はるこ原作の『酒と恋には酔って然るべき』は漫画作品でありながら、作中には日本酒の解説や豆知識などが豊富に描かれています。日本酒一覧としても非常に重宝しそうです。その上、ラブストーリーとしても秀逸で文句なしの面白さ。そんな本作の各巻あらすじはもちろん、登場する日本酒や魅力についても紹介します。
電子書籍サイトのコミックシーモアが開催した、2020年にヒットしそうな電子コミックを選ぶ「みんなが選ぶ‼電子コミック大賞2020」。この大賞として選ばれたのが、『酒と恋には酔って然るべき』です。
原作は、美波はるこ名義としても活動しているはるこ。主に女性漫画雑誌にて活躍しています。『酒と恋には酔って然るべき』は、2018年より秋田書店の「エレガンスイブ」にて連載が開始され、2021年現在は既刊6巻が発売中。コミックス累計100万部を突破する大人気漫画です。
この作品は、「酔っぱライター」として酒や食、旅に関する書籍を多く発表している江口まゆみが原案協力しています。江口は、これまで20か国以上の国を訪問。日本酒はもちろん、焼酎、ビール、ワイン、ウィスキーの知識も豊富な「酒」の専門家です。本作は、日本酒好きなOLが主人公。江口が作品に携わることで、漫画の枠を超えた日本酒の知識や情報も満載です。
実在する蔵元に協力を仰ぎ、実際に販売されている日本酒が多く登場します。日本酒にまつわる豆知識を大人の嗜みとして知っておくのはいかがでしょうか。
32歳独身のOL・藤井松子が主人公。周囲の友人は次々と結婚、出産するなか、松子は毎日の家飲み(主にワンカップ酒)が楽しみな普通のオトナ女子です。会社の隣の席の後輩くん、今泉が気になりますが、イマイチ発展せず……。今泉とのある日のサシ飲みで、普段クールな彼が可愛くなることを知り、ますます惹かれていきます。そんな松子に、さらなる出会いも訪れます。日本酒好きな松子が、お酒と恋に酔いしれる日々を描いたラブストーリーです。
松子を取り巻く会社の同僚や後輩の物語もリアルな部分も多く、幅広く男女ともに共感できるのでは。日本酒に絡めながら、オトナのままならない恋愛事情が描かれている魅力的な作品となっています。
- 著者
- 江口 まゆみ
- 出版日
『酒と恋には酔って然るべき』に登場する主人公・松子とその周囲の仲間たちを紹介します。
主人公。32歳独身。住宅関連会社の営業部。根っからの日本酒好き。周囲の友人はみな結婚や出産をするなか、ひとりカップ酒家飲みの楽しさを実感する日々を送る。しばらく恋愛からは遠ざかっていた松子だが、会社の後輩・今泉を気になり始める。そして新たな出会いもあり、波乱の恋愛に突入する。日本酒好きが講じて社内に日本酒部を作り、部長となる。
松子の同部署の後輩で席がお隣。異動したばかりで部署での付き合いも悪かったが、松子に影響され徐々に参加するように。松子に何かとちょっかいを出してくるが、他部署の美森に告白され付き合うことに。
松子の彼氏。別会社の人間だが、日本酒好きがきっかけで親しくなり付き合うことになる。男女問わない友人関係が多い。松子との付き合いは順調かと思われたが、会社を辞めてニューヨークで働くことに。結局日本に止まることにした松子とは中途半端な関係が続く。
松子の同僚でよき友人。販売部。同棲をしていた彼と結婚し安心・安定の生活を選んだ。何かと松子によきアドバイスをくれる貴重な友で、時に辛辣なことも。なんだかんだ言いつつ、松子のことを常に気にかけてくれる。
今泉狙いの白石の後輩。今泉に告白し付き合うことに。結婚にあまり乗り気でない今泉との付き合いとは別に、婚活をしている。
伊達の同期の女性。飲み友達のひとり。かなり親しい関係のため、松子が嫉妬する相手。最上は何も気にしておらず、松子ともサシ飲みするほど。会社を辞めて、伊達と同じようにニューヨークに渡米する。
白石の部署の後輩。白石が既婚であることは承知の上で憧れている。白石目的で日本酒部に入ってくる。
松子と白石の同僚。今は落ち着いているが、入社当初は女性遍歴が荒れていた。酒には弱いが、なぜか日本酒部に入部してくる。今は本気で好きになった人がいるらしい。
32歳で独身のOL、藤井松子。周囲の友人の結婚、出産ラッシュを尻目に、カップ酒で家飲みする毎日を送っています。久しく恋愛と縁のない日本酒好きな松子は、次にできた彼氏と一緒に飲むための大事な酒、「新政No.6 Xタイプ」を冷蔵庫に保管していました。
そんななか、松子の部署に異動してきたクールな後輩、今泉とサシ飲みすることに。酔うと可愛くなるそのギャップに、今泉を意識し始める松子なのでした。そして、今泉との関係をはっきりさせるため、大きな決断をする松子。今泉を家飲みに誘いますが……。
つかず離れずの松子と今泉の今後の行方や松子の家の新政No.6 Xタイプは誰と飲むのかなど、気になる松子の恋がちょっとずつ動き始めていきます。恋愛物語としても、日本酒カタログとしても楽しめる作品です。
1巻で登場する日本酒を紹介します。気になる日本酒名をタップすると、公式情報を見ることができますよ。実際に飲んでみたい方は参考にしてみてください。
末廣Dr.野口カップ(福島県/会津)
ゆめごころ(福島県/会津)
菊正宗 樽酒ネオカップ(兵庫県/灘)
甲子 立春朝搾り(千葉県/酒々井)
獺祭ショコラ(山口県)
月の桂 にごり酒(京都