ストーカーサスペンス漫画、『ストーカー行為がバレて人生終了男』。「ストーカーサスペンス」というと聞きなじみがない言葉ですが、当作品は主人公の大学生が、趣味のストーカーが原因で重大な事件に巻き込まれていく物語です。その名にふさわしく、ドラマチックで目の離せない展開の漫画です。 今回はそんな本作の見所を、ご紹介。ネタバレを含みますのでご注意ください。
本作はあらすじだけでもその面白さが伝わる作品です。まずはその内容をご紹介しましょう。ご存知の方は読み飛ばしも問題ありません。
歩数計とウォーキングシューズに身を包んだ影沼の趣味は、ストーカー。ウォーキングを装い美人の後をつけて住所を特定し、手作りの美人MAPなるものを作って個人的に楽しんでいるのでした。それ以上は何もしていないと自分に言い聞かせている彼に、罪の意識はさほどありませんでした。
もちろん彼女もおらず、冴えない毎日を送っていた彼ですが、人生逆転のチャンスが訪れます。それは、一流企業への内定。
さらに内定のお祝いを兼ねた友達との飲み会の帰りの電車で、タイプの美女を見つけます。そしてついつい「これが最後」と、あとをつけますが、その美女・海藤不二恵は影沼の存在に気付いていました。不二恵は以前からストーカーに悩まされており、警察に相談していたのです。
交番に連行されて人生終了したと思った影沼でしたが、本物のストーカーは別にいることが明らかに。無事釈放されたものの、不二恵に美人MAPを作っているという弱みを掴まれた影沼は、本物のストーカーを探すようお願いされてしまいます。
そうして彼はこっそり後をつけるのが得意という特技を生かし、不二恵のストーカーを排除していくのですが……。
作品の見所の前に、本作に登場するメインの登場人物をご紹介します。
影沼秀夫:中堅私立大学に通う4年生。就活をして内定を手に入れたところで、唯一の趣味であるストーカーによって人生を狂わされていきます。
どこにでもいそうな冴えない見た目で、感情をあまり表情に出さないタイプ。いつもどこか肩身の狭さを感じながら生きている彼に、感情移入して読めるという声も多いキャラです。
猪狩京香:第4巻から登場する、社会人となった影沼の美人上司で、仕事ができない影沼にも優しく接してくれる理解者。何者かに恨まれて嫌がらせを受けています。あることをきっかけに同僚の素行調査を影沼に依頼することになり、影沼を絶体絶命な状況に陥れていくのです。
海藤不二恵:影沼にストーカーされたことから知り合った美人で、かなりのS気質。元々ストーカーに悩んでいたので最初は影沼を罵倒します。間違いだと分かった後も、影沼の弱みを握りストーカー発見まで協力させますが、いつの間にか影沼を男として意識するようになっていきます。
この漫画の1番の面白さは、美人に振り回され続ける主人公の姿ではないでしょうか。
不二恵にストーカー行為をしたり、京香の部屋に上がり込んだりという自分の犯罪行為がきっかけとはいえ、美人にからっきし弱い影沼は、すぐにいいなりになってしまいます。
パッと見は優しそうな大学生で、情けなくて頼りないですが、人のためには一途に行動します。そこが憎めず、見守りたくなる主人公です。
時に、彼の見事な美女に翻弄されっぷりに爽快感を覚えつつも、彼の気持ちになり応援しながら読むことができます。
- 著者
- 芥瀬良 せら
- 出版日
- 2018-04-09
不二恵の真のストーカーは、彼女に対する好意からのストーキングではありませんでした。
そうとは知らない不二恵が、疑いの目をはじめに向けたのは元カレ。なかなか真相にたどり着けません。それだけでなく、ストーカーについて相談した相手にもストーカーされたり、真犯人なのか味方なのかわからない怪しい人物が次々に現れたりと、読み進めるほど彼女のストーカーの真犯人が分からず、登場人物とともに深みにはまってしまうでしょう。
4巻からは影沼が社会人となってからが描かれています。そしてここからの展開がどんどん危険で手に汗握るものになり、また違う面白さがあるのです。
新入社員となった影沼は周りを有名大学出身のエリートばかりに囲まれ、仕事もできず上司に嫌味を言われ続ける日々を送っていました。そこで出会う美人上司の猪狩京香は唯一の理解者ですが、彼女もまた嫌がらせに苦しんでいる人物だったのです。
第2部の社会人編は、このオフィスを舞台に事件が進行していきます。怪しい動きを見せるのは、女性人気のあるイケメン社員や影沼にパワハラしている上司など社内の人間ばかり。影沼は探偵ばりの尾行技術を駆使して、京香へのストーカーを見つけることができるのでしょうか。
前回のストーカー事件よりもさらにパワーアップしたサスペンス要素をお楽しみいただけます。不二恵とはうってかわって女神のように優しい京香との恋の行方にもご注目ください。
4巻では大企業であるZONYに就職したものの、仕事上の専門用語も覚えることができず、仕事も遅い影沼は辞めたいと思うようになりました。それを優しく励ましてくれたのが上司の京香です。
あとをつける行為をやめた影沼は、新しい趣味を見つけました。それは同僚のごみ箱の中身から、住所やどんな行動習慣があるのかという情報を収集しメモしていくというもの。これもギリギリの行為です……。
ある日、京香が仕事で必要なUSBを見つけた影沼は、これまでのゴミ収集で知った京香の家へ向かい、許可なく家に入ります。すぐに見つかってしまうのですが、ここで影沼は京香の悩みを知り、同僚の素行調査をはじめます。玉木・林・鹿田・塩見課長の4人が怪しい人物として浮かびあがり……。
- 著者
- 芥瀬良 せら
- 出版日
- 2019-08-08
5巻では、その4人の人物以外にも中西・原崎という社員が登場してきます。登場人物の言動が複雑にからみ合い、ますます謎が深まる5巻では、京香と影沼が命の危機ともいえる状況に陥ってしまうのです。
一体、京香を狙うのは誰なのでしょうか?犯人の目的はどこにあるのでしょう?
また、これまでの紹介で影沼のイメージが悪い方もいるかと思いますが、就職試験で将棋で好きな戦法を尋ねられた時、こんな印象的な言葉を残しています。
「棒銀です!真っすぐな男でありたいから」
(『ストーカー行為がバレて人生終了男』5巻より引用)
している行為はそうそう褒められるものではありませんが、影沼にはそう答えるほど真っすぐな一面もあるのです。そんな彼は、いかにして真相にたどり着くことができるのでしょうか。
一流企業での出世争いもからみ、犯人捜しも二転三転、複雑さを増す5巻。影沼もここまでの波乱の経験を通じ少しずつ男として頼もしい一面が見えてきて、もしかしたら京香の心を射止めることができるかもしれません。
目が離せない『ストーカー行為がバレて人生終了男』、今後の展開が楽しみですね!