人間、エルフ、ドワーフたちと剣と魔法が交錯する、壮大なファンタジー小説が、『ウィッチャー』。全世界で大ヒットし、日本でも話題沸騰のゲームの原作です。Netflixでのドラマ化も決定しました。 魔法や霊薬で肉体を強化し魔物を狩る最強の魔法剣士「ウィッチャー」であるゲラルトと、ある秘密を持った少女シリが、否応なしに過酷な運命に巻き込まれていく様子を描きます。 この記事ではそんな『ウィッチャー』の見所を全巻ご紹介!ゲームとの関係性や時系列などについても解説します。
スラブ神話をモチーフにした物語で構成されている独特の世界観が魅力の本作品。ポーランドの作家アンドレイ・サプコフスキによる中世ダークファンタジーで全世界で大ヒットしたゲーム「ウィッチャー」1~3の原作小説になります。日本でもゲームの大ヒットを受け、翻訳版小説が出版されています。
タイトルにもなっているウィッチャーとは怪物を狩るために魔法や薬によって肉体を遺伝子レベルで変化させた人間のこと。怪物や魔物から人々を守ることを生業としています。
この物語は、最強の腕っ節を持つ魔法剣士であるゲラルトが、戦で滅びたシントラ女王の孫娘シリと出会うところからはじまります。しかし否応なしに過酷な運命に巻き込まれていくシリ。ウィッチャーとしての師匠であり、父親のような存在にもなったゲラルトは彼女を助けるべく闘いの旅に出ます。
戦争、悲しみ、世の非情とともに、喜び、愛、友情が織り交ぜられた、壮大で重厚な人気沸騰の中世ファンタジーです。
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2017-08-24
また、本作品は、Netflixでドラマ化も決定。ファン待望の実写化が実現しました!主人公ゲラルト役には、映画『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』に出演していたヘンリー・カヴィル、物語のカギを握るシリ役には新進気鋭のフレイヤ・アーランが抜擢。
このほかにも魔法使いのイェネファー役には、テレビドラマを中心に活躍中のアーニャ・シャロトラ、といった実力派の面々がキャスティングされており、作品の注目度の高さがうかがえます。
まずは登場人物たちをご紹介していきましょう。
それぞれの信念があり、読むほどに引き込まれるキャラばかりなので、これ以外の人物もぜひご覧になってみてください。
小説版『ウィッチャー』全5巻は、ゲーム版の前日譚となっています。内容が被りネタバレすることはありませんので、これからゲームを購入しようと思っている方も安心して小説を読み進めてください!
順番どおりにゲームの前に小説を読破しておけば『ウィッチャー』の世界観をよりつかむことができます。逆にゲームをクリアした後に小説を読むこともおすすめです。ゲームではあまり語られていない過去の内容について新しい発見があることでしょう。
またゲームではゲラルドとシリの視点のみの展開でしたが、小説ではイェネファーや吟遊詩人のダンディリオンの視点からも描かれています。ゲラルドやシリ以外のファンの方には、特におすすめです。
魔法剣士であるゲラルトは、人里離れた秘密の砦で闘いを逃れ、少女シリをかくまっていました。彼女は今は滅ぼされてしまったシントラ国の女王の孫娘です。
シリを襲うであろうこれからの運命に備えて、彼は出来る限りの力を備えさせてあげたいと思い、師匠としてさまざまなことを教えます。ところが、実は彼女には秘めた力がありました。突然彼女を襲うトランス状態、そして不思議な予言……。
ゲラルトは彼女を友人のトリスとともにメリテレ寺院へ向かわせます。その途中シリとトリスは盗賊集団に遭遇するなどのハプニングに襲われて……。
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2017-08-24
1巻の見どころはなんといっても、ゲラルトのシリへの愛情にあります。ちょっと抜けていて色好みな私生活であるにもかかわらず、ひとたび剣を握ると別人になる彼は、自分のもてるものをすべて彼女に教えようとします。
彼女の境遇に心を痛めながらも、鍛錬は厳しくしていたゲラルト。並はずれた能力にふさわしい力を持たせ、これから待ち受けるであろう過酷な運命と闘う力を備えさせるのです。
また第1巻ということで、ウィッチャーの生活の様子は目新しく、読者を物語に引き込んできます。ウィッチャーは薬や魔術で肉体を強化し、人間から恐れられている異質な存在。さらにウィッチャーになるためは、とある儀式を通して子供ができなくなる体となるのですが、これは魔女も同じ。
予想以上に過酷な様子も描かれ、単なる特殊能力を使える人たちで終わっていないところが、本作をより厚い物語にしているのでしょう。
シリは、ゲラルトの恋人イェネファーに魔法を教わることになりました。そして強大な力を制御する術を身に付けるため、彼女とともに魔法学校のある島へと向かいます。
ところが魔法使いたちはそれどころではなく、帝国と北方諸国の争いに介入するための会議を行っていました。ゲラルトもこの島に訪れるのですが、魔法使いたちの策略に巻き込まれ、再び困難に巻き込まれていきます……。
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2017-08-24
