擬人化された人間の細胞がキャラクターとして登場する「はたらく細胞」シリーズ。漫画の累計発行部数は700万部を超え、テレビアニメ化もされています。今回は、お茶の間の幅広い層から支持されているシリーズの概要と、主なキャラクターの紹介、そして派生作品の解説を通じて人気の秘密に迫ります。
雑誌「月刊少年シリウス」で連載されていた漫画作品「はたらく細胞」。作者の清水茜は2014年に読み切り作品『細胞の話』で「少年シリウス新人賞」の大賞を受賞し、2015年から連載されることになりました。清水が通っていた日本マンガ塾で卒業制作に取り組んでいた頃、当時高校生だった妹に「細胞について学べる漫画を描いてほしい」と頼まれたことがきっかけで誕生したそうです。
人間の体内にいる細胞を擬人化したキャラクターが登場するのが特徴で、主に免疫系の細胞は人間に、病原体はモンスターになっています。
またスピンオフ作品が相次いで発表されていて、小説、図鑑、絵本、テレビアニメ化などもされています。2018年に本庶佑が「ノーベル医学生理学賞」を受賞した際に、彼の研究内容を描いた「オプジーボ版」も話題を呼びました。
本作に登場するキャラクターは、細胞名や細菌名がそのまま使われ、個々の名称を持っていません。そのため、同じ細胞同士で話す際には識別番号や先輩、後輩などと呼び合います。また細胞の機能は、職業や技能として表現されていて、個々の細胞はそこに所属しているという設定です。では主なキャラクターを紹介していきましょう。
赤血球
体内に酸素を供給し、二酸化炭素を肺に送る役割を担う細胞です。作中では栄養や薬品なども運び、栄養源のブドウ糖は、アイスクリームや饅頭に置き換えられています。
識別番号AE3803
赤毛をショートカットにした運送屋の新人女性です。純粋で真面目な性格ですが、とにかく方向音痴で、赤芽球(赤血球の幼少期)の頃からの迷子になることがよくありました。なぜかトラブルの現場に居合わせることが多く、そこでさまざまな細胞や細菌と出会います。
識別番号DB5963
出血多量の人体に輸血として運ばれた赤血球で、太い眉が印象的なリーダー格の青年です。とっつきやすい性格が幸いし、もともと体内にいた赤血球とも馴染んでいます。
白血球
体内に侵入したウイルスや菌を撃退する細胞です。本作では、主に好中球と呼ばれる種類の白血球が描かれます。血管内をパトロールする警備隊の設定で、侵入者に容赦はありません。その働きから他の細胞や血球から恐れられていますが、平時は温厚な性格です。
識別番号1146番
右目が眉に隠れた男性で、好中球課の所属です。冷静な性格で広い交友関係がありますが、異物を発見すると態度が一変し、異物を排除します。
識別番号4989番
くせ毛の男性で1146番の友人です。語尾に「~けろ」と付ける癖があります。自由奔放な性格の持ち主で、好中球が活躍するストーリーでは頻出しますが、細菌との闘いで対外に排出されそうになったことも。
血小板
損傷した血管壁を塞ぐ役割の細胞で、作中では修理屋として描かれています。白血球に肩車されて登場するのは、白血球と結合することで細胞の隙間を移動できる能力があるためです。
巨核球
骨髄中最大の造血系細胞で、「巨核球」と書かれた帽子、白の短パン、黒のゴム長靴という出で立ちをした女性です。教育の役割を担っていることから、「ししょー」の異名も持っています。
- 著者
- ["講談社", "シリウス編集部", "はたらく細胞製作委員会"]
- 出版日
2019年に刊行された、小学生向けの作品。『はたらく細胞』のキャラクターを紹介した図鑑です。アニメ作品の絵を多用して細胞の働きを紹介するほか、細胞がどのように病原体と対峙しているのかなどをわかりやすく紹介しています。
清水の描くキャラクターは、細胞の特徴を捉えたインパクトのある表現が魅力です。医療の専門家ではないため文献をあたりながら制作したそうですが、前提知識のない子どもが視覚からも理解できるよう工夫されています。
インフルエンザや熱中症など、小学生にも知っておいてほしい病気が掲載されているのも魅力的。ルビもついているのでひとりで読むことができるでしょう。
- 著者
- ["講談社", "シリウス編集部", "はたらく細胞製作委員会"]
- 出版日
『はたらく細胞 人体のふしぎ図鑑』の続編で、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、代表的なウイルスを紹介した図鑑です。ウイルスと細菌の違いや、これらに人体がどのように対応しているのかなどを解説しています。2021年に刊行されました。
ひとつの項目がコンパクトにまとめられているので、無理なく理解を深めることができます。細胞同士の関係から免疫の仕組みも知ることができる内容になっていて、大人が読んでも為になる一冊です。
- 著者
- ["講談社", "シリウス編集部", "はたらく細胞製作委員会"]
- 出版日
人体の中をじっくり覗ける、仕掛け絵本です。2021年に刊行されました。
窓をめくると骨や臓器が出てきて、体の中が一目瞭然。消化や五感の仕組みを、お馴染みの人気キャラクターたちが絵と仕掛けでわかりやすく紹介してくれます。
キャラクターのナビゲートと、仕掛けをめくることで情報が飛び込んでくる面白さもあり、難しさは感じません。子どもが疑問をもった時にすぐに開けるよう、身近に置きたい作品です。
- 著者
- ["講談社", "シリウス編集部", "はたらく細胞製作委員会"]
- 出版日
「人間の体は何個の細胞でできているでしょう?」など、人体の仕組みや免疫細胞の働きなどについて、キャラクターたちがクイズを出題する形式の作品です。2020年に刊行されました。ページをめくると答えが出てくる構成で、ひとりで読んでも複数人で出題しあっても楽しめるでしょう。
自分の体で細胞たちが日々たゆまぬ活動をしていることを改めて知り、愛おしく思う読者も多いはず。初めて本シリーズに触れる方にもおすすめ。「はたらく細胞」シリーズは、面白いだけでなく、自分の体を大切にする気持ちを育んでくれる作品なのです。