幼いころに読んだ児童書の内容を、ふと思い出すことはありませんか。今回は、大人になってから改めて読み返されたり、自身の子どもに贈ったりと読み継がれているロングセラー作品を紹介していきます。どれも30年以上人気があるもの。「名作」と呼ばれる所以はどこにあるのか、読んだことがある人もぜひもう1度手にとってみてください。
これは、僕のお父さんのエルマーが小さい頃のお話。
ある晩エルマーは、野良猫からかわいそうなりゅうの話を聞いたエルマーは、助けに行くために旅支度を始めます。そのりゅうは、雲から落ちたどうぶつ島で捕えられ、働かされているというのです。
どうぶつ島に着いたエルマーは、りゅうが繋がれていると聞いた川を探します。しかしどうぶつ島の動物たちは、侵入者を許しません。時には、お腹を空かせた猛獣に出くわすこともあり……。果たしてエルマーは、りゅうを助け出せるのでしょうか。
- 著者
- ["ルース・スタイルス・ガネット", "ルース・クリスマン・ガネット", "わたなべ しげお"]
- 出版日
アメリカの児童文学作家ルース・スタイルス・ガネットの作品。1948年に刊行され「ニューベリー賞」を受賞しました。日本では1963年に刊行され、約60年経った今でも読み継がれています。
何度読んでも興奮させられるのが、エルマーの知恵と行動力です。機転を利かせたアイディアでリュックサックに詰めてきた道具を使い、いくつもの障害を乗り越える冒険にワクワクさせられっぱなし。心優しく言葉遣いは丁寧で、どんな時も冷静な判断ができる少年の姿に、子どもの読者は憧れるのではないでしょうか。
またスタイルスの義母にあたるルース・クリスマン・ガネットの絵も必見です。登場する動物たちの表情は豊かで、読者を物語の世界へ誘います。かわいらしい地図もお見逃しなく。
チャーリーは、チョコレートが大好きな少年。でも貧しい暮らしの彼がチョコレートを手にすることができるのは、誕生日ぐらいです。
彼が住む町には、謎に包まれた巨大なチョコレート工場がありました。ある時新聞に、工場の見学が許される記事が掲載されます。ところが見学できるのは、世界中で販売されているチョコレートのなかのたった5枚に印刷された「黄金の切符」を手にした者だけとのこと。
運よくその1枚を手にしたチャーリーは、巨大な工場に足を踏み入れます。工場の謎がしだいに明かされていき……。
- 著者
- ロアルド・ダール
- 出版日
- 2005-04-30
イギリスの小説家ロアルド・ダールの作品。日本では1972年に刊行されました。映画やミュージカルなどの派生作品も有名です。
物語を盛り上げるのは、個性的な登場人物たち。チャーリーは、貧しいながらも豊かな心をもつ少年で、工場見学の経験を通じて精神的に成長していきます。また他の当選者は、一癖も二癖もあるわがままな子どもたちばかり。彼らを甘やかす保護者の様子に、ドキリとさせられる大人も多いのではないでしょうか。そして10年もの間姿を見せなかった工場主も、いかにも風変わりな人物です。
思わぬアクシデントに襲われ、子どもたちは次々に消えていきます。子ども心を惹きつける展開はもちろん、ブラックユーモアたっぷりの物語は大人が読んでも楽しめるでしょう。
学校でいじめを受けている孤独な少年ジョヴァンニ。父親がラッコの密漁をしているという噂が流れていたからです。ジョヴァンニ自身は病気がちな母親を支えるため、印刷所で働きながら通学していました。
あるお祭りの日のこと。ジョヴァンニは牛乳屋に向かう途中、広場で唯一の親友のカムパネルラを見つけます。ところが声を掛けようとした時に、いじめっこたちに見つかり、からかわれてしまうのです。
嫌になって丘へと走ったジョヴァンニ。その耳に届いたのは鉄道の音でした。銀河へと向かう車内で、びしょ濡れになったカムパネルラを見つけ、2人は話しを始めます。
- 著者
- 宮沢 賢治
- 出版日
- 2000-12-18
