近年シリーズが発売されるほど人気のある、お坊さんが書いた本。宗教哲学を記した難しい内容ではなく、私たちと同じ目線に立ち、より生活に寄り添った身近な内容でベストセラーにもなっています。この記事では、お坊さんが書いた本のなかから特におすすめしたい作品を紹介していきましょう。
身の回りを清める掃除は、お坊さんの大切な修行なんだそう。そんな「掃除のプロ」であるお坊さんが、理にかなっていて無駄がない掃除の作法を教えてくれる作品です。
散らかって汚れた部屋=心の乱れや汚れの表れととらえ、どのように気持ちを掃除へ向かわせるかを説法してくれます。
- 著者
- 松本 圭介
- 出版日
2011年に刊行された松本圭介の作品です。作者は東京大学の哲学科を卒業した後に僧侶となり、仏教徒のウェブサイトの設立、お寺の音楽会、お寺カフェの運営などさまざまな活動をしている人物です。
単なる掃除のハウトゥー本ではないのが特徴。多くの人は掃除を面倒くさいと思い、楽しくできるのは気持ちが前向きな時だけではないでしょうか。しかし本書を読めば、掃除という行為を「修行」として日常に持ち込むことができ、自分と向きあって心を整える方法をレクチャーしてもらえます。
「お坊さんに学ぶ」シリーズとしてほかにも、食の作法や、朝・昼・夜の習慣などもあるのであわせて読んでみてください。
仏教の教えの大原則「四法印」をはじめ、「喜捨」「三毒」「自灯明」など、基本をわかりやすく解説してくれる作品。仏教の知識を身につける入門書としておすすめです。
「悟り」というと難解な印象を受けますが、まずは日常から変えていくことが第一歩だと感じられる内容になっています。
- 著者
- 長谷川俊道
- 出版日
2014年に刊行された、長谷川俊道の作品。長谷川は1543年に建設されたお寺の住職となったものの経営状況の悪さに驚き、お寺でコンサートを開催したり、保育園や児童クラブの運営をしたりと新手の経営をしている人物です。
帯に書かれた「善きことを思いなさい」という言葉が表すように、本書では幸せに生きるために必要な考え方やものの見方をわかりやすく教えてくれています。
「修行を積まなければ得られない感覚的なもの」だと思われがちな「悟り」を、仏教の教えに沿いながら「実践」として示しているのが特徴。読者の日常に寄り添った内容で心に入りやすく、自分を見つめなおすきっかけにもなるでしょう。できることから始めてみれば、何かが変わると思わせてくれる一冊です。
そもそも宗教とは何なのか、業や煩悩とは何なのか……多くの人が実は理解していない基礎知識にはじまり、仏教の歴史、はたまたお坊さんの食事など気になる事情を解説してくれる作品です。
特徴は、ネットスラングやオタク用語を駆使した軽妙な語り口。カジュアルすぎる仏教講座です。
- 著者
- 蝉丸P
- 出版日
2012年に刊行された、蝉丸Pの作品。蝉丸Pははニコニコ動画で動画配信を始めて有名になった、僧職系男子。リアル住職=リア住として、彼にしかできない仏教解説をしています。
3部構成になっていて、1部は一般人が日頃感じている仏教に関する疑問、2部は海外の仏教事情、そして3部は仏教の歴史という内容です。内容自体はしっかりしていますが、オタク的な話題と絡めながら語るため、これまで宗教や仏教に触れてこなかった若い世代の人でも親近感を抱きながら読めるでしょう。
なかなか知ることのできないお坊さんの「修行」生活を、ユーモアを交えて楽しく紹介するエッセイです。
食事や座禅、托鉢などの気になるテーマを、淡々とした筆致で語ります。
- 著者
- 玄侑 宗久
- 出版日
2009年に刊行された玄侑宗久の作品です。作者は慶應大学を卒業した後にさまざまな仕事を経験し、僧侶になった人物。一方で執筆活動もしていて、2001年に『中陰の花』で「芥川賞」を受賞しています。本書は、彼が27歳で京都の天龍寺専門道場に入門してから、実家の寺へ帰るまでの3年間の修行生活を記したエッセイです。
タイトルにある「ベラボー」とは、スタンダードから外れていることを表現した言葉だそう。読んでみると、修行の内容は想像を超える厳しいもので、一見理不尽で、体育会系の部活のようでもあります。時には行為の意味がわからないまま、理屈無しで動くこともあるのですが、一貫して自己を厳しく見つめる視線があることが感じられるでしょう。
数々のエピソードを読んでいくと、どこか浮世離れしたイメージのある僧侶たちの人間味を感じられる一冊です。
生きる意味なんて見つけなくていい、置かれた場所で咲けなくていい、夢や希望がなくても人は生きていける……自己啓発書にあるようなポジティブな言葉はなく、ストレートな表現が並んでいます。
「こうすべき」という思い込みや、前向きな価値観に縛られて苦しんでいる人に寄り添い、無理をしなくても穏やかに生きていけることを教えてくれる作品です。
- 著者
- 南 直哉
- 出版日
2017年に刊行された南直哉の作品です。作者は福井県の永平寺で20年間の修行をした後、若手僧侶の修行道場を経験。霊泉寺住職と、霊場恐山の院代を務めています。執筆活動も精力的におこない、本書は「心を軽くしてくれる」とベストセラーになりました。
生きるか死ぬか以外は大したことではないという究極の考え方を示し、理想とかけ離れた現実をどう受け入れ、どのように生きていくのかを提示してくれる内容です。辛いことに立ち向かわなくていい、意味のある人生を送らなくても十分幸せになれるという目から鱗の言葉に救われる読者も多いのではないでしょうか。心を楽にしてくれる一冊です。
「律蔵」というお経に綴られた、お釈迦様が説いた生活様式や食事、健康法などをわかりやすく解説してくれる作品です。
「薬の章」「衛生の章」「習慣の章」の3部構成で、現代の健康維持にも繋がる知恵を紹介します。
- 著者
- 太瑞 知見
- 出版日
2015年に刊行された太瑞知見の作品です。作者は大学院で仏教を学び、インドの律文献を研究。現役の僧侶でありながら薬剤師でもあるという特殊な経歴の持ち主です。
「薬の章」で紹介されるのは、お釈迦様がよいとした薬になるさまざまな食べ物について。米、ショウガ、ゴマなど馴染みのある食べ物がたくさん登場します。「衛生の章」では、鼻洗浄や口腔ケア、 耳かきなど。「習慣の章」では肥満とダイエット、入浴や睡眠など、お釈迦様が説いた規律を解説します。
健康を望む気持ちは、現代人もお釈迦様も同じです。薬にも仏教にも詳しい作者が描く含蓄のある内容と、お釈迦様の体温が感じられるような優しいメッセージを受け取ることができるでしょう。