2巻の見どころはタイトルにあるとおり、屈辱という試練です。1巻の内容が、砦での修行をとおし、ゲラルトの愛とシリの厳しい修練を描いた閉じられた内容だったのに対し、2巻は彼ら以外の思惑が渦巻いた謀略と闘いの嵐となります。
そのなかで最も困難な試練に直面するのは、やはりシリ。魔法使いたちの陰謀で極限の地へ飛ばされ、厳しい自然のなかをさまよったかと思えば、追っ手に襲われるなど、厳しい状況が続きます。そして辛くも逃げ出したかと思うと、果ては盗賊団の一人に身をやつすことになるのです。
しかし、これだけの試練にも関わらず、シリは前を向き進んでいきます。14歳の少女とは思えないしなやかな強さに胸を打たれる展開です。
また十数年を経て再会を果たしたイェネファーとゲラルトの恋の行方にも注目です。好色のゲラルトが愛を誓ったのは、果たしてどんな女性なのでしょう。
魔法使いたちの陰謀と、恋模様が交錯する、読みごたえたっぷりの巻です。
魔法使いたちの陰謀で地の果てに放り出されたシリは、盗賊団ネズミと行動をともにし「ファルカ」と名乗っていました。
一方ゲラルトは魔法集会で起こった謀反により、負傷しますが、木の精の力により回復。いなくなってしまったシリを探すべくニルフガードへ向かいます。
そして魔法使いの闘いに巻き込まれ、ヒスイの像にされたイェネファーは、魔法使いたちに秘密結社への入会をせまられていました。
2巻でそろった3人はバラバラになり、それぞれの試練に立ち向かいます……。
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2018-05-17
3巻の見所は仲間という存在の素晴らしさです。
シリを探す旅へ出ようとするゲラルトのもとには、ともに彼女を救おうとする仲間が自然と集まりました。窮地に陥って助け合うことはもちろん、愚痴を言い合ったり、ともに笑ったりできる仲間は、「ただそこにいる」というだけでも、素晴らしいもの。ゲラルトと仲間の掛け合いからは、そんな絆が感じられ、心が温まります。
人は一人で生まれ一人で死んでいきます。ですが仲間がいることで、人生が何倍も強く、楽しく、よりあたたかく深いものにもなるのも事実だということが感じられる内容です。
シリが一員となった盗賊団ネズミですが、エムヒル皇帝の命で彼女以外のメンバー全員が亡くなってしまします。一人逃げ延びた彼女も、何度となく襲撃を受け、瀕死の状態で気を失ってしまいました。
どうにか隠者ヴィソコダに介抱され、生き延びることができましたが、で4巻もシリの試練は続き、物語史上最も悲惨だといえる状況にまで至ります……。
一方ゲラルトはダンディリオン、レジス、カヒル、ミルヴァとともにシリを捜す旅を続けていました。イェネファーも無事で、シリを捜索していたのですが……。
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2019-01-10
4巻の見所の一つは、ゲラルトとイェネファーのシリへの思いです。2人はそれぞれに困難な立場にあっても、シリの捜索を諦めません。
ゲラルトにいたってはウィッチャーの責務を捨ててまでもシリを探す旅に出ます。無駄なだと忠告を受けても諦めず、シリの行方を捜し続けるのです。
またイェネファーも自分を犠牲にしてもゲラルトとシリのためにその身を尽くします。
愛する人を思う気持ち、どんなに大きな困難が阻もうとも、決して希望の火を消さない強い意志に心が打たれる展開です。
さらにシリの変化にも注目です。これまで他人に追われ、利用され、命を狙われ続けてきた彼女は、ひとときの自由を得たとき、自分を見つめ直します。そして自分のために闘う女ウィッチャーとしての覚悟が定まるのでした。
また、本巻ではシリの赤いバラの入れ墨の秘密がついに明かされます。物語でもカギとなるその設定に隠された事実とはいったい……?
ゲラルトがトゥサンで足止めをくらっているころ、シリは目的のツバメの塔へたどり着いていました。しかし彼女の血を狙うエルフたちにより囚われの身となってしまいます。
ところが、前巻で成長したシリは自らの力を信じ、脱出を図ります。
ついにシリーズ最終巻!結末まで怒涛の展開が待ち受けており、ゲラルトとシリ、そしてイェネファーの絶体絶命のピンチが幾度となく襲ってきます!
- 著者
- アンドレイ・サプコフスキ
- 出版日
- 2019-07-18
そんな最終5巻の見所のひとつは、タイトルにある「湖の貴婦人」です。実は貴婦人そのものが登場するわけではなく、この物語を伝承する存在として、それに近しい女性が2人現れるのです。
本巻では、ゲラルトやシリ達が伝説となった遙か後の時代を舞台に、貴婦人の回想が描かれます。さらにそれだけでなく、非常に多くの視点、世界、時期が切り替わりながら並行して進んでいくのです。
そんなカオスな展開を読み進めていくと、全ての運命には意味があったことが明らかになります。
亡国の王女の血を引くシリは、苦難の末にゲラルトやイェネファーと再会することができるのでしょうか。またシリの命を狙うエムヒル皇帝とシリはどのような関係にあるのでしょうか。
恨み、悲しみ、愛情、さまざまな思いが交錯する『ウィッチャー』の結末は、胸が痛む部分もあるものの、読後感がよく、心に残るものがあります。壮大な物語は最後をまとめるのが難しい部分もありますが、本作では今までの展開が美しくまとめられています。
具体的な結末の内容は、ぜひご自身でご覧くださいね。