「ヤングマガジンサード」で連載中の漫画『魔女と野獣』をご存じでしょうか?新人漫画家の作品でありながら、重版に重版を重ね、さらに海外4ヵ国での刊行も決定するほどの人気ぶりです。 「魔女」を巡り、棺桶を背負う男と獣の目をした少女が激しい戦いをくり広げるダーク・ファンタジーである本作。この記事ではそんな『魔女と野獣』の見所やキャラクター、既刊7巻分のあらすじをご紹介します。
漫画『魔女と野獣』は、佐竹幸典によるダーク・ファンタジー作品です。人にとって災厄を運ぶとされる「魔女」と、その魔女に呪いをかけられたギド、その相方の魔術師アシャフの攻防を描いた本作は、独特な世界観と激しい魔術バトルが魅力の作品です。
こう書くと、悪い魔女を倒す冒険ファンタジーのような話かなと感じてしまうかもしれません。本作の主人公のギドは、むしろ悪者です。本作のキャッチコピーには、ピカレスク・ファンタジーとも銘打たれています。ピカレスクとは、悪漢小説、悪者小説とも言われる形式のこと。そんなキャッチコピーがつくくらいに、主人公はなかなかの極悪なのです。
しかし、だからといって好感度がまったく低くならないのが本作の魅力。ゴシック、ハードボイルド、ピカレスク、ファンタジー。そんな単語に興味が惹かれる方は、きっと『魔女と野獣』を面白く感じていただけるはずです。
少女の姿をしたギドと、オールバックと長身が特徴の男アシャフは、とある目的から「魔女」を探し、町から町へと移動していました。この世界で「魔女」は、災いと呪いを運ぶ存在。魔女は人々にとって災厄そのもののような存在です。
しかし、ある日、訪れたギドとアシャフが訪れた町では、魔女が英雄のように扱われていました。迫害と偏見を乗り越え、魔女が町の人々と交流している様子は、一見すると美しくも思えるものでしたが、実は、魔女には恐ろしい秘密があったのです。
一方、心の底から魔女を憎むギドは、復讐心を隠そうともせず、魔女と激しい戦いをくり広げます。しかし魔道の圧倒的トップに立つ存在である魔女に歯が立ちません。しかし、そんなギドとアシャフには、とある秘策があって……。
神々しいまでに美しく、圧倒的迫力で描かれるバトルシーンが魅力。魔女の呪いを巡る、美しくも残酷なダーク・ファンタジーです。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
本作の主人公の1人。見た目は小柄な可愛らしい美少女ですが、その姿は「魔女の呪い」によって変えられてしまった姿です。一時的に呪いを解いた時の姿は、筋骨隆々で荒々しい大男。本来の姿では魔女をも圧倒するすさまじい力を発揮します。
自分に呪いをかけた魔女のことを激しく憎んでいます。魔女を前にするとほとんど見境のないような状態で突っ込んでいき、相棒のアシャフからはそのたびに呆れられるほど。復讐に燃える時のギドは、もはや主人公というより悪役のような極悪な顔をします。
本作のもう1人の主人公で、ギドとコンビを組む男です。魔響教団に属する魔術師で、その実力は教団のなかでも一流です。冷静沈着で紳士的な態度を取ることも多く、何かと暴走しがちなギドを制御する役割も担っています。
ただ、オールバックでタバコをふかし、さらには棺桶を背負っているという姿から、本来の性格とは裏腹に、周りからは怪しい人間に見られることもしばしばです。
「吸血鬼の女王編」で登場する吸血鬼の元王です。吸血鬼の中に存在する勢力の1つ「夜族」の王でしたが、現在の女王との勝負に負けて失脚。復讐のため、魔響教団と接触し、ギドやアシャフの協力者として登場しました。
その性格はまさに傍若無人。少女の姿をしたギドに対しても血を飲ませるように迫ったり、ギド達とは何かと衝突することになります。
ギドに「魔女の呪い」をかけた張本人である魔女。圧倒的な力を持つ魔女のなかでもさらに強い力を持つ魔女で、それは世界最強の魔女の一角と言われるほどです。
正確な年齢はわかりませんが、肉体を乗り換えることが可能なことから、永遠に近い命を得ているようです。わざとギドと接触したりするなど、謎の多い魔女です。
ここからは、1巻ずつのあらすじとそれぞれの見所を紹介していきます。
始まりの巻である『魔女と野獣』の第1巻。本巻では、ギドとアシャフの目的、ギドが魔女を探す理由が明かされます。収録されている話は、「魔女と紅蓮の街」、「平和な日々」、「魔女の戯れ」の前半になります。
「魔女と紅蓮の街」では、ギドやアシャフの目的や関係性、さらに本作における「魔女」という存在についてがしっかりと描かれており、始まりの話らしく、キャラクターや世界観など、本作の魅力などがわかる展開となっています。特に「魔女」とギドが激しいバトルをくり広げるシーンでは、ギドの秘密の一端も明らかになります。
