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「ネシャン・サーガ」シリーズが面白い!各巻の魅力やラルフ・イーザウを紹介

更新:2020.12.1 作成:2019.10.17

世界中の子どもたちを魅了するファンタジー小説「ネシャン・サーガ」シリーズ。2人の少年を主人公にした、壮大な冒険譚です。この記事では、作者のラルフ・イーザウや登場人物、各巻のあらすじと魅力を紹介していきます。

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「ネシャン・サーガ」シリーズとは。概要や作者のラルフ・イーザウを紹介

1995年に第1巻が刊行されて以来、その世界観に多くの子どもたちが魅了されてきた「ネシャン・サーガ」シリーズ。ドイツの作家、ラルフ・イーザウの作品です。

イーザウは1956年生まれ、ベルリン出身。コンピュータ会社でシステムエンジニアをしていましたが、自身の作品を同じくドイツ人作家のミヒャエル・エンデに見せたことがきっかけで、作家デビューをしました。1997年にはドイツでもっとも権威のある児童文学賞「ブックステフーダー賞」を受賞しています。

「ネシャン・サーガ」シリーズはファンタジー小説で、現実世界の地球と、神によって創造されたネシャンの世界が同時に進行する物語。根底にはキリスト教の宗教観が流れています。

主人公は、14歳の少年ヨナタン。父なる神イェーヴォーの使者だけが持つことを許された杖「ハシェベト」を発見し、数々の危険をくぐり抜けながら「英知の庭(ガン・ミシュパト)」へ杖を運んでいく冒険譚です。

もうひとりの主人公は、もうすぐ14歳になる、スコットランドに暮らす少年ジョナサン。幼い頃に病気になってから車椅子で生活しています。

健康でたくましく成長するヨナタンと、華奢で病弱なジョナサンの2人の物語が交錯していきます。

「ネシャン・サーガ」シリーズの主な登場人物を紹介

ヨナタン

ネシャンの世界の主人公。幼いころに海から流れ着き、優しい養父に育てられた14歳の少年です。散歩に出た森で不思議な杖を発見し、運命が大きく動き出します。

ジョナサン・ジェイボック

現実世界の主人公。あと数ヶ月で14歳になる少年です。幼い頃にかかった重い病気のため、車椅子で生活しています。とても聡明で、豊かな感受性と神への篤い信仰心の持ち主です。

ヨミ

ヨナタンとともに旅をすることになる少年。背が高く、痩せています。ネシャンの南に位置するテマナー国の軍に襲撃され、両親と生き別れになりました。

ギンバール

ヨナタンとともに旅をすることになる青年。背が低く、がっしりした体つきです。海賊につかまった両親がアジトで産んだため、海賊として育てられました。当時のさまざまな経験を活かして、ヨナタン一行を助けます。

ゼトア

ネシャンの南部にある、テマナー国軍の将校です。命令に従ってヨナタンたちの旅を妨害してきますが、物語が進むにつれてしだいに自分の行動に疑問を抱くようになります。

「ネシャン・サーガ」シリーズ『ヨナタンと伝説の杖』のあらすじと魅力を紹介

すべての神イェーヴォーの末子であるメレヒ=アレスが創造した世界、ネシャン。ここでは、幼いころに海から流れ着き、漁師のナヴランに育てられたヨナタンという少年が住んでいました。

ある日ヨナタンは、散歩に出かけた森で、青い光を発する謎めいた杖を発見します。「ハシェベト」というその杖に触れることができるのは、イェーヴォーの使者か、イェーヴォーに選ばれた者のみ。「ハシェベト」はずっと昔に行方不明になっていて、見つかったらすぐに「英知の庭」に運ばなければなりません。ヨナタンはその運び手に選ばれたのでした。

一方その頃、スコットランドにはジョナサンという車椅子の少年がいました。彼は病気で歩けなくなったその日から、会ったことのないヨナタンの夢を見るようになります。

不思議な夢を見るようになって数年が経ったある日から、夢の中で数日が経つと、現実でも同じだけの日数が記憶から抜け落ちてしまうようになりました。ジョナサンはヨナタンの夢を見続け、ついには昏睡状態に陥ってしまうのです。

