「国際アンデルセン賞」受賞作家のおすすめ児童文学を紹介!角野栄子の作品も

更新:2021.11.21

小さなノーベル賞ともいわれている「国際アンデルセン賞」。国際的な児童文学賞の、最高峰です。この記事では、これまでに同賞を受賞した作家の作品から、おすすめのものを紹介していきます。

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「国際アンデルセン賞」とは

 

1953年に国際児童図書評議会が創設した「国際アンデルセン賞」。児童文学に贈られる、世界で初めての国際的な賞です。児童文学が子どもたちの未来を拓き、平和を生むという理念から、「小さなノーベル賞」ともいわれています。

準備期間を経て第1回が開催されたのは、1956年のこと。以降2年に1度発表されています。第3回までは作品に対して、第4回以降は「作家賞」として、児童文学に貢献してきた作家の業績に対して賞が与えられるようになりました。1966年の第6回からは、「画家賞」も設立されています。

日本人では、『スーホの白い馬』で有名な赤羽末吉や、詩や童謡で有名なまど・みちおなど、過去5人が受賞。世界に大きな影響を与えているといえるでしょう。

ではここからは、これまでに「国際アンデルセン賞」を受賞した作家たちの、おすすめの作品を紹介していきます。

「国際アンデルセン賞」受賞、原作も読んでおきたい『魔女の宅急便』

 

人間のお父さんと、魔女のお母さんの間に生まれた女の子キキ。10歳の時に魔女として生きることを決め、しきたりどおり13歳の春の日に、魔女の住んでいない町に旅立ちます。

相棒の黒猫、ジジとともに辿りついたのは、コリコという町。しかしみんな魔女になじみがなく、キキに対しても冷たい態度です。彼女はこの町で、どのように生きていくのでしょうか。

著者
角野 栄子
出版日
2002-06-20

 

2018年に「国際アンデルセン賞」を受賞した角野栄子の作品。スタジオジブリによって映画化され大ヒットしたことはご存知だと思いますが、原作を読んだことがある方は意外と少ないのではないでしょうか。

本作の見どころは、13歳の少女の揺れ動く心を等身大に表現しているところでしょう。

娘を優しく包み込む父親と、娘を思うあまりに口うるさくなってしまう母親に背中を押され旅立つ姿。居候をさせてくれることになったパン屋で、自分のできることをひとつずつ見つけていく姿。唯一使える空を飛ぶ魔法でコリコの町の人々の役に立とうとする姿……。

うまくいかずに落ち込むこともあるけれど、魔女であることもひとつのアイデンティティとして町の人々と関係を築き、大人への階段を登っていく芯の強さが読者を勇気づけてくれるのです。

文庫本で全6巻、映画では描かれていなストーリーがたくさんあるので、ぜひ原作も読んでみてください。

上橋菜穂子が「国際アンデルセン賞」を受賞、代表作は『精霊の守り人』

 

本作の主人公は、短槍使いのバルサという女性。彼女が偶然に出くわし命を助けた少年は、「新ヨゴ皇国」の第二皇子のチャグムでした。チャグムの母親によると彼は命を狙われているということで、バルサは幼くひ弱な皇子の用心棒となり、彼を守る旅へ出ることになりました。

旅の途中で明らかになる、チャグムが命を狙われる理由。精霊自身と、精霊の守り人であるチャグム救うため、バルサの仲間たちが己の能力を発揮して戦います。

著者
上橋 菜穂子
出版日
2007-03-28

 

2014年に「国際アンデルセン賞」を受賞した上橋菜穂子の作品です。本作からはじまる「守り人」シリーズは、全10巻。タイトルに「守り人」とつくものはバルサが主人公、タイトルに「旅人」とつくものはチャグムが主人公です。

児童文学であるにも関わらず、大人の女性であるバルサの内面が丁寧に描かれているのが特徴。彼女は屈強に見えて幼少期から内に葛藤を抱えているのですが、自分と同じように葛藤しているチャグムと過ごすことで、かつて自分を助けてくれた養父に心を重ねていきます。大人だからといって上から諭すのではなく、体当たりで子どもと向き合う姿が読者に響くのでしょう。