一見すると美少女姿のギドは、「魔女の呪い」によるもの。アシャフが抱えている棺の中に、ギドの本当の姿が隠されていたのです。勢いのある絵の力もあって、つい一気に読み進めてしまいます。読めばきっと続きが読みたくなること間違いなしです。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
『魔女と野獣』第2巻には、前巻からの続きである「魔女の戯れ事件」の後半と、アンデッド絡みの事件を描く「死霊魔術編」、そして新たなる魔女の事件「剛毅なる魔女と魔剣」が収録されています。
前巻から続く「魔女の戯れ事件」では、意外な真実が明かされることになります。前巻では、魔女の犯行と思われる猟奇連続殺人が起こり、解決の糸口が見つからないままギドやアシャフ、それに地元の警察署員で魔術師でもある女性・キーラ達は劣勢を強いられていました。
本巻では遂にギド達が魔女の正体を突き止めるのですが、それは予想を裏切る衝撃的なものでした。心が痛くなるような結末がどんなものなのか、ぜひ本編を手に取って確認してみてください。
また、「死霊魔術編」では、ギドとアシャフが所属する魔響教団から新たな魔術師が登場したり、新たな魔女事件が始まったりするなど、ますます勢いを増す物語から目を離せません。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
前巻から始まった「剛毅なる魔女と魔剣」。本巻では、まるまる1冊使ってこのエピソードが描かれていきます。このエピソードでの見所は、新たな魔女、そして魔女狩りのエキスパートである「聖騎士団」です。
聖騎士団は、魔女を狩ることにかけては絶対的な力を持つ集団で、基本的に魔女による事件は聖騎士団の管轄となっています。ですが、魔術によって魔術の事件を解決し、魔女を勧誘することもある魔響教団にとっては厄介な相手でもありました。
自信の呪いを解くため、そして復讐を果たすために魔女を狙うギドと、魔女を狩ろうとする聖騎士団の攻防などもある本エピソードですが、ストーリーが進むにつれ、話は意外なほうへと展開していきます。
事件の中心であると思われていた魔女ヘルガの意外な過去、そしてタイトルにもある魔剣の存在。進めば進むほど様々な要素がからみ合い、複雑になっていくストーリーにぜひ注目してみてください。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
2巻から続く「剛毅なる魔女と魔剣」のエピソードが、本巻でようやく完結します。序盤では聖騎士団とギド、黒幕と思われていた魔女の三つ巴の戦いになるかと思われていました。しかし、魔女ヘルガの意外な過去が明かされ、さらに聖騎士団内の裏切り、聖騎士団の大隊長クーガさえも上回る魔女狩り専門部隊処刑人の登場など、様々な人物や思惑がからみ合い、物語はどんどん複雑になっていきました。
そんなに複雑だと少し分かりにくいのでは、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、分かりにくいというよりも奥深くなっていくという印象です。そこがまた、本作の魅力の1つなのかもしれません。
また、本エピソードでぜひ注目したのは、聖騎士団大隊長のクーガです。第三大陸第六大隊の大隊長という立場で、氷の大精霊と契約したという精霊魔術師の実力は、魔道のトップである魔女とも対等に戦える力を持ちます。氷を使って戦うマックは、敵ながらとてもかっこいいです。ぜひ注目してみてください。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
前巻から始まっていた「永遠なる魔女」のエピソード。本巻では、それに加えてギドとアシャフの出会いの物語である「神秘なる魔女」も収録されています。
本巻は、冒頭から緊迫した雰囲気から始まります。ギドの前に突如として現れた魔女アンジェラ。彼女こそ、ギドに呪いを刻み付けた魔女でした。求め続けた魔女の登場に、ギドは怒りを爆発させ、アンジェラと激しくぶつかり合います。しかし、圧倒的なアンジェラの力の前にギドはどうすることもできず、アンジェラは姿を消してしまったのでした。
アンジェラとの再会に荒れ狂うギドを見たアシャフは、その姿に、出会ったばかりの頃のギドを思い出していました。アシャフとギドが出会ったのは、3年前。魔女を巡る事件の中でのことでした。
