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5分でわかる浮世草子!特徴や、井原西鶴の代表作などをわかりやすく解説!

更新:2020.11.26 作成:2019.10.1

戦国の世が終わり、泰平の世を迎えた江戸時代には、さまざまな文化が花開きました。この記事では、そのなかでも「浮世草子」に焦点を当て、特徴や内容、第一人者である井原西鶴の作品などをわかりやすく解説していきます。

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浮世草子とは。時代、内容の特徴、浮世絵や仮名草子との違いなどを簡単に解説

江戸時代の元禄期に、大阪を中心とする上方で流行した文芸作品のひとつに「浮世草子」があります。

1682年に出版された井原西鶴の『好色一代男』を皮切りに、約100年にわたって西沢一風、江島其磧、多田南嶺などの作者が活躍しました。

浮世草子の「浮世」には「世間」という意味があります。もともとは「憂き世」と書き、平安時代には仏教の末法思想と相まって「辛く儚い世の中」という意味で用いられていました。しかし江戸時代になって世の中が平和になり、生活にゆとりが生まれると、人々のあいだに享楽的な考えが生まれるようになり、肯定的な意味で用いられるようになったのです。

当時の大阪は、「天下の台所」と呼ばれる経済の中心地。そんな大阪を含む上方では、豊かな経済力をもつ町人たちが担い手となって「元禄文化」が花開きます。浮世草子は、「浮世絵」や「浄瑠璃」と並んで元禄文化を代表するジャンルとなりました。

浮世草子と浮世絵は、どちらも町人の生活や風俗を中心に描いたもの。木版印刷で大量生産され、販売されました。両者は小説なのか絵なのかという形式の違いがあり、浮世草子の挿絵として浮世絵が描かれる場合も多くありました。

ちなみに江戸時代初期の文芸には、「仮名草子」と呼ばれるものもあります。これは庶民でも読みやすいように仮名もしくは仮名まじり文で書かれたもの。浅井了意、鈴木正三、烏丸光広などの知識人によって書かれました。

浮世草子のジャンルは、その内容によって「好色物」「町人物」「武家物」に分けられます。一方で仮名草子のジャンルは幅広く、近世文学における物語や散文作品の総称です。

浮世草子の代表的作者、井原西鶴はどんな人?

浮世草子の代表的な作者として知られる井原西鶴は、1642年頃に現在の和歌山県に生まれ、1693年に亡くなっています。『好色一代男』を出版したのが1682年なので、浮世草子の作者として活動していたのは晩年の10年程です。

もともとは俳諧師として活躍していて、15歳頃から談林派を代表する人物として名を馳せました。一昼夜の間に発句を作る数を競う「矢数俳諧」の創始者でもあり、2万3500句という記録も残しています。作風が奇抜だったため、「阿蘭陀流(おらんだりゅう)」と揶揄されることもありました。

作家に転身した後は、『諸艶大鑑』『好色五人女』などの「好色物」のジャンルを中心に、『日本永代蔵』などの「町人物」や、『武道伝来記』などの「武家物」の作品も手掛けています。また浄瑠璃『暦』を作るなど、人形浄瑠璃作家としても活躍しました。

死後も『西鶴置土産』『西鶴織留』『西鶴俗つれづれ』『西鶴名残の友』などの遺稿集がたびたび出版される人気っぷり。しかし江戸時代の末期には、一時その存在は忘れられます。

明治時代になって井原西鶴の再評価に尽力したのが、作家で画家の淡島寒月です。淡島寒月は、幸田露伴や尾崎紅葉に井原西鶴を紹介し、彼らの手によって、当時二葉亭四迷らによって広められていた「言文一致体」とは異なる、文語文と日常的俗語を混ぜた「雅俗折衷文体」が生み出されることになります。

井原西鶴の浮世草子『好色一代男』のあらすじと魅力を紹介

井原西鶴の浮世草子作者としての処女作『好色一代男』。8巻8冊で構成され、大阪の池田屋と江戸の奈良屋から同時に刊行されました。大阪版の挿絵は、浮世絵師の蒔絵師もしくは井原西鶴自身。江戸版の挿絵は浮世絵師の菱川師宣が担当しています。

