「古典」というと、難しい、つまらないというイメージを抱いている人も多いのではないでしょうか。しかし大昔から今まで読み継がれているだけあり、実際に読んでみるとストーリー自体も面白く、その奥深い内容に魅了されてしまうはずです。この記事では、教養としても知っておきたい日本の古典のなかから、特におすすめの作品を紹介していきます。
『日本書紀』は、奈良時代の720年に成立した日本初の正式な歴史書です。日本最古の歴史書といわれる『古事記』と並び、当時日本を治めていた天武天皇の命で編纂が始まったといわれています。原本は全30巻です。
国内向けといわれる『古事記』とは異なり、唐や新羅など東アジアの国々にアピールするため、 漢文で書かれているのが特徴。最古の歴史である神代の時代から、第41代・持統天皇まで、日本で起きた出来事が年代順に並べられています。
- 著者
- 出版日
- 1988-06-06
『日本書紀』の編纂には、なんと39年がかかったそう。本作は、そんな大長編を上下2巻にまとめ直したものです。
漢文であることから取っつきにくい印象がありますが、すべて現代語訳をしているので、古典が苦手な人でも挑戦しやすいでしょう。
最大の見どころは、やはり日本という国が成立する部分。ヤマタノオロチやアマテラスなどが活躍し、国ができていく様子はワクワクするものがあります。日本がどのようにして生まれ、太古の人々は何をしていたのか、裏切りや争いなど人間味あふれる物語も記されていて、興味深く読めるでしょう。
日本最古の歴史書といわれる『古事記』。712年に編纂されたといわれています。天武天皇の命で『日本書紀』と同時期にまとめられましたが、本作は日本国内向けの物語がより多く収録されているのが特徴です。
上中下の3巻構成で、原本はすでに紛失。いくつかの写本が現存しています。
- 著者
- 竹田 恒泰
- 出版日
- 2011-08-30
作者の竹田恒泰は明治天皇の玄孫という皇室と縁の深い人物。そんな彼が記した本作は、『古事記』の現代語訳はもちろんのこと、当時の時代背景や言葉の意味の深堀りなどを、独自に解説してくれているのが魅力です。
竹田いわく、読み進めるコツは「神様の名前を覚えようとしない」ことだそう。タケミカヅチやコノハナノサクヤヒメ、ツノグヒ、イクグヒなど、大勢の神様が登場するうえに似た名前も多いので、無理に覚えなくていいと思えば、楽に物語を楽しむことができるでしょう。
難しい漢字にはルビもふってあり、重要な単語は太字になっているので、学習にも最適。古典の入門書としておすすめです。
『万葉集』は、奈良時代に成立したとされる、日本最古の和歌集です。
天皇をはじめ貴族や大道芸人、農民にいたるまで、あらゆる身分の人の詠んだ和歌が収録されているのが特徴。その量は、全20巻4500首以上にのぼります。
- 著者
- 出版日
- 2001-11-22
本作は、『万葉集』に収録された膨大な数の和歌から、「名歌」といわれる140首を厳選し、解説とともにまとめた作品。参考歌も含めると約200首の和歌に触れることができます。
定番の男女間での恋歌や、家族や友人を想う歌、死を悲しむ歌、そのほかにも歴史的事件や伝説にもとづいたものなど、テーマはさまざまです。元号「令和」の出典となった「梅花の宴」序文も載っているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
原文はもちろん、現代語訳もすべてにルビをふってわかりやすく解説。1000年以上前を生きた人々に、想いをはせられる一冊です。
『源氏物語』は平安時代中期に紫式部が執筆した物語。20ヶ国語を超える言語に翻訳され、世界中で読まれています。
3部構成になっていて、第1部は光源氏の恋愛遍歴を中心とした前半生が、第2部は恋愛がうまくいかず無常を感じた光源氏が出家を志す後半生が、そして第3部は光源氏の子孫たちの恋愛模様が描かれています。
時間にすると、およそ70年。登場人物は500人にものぼる、壮大な物語です。
- 著者
- 出版日
- 2017-09-08
翻訳する人が変われば物語の雰囲気もガラッと変わるのが『源氏物語』の特徴。本作の翻訳は小説家の角田光代が担当し、ストーリーの面白さを堪能できる仕上がりになっています。
物語は、光源氏と彼をとりまく女性たちを中心に展開。光源氏は桐壺帝の息子で、幼いころに母親を亡くしたことから理想の女性を追い求めるようになるのです。やがて亡き母の面影をもつ桐壺の後妻、藤壺に恋焦がれるようになります。
その後もさまざまな人に恋をし、時には結婚もし、藤壷に似た少女を寵愛するなど、女性に振り回される彼の人生を読んだ時、何を思うでしょうか。
日本の古典の最高傑作ともいわれる『源氏物語』、ぜひ1度手に取ってみてください。
平安時代後期に成立したといわれる『大鏡』。
190歳と180歳という超高齢な2人の老人が歴史を語り、それを聞いていた若侍たちが批評するという、対話形式の物語です。
取りあげているのは、176年間にわたる宮廷の歴史。作者は不明ですが、男っぽい権力争いが描かれていることから、貴族の男性ではないかと考えられています。
- 著者
- 出版日
- 2007-12-01
平安時代の政治的な争いと聞くと嫌煙しがちですが、ユーモアたっぷりに歴史を紹介しているのが魅力です。夫婦の痴話喧嘩、幽霊話、安倍晴明が式神を飛ばす様子なども描かれます。
本作は、原本のなかから教科書にも載っている有名な部分や、面白い部分を抜粋して掲載。原文と現代語訳を並んで記載し、さらに当時の状況を知るための小話も挿入していて、古典というよりは読み物として楽しむことができるでしょう。『源氏物語』『枕草子』『紫式部日記』といった物語の背景にある藤原氏の存在。天皇家と通じ、権力をきわめていく彼らの勢いに圧倒されるはずです。
付録には、皇室系譜や官位相当表、史跡案内など、読み進めるうえで役立つ資料を掲載。初めて古典を読む人にもおすすめの入門書です。
鎌倉時代の朝廷で、後深草院二条がさまざまな男たちに言い寄られながらも、自身の性格と倒錯した趣味で彼らを振り回す様子が描かれる物語。
作者は明らかになっていませんが、自伝形式のため後深草院二条本人が綴ったとされています。
- 著者
- 次田 香澄
- 出版日
主人公は「あかこ」と呼ばれていて、美人で才覚も十分な明るい性格の女性です。そんな彼女は母親の死をきっかけに、後深草院のもとで育てられ、女官として仕えることになりました。当時の鎌倉は東国の武士たちに政治的な主導権を奪われ、貴族社会も退廃している状態です。
後深草院の寵愛を受けていたあかこですが、かねてから想いあっていた雪の曙との子を身ごもります。しかしこの関係は秘密にしなくてはならないものだったため、後深草院に内緒で出産。嘘をついてその場を乗り切ります。さらにあかこは、後深草院の弟とされる有明の月にも恋心を抱いてしまいました。恋に悩み男たちに翻弄される女性が多い時代に、自らの愛と欲望を貫いた姿が清々しい作品です。
本作は現代語訳に加えて、当時の時代背景も解説してくれているので、宮中の様子などもわかるのが魅力的。鎌倉時代を生きた女性の力強さを感じられる作品になっています。