著者
ラルフ イーザウ
出版日

1995年にドイツで発表された「ネシャン・サーガ」シリーズの第1巻。日本では2000年に刊行されています。

物語は、ヨナタンとジョナサンそれぞれの視点から交互に描かれる構成です。特筆すべきは、情景描写のすばらしさ。森の様子などが細部まで描かれ、知らないはずのネシャンの世界に迷い込んでしまったかのような感覚を得られます。

またヨナタンが、仲間に助けられながら困難を乗り越え、成長していく姿は王道ファンタジーそのもの。子どもが間違いなく夢中になれるストーリーでしょう。

しかしヨナタンは夢の中だけの人物なのか、それともヨナタンとジョナサンがいる世界は繋がっているのか……まだまだわからないことが多い状態。多くの謎が提示され、物語はまだ始まったばかりなのだと感じさせられる第1巻です。

「ネシャン・サーガ」シリーズ『第七代裁き司の謎』のあらすじと魅力を紹介

前作『ヨナタンと伝説の杖』に引き続き、ヨナタンはネシャンの世界で冒険を続けています。どうにか禁断の地をくぐり抜け、「英知の庭」を目指しますが、またしても足止めを食らうことになってしまいました。

一方でスコットランドにいるジョナサンは、夢を見る時間が長くなり、身体も衰えてきました。彼が生きるための力は、夢のなかに存在しているヨナタンに吸収されていきます。

ヨナタンとジョナサンは、一体どのような関係なのでしょうか。前作から続く「ネシャン・サーガ」シリーズ最大の謎が、本作で明かされます。

著者
ラルフ・イーザウ
出版日

日本では2001年に刊行された「ネシャン・サーガ」シリーズの第2巻。登場人物が増え、養父と息子、師匠と弟子など、成長する者と見守る者という関係が物語に深みを与えています。

特に注目したいのが、ヨナタンとともに旅をすることになる元海賊の青年ギンバール。彼の臨機応変な対応が、ヨナタンたちを救うことになるのです。

またネシャンの世界に現れる不思議な生き物も魅力的。緑色に光る巨大な島であり生き物でもあるガラルが、ヨナタンと心で会話をするシーンなどは驚きでしょう。

さて、長く過酷なヨナタンの旅は、本作で終わりを迎えることになります。「ハシェベト」を本来の持ち主へ届けるという使命は達成されました。そしてネシャンの世界と現実世界の繋がりがわかり、ジョナサンはある決断をするのです。

「ネシャン・サーガ」シリーズ『裁き司最後の戦い』のあらすじと魅力を紹介

「英知の庭」に辿り着いてから3年。ネシャンの南に位置するテマナー国が人々に闇をもたらします。ヨナタンは、テマナーの王バール=ハッザトを倒すために、ネシャン各地にある6つの「目」を破壊する旅に出ることになりました。

ようやくハッザトの本拠地に辿り着いた一行ですが、またしてもそこに、彼らを執拗に追い続ける将校、ゼトアがやって来ます。

著者
ラルフ・イーザウ
出版日

2001年に日本で刊行された「ネシャン・サーガ」シリーズの第3巻です。

「ネシャン・サーガ」シリーズの魅力は、主人公が決して完璧ではないところ。ひとりで何でもできるスーパーヒーローではありません。これまでもヨナタンは、迷ったり間違えたりしてきましたが、誰かが手を差し伸べてくれるからこそ、旅を続けることができたのです。

敵を倒すために力を行使するのはヨナタンですが、力そのものはヨナタンではなくイェーヴォーに属しています。自分の力だと考えるのは傲慢だというキリスト教の考え方が表れているといえるでしょう。

ここまで続いた「ネシャン・サーガ」シリーズのラストは、オールキャストが復活して大団円に。壮大な物語をぜひ最後まで読んでみてください。