過去エピソードでは、「剛毅なる魔女と魔剣」で初登場した処刑人も登場します。聖騎士団もあまり知らない存在のようでしたが、アシャフとギドはすでに出会っていたことがあったようです。2人の関係があらためて明かされる本巻からも目が離せません。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
前巻ではアシャフとギドの出会いエピソードである「神秘なる魔女」に加え、「吸血鬼の女王編」も収録されていました。第6巻は、その続きとなります。
魔女アンジェラの残したメッセージをもとに、ギドとアシャフが訪れたのは、「階層世界(フォール)」と呼ばれる場所。文字通り異世界へと通じる場所でした。第4階層オルエンシア・セットに棲んでいたのは、吸血鬼と呼ばれる存在でした。
このエピソードで舞台となっているのは、言ってみれば異世界です。本作は、魔女や魔術の存在するファンタジーな世界ですが、そのなかでも階層世界はかなり特殊な場所のようです。ギドとアシャフも困惑することが多く、苦戦する場面もありました。
だからこそなのか、ギドとアシャフがピンチに陥ることも多く、ハラハラする展開が続きます。ただ、アンジェラがなぜギド達をここへ向かわせたのかなどの謎も多く残されていて、先が気になる1冊となっています。
また特別読み切りとして「魔女と気まぐれ」という漫画も収録されており、作者・佐竹幸典の原点も知ることができるのはファンとしても嬉しいところ。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
『魔女と野獣』最新刊である第7巻は、前巻から続き「吸血鬼の女王編」になります。吸血鬼の女王がアンジェラへ続く手がかりを持っていると知ったギドとアシャフは、吸血鬼達の催しに潜入することになりました。正体がバレるなどのピンチに陥りつつも少しずつ女王へと近づいていくギド達。
本巻で注目したいのは、ギド達の協力者として教団から派遣されてきたダンウォードとオスカーです。オスカーはアシャフと同じ魔術師ですが、ダンウォードは吸血鬼。しかも、吸血鬼の勢力の1つである「夜族(グニル)」のかつての王でした。
実は、このダンウォードは、100年前に今の女王に負けて失脚していたため、女王に対して強い復讐心を抱いていたのです。一方、オスカーはダンウォードとコンビを組む魔術師。プライドの塊のようなダンウォードと、気配りのできるオスカーとの掛け合いも、本巻の見所の1つといえるでしょう。
吸血鬼の世界というゴシックな世界観も魅力な最新刊です。
- 著者
- 佐竹 幸典
- 出版日
さて、『魔女と野獣』がアニメ化するということはあるのでしょうか?
残念ながら、2021年2月時点で『魔女と野獣』がアニメ化するといった情報はありません。美しい絵と激しいバトル、アニメになったらさぞ映えるだろうなと思うのですが、今はまだ期待して待つしかないようです。
それでは、次のコミックスはいつ発売になるのでしょうか?
現在の最新刊である7巻は、2020年の10月に発売になりました。『魔女と野獣』が掲載されている「ヤングマガジンサード」は月刊誌なので、収録される話数から考えると、8巻はおそらく2021年の5月頃くらいになるのではないかと予想できます。2021年2月に発売された月刊誌では、「吸血鬼の女王編」がついに最終話を迎え、次の展開が気になる局面となっています。
コミックス派にとってはしばらく続きはお預けになりますが、アニメ化の期待もしつつ、これまでの話を読み返して続きを待ってみてはいかがでしょうか?
『魔女と野獣』を描くのは、佐竹幸典(さたけこうすけ)という漫画家です。
佐竹幸典とはどういった人物なのでしょうか?プロフィールがあまり公開されていません。『魔女と野獣』を連載しているヤングマガジン公式サイトにも詳細は掲載されておらず、大手のECサイトでも、『魔女と野獣』以外のコミック作品は確認できませんでした。
新人漫画家であることは間違いありませんが、新人にしてこれだけ人気の作品を描くのですから、これからどんな新たな作品が発表されていくのか、今からとても楽しみに感じる方も多いのではないでしょうか? これからますます注目していきたい漫画家です。
本作の最新情報は、『魔女と野獣』 - 「ヤングマガジン」公式サイトにてご確認いただけます。
いかがでしたか?ダークでピカレスクな世界観は、本作でしか味わうことのできない独特な空気を放っています。だからこそ他作品にない魅力があり、多くの人が本作を手に取るのだと思います。独特だからこそ好みが分かれることもあるかもしれませんが、これを機会に、美しくも妖しい魔女を巡る物語をぜひ一度、味わってみてはいかがでしょうか。