離れていたプルーストの講義に強い関心を寄せていました。明日を生きれるかもわからない極限状態なのに、なぜチャプスキはプルーストを語ったのか……そこに、文学の本質があるのです。

『失われた時を求めて』を未読の人が読んでも楽しめる一冊。入門書としてもおすすめです。

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