三代目 J SOUL BROTHERSファンは必見の映画、『空に住む』が2020年10月に公開。主題歌『空に住む~Living in your sky~』の世界観をもとにした小説が原作です。メンバーである岩田剛典も出演し、主演の多部未華子とのラブシーンも期待できます。 この記事では映画の見所のほか歌詞の考察も展開!作品を深く味わうガイドとして参考にしてみてください。
2020年10月23日に映画『空に住む』が公開されます。原作の小説『空に住む』は、主題歌でもある三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(以下「三代目」)の楽曲『空に住む~Living in your sky~』の世界観をもとにストーリー化したもの。喪失感を抱え地に足がつかないような生活を送る女性が再生していくまでの物語を描きます。
映画は多部未華子が主演、EXILE兼三代目の岩田剛典も重要な役で出演するため、三代目ファンは見逃せない映画となっています。脇を固めるキャストも、岸井ゆきのや美村里江、柄本明など実力派が勢ぞろい。『私の家政夫ナギサさん』でもタッグを組んだ大森南朋と多部未華子の再共演にも注目です。
監督は、『EUREKA(ユリイカ)』で世界的にも評価された青山真治。上演される映画館などの公開情報は、映画『空に住む』公式サイトにてご覧いただけます。
この記事では、原作を読み解いての映画の見所のほか、『空に住む~Living in your sky~』の歌詞の考察も。映画とともに小説の『空に住む』の魅力もお伝えしたいと思います。
原作小説の魅力は、同時に制作された楽曲の背景が立体的に立ち上がって見えてくること。小説に登場する人物に想いを馳せれば、楽曲の歌詞に込められた真意がわかります。コンサートのパフォーマンスでも人気の高い同曲と照らし合わせながら、物語として味わってみてはいかがでしょうか。
両親を突然失った直実は、親戚夫婦の計らいでタワーマンションの高層階に愛猫のハナ(映画ではハル)とともに住むことになります。申し分ない住居や、居心地のいい小さな出版社での仕事がありながらも、彼女は大きな喪失感を抱えたまま。
ある日、マンションのエレベーターのなかで人気俳優の時戸森則と言葉を交わします。それをきっかけに夢のような叶わぬ恋だと理解しながらも、その深みにはまっていく直実。そんな時、猫のハナが難病を患い弱ってしまいます。
そんな彼女を支えるのは優しい親戚夫婦や、それぞれの事情を抱えた女友達ら。直実がどのように気持ちを再生させていくのか、穏やかに描かれる物語です。
原作小説では、ハナの闘病シーンが印象的に描かれるため、猫を飼ったことがある方は胸が苦しくなるような描写も。映画では、森則との恋愛模様や女友達との人間関係を中心に、直実が自分を取り戻していく物語が展開していきます。
- 著者
- 小竹 正人
- 出版日
『空に住む』の登場人物とキャストを紹介します。
主演の多部未華子が演じる小早川直実は、1匹の愛猫・ハナとともに都内のタワーマンションの高層階で暮らし始めます。両親の死をきっかけに、親戚夫婦の配慮によって引っ越すことになったのです。
空に近いその部屋で、彼女は心のなかに空いた穴を抱えながら生活をしていきます。あまり感情を表に出さない性格の、働く女性を演じました。ドラマ『これは経費で落ちません!』や『私の家政夫ナギサさん』でも働く女性を熱演、高い評価を得ており今作での期待が高まります。
一方の岩田剛典が演じるのは、直実と偶然出会って逢瀬を重ねることになる、時戸森則という人気芸能人。直実と同じマンションに住んでおり、2人はエレベーターのなかで出会います。
彼もまた本音をぶつけるようなことはせず、つかみどころのない雲のような存在。彼自身、EXILEや三代目でのダンスパフォーマンスで絶大な人気を得ると同時に、俳優として活躍している1人。スター俳優という自身の立場にも近い役どころを、どう演じるのか期待が膨らみます。
原作をもとに、映画で注目ポイントとなる点をいくつか紹介していきます。まずは主人公の直実と森則の関係です。どんなラブシーンがあるのか気になるところでしょう。
人気芸能人・時戸森則はちょっと悪い男。それを岩田剛典が演じるという点は見逃せません。
同じ高層マンションに住む直実と森則は、エレベーターの中で偶然出会います。そこから発展する芸能人と一般女性との恋……といういかにも「ありえない」展開ですが、そこが多部未華子と岩田剛典の演技力の見せ所でしょう。
また原作では「自分が直実だったら……」と置き換えて読むことで、さらに楽しめるかもしれません。
本作は直実とともに暮らす猫のハナが物語の鍵を握っています。トレーラー映像では、黒い毛の猫の存在を確認できます。
原作小説では難病を抱えたハナの闘病生活、そして看取るシーンが描かれます。ペットを看取る同様の経験をした方には痛いほど刺さる描写も……。今ペットと幸せに暮らしている方にとっては、いつか来るべき別れの時、飼い主としての義務を疑似体験できるかもしれません。
またペットを飼った経験がない方でも、「心に穴が開いてしまうような感情」は現代を生きている誰しもが陥りがちだといえます。映画ではその喪失感から立ち上がる直実の姿に元気をもらえるでしょう。その後も途切れることはない、ハナと直実の繋がりにも心が温まります。