宮沢賢治の未定稿の遺作とされ、代表作のひとつでもある『銀河鉄道の夜』。誰しも1度は耳にしたことがあるタイトルではないでしょうか。1934年に発表されて以来、長く読み継がれてきました。
本書のテーマは「本当の幸せ」。孤独だった主人公は、親友や鉄道で出会う人たちと触れ合い、生きる目標を見つけるまでに成長していきます。
大人になってから読んでみると、幻想的な美しさや少年の成長だけでなく、物語の緻密な設計に驚かされることでしょう。ジョバンニが銀河鉄道に乗車する前段に銀河に関する授業の場面があったり、牛乳というモチーフも表現を変えながら随所に登場しています。物語の構造にも目を向け、味わってみてください。
モモは、みすぼらしい姿をした小さな少女。とある町のはずれにある円形劇場の跡地にいつの間にか住みついています。彼女に話を聞いてもらうとなぜか悩みが解決できるため、彼女の周りにはいつも町の人々が集まっていました。
ある日、町に灰色の男たちが現れます。彼らの巧妙な口車にのってしまい、町の人たちは自分たちの「時間」を預けてしまうのです。人々の心は荒み、余裕を失っていきます。そんななか、モモは時間を取り戻す旅に出るのですが……。
- 著者
- ミヒャエル・エンデ
- 出版日
- 2005-06-16
ドイツの児童文学作家ミヒャエル・エンデの作品。日本では1976年に刊行されました。各国で翻訳出版されたなかでも特に日本での人気が高く、ドイツに次ぐ発行部数を誇っています。
本書のテーマは「時間」です。時間貯蓄銀行、時間泥棒、時間が生まれる瞬間など、さまざまな設定を用いてその大切さや使い方を教えてくれるでしょう。利子のシステムが登場することから、時間をお金に変換し、現代の貨幣経済に一石を投じているのではないかという考察もできます。
豊かさとは一体何なのか、生きるとは何なのか。1度読んですべてを理解するのは難しいかもしれませんが、小学校高学年以上であれば一人で読めるでしょう。子どものうちに読んでおきたい一冊です。
「十円やす」というあだ名で呼ばれる少年、畠山則安。毎日日記をつけているのですが、ある日、お母さんが自分の日記をこっそり読んでいることに気づきました。
そこでお母さんを驚かそうと、「明日の日記」を書くことを思いつきます。でたらめ、めちゃくちゃなことを綴るのですが、まさか日記に書いたことが本当に起こるなんて……!?
- 著者
- 矢玉 四郎
- 出版日
- 1980-09-05
矢玉四郎が手掛ける通称「はれぶた」シリーズの1冊目。1980年に刊行されました。アニメ化もされ、人気が衰えることのないロングセラー作品です。
則安が書く日記がとにかく面白い!タイトルの「はれときどきぶた」も、彼の日記に登場する天気予報の一節です。どのような空模様を想像しますか?
「明日の日記」は、お母さんを驚かせようとしたものだったのですが、とうとう日記に書いていないことまで起こってしまいます。まさかまさかの連続で、スピード感がたまりません。
岐阜でかわいがられていた黒猫のルドルフ。魚を盗って逃げる途中で長距離トラックに乗り込み、遠く離れた東京に来てしまいました。見たこともない大都会の街で、虎柄のボス猫に出会います。
「自分の呼び名はいっぱいあってな……」と自己紹介をした虎猫の名前を「イッパイアッテナ」と勘違いしたルドルフ。ここから2匹の野良猫生活が始まるのです。
- 著者
- 斉藤 洋
- 出版日
- 1987-05-20
シリーズ累計発行部数100万部を誇る斉藤洋の作品。1987年の刊行から30年以上のロングセラーで、読書感想文全国コンクールの課題図書にもなりました。
純粋なルドルフと人生経験が豊富なイッパイアッテナのやり取りが魅力的。べらんめえ口調で自らを教養のある猫とするイッパイアッテナは、頼れる兄貴のよう。ルドルフは文字の読み書きを習いながら、なんとか岐阜に変える方法を模索します。そんななか、イッパイアッテナがブルドックに襲われて大怪我を負う展開に……。
2匹の友情物語にグッとくる読者も多いはず。イッパイアッテナが発する言葉は哲学的なものも多く、大人が読んでも楽しめるでしょう。