美しい絵本は、持っているだけで気持ちが高まりますよね。思い出した時に読み返したり、絵を見たりしているだけでも、幸せな気分になります。開いたページから部屋中に広がっていく素敵な世界。創造力がどんどん膨らみ、非日常の世界に浸れる絵本をご紹介します。
- 著者
- 出版日
- 2015-04-15
昔、王様とお妃様が待望の女の子の赤ちゃんを授かりました。国を挙げて、お姫様の誕生のお祝いをします。
この国には、13人の仙女がいました。しかし、お祝いの宴には、そのうちの12人しか招待しなかったのです。招待されなかった仙女は、怒ってお姫様にある呪いをかけてしまい……。
「眠り姫」という題名の物語で記憶にある方も多いのでは、と思います。グリム童話の有名な話を、エロール・ル・カインの絵が、より一層神秘的に見せています。中世の絵画を思わせるような美しい絵本です。
エロール・ル・カインは、20世紀の挿絵家。47歳で亡くなるまでに数々の作品を残した彼は、「イメージの魔術師」と言われています。この『いばらひめ』もそうですが、彼の作品は今でも世界の人々に愛され続けているのです。
- 著者
- 甲斐 みのり
- 出版日
- 2015-04-10
「こいしくて かなしくて さみしくて ひとりを、しる でも、わたしは いま、ふたり」(『ふたり』より引用)
この言葉だけでも、なんとも言えない切なさが、心の奥深くに染み入ってきませんか?
あたたかい愛の言葉と、とても可憐で儚げな絵。それらが、繊細な世界を作り上げ、ページいっぱいに広がっていきます。言葉は、詩のようにも感じ、そこはかとなく心に染み入りますよ。絵には、まるで宝石がちりばめられているように愛の言葉と連動して、きらきら輝いているように感じるから不思議です。
理由はさまざまですが、強い孤独を感じる時がありますよね。そのような時にこそ、この絵本を手にとっていただきたいのです。きっと、自分にそそがれている愛の存在を感じることができるでしょう。
- 著者
- ["宮沢 賢治", "清川 あさみ"]
- 出版日
- 2009-11-26
放課後、毎日、活版所で働いているジョバンニが主人公です。星祭りに行くことになったジョバンニ。彼は、そこで同級生にいじめられてしまいます。その同級生の中に幼馴染のカムパネルラがいることに気づくのでした。
多くの日本人が読んできた、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の世界を、刺繍等の煌びやかなアート作品で表現しています。
この絵を作成した清川あさみは、ビーズや刺繍で煌びやかな作品を生み出すアーティスト。清川作品で、ジョバンニとカムパネルラの銀河鉄道での旅をたどっていくと、同じ物語でもまた、違う印象で受け取れるかもしれません。
何も遮るものがない漆黒の夜空に瞬く星たちが、自分の手の中でひしめき合っているような、美しい絵本。『銀河鉄道の夜』の世界が色鮮やかに蘇ります。
- 著者
- 甲斐 信枝
- 出版日
- 1985-04-30
1985年に発行された大型の科学絵本です。1930年生まれの絵本作家の甲斐信枝が、50代の時に書いた作品。5年の間、観察してきた雑草の世界を絵本にしました。写真では感じる事のできない、絵で描かれているからこそ感じるやわらかな雰囲気に、とても魅力を感じるのです。
季節で変わっていく雑草の姿など、普段では気にもとめない世界が、目の前にとてつもない生命力で広がっていきます。周りの景色と一体化してしまっている、雑草が生えている空地や広場、道路の脇。それらの場所が、この絵本を読み終わった時には、いつもと違う特別な場所に思えてくるでしょう。
絵本にっぽん賞、講談社出版文化賞を受賞した作品。親から子、子から孫へと大切に読み継いでいきたい一冊です。
- 著者
- エラ・フランシス・サンダース
- 出版日
- 2016-04-11
自分の国では当たり前の感覚でも、国が変われば、想像もつかなかったり、理解がなかなかできなかったりすることってありますよね。世界中に移動しやすくなり、どの国の人々とも関わることが多くなった現代では、互いの価値観や考えも理解し合うことが大切になってきました。
この絵本の中で、ちょっとした衝撃を受けたのが、フィンランド語の「ポロンクセマ」という言葉。休憩せずに、トナカイが移動できる距離、約7.5キロを意味するそうです。また、イヌイット語の「イクトゥアルポク」は、「だれか来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出て見てみること」を意味するそうです。
知らない国の空気を少しだけ肌で感じたような感覚におちいる不思議な絵本なのです。
以上の5冊をご紹介しました。絵と物語でメルヘンの世界へ連れて行ってくれるものや、絵だけで楽しませてくれるもの、また、未知なる世界に誘ってくれるもの等々。一冊ごとそれぞれに、楽しみ方が見つかりそうですよね。人とは違う自分だけの楽しみ方を見つけることも面白いと思います。みなさまのお気に入りの一冊が見つかり、幸せな時間が増ますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。