世之介という男性の、好色で自由な人生を通じ、庶民にとって理想の生き方を描いていると人気を博しました。

『源氏物語』が54巻から成っているのにならい、世之介の7歳から60歳までの54年間を切り取っているのが特徴。ひとつひとつのエピソードは短いものの、全体ではかなりの長編になっています。

『好色一代男』の1巻から2巻は、7歳から20歳。性を知ってから父親に勘当されるまでの様子です。3巻と4巻では21歳から34歳までの、諸国を放浪しながら色道修行に励むさまが描かれています。

5巻以降は、父親の遺産2万5000両を譲渡されて裕福になった世之介が、各地の遊里を訪れて有名な遊女と戯れるさまが記され、最後は仲間たちとともに、海の彼方にあるという女だらけの島「女護島」を目指して船出したきり消息が途絶える、という結末。非常に官能的な内容です。

また当時は庶民の間でも男色が一般的だったため、世之介が交わった人数は女性3742人に対し、男性も725人いたとされています。

井原西鶴の浮世草子『日本永代蔵』のあらすじと魅力を紹介

『日本永代蔵』は、1688年に刊行された井原西鶴の作品。「町人物」ジャンルの代表作といわれています。6巻30章の短編で構成されていて、副題には仮名草子の『長者教』になぞらえて「大福新長者教」と付けられました。

江戸時代を通じて売れ続けたロングセラー作品で、その軽妙な文体は太宰治にも影響を与えたとされています。

あらすじは、「お金で買えないものは命だけ」という考えにもとづき、金持ちはどのようにして金持ちになったのか、どのようにすれば自分も金持ちになれるのか、という蓄財の指南書といえるもの。現代におけるビジネス書や自己啓発本と考えるとよいでしょう。

元禄文化が花開いた時代は、経済が急激に発展した時期です。越後屋の三井高利が掛け値をやめて札の値段とおりに現金で商売をする「現金掛け値なし」を始め、紀伊国屋文左衛門が紀州みかんや塩鮭で財を築くなど、先見の明がある人は新しいビジネスに挑戦していました。その一方で、遊びほうけて破産する者もあとを絶たなかった時代です。

『日本永代蔵』には、真面目過ぎる商人やドラ息子、度を越したケチなど個性豊かな人物が登場し、浮世を生きるドラマが描かれています。

元禄文化の魅力が詰まった一冊

著者
守屋 毅
出版日
2011-02-10

浮世草子の井原西鶴、浮世絵の菱川師宣、人形浄瑠璃の近松門左衛門、俳諧の松尾芭蕉などを輩出した元禄文化について記した作品。生産、消費とは別の第三の領域に「遊び」を定義し、「遊芸」「悪所」「芝居」の3つに分けて、一体どのような文化だったのかを解き明かしていきます。

元禄文化の特徴は、その主な担い手が「町人」であるという点です。もともと上流階級のものだった「遊び」が、庶民のものとして花開いたといえるでしょう。その背景には、浮世草子や浮世絵が木版印刷の普及によって広まったように、技術の進歩がありました。

軽妙な文体で読みやすく、元禄文化のエッセンスを知るのに最適の一冊でしょう。

浮世草子をはじめ江戸時代の文化を網羅した一冊

著者
竹内 誠
出版日
2010-01-12

江戸時代の文化というと、ここまで説明してきたように浮世草子や浮世絵、人形浄瑠璃など上方の町人文化が思い浮かびますが、本書では人々の「暮らしそのもの」を取りあげています。

服装、食事、住居、遊興、芸事、絵画、工芸、出版、教育、宗教など、テーマはさまざま。ひとつひとつを簡潔に、わかりやすく解説してくれているので、江戸時代の人々の暮らしぶりが生き生きと浮かんでくるでしょう。

外食産業や宝くじなど、現代に通じるものも数多くあることに驚くはず。まずは興味のあるテーマから読んでみてください。