オカルトマニアの小学生チョコが、なぜか黒魔女修行をすることに⁉累計発行部数400万部を超える、青い鳥文庫の人気シリーズ「黒魔女さんが通る」を紹介します。刊行開始から15年以上が経ってもなお、日本中の小学生たちを魅了し続けてきた本作。一体どんな魅力があるのでしょうか。
「黒魔女さんが通る」シリーズは、石崎洋司が手掛ける児童文学。2005年に第1巻の『黒魔女さんが通る!! チョコ、デビューするの巻』が刊行されました。
シリーズ最大の魅力は、不器用で親しみのある主人公のチョコと、個性豊かな仲間たち。読者と同年代の彼女たちが、ドタバタと黒魔女修行をしていく姿に夢中になってしまうでしょう。キャラクターや黒魔法は公募もされていて、読者参加型の制作が定着しています。
また挿絵は、2018年6月までが藤田香、それ以降は亜沙美が担当しています。登場人物のファッションはファンの間でも注目されていて、キャラブックでも特集が組まれるほど。シリーズ人気の一翼を担っているといえるでしょう。
さらに「黒魔女さんが通る」シリーズは、1冊に2~3話が収録される短編スタイル。どこから読み始めても違和感がないよう工夫されています。新しい読者でも入り込みやすく、勢いはとどまることを知りません。
この記事では、そんななかでも特に読者からの人気がある作品と、主なキャラクターを紹介していきます。
黒鳥 千代子(チョコ)
「黒魔女さんが通る」シリーズの主人公。スタート時は小学5年生でしたが、2016年から進級して6年生になりました。
勉強や運動は苦手、恋愛にもファッションにも興味がなく、ひとりでいることが好きなオカルトマニア。思いがけずギュービッドを召喚してしまい、彼女に師事して黒魔女修行に励んでいます。
ギュービッド
チョコに黒魔術を教えるインストラクター。自称「魔界1おちゃめで美しい黒魔女」です。黒魔術の実力は相当なものですが、口の悪さと素行の悪さが原因で、世間からの評価は低め。
桃花・ブロッサム
チョコの妹弟子で、ギュービッドの後輩。努力家で真面目な性格をしており、礼儀も愛想もいい女の子です。しかしキレると過激な一面をもちあわせています。
大形京(おおがたきょう)
チョコのクラスメイトですが、実は強力な魔力を操る黒魔法使い。普段は両手につけられたぬいぐるみで魔力を封印していますが、ふとした時にはずれると騒動を起こしてしまい、チョコやギュービッドが再装着することも。
暗御留燃阿(あんごるもあ)
ギュービッドの元同級生。王立魔女学校をトップで卒業した優等生ですが、卒業後は出世のために手段を選ぶことなく悪事を働き、何度も降格しています。
大形京の元インストラクターで、現在は改心し、チョコやギュービッドに協力しています。
オカルトが好きな小学5年生のチョコ。クラスメイトの女子から、クラスで1番かっこいい三条ショウが誰のことを好きなのか知りたいと頼まれて、「キューピットさん」の占いをすることになりました。
しかしチョコは花粉症で鼻がつまっており、唱えた呪文が「ギュービッドざん」に。美人だけど口が悪い黒魔女、ギュービッドを召喚してしまうのです。
ギュービッドは、呼び主であるチョコが一人前の黒魔法使いにならないと元の世界に戻れないそうで、チョコの自宅に住み着くことになりました。ここからチョコの波乱万丈な黒魔女修行が始まります。
- 著者
- 石崎 洋司
- 出版日
- 2005-09-15
「黒魔女さんが通る」シリーズの第1巻。2005年に刊行されました。
3つの短編が収録されていて、それぞれで起こるトラブルをチョコが修業として解決していく構成になっています。その内容は、集団いじめ、クラス内のグループ問題、生徒の気持ちを理解できない教師など意外とヘビー。それをチョコがバッサリと切っていく様子は痛快そのものです。
「黒魔女さんが通る」シリーズは、チョコのひとり語りで物語が進んでいきます。小学5年生の女の子の心情が口語で語られ、子どもの読者は、同年代のチョコに感情移入をしながら読むことができるのが魅力です。他の登場人物へのツッコミなど笑える要素もたっぷりで楽しめるでしょう。
テレビ番組「魔女っこクラブ」に、チョコと5年1組の選抜チームが出演することになりました。幼馴染でクラスメイトのメグたちが盛りあがるなか、チョコはいまいちついていけません。
ところがテレビ局で待ち構えていたのは……。
- 著者
- 石崎 洋司
- 出版日
- 2006-04-15
「黒魔女さんが通る」シリーズの第3巻。2006年に刊行されました。
本作では、暗御留燃阿(あんごるもあ)が初登場。またチョコのクラスメイトの大形京が、実は魔法使いだったことも判明します。
暗御留燃阿は王立魔女学校時代は優等生で、当時からギュービッドをライバル視していました。テレビ番組で活躍するチョコの黒魔女の才能に気づき、ギュービッドから取り上げようとするのです。ギュービッドとチョコの絆の強さがわかるお話になっています。
1話完結型ですが、3話まで読み進めるとすべてが繋がっていたことがわかる構成も面白いもの。新しいキャラクターも続々と登場し、これからの展開が楽しみになるでしょう。
6年生の初日を迎えた朝、学校に行く途中にチョコは、見慣れない男の子と公園で出会います。
その子はなんと転校生。しかもとってもイケメンで、学校中を巻き込む騒動を引き起こすのです。翌日には、なぜかチョコの人気も急上昇し、ファンクラブができることに……⁉
- 著者
- ["石崎 洋司", "藤田 香"]
- 出版日
- 2016-08-11
2016年に刊行された「黒魔女さんが通る」シリーズで、本作からチョコたちは6年1組に進級しています。
騒動の原因は、魔界のとある商品。これまでと変わらずお茶目なギュービッドの言動で、チョコと仲間たちが翻弄されます。
「黒魔女さんが通る」シリーズをより面白くしているのが、魔界の人たちが好きだというダジャレやオヤジギャク。読むだけで漢字や熟語の習得にも一役買ってくれるのが嬉しいところです。本作でチョコが解く黒魔女修行のドリルには、季節の花などの雑学が満載。大人の読者も楽しめるでしょう。
一級黒魔女を目指して修業に励むチョコの前に現れたのは、心を入れ替えて魔界から戻ってきた大形京。一緒に登校することになったチョコは、なぜか緊張してしまいます。
そんなチョコは合唱コンクールの指揮者を引き受けることになりました。黒魔法を使いながらクラスをまとめていきますが、本番の日に起きた出来事とは?
- 著者
- ["石崎 洋司", "亜沙美", "藤田 香"]
- 出版日
- 2020-02-05
チョコたちが6年生になってから10作目の「黒魔女さんが通る」シリーズ。2020年に刊行されました。
人間界に戻ってきた大形京は、また何かを企んでいるようでした。巻末では彼がチョコをどこかに連れて行こうとするのですが……。ほんのりと感じる恋模様に、続きが気になる一冊です。
また「魔法鏡メガネ」や「魔王の王冠」など新しいグッズが登場したり、誕生石でもある「黒曜石」の力をチョコが持ちあわせていることが明かされたりと、本作もスピーディーな展開。チョコと魔王の王冠は、まさに「魔(ま)ぜるな危険」です。ワクワクしながら一気に読めるでしょう。