実在する会社と社長の企業再生を小説として描いた『破天荒フェニックス』。著者の田中修治はカンブリア宮殿にも出演し、村上龍や堀江貴文が、その手腕や生き方を絶賛していることでも知られています。 倒産確実と言われた会社の若き社長となった田中修治が、次々に襲い掛かってくる試練を破天荒なアイディアと行動で乗り越えていく姿を描いています。2020年にはドラマ化もされた話題のノンフィクション小説です。今回は、そのあらすじと魅力をご紹介します。
小さなデザイン事務所を経営している30歳の田中修治は、ある日、企業再生案件として関わっていたメガネチェーン店「オンデーズ」の買収を決意します。しかし、「オンデーズ」は、年間20億の売上しかないのに借金は14億もあるという資金難に直面している会社。周りからはもはや倒産確実といわれていました。
そんななか、「オンデーズ」を海外進出させるという野望を抱き、社長に就任した田中。しかし、社長になって早々、銀行からはまさかの「死刑宣告」をされてしまいます。しかし、そんな宣告も、これから田中を待ち受ける試練の始まりに過ぎなかったのです。
小説という体を取ってはいますが、ほぼ著者・田中修治氏の体験を描いたノンフィクション小説です。2020年のお正月には特別ドラマとして映像化されることも発表されており、ますます注目度が高くなっています。
詳細はドラマ公式サイトをご覧ください。
本作の主人公であり著者である田中修治は、株式会社オンデーズの代表取締役社長です。「オンデーズ」は低価格を売りにしているメガネチェーン店で、今では日本だけではなくシンガポールや台湾など11ヵ国にお店を展開しています。
田中は10代の頃から起業し、企業再生案件に関わる中で「オンデーズ」を買収、立て直しを図ることになりました。
とある番組のインタビューでは、14億の借金があるオンデーズを買収したことについて、逆転の発想を語ります。14億の借金があるというのは、言い換えればそれだけ借りることができる大きな会社ということ。「負債を抱えている会社ってお得だな」と思ったのだとか。小説の主人公と同じく破天荒な人柄だということが伺えるコメントではないでしょうか。
田中は、村上龍がMCを務めるテレビ番組「カンブリア宮殿」にも出演しています。そこで村上龍は「オンデーズ・田中社長の軌跡と現実は、この本より、リアルで、普遍的だ」と語っていました。ちなみにこの言葉は、本作の帯にも掲載されており、とても印象的なものとなっています。
他にも、ホリエモンの愛称で知られている堀江貴文も本作を絶賛。それだけビジネス業界のリアルを描いていることがうかがえますね。
本作には田中を始め、様々な人物が登場します。ともに「オンデーズ」を再生しようとする心強いパートナーはもちろん、田中を貶めようとする人物までたくさんですが、なかでも注目したい登場人物をご紹介します。
田中修治
本作の主人公。小さなデザイン会社を経営していましたが、企業再生案件として関わっていたメガネチェーン店「オンデーズ」の買収を決意しました。周りからは自殺行為と言われるほどの行動でしたが、そんな声もどこ吹く風で、世界進出を目指すという野望に燃える破天荒かつ大胆な人物です。
タイトルでもある「破天荒フェニックス」というのは、周りの人達が田中に付けたあだ名。型破りで、何度でも死の淵から蘇るという、ピッタリの命名かもしれません。
ドラマではサンデーズの社長・田村雄司という役名で、勝地涼が茶髪姿で演じます。
- 著者
- 田中 修治
- 出版日
- 2018-09-05
奥野良孝
田中を支え、資金繰りに奔走する彼の右腕。元大手銀行勤務という経歴を持ち、まさに財務会計のプロです。田中の破天荒な手法に対しては毎回驚かされており、その度に一度は反対したりもするのですが、結局は彼を支えて動いてくれる心強い存在です。
反面、時には奥野のほうがトンデモない提案をすることもあります。それを田中が笑いながらドンと受け入れるところも、2人の絆をうかがわせるものとなっているでしょう。
物語としては当然、主人公に注目が集まりがちですが、奥田のような心から信頼のおける存在も見逃せないところ。彼の存在があるからこそ、田中も安心して破天荒なことができるのでしょう。本作でもストーリーを進めていく重要な存在です。
ドラマでは奥田吉弘という役名で伊藤淳史が演じます。
