麻生幾作品おすすめランキングベスト5!社会派サスペンスを描く

更新:2021.12.15

日本の危機管理や国際関係に関するドキュメントを多く手掛ける麻生幾(あそう いく)。記者だった経験を活かし、表に出なかった情報なども含め、かなり緻密な内容ばかりです。 麻生幾のおすすめ作品を5作ご紹介します。

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複数のペンネームを使用する覆面作家・麻生幾

麻生幾は1960年生まれで大阪府出身のジャーナリストで作家です。

1996年、週刊文春の記者として活動しながら、政府の危機管理システムについて描くノンフィクション『情報、官邸に達せず』を発表。

文藝春秋に発表した「北朝鮮潜水艦敦賀湾に漂着す」をもとにした麻生幾初のフィクション『宣戦布告』は映画化されています。

メディアへの露出を避けており、紙メディアにのみサングラス着用の顔写真を公開していましたが、2015年にBS日本で放送された深層NEWSではじめて素顔で出演しました。

政治や社会問題が絡んだサスペンス、ノンフィクションを多く執筆しています。

5位 『情報、官邸に達せず―「情報後進国」日本の悲劇』

小泉政権から村山内閣時代までの大事件を扱い、危機管理体制の舞台裏を生々しく再現し、「国家の情報機能」の弱体ぶりを告発している麻生幾のドキュメント作品です。

事前にわかっていたのに、国外退去となった金正日の長男、4時間半もかかった放射能事故の対応、オウム真理教教祖逮捕を確認できないまま閉会した対策会議……などが取り上げられています。

著者
麻生 幾
出版日

「起きるはずのないこと」が起きたときどうするのか――。

その際に官僚主導の日本で多く取られるのは「起きるはずのないこと」は「起きなかった」としてしまおうとする小細工だというのですから、この国の未来は大丈夫なのだろうかと、とても不安になってしまいました。確かにこの麻生幾の指摘に納得させられます。

どうあることが正しいのか、間違っているのか、改めて真剣に考えるためにも一度読んでみていただきたいです。

4位 『極秘捜査 - 政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」』

史上はじめて化学兵器・サリンでの無差別テロリズムをおこなったうえに、クーデターも計画していたオウム真理教と、政府、警察、自衛隊、特殊部隊との「戦争」のすべてを記した麻生幾のノンフィクションです。

日本中を震撼させたオウム事件を、警察、自衛隊の視点から描いています。公安警察、自衛隊についてもしっかりと取材がなされ、捜査の全貌が明らかにされており、専門性の高い内容です。

著者
麻生 幾
出版日

あの事件はまさに「戦争」で、自衛隊も警察も国民を守るために必死に戦っていたのだと改めて実感させられます。この本に描かれている捜査関係者方の並々ならぬ努力が伝わってきて、現代における日本の治安が良いというのも、そんな方々の支えがあってこそなのだと強く感じました。

サリン事件の2日後に強制捜査が予定されていたにもかかわらず、先を越されたことで、より彼らの「戦争」は激しくなったのかもしれません。

あの悲痛な事件が過去に日本で起こった、という事実から目を逸らさず、ぜひ読んでほしい麻生幾の作品です。

3位 『奪還』

「国境なき医師団」の一員としてフィリピンで活動していた日本人女医が消息不明となり、捜索の依頼を受けたのは、フィリピンで暮らし、自己訓練を続ける元・海上自衛隊特別警備隊(バッドボーイズ)隊員・河合斌でした。

捜索を開始した河合は、意外な真実を知ることに……。

著者
麻生 幾
出版日
2013-07-12

実在の元・海上自衛隊特別警備隊初代先任小隊長をモデルにして書かれた作品で、麻生幾いわく「40%以上は事実」なのだそうです。

麻生特有の専門用語を使った臨場感あふれる描写が続き、難しさはなく、アクション小説として楽しむことができます。それでいて、他のアクション小説と異なる雰囲気があるのは麻生幾の知識が現実に裏打ちされたものだからなのでしょう。

アクション小説が好きなら、絶対のおすすめ作品です。

2位 『ZERO』

警視庁公安部外事二課で中国を監視してきた捜査官・峰岸智之は、中国大使館による諜報活動事件の手がかりをつかみ……。

1947年の誕生以来、存在自体が国家機密である全国公安警察の頂点“ZERO”――警視庁公安部外事第二課に属する警部補を主人公とした麻生幾の警察小説であり、スパイものです。

スパイなどといっても、諜報活動は映画のように派手でも華やかでもなく、情報提供者の確保と管理が大半を占め、その描写がかなり現実的なのです。
 

著者
麻生 幾
出版日

物語は、日本政府の密命を受けて中国で諜報活動を行っていた工作員が中国政府に追われている問題をどうするかが描かれていきます。

官僚、縄張り争いをする警察庁と警視庁と防衛庁、中国の国家安全部、人民解放軍などが次々と登場し、その緊迫感たるや凄まじいものです。

かなり長い話で、最初が少々難しくはじまっていますが、そこを乗り越えてしまえば、ページを捲る手を止められない勢いにはまっていくことでしょう。麻生幾のおすすめ作品です!

1位 『加筆完全版 宣戦布告』

原子力発電所のある敦賀半島沖に北朝鮮の潜水艦が漂着し、対戦車ロケット砲で武装した特殊部隊が密かに上陸して、どこかへと逃走してしまい……。

彼らの目的がわからないまま、政府はなす術をなくし、責任転嫁、焦燥するばかりでした。

2001年当時の日本で、有事が発生した場合に起こると推測されることを描く物語なのですが、想定外の事態に全く対応できない政府、警察、自衛隊の姿がリアルで、かなりぞっとします。
 

著者
麻生 幾
出版日
2001-03-15

その後、関連法制は整備されてだいぶ変わっているようとは言われても、なにがどう変わって、本当のところはどうなっているのか、知るすべがないのが恐ろしいと感じさせられる麻生幾の作品です。

自衛隊が、各種政令がなければスムーズに運用できない点をさりげなく会話の中に散りばめているのですが、その政令自体が存在していないという矛盾が描かれています。

内閣と防衛庁、警察庁と警視庁の対比がリアルで、圧倒されて、ページを捲る手が止められなくなるはずです。

日本の未来について考えつつ、読んでみてください。

豊富な知識、データ、情報に裏打ちされた作品が魅力の麻生幾。難しい題材を扱ってはいますが、決して難しいものではありませんので、ぜひとも手に取ってみてくださいね。

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