「星新一の孫弟子」と称されている、ショートショート作家・田丸雅智。お笑い芸人のピース・又吉や女優の中島朋子も絶賛するほどの実力を持っています。 田丸雅智の作品のおすすめを4作ご紹介します。
田丸雅智は1987年に愛媛県松山市で生まれ、愛媛県立松山東高等学校を経て東京大学工学部、東京大学大学院工学系研究科を卒業。
2011年、「物語のルミナリエ」に『桜』が掲載されてデビューしました。
2013年、ショートショートの第一人者である星新一が「唯一の後継者」とした江坂遊が選考委員を務める「樹立社ショートショートコンテスト」で『海酒』が最優秀賞を受賞しています。
執筆にとどまらず、小・中学校での出張授業、一般向けワークショップも行っているそうです。
「分身ができる」という石鹸を妻が持ってきました。できた妻の「分身」たちは正反対の性格を持っていてアドバイスをくれるので、どちらの意見を採用するかを決めればいいというものらしい。
夫は、妻とそのふたりの分身と暮らしはじめるのですが、まもなく分身たちは本体である妻の行動に干渉をしはじめるようになり……という内容の「白妻、黒妻」のほか、「吸血木」、
「おいらんちゅう」などの18作が収録された、田丸雅智のショートショート集です。
- 著者
- 田丸 雅智
- 出版日
- 2016-09-06
こたつを囲んで過ごすような、ひと昔前の家族の風景を絶妙なバランスで、奇妙かつシニカルに描いています。
ほんわかしたり、にやっとなったり、ぞくっとしたり、多種多様なお話が詰まっており、この一冊で色んな味わいがあり、お得な気分になれてしまうかもしれません。
言葉遊びが駆使され、奇想天外なクライマックスが展開されていきます。タイトルもちょっと変わっているので、どんな内容なのか気になって、次の話、次の話とページをめくっていけます。
一作一作が短いので、忙しい日常の合間に、息抜きで読んで欲しい田丸雅智の一冊です。
あの名作、アラビアンナイトを思い出すタイトルの田丸雅智作品ですが、シェヘラザード姫が出てくるわけではありません。
ゴロツキどもが欲しいと念じたものが出てくる、というヒモくじ屋で引いたヒモの先についていたものはいったいなんだったのかが描かれる「ヒモくじ屋」を含め、多魔坂神社に集まる怪しげな屋台や蚤の市、祭りなどを描いた田丸雅智のショートショート20本が収録されています。
恐怖、笑い、郷愁、恋、シュールが織り込まれていて、お話にでてくる商品の中には「これほしい!」なんてものもあったりして、そこはとても楽しい部分です。
実際に縁日を見ているような気分にもなります。
- 著者
- 田丸 雅智
- 出版日
- 2016-07-13
カバーイラスト通り、夏祭りの雰囲気が満載なのですが、それは普通のお祭りではありません。一度踏み入れたら二度と戻れなさそうな幻想的な世界が繰り広げられています。
オチを楽しむ以上に魅力的だなと思ったのは「雨ドーム」です。雨を閉じ込める雨ドームや露草に雨を閉じ込める作り方がとても魅力的でした。
短編小説よりもさらに短いショートショートですが、その幻想的な雰囲気はしっかりと味わえます。とても魅力的な世界観なので、おすすめの田丸雅智作品です。
瀬戸内海に面した町で育った田丸雅智ならではの、海を感じさせる20のショートショートが収録されています。青を基調にした美しい装丁からして海の気配がただよっているのです。
一作目が「ふぐの恩返し」なのですが、まずタイトルから中身が想像できなくて、いきなりわくわくさせられてしまいます。
「蜜」というショートショートでは、全体的にブラックで怖い仕上がりになっています。不幸を集めて来るミツバチなんて、やはりぞっとしてしまいますよね。
- 著者
- 田丸雅智
- 出版日
- 2014-10-23
月を作るうさぎのお話の「月工場」も絶妙な仕上がりに。他にもタイトルからでは展開が想像できない物語がぎっしり詰まっています。
最後にはショートショートコンテストで最優秀賞をとった「海酒」が海の余韻を残して終わるのです。この田丸雅智の作品を読むと表紙デザインの意図もわかるという仕掛けになっています。
ショートショートですから、話に連続性はないのですが、構成の妙でひとつのつながった作品を読んだような気分になることでしょう。
久しぶりに再会した古い友人と入ったシガーバーで、差し出された葉巻を口にしたら、子どもの頃の光景がよみがえってくるという「夢巻」の他、田丸雅智のショートショートが20本収録されています。
意外性があって、シュールな作品が多いです。科学研究者が人間の心理を追及した結果の凝縮に思えました。
帯には「星新一の流れをくむ」とありますが、スマートかつスタイリッシュであった星作品とタイプが異なります。のちの作品群に比べるとまだ雑多としていて、粗削りな部分もありますが、田丸雅智の魅力として光っているので、そこが読者を惹きつけている理由でしょう。
- 著者
- 田丸 雅智
- 出版日
- 2016-07-14
また、装丁や本文に使われている紙も作風に合わせてあり、この作品集を生かそうとする田丸雅智の愛情に溢れています。
そんな部分もぜひ楽しんでいただきたいです。
これからのショートショート界の先頭を切るであろう、田丸雅智の魅力的な作品をぜひ楽しんでくださいね。