メガネチェーン店の「オンデーズ」は、田中が買収する前から最悪の資金難の状態にありました。年間売上が20億なのに借金が14億もあって、月々の返済は1億近くもあったのです。そんなチェーン店を買収することはまさに自殺行為でした。
ですが、田中は買収をし、「オンデーズ」の再生をすることになります。本作のメインはもちろんここで、再生のためにあらゆる戦略を実行されていく様子に胸が熱くなります。
詳細はぜひ本作を手に取って確認して頂きたいところですが、少しその熱い様子をご紹介しましょう。
たとえば、知名度が低いという「オンデーズ」の弱点が明らかになった際のこと。田中は借金があるなかで商品を全部半額にして世間の話題を集めたり、まだまだ資金繰りの厳しいにも関わらず、海外出店を決めたりします。
まさに破天荒。挑戦的な戦略の数々は、読んでいても思わず手に汗を握ってしまうことでしょう。
本作では何度も資金の壁にぶつかり、その度に会社がつぶれそうになっては何とか復活します。その過程では、田中はもちろん、その周りの従業員達の力も必要でした。彼らの絆が描かれるのも本作の魅力の1つです。
しかし、ストーリーが進んでいくと、人の裏切りという展開も描かれていくことになります。
それは田中がまだ社長になって2年目の頃、会社を再生させようと頑張っていたまだまだ矢先の出来事です。何とか企業再生をと、新たに雑貨チェーン店を買収し、その従業員と一丸となって企業を再生しようとしていた時のこと。
田中の思いとは裏腹に、部下となった雑貨チェーン店の社員達は、彼のやることをよく思っていなかったのです。そのため部下達は、裏である工作をしていたのでした。
部下達の裏切りを知った時の彼の気持ちは、読者の胸をも揺さぶる内容。その衝撃的な内容に、切ない気持ちにさせられてしまうでしょう。
2011年に発生した東日本大震災。本作では、災害発生時に田中が、自分達にできることは何かと考え、行動に移した出来事が描かれています。「オンデーズ」はメガネ屋です。そこで彼は、被災者にメガネを無料で配布することを思いつきました。
災害時に必要なものといえば食料や水などを真っ先に思い浮かべますが、あらゆるものを災害によって失った人達にとって、メガネも実は必需品でした。被災者の中には当然、目が悪い人もいます。見落とされがちな部分で被災地の方々を助けたのでした。
作中では、目の悪い老人が、メガネを作ってもらってようやく安否確認の掲示板を確認することができたというシーンが描かれます。老人は、自分の目で家族の無事を確認することができたのです。
この災害の中、田中は救援活動を通し、あらためてメガネというものの大切さと、目で見る世界の素晴らしさを感じます。このことが田中やオンデーズをさらに前進させたことは間違いないでしょう。
被害にあわれた方の気持ちを考えると簡単に言い表してはいけませんが、田中にとって学びのあった出来事だったのではないでしょうか。
- 著者
- 田中 修治
- 出版日
- 2018-09-05
このあとは、最後にドラマ版の見所を考察していきます。
本作は、2020年の新春特別ドラマとして放送されることがすでに発表されています。3夜連続ドラマになるそうで、もはや映画よりも長く、厚みのある作品になるのではないでしょうか?
主人公の田中修治は、ドラマでは田村雄二と名前を変えて演じられるようです。その田村雄二役を務めるのが、勝地涼。
勝地は、原作を読んだ際、「次から次へと襲いかかるピンチを乗り越えていく、ウソみたいな奇跡のような話があるんだ!と驚きました。また、絶対に諦めず、前を向いて進んでいく、こんな人がホントにいるんだ!とワクワクしました」と語っており、ドラマでもそんな原作と同じく、ドキドキハラハラすることはもちろん、スピード感溢れる展開と、壁に立ち向かっていく人々の情熱、そして仲間や家族との絆などが描かれていくのではないかと考えられます。
新年早々、1年頑張ろうと思わせてくれる力がもらえそうなドラマに、今から期待が高まります。
詳細はドラマ公式サイトをご覧ください。
いかがでしたか? 小説でありながらノンフィクションという本作ですが、まさに事実は小説より奇なり。こんな人生や出来事が本当にあるんだと思ってしまうこと間違いなしの1冊なので、心が熱くなる本を読みたい方はぜひ手に取ってみてください。