夜の世界に縁のなかった少女は、女同士の戦いを経て、美しく変身する! 店同士から代表を決め、キャバ嬢の頂点を決めるグランプリの様子を描く『嬢王』。お色気も戦いの火花も見所満点なストーリーです。 この記事では本作の魅力を結末までご紹介。下のボタンからダウンロードできるスマホアプリで読むこともできます。
藤崎彩は大学生で、これまで何不自由なく過ごしてきました。しかしある日突然、父が事業に失敗し、1億5千万円の借金を背負ってしまいます。さらに彼は強くショックを受けたこともあり、病に倒れて入院してしまうのです。
返済の目処も経たず家族でどうしようかと途方に暮れていたところ、彩は「Q-1グランプリ」の話題を聞きます。年間No.1キャバ嬢に1億円の賞金を与えるというこのイベント。これまで夜の世界にまったく縁がなかった彩ですが、賞金を手にして家族を救うため、そこに飛び込みます。
舞台は日本一のキャバクラ街といわれている六本木。彩と同じくNo.1を目指すキャバ嬢同士の戦いがくり広げられます……!
- 著者
- 紅林 直
- 出版日
- 2005-03-18
作者の倉科遼はキャバ嬢をはじめとして、夜の世界を舞台にした作品を多く手がけてきました。これまでキャバ嬢の世界を知らなかった人も知る機会となる分かりやすい作品です。
女同士の戦いというとスリルもありますが、やりがいや友情も感じられる、読みごたえがある作品です。
また、本作はドラマ化もされ、2005年に放送されました。2009年には、第2シリーズ、2010年には第3シリーズも作成されました。
第1部では北川弘美、第2、3部には原幹恵が主役を務めています。深夜の時間帯だったため、キャストにAV女優を多数起用しているのも特徴です。
- 著者
- 出版日
さきほども少しご説明しましたが、原作者である倉科遼は、夜の世界を舞台にした作品を多く手がけてきました。ネオン劇画の開祖ともいわれている、ベテラン作家です。1971年、「司敬」名義で漫画家デビューし、その後青年誌を中心に活動しました。
しかししだいに行き詰まりを感じ、現在のペンネームに改名。漫画原作者として再出発します。
そして和気一作とタッグを組んだ『悪女の鑑』シリーズで原作者として花を咲かせます。本作の他にも『女帝シリーズ』『夜王』や本作品と、ヒット作を次々と生み出しました。
彼自身も荒波のなか生きてきたことが活かされた、リアルで、力強いエネルギーを感じられる夜の世界を覗けることが魅力です。
夜の世界を舞台にした本作ですが、主人公の考えがぶれないのが本作の魅力です。
水商売で働くきっかけはさまざまですが、キャストはすでに体験を済ませていることがほとんどではないでしょうか。ある程度プライベートでも男性ウケしてきた女性だから足を踏み入れることもできるという面があるでしょう。
- 著者
- 紅林 直
- 出版日
- 2005-06-17
しかし彩はお嬢様で、初々しさを感じられる人物。さらに同じ大学の付き合っている男性はいるのですが、まだ体を許しておらず、処女なのです。
夜の世界にはまったく縁がなかった彼女は、男性の夢をかき立てます。実際、彩を応援したいという男性客は、彼女の初々しく、まっすぐな様子に惚れこんで支援してくれます。
彩は最初に入店した店のオーナー達也に抱かれる夢を見ますが、実際に行為に至ることはありません。他のキャラの激しいシーンは多く出てきますが、主人公だけは当初の価値観から変わらず、清いままでいるのが本作をただの暗い物語にしていない理由です。
本作はQ-1の勝敗の行方、それにいたるまでの女同士のバトルが見所です。
夜の世界の一般的なイメージどおり、お互いを蹴落としたり、策を練ってきたりするライバルも現れます。彩は途中何度もQ-1からの脱落危機にあうものの、ギリギリで踏みとどまって進んでいきます。
- 著者
- 紅林 直
- 出版日
- 2005-10-19
しかしライバルたちもただ憎い相手というだけでなく、事情があったり、本当の自分を押し殺して仮面を被ったりしているのです。
そんななかでも自分を変えずに生きていく彩の強い意志は、周囲を変化させ、対戦相手も味方になっていきます。周りは全員敵という厳しい世界の面もありますが、裸の心のままでぶつかる彩の姿は、作中のキャラだけでなく、読者をも前向きにさせてくれます。
本作は、自分の魅力だけを売るという、いわば裸一貫で勝負しているキャラたちならではの名言がたくさんあります。ここでいくつかご紹介しましょう。
まずはこちら。
「私達は売上を競っているんじゃない…
夢を競い合ってるんです」
(『嬢王』5巻より引用)
Q-1を陳腐なイベントといわれ、さらにそれに参加したキャバ嬢たちもイベントの食い物にされているのだと言われた時に、彩が返したセリフです。お金が目的で始めた彼女ですが、働くうちに仕事の本質に気づき、キャスト一人ひとりが夢を持って、Q-1に挑んでいることをしっかりと伝える姿がかっこいい名言です。
- 著者
- 倉科 遼
- 出版日
- 2006-04-19
つづいてはこちら。
「明日に悔いが残るような今日を過ごしたらダメ…
昨日 苦労した自分を裏切るような今日を過ごしたらダメ…」
(『嬢王』12巻より引用)
友情、仕事、父の容体など、さまざまな心配事を抱えてパンクしそうになっていた彩。しかしお父さんの主治医に1人でいろいろなことを抱え込んではダメだと励まされ、今できることをひとつひとつやっていこうと考え直します。
つらい時でもヤケにならず、これまで頑張ってきた日々を裏切らないよう、前を向いていくと彼女の言葉に勇気づけられます。
最後に、恋愛展開も見所の本作の名言をご紹介しましょう。
「店の女心配するなんて…
今まで一度もなかったな…」
(『嬢王』2巻より引用)
もともと達也はキャストを商品扱いするような人物でした。しかし無理矢理にキャストを抱くという噂のある客・大神のもとへ彩が行ったと知り、心配で迎えにいくのでした。
彩もまた、彼に惹かれるところがあり、2人の恋愛展開からも目が離せません!
Q-1も大詰め最終決戦です!彩が上司としても、男としても慕っていた達也はレジェンド・グループの総帥になるため、もともといたピアニッシモではなく、プレシャスの店長になることに。そして彩ではなく、その店の代表である静香を嬢王にすると宣言しましたが……!?
静香はもともと彩をこの世界に連れてきてくれた恩人であり、親友。そんな彼女と、下ッている達也と戦わなくてはいけないとなり、彩は悩みます。
さらに父の入院にも心配があり、目の目にいくつもの壁が立ちはだかってしまうのです。
しかし今までやってきたことが無駄にならないようにと、ひとつずつの問題に彩は立ち向かっていきます。果たして、嬢王は誰になるのでしょうか?
- 著者
- 紅林 直
- 出版日
- 2008-03-19
12巻の見所は、彩と達也の恋愛模様、そしてグランプリの勝敗です。
実は達也も彩もお互い両想いなのですが、達也は平気で仕事のために他の女を抱くというような男。少しずつ彩との出会いで変化していますが、果たしてその思いは通じるのでしょうか?
また、気になるのはNo.1の行方。ドラマ版では賞金5000万になっていましたが、漫画では1億円という約2倍の金額でやりとりされていることから、さらにグランプリ勝者への期待が高まります。
怒涛の展開で、差のある静香を追いかけていた彩の姿が展開され、最終回でついに勝敗が決まります。その瞬間はご自身でごらんいただくとして、その後の結末はまた新たな始まりを感じさせるものです。
ストーリーのあともキャラたちの世界は続いていくのだろうと思わされる内容で、ここまで読んできたファンとしては感慨深いものです。
もともと夜の世界にまったく縁がなかった主人公が、夜の世界で一歩ずつ着実に嬢王としての才能を開花していくさまは、見ごたえたっぷり。頑張っている人はもちろん、自分の才能に自信がない、新たな世界へ足を踏み出す勇気が持てない読者の背中を後押ししてくれる作品です。