そして何より、痺れるほどの戦いと、作りこまれた世界観の深さは他の作品に類をみません。大人も夢中になれる児童文学です。

美しい世界を垣間見れる「国際アンデルセン賞」受賞作家の代表作『肩胛骨は翼のなごり』

 

10歳のマイケル少年は、一軒家に引っ越してきたばかり。するとリフォーム前の古いガレージで、「スケリグ」という不思議な存在に出会います。

スケリグは痩せていて、ほこりまみれで、虫の死骸を食べていて、今にも死にそう。背中に何やら秘密があるようです。マイケルはどうしても彼が気になって、スケリグに頼まれたとおり、テイクアウトした中華料理やアスピリンを運びます。

やがて、隣に住んでいて学校に行くことができないミナという少女にその存在を打ち明け、3人は特別な時間を共有するようになるのです。

著者
デイヴィッド アーモンド
出版日
2009-01-22

 

2010年に「国際アンデルセン賞」を受賞したデイヴィッド・アーモンドのファンタジー作品です。

ガレージに住み着いていたスケリグは、人生を諦めていました。しかしマイケルとミナの子どもならではの純粋な優しさに触れることで、徐々に生きる力を取り戻していくのです。

マイケル自身も、生まれたばかりの妹の命が危ないことを知り、心を揺らしていましたが、学校教育という枠を超えて自由に生きるミナと出会い、スケリグの世話をすることで、たくましく成長していきます。見た目で人を判断することなく、ありのままを受け入れる彼らの姿は、大人の読者こそハッとさせられるものがあるのではないでしょうか。

やがてスケリグは本来の姿を取り戻し、空へと飛び立っていきます。読後は邦題の美しさも心に残る、余韻の深い一冊です。

ファンタジーを堪能できる!「国際アンデルセン賞」を受賞したマーガレット・マーヒーの『魔法使いのチョコレート・ケーキ』

 

あるところに、チョコレート・ケーキを作るのがとっても得意な魔法使いがいました。しかし彼は周りから悪い魔法使いだと思われているので、一緒にパーティーをしてくれる友達がいません。

そんな孤独な彼が出会ったのは、リンゴの苗木。庭で苗木を育て、一緒にケーキを食べる友達になりました。やがてみんなが魔法使いのことをすっかり忘れてしまった頃、思いもよらない出来事が起こり……。

著者
マーガレット・マーヒー
出版日
1984-06-30

 

2006年に「国際アンデルセン賞」を受賞したマーガレット・マーヒーの物語集。表題作のほか、9つの詩や短編が収録されています。全話をとおして共通しているのは、子どもの心をつかむ不思議な出来事が起こること。こんなことがあったらいいなと思わせてくれる創造的なものばかりなのです。

表題作の「魔法使いのチョコレート・ケーキ」に出てくる魔法使いは、魔法が上手でないことから、悪い魔法使いだと思われています。しかし本当はチョコレート・ケーキ作りが得意で、友達が欲しいと思っている純粋な魔法使いです。

リンゴの木という友達ができ、やがてもっと素敵な展開をする物語は、夢と不思議が詰まっていて子どもの心を豊かにしてくれるはず。翻訳もわかりやすく、おすすめの一冊です。

「国際アンデルセン賞」を受賞したキャサリン・パターソンの『いじわるロージー』

 

お父さん、お母さん、お姉さんとともに農場で暮らすマービン少年。飼育されている牛のロージーが友達で、彼の心の拠り所になっていました。

しかしロージーはいじわるで暴れん坊で、いつもお世話をする人を困らせています。やがて農場が引き払われ、ロージーも売られることになってしまい……。

著者
キャサリン パターソン
出版日

 

1998年に「国際アンデルセン賞」を受賞したキャサリン・パターソンの作品です。

大人が決めたロージーとの別れを、マービンは受け止めることができません。孤独に耐えられず、泣いてばかりです。そしてある日、茶色の小瓶に入るくらい小さなロージーの姿を見るようになります。

そんな彼の姿を見た家族が、あたたかく向きあっていくのが見どころ。空想の世界と現実の世界が入り混じるのは子どもならではですが、同じ目線に立って応えてあげるのです。

そうしてマービンは少しずつ心を回復させ、1歩成長していきます。長いお話ではないので、幼児への読み聞かせにもおすすめの一冊です。

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