親の再婚で突然家族が増えて、しかもいきなり2人きり……!?『新米姉妹のふたりごはん』は、親の再婚により、同い年の女子高生が姉妹になったところから始まる日常を描いた物語。たどたどしくも、しっかり築かれる姉妹の絆と、おいしい料理が満載のグルメ漫画です。姉妹になっていく彼女たちの姿に癒される本作は、2019年にテレビドラマ化が予定されている本作の魅力を、ネタバレしながら紹介していきます。
『新米姉妹のふたりごはん』は、柊ゆたか(ひいらぎゆたか)の漫画作品。2019年9月現在、KADOKAWAの「月刊コミック電撃大王」で連載中です。
本作の主人公は、天真爛漫な性格の「サチ」と、内向的で真面目な「あやり」。両親が再婚したことにより、同じ年齢なのに「姉妹」になってしまった彼女たちの日常が描かれます。
そんな状況のなか、引っ越しの片づけが終わるよりも前に、両親は世界一周旅行へ……。サチとあやりは打ち解けることができず、気まずいまま同居生活がスタートしてしまいます。
- 著者
- 柊ゆたか
- 出版日
- 2015-12-18
眼光鋭く、表情の変わらないあやり。サチはどう接していいのかわからず、ろくに会話もできないままです。悩んでいたところに、スペインにいた両親から宅配便が届きます。
中に入っていたのは、生ハムの原木。今までの無表情が一変し、目を輝かせたあやりは、生ハムをカット。サチが購入していたバゲットを使って、料理を仕上げてしまいます。
じつは、あやりは「緊張すると人相が悪くなる」という体質。料理をきっかけに打ち解けた2人は、なりたての「新米姉妹」として、新たなスタートを切るのでした。1話完結型で、1品以上の料理が登場し、料理を通じてサチとあやりは姉妹らしくなっていきます。
ちょっと不器用な姉妹関係と、おいしそうな料理が魅力の本作。テレビ東京系で、2019年10月11日よりドラマ化されることが発表されました。サチ役は女優・山田杏奈(やまだあんな)、あやり役を大友花恋(おおともかれん)が演じます。
柊ゆたかは、漫画家・イラストレーターとして活動しています。小学生のころにイラストレーターを志し、自身のホームページ上にイラストを公開したところ、編集者にスカウトされ漫画家となりました。
代表作は、普通の女子高生を夢見る「プロの殺し屋の少女」を描いた、ほのぼのコメディ『Good night! Angel』。また、人気ゲーム『艦隊これくしょん』のアンソロジーにも作品を発表しています。
- 著者
- 柊 ゆたか
- 出版日
- 2012-07-26
柊ゆたかの作品の特徴は、可愛らしい女の子たち。また絵だけではなく、ギャップのあるキャラクター設定がとても魅力的です。
作品の世界観は殺伐としたものではなく、ほのぼのとした温かいもの。葛藤や衝突らしいものはあっても、理不尽なことは起こらないので、ストレスなく物語を楽しむことができます。
サチとあやりは、両親の再婚により突然姉妹となった「新米姉妹」です。同じ学年ですが、サチのほうがお姉さんということになっており、打ち解けたあやりも「姉さん」と慕っています。
サチはあまり人見知りをしない性格ですが、あやりはとても内気な性格。そのうえ、緊張すると表情がこわばり、眼光が鋭くなってしまいます。
気まずい関係でしたが、料理をきっかけに誤解が解消され、少しずつ打ち解けるように。メッセージアプリで連絡を取りあって、一緒に出掛けたり料理をしたりと、2人で過ごす時間が長くなっていきます。
サチはお姉さんだから、と姉らしくしようと奮闘します。一方、あやりもサチを気遣って料理を作るなど、お互いを気にかけている姿をみると、ついニヤニヤしてしまうでしょう。
最初はハラハラさせられますが、一緒に生活しているうちに家族らしくなっていく、サチとあやり。性格も趣味も違う2人でしたが、だんだんと絆が深まっていく様子にほっこりとします。
本作の大きな魅力は、ほっこりとした温かい世界観です。まったく面識のなかった女子高生が、家族になっていく過程を描いているのですが、10代といえば思春期真っただ中。
言いようのない衝動を抱き、他者に対して攻撃的になったり、反抗的な態度になったりすることも少なくありません。
まして両親の再婚となると、家庭環境が大きく変わってしまう出来事。繊細な10代の心には、大きな期待と不安が渦巻いていることでしょう。
しかし、情緒不安定になることはあっても、相手に対してつらく当たるという場面は、本作には一切登場しません。相手を理解しようとする、そんな気遣いにあふれています。
サチもあやりも、新しくできた家族に対して、「相手が喜ぶことをしたい」という想いを抱えています。そう考えても、言葉にして実行するのは難しいもの。
想いが空回りしてしまうこともありますが、行動に移して、言葉にすることで伝わるものもあるのです。相手を気遣う気持ちにあふれているからこそ、姉妹を取り巻く空気はとても温かくなります。
姉妹を中心とした、ほっこりとした世界観に読者も癒されることでしょう。
新米姉妹の絆を深める要素であり、本作のもうひとつの大きな魅力が料理です。
あやりは料理好きなので、1話につき1品以上の料理が披露されます。両親が海外旅行中ということもあり、序盤はヨーロッパの料理などが多くなっていますが、クレープなど手軽にできる料理も登場します。
本作の料理描写には、柊ゆたかのこだわりとして、登場する料理には2つのルールがあるようです。「できない料理は描かない」「食べたときに、がっかりする料理は載せない」とのこと。毎回、作者自身と担当編集者で、料理を作ってから描いているそうです。
生ハムの原木などは実際にもらったことがあり、そのときの体験がもとになって描かれています。実際に料理を作り、食べているからこそ、キャラクターの反応も自然で、思わず惹きつけられてしまうのでしょう。
コミックスにはレシピが収録されており、サチやあやりが食べた味を再現し、実際に楽しめるのも魅力のひとつ。 また、レシピとあわせて掲載されているコラムが本格的です。
料理漫画研究家の杉村啓(すぎむらけい)が担当していて、料理の歴史や日本でどのように食べられてきたかという、豆知識的な情報が満載。料理の背景から知ることができます。
料理を通じて、少しずつ打ち解けていくサチとあやり。
サチの親友・絵梨との関係や、父の留守が多く寂しい思いをした幼いころの話。また、あやりの叔母や亡き父との思い出など、家族だからこそ踏み込めるデリケートな話題も登場します。ギクシャクした関係から、本当の姉妹以上に仲良くなっていくのです。
そして、姉妹になってから半年が経ち、高校2年生に進級します。絵梨と料理を作ったり、新しく友達になった篠田さんがやってきたりと、姉妹の周辺はとても賑やかに。
あやりは、雨の日に亡くなった父のことを思い出し、落ち込みそうになる気分を振りきって、サチのために料理を作ろうと奮起するのでした。
- 著者
- 柊 ゆたか
- 出版日
- 2019-01-25
最大の見所は、2人暮らしだった姉妹のもとへ、両親が一時帰国するというエピソード。
2人だけではなく、再婚した両親を含めた「家族の形」を、はじめて目にすることができます。両親も驚くほど仲がよいサチとあやり、そして家族4人で食卓を囲む姿に心が和むでしょう。
ぎこちないところから始まった関係ですが、より家族らしい姿を見られるのが6巻です。
ただし、触れられたくない部分も……。亡くした家族のエピソードは、少しずつ明らかにされていきます。これからもっといろいろな話をして、より家族らしくなっていくのだろう、そう予感させてくれるものです。
おいしい料理と新米姉妹の可愛い姿が満載の本作。抜群の癒し効果を持っていますが、とにかくお腹がすくという作品でもあります。ドラマでは、姉妹の作る料理が実際に再現されるのも楽しみのひとつ。飯テロの予感がバシバシしていますが、仲良し姉妹とおいしい料理、存分に堪能しましょう。