原作では直実を支える親戚や、一筋縄ではいかない友人らの存在も重要です。そして映画では彼らを演じる実力派の脇役キャストも注目ポイントになっています。
直実の勤める小さな出版社の後輩として登場する、妊婦の愛子。明るく振る舞う愛子ですが、複雑な事情を抱えています。また直実の叔母である明日子。傍から見れば裕福なセレブ暮らしですが、どこか満たされない思いを抱えています。
金銭的な裕福さや周りの人に恵まれているにも関わらず、前向きになれない主人公の直実には共感しづらいという方もいるかもしれません。しかしそれぞれの事情を抱えた彼女らの登場によって、現実味を持った物語に納得しながら読み進めることができます。
直実が立ち直っていくためにもなくてはならない2人。映画では愛子を岸井ゆきの、明日子を美村里江が演じます。自分の周りにもいてほしい!と思わせる実力派の演技に、直実同様元気をもらえます。
また、優しい叔父を鶴見辰吾、直実や愛子とも関係がある作家を大森南朋、謎に包まれた人物として永瀬正敏が出演。見所を作る「イケオジ」たちにもぜひご注目ください。
小説とCDのセットという異例のリリースとなった、三代目の楽曲『空に住む~Living in your sky~』。その作詞と本作の著者も務める小竹正人とはどのような人物なのでしょうか。
新潟県出身の彼は、東京の高校に進学後カリフォルニア州立大学に留学します。その際に日本語詞の英訳を依頼されたことから、作詞家の道を歩むこととなりました。
1990年代頃から日本のアーティストの楽曲も手掛けています。代表的な提供アーティストとしては小泉今日子のようなアイドルから、中島美嘉、久保田利伸などの歌手までさまざま。
EXILEと同じLDHに所属する彼は、もちろんEXILEや三代目の楽曲も多く手掛けています。ドラマ主題歌にもなったEXILEの『Heavenly White』や三代目のシングル『LOVE SONG』など。特に三代目の『花火』は音楽配信サイトの「2012年最も泣けた曲ランキング」で1位に選ばれる人気曲です。
その歌詞の特徴は、実りのない恋愛ばかりしてきたと語る小竹正人自身の思いから紡がれるセンチメンタルな歌詞。共感して泣いたというファンも続出しています。
本作が小竹にとって初の著作ですが、2作目『三角のオーロラ』も小説とCDのセットで出版されました。EXILE TAKAHIROの歌う『三角のオーロラ〜青い春〜』の世界観を根底に、ダンスに打ち込む男子高校生の青春物語を描いています。 本作が好きな方は、ぜひこちらも手に取ってみてください。
- 著者
- 小竹正人
- 出版日
本作には猫が登場しますが、作者の小竹正人自身も空子(そらこ)という猫を飼っているそう。なにやらこの曲との関連性を感じます。1冊の本になるほどの物語が詰め込まれた、主題歌『空に住む〜Living in your sky〜』の歌詞を紐解いてみましょう。
映画のタイトルにもなった「空に住む」という言葉の意味は、歌詞を読むだけでは明示されていません。小説を読むことで、主人公が高層マンションに住んでいるということとリンクしていることが感じられます。
しかし、ただ高いところに住んでいることだけを意味しているのではないようです。全体の歌詞を読むと、「もう逢えない状況になってしまった存在が、空から誰かのことを見守っている」という内容が読み取れます。
また、
「慰める言葉も知らずにいた僕を許して」
「ありがとうって言えないまま」
(『空に住む〜Living in your sky〜』より引用)
のような表現から、この歌詞の主体は「言葉による表現を持たない存在」であるようにも感じます。これ以上はネタバレとなってしまいますので、ぜひ主題歌とともに小説を読み、映画を見てまた楽曲を味わって歌詞の意味を考えてみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 小竹 正人
- 出版日
映画『空に住む』がどのような世界観の作品かおわかりいただけたでしょうか。最後に、本作の監督である青山真治について紹介します。
福岡県出身、高校の頃はバンド活動に勤しんでいた彼が映画を撮り始めたのは立教大学に通っていた時のこと。1990年代からフリーで活動を始め、浅野忠信主演の『Helpless』で劇場映画の監督としてデビューします。
初期の作品には、バイオレンス要素も含ませつつ、結婚をめぐるテーマが強く滲んでいますが、決して、結婚=幸せということではなく、それぞれ愛とは何かということを深く考えさせてくれる作風になっています。
その後の代表作には『EUREKA(ユリイカ)』や『共喰い』など。人間の心の深層に眠る感情を表現することに定評のある監督です。本作で描かれる直実と森則の恋愛模様も、ただのファンタジーではない複雑な心理描写が期待できます。
そして小竹正人に続き青山真治もまた、しーちゃんという猫を飼っていたことがあり、2012年まで連れ添っていたそう。そんな経験を持つ監督だからこそ、本作での喪失のつらさや希望へ向かっていく主人公をリアルに描けるのでしょう。
- 著者
- 青山 真治
- 出版日
楽曲が小説になり、映画化されるという経験はなかなかないもの。三代目ファンの方はもちろん、生活になにか物足りなさを感じている方におすすめの物語となっています。映画とともに主題歌をより深く味わうためにも、作詞家の小竹正人が綴った言葉による小説を読んでみてはいかがでしょうか。