『ハックルベリー・フィンの冒険』の魅力は?あらすじや登場人物、症候群など

更新:2020.5.19 作成:2020.5.19

大人気児童文学『トム・ソーヤーの冒険』の続編である『ハックルベリー・フィンの冒険』。トムと一緒に大金を手にしたホームレスの男の子は、その後どのような生活をしていたのでしょうか。この記事では、あらすじや登場人物の紹介、物語に込められらたテーマ、そしてハックルベリー・フィンの名前がつけられた症候群について解説していきます。

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『ハックルベリー・フィンの冒険』の作者マーク・トウェインはどんな人?

 

『ハックルベリー・フィンの冒険』の作者マーク・トウェインは、1835年にアメリカで生まれました。

当時のアメリカは南部と北部でさまざまな社会事情の違いが拡大していた時代。トウェインは「南北戦争」などの歴史的な局面に直面しながら、水先人、印刷工、軍人などの職に就きます。新聞記者時代に長期連載したヨーロッパ旅行の体験記が評判となり、その後1876年に発表した『トム・ソーヤーの冒険』で人気を不動のものとしました。

『ハックルベリー・フィンの冒険』は、そんな『トム・ソーヤーの冒険』に登場するトムの親友ハックルベリーが主人公です。

トウェインが4歳の時に移り住んだミシシッピ川沿いの街並みや、彼の家庭環境は、2つの作品にも大きな影響を与えたそう。物語の舞台であるミズーリ州や、白人と黒人奴隷のやり取りなどから、トウェインの生い立ちを感じることができるでしょう。

トウェインは本作以外にも数多くの小説やエッセイを発表し、時代を代表する作家となっていきました。74歳で生涯の幕を閉じるまで、世界中で講演活動などもおこなっていたそうです。

著者
マーク・トウェイン
出版日
2017-12-19

『ハックルベリー・フィンの冒険』の登場人物を性格とともに紹介!

 

ハックルベリー・フィン(ハック)

『ハックルベリー・フィンの冒険』の主人公であり、語り手です。

『トム・ソーヤーの冒険』では、町外れでホームレスのように暮らしていた少年「宿無しハック」として登場。前作で手にした大金をトムと折半し、自身は大金持ちのミス・ワトソンの養子になりました。その後ワトソン家の奴隷だったジムと2人で、奴隷制度を廃止している「自由州」へと向かうことになります。自分の軸で物事を考えられる少年です。

ジム

ハックが養子になったワトソン家の黒人奴隷です。自分が南部に売られる話を立ち聞きし、逃亡。「自由州」を目指すことにします。

教育を受けたことがないですが利発で、ジンクスを信じすぎてしまうほど純粋な性格をしています。黒人奴隷特有の思考をしていて、時にハックをうんざりさせてしまうことがありました。

トム・ソーヤー

前作『トム・ソーヤーの冒険』の主人公で、ハックの親友。叔父の家を訪ねる途中で死んだと思っていたハックと再会。ハックが叔父宅でトムのふりをして過ごしていることを知り、自身はトムの弟のふりをすることになりました。

とらわれてしまったジムを自由にするために、自分の冒険心を満たしながら奪還作戦を実行します。

『ハックルベリー・フィンの冒険』のあらすじを結末までネタバレ紹介

 

『トム・ソーヤーの冒険』で手にした大金をトムと折半し、自身は大金持ちのミス・ワトソンの養子になったハックルベリー・フィン。敬虔なクリスチャン宅の上品な生活は、彼にはなじめないものでした。

そんななか、彼がお金をもっている噂を聞きつけて、大酒飲みで暴力を振るう父親が現われます。ハックは軟禁されお金も奪われてしまいましたが、なんとか逃げ出すことに成功しました。

ワトソン家の奴隷だったジムと再会したハック。ジムも自分がアメリカ南部に売られることを耳にし、逃げ出してきたとのことでした。そうして2人は、奴隷制度を廃止している「自由州」を目指し旅に出ることにするのです。

ミシシッピ川を下る旅の途中で、ハックは黒人奴隷の逃亡を手伝うことに良心の呵責を覚えたり、ジムの黒人特有の発言に嫌気がさしたりしながらも、少しずつ距離を縮めてお互いを尊重しあいます。

しかし、道中で出会った2人の詐欺師に、ジムが奴隷として売られる事態になってしまいました。ジムの行方を探すなか、偶然にもトムと再会したハック。一緒に救出作戦に乗り出します。

トムの発案で無事にジムを奪還できたものの、その途中でトムが足を撃たれてしまいました。そのまま逃げることを躊躇するジムですが、トムがミス・ワトソンが2ヶ月前に死んだことと、遺言状でジムを自由の身にしたことを告げ、晴れて本当に自由になるのです。

一方ハックは、トムの叔父家の養子になることを提案されますが、また新たな冒険に出る計画を立てていました。

著者
["マーク トウェイン", "Twain,Mark", "実, 西田"]
出版日

『ハックルベリー・フィンの冒険』に込められたテーマとは

 

少年たちの生き生きとした好奇心を描いた『トム・ソーヤーの冒険』とは異なり、『ハックルベリー・フィンの冒険』ではアメリカの社会問題を取りあげています。大きく分けて2つのテーマがあるといえるでしょう。

まずひとつは、「奴隷制度」です。本作が発表されたのは1885年で奴隷制度が廃止された後のことですが、物語の舞台はそれよりも50年ほど遡ります。

当時、黒人奴隷は逃亡することを禁止されていました。白人社会で育ったハックは、逃亡者のジムと行動をともにすることに悩みながらも、全幅の信頼を置いてくれる彼を裏切ることができず、ジレンマを抱えたまま旅を続けます。ハックとジムの間でしだいに培われていく人種を超えた友情は、読者の心に強い印象を残すでしょう。

一方で作者のマーク・トウェインは、奴隷制度に反対の立場を取りながらも、本書では白人と黒人を区別して書いている、として批判も浴びました。その背景には、彼自身が女中を第2の母親として育ったこと、奴隷の子どもたちと一緒に遊びながら育ったことなどの経験があると考えられます。ハックの揺れる心情には、おそらくトウェイン自身の心も反映されているのではないでしょうか。

もうひとつのテーマは、「自由」です。

ハックはせっかく大金持ちのワトソン家の養子になったものの、規律正しい生活になじむことができません。また父親からも秩序のない生活を押し付けられ、ジムと旅に出ることを選びます。ジムもまた南部へ売られることを恐れ、自由州を目指しました。

誰にも縛られることなく、好きな時に好きなことをして生きていたいハックの姿と、トムの文明的な生活は対照的に映ります。

物語の最後でトムの叔父家の養子になる話が持ち上がった時も、ハックははっきりと断っていました。

ハックルベリー・フィン症候群とは?

 

ピーターパン症候群やシンデレラコンプレックスなど、症状をわかりやすく伝えるために物語のタイトルや登場人物の名前が使われることがままあります。実はハックルベリー・フィンもそのひとつ。

「ハックルベリー・フィン症候群」とは、規律を嫌い、自由を求める症状のこと。たとえば学校に通わない、仕事が長続きしない、欠勤が多い、ゲーム漬けになってしまうなど。自由をこよなく愛したハックの奔放ぶりにちなみ、心理学者のJ・C・セガンが名付けました。

児童文学の登場人物は、無垢で特別な存在であることが多いため、現実逃避や精神的成長に関連する疾患名に使われることがあるのです。

著者
マーク・トウェイン
出版日
2017-12-19