六法全書の内容を子どもでも理解できるように編集した『こども六法』。ありそうでなかった法律本として話題になり、そのわかりやすさから子どもだけでなく大人にも読まれてヒットしています。この記事では、『こども六法』の魅力と、そのほか初心者におすすめの法律本を紹介していきます。
2019年8月20日に刊行された『こども六法』。教育研究者である山崎聡一郎の作品です。
社会のルールを決める「法律」について、子どもでも理解できるようにとまとめ直したもの。イラストを多用し、難しい言葉は言い換えて、漢字にはルビをふっています。
その内容は、刑法、刑事訴訟法、少年法、民法、民事訴訟法、日本国憲法、いじめ防止対策推進法の大きく7つ。「六法全書」には商法もありますが、子どもにはあまり関係がないため除かれています。
当初は10~15歳の子どもたちを対象にしていましたが、そのわかりやすさから、小学校低学年にも読まれるように。一方で彼らの親世代にとっても知らないことがたくさんあるとして手に取られ、結果的に幅広い世代に読まれる大ヒットとなりました。法律書としては異例の、累計発行部数50万部超えとなっています。
全員に関わるものなのに、全員がわかるように書かれていない法律。『こども六法』を読めば、その大切さと面白さに気づくでしょう。そして、日々の暮らしをより安全で快適なものにできるはずです。
作者の山崎聡一郎は、小学生の時にいじめを受けていました。時には骨折をするほどの暴力をふるわれることもあったそうです。
その後中学校に進学し、「六法全書」を読んでみると、自分の受けていた行為が「犯罪」だったことを知ります。当時は、小学生のうちに知っておきたかったと強く感じたそうです。
一方で、部活動でトラブルが起き、気づかないうちにいじめの加害者にもなってしまいました。被害者側も加害者側も経験した彼だからこそ、自分の身を守る武器として法律の勉強を始めます。子どものときから、やっていいことといけないことの線引きを理解すること、そして、もしも自分が被害にあった際には適切な対応をとれることが大切だと考えたのです。
大学在学中の2014年には『こども六法』の初期バージョンが完成。自費出版をします。その後出版社とも制作を開始しますが、当初はなかなか計画を進めることができませんでした。
そんななか、プロデューサーやデザイナーとの出会いがあり、クラウドファンディングで資金を集めることに成功。コンセプトに共感した専門家に監修をしてもらい、2019年に発売にいたったのです。
いじめや虐待、ネグレクトなど、いま苦しんでいるのに、自分ではどうすることもできない子どもが大勢います。彼らを含め、多くの人が法律を理解することができたら、いざという時に自分で自分の身を守る手段として活用できるでしょう。
- 著者
- 山崎 聡一郎
- 出版日
ここからは、『こども六法』以外にも、初心者の人でも読みやすい法律関連の本を紹介していきます。
本作の主人公は、山の上の高校に通う2年生。ある日の放課後に立ち寄った喫茶店で、近所の大学で準教授をしているキヨミズに出会います。
キヨミズは、頼んでもいないのに一方的に法的思考のすばらしさを語りだしました。しかし主人公は、難しそうな話題にまったく興味を抱くことができません。
そこで、そんな主人公にもわかるようにと、物語を用いて基本的な法律を解説することになりました。
- 著者
- 木村 草太
- 出版日
- 2012-11-22
日本国憲法の体系、公法と私法の違いなど、日本の法律を俯瞰して見ることができる内容です。会話文が多く、文化祭や高校、大学、はたまた動物園などを舞台にストーリー仕立てで進んでいくので、スルスルと読み進められるのが魅力でしょう。自然と法律の概要を知ることができます。
法律について解説しているのはもちろん、政治学や経済学、社会学と比較をしているのもポイント。それぞれの学問分野がどういった特徴をもっているのか知ることができるので、興味の幅が広がります。
あくまで入門として書かれているので、民法や行政法についてさらに詳しく知りたい人は、それぞれの専門書を読むといいでしょう。巻末ではこれから読むべき本を紹介してくれているので、参考にしてみてください。
民事訴訟法と民事裁判について、7つの物語を用いて紐解いていく作品です。
主人公は、法律事務所でアルバイトをする大学3年生。司法試験の合格を目指しています。日々、事件や裁判を経験するなかで、初めてのことに戸惑うばかり。そんな彼が、事務所の美人弁護士とともに民事訴訟について学んでいきます。
- 著者
- 木山 泰嗣
- 出版日
本書の作者は、弁護士として活躍する木山泰嗣。上智大学の法学部を卒業後、4回目の司法試験で合格。民事訴訟全般を専門としていて、これまでも法律に関する書籍を出版しています。
専門用語の多い民事訴訟法は、ただ参考書を開くだけでは眠くなってしまうこともあるでしょう。本書では、生活と結びついた物語によって、具体的に事例を考えられるよう工夫しています。登場人物も魅力的なので、最後まで飽きることなく読めるはずです。
裁判のことを知りたい人、民事訴訟法についてイメージがわかない人、司法試験に興味がある人の足掛かりとなる作品。高校生にもおすすめです。
用語の読み方や使われている接続詞、裁判の仕組み、判例、六法を引くコツ……法律を初めて学ぶ人にとって知っておきたい基本的な事項が書かれている作品です。
「そもそも」の部分である「勉強の仕方」を知ることができるので、初心者にぴったり。最初に学ぶべき情報がつまっています。
- 著者
- 吉田 利宏
- 出版日
本書の作者は、内閣法制局で法律を作っていた人物。法学者や弁護士ではなく、作成者だからこそ書くことができる、初心者の目線に立った作品になっています。
法律用語や条文の読み方を徹底的に解説し、その後の勉強をサポートしてくれるでしょう。事例も数多く挙げてくれているので、初心者でもイメージを膨らませながら読むことができます。
構成を理解すれば、パズルのような楽しさがある法律。学習のモチベーションを高める際にも役立つ一冊です。
法律を学ぶ際に欠かせないのが、条文と判例です。本書では、法律の全体像を示したうえで、条文と判例を解説。条文をルールにたとえることで、難解な内容も簡単に分解できるそうです。
用語の意味や読み方のコツなどを、かわいらしいイラストとともに説明していきます。
- 著者
- ["品川 皓亮", "土井 真一"]
- 出版日
第1部「準備編」、第2部「条文編」、第3部「判例編」という構成です。基礎となる憲法・民法・刑法・行政法の基本を初心者向けに説明します。 わかりやすく正確な文章で書かれているのが魅力です。
長い条文の読み方は、まず見出しで概要をつかみ、列挙されているものはわかりやすい1語だけ抜き出すという面白いやり方を紹介。初学者でも実践できる方法を書いてくれているので、ありがたいです。
まったく法律に触れたことがない人でも、大枠を理解できると評判。初心者にぴったりの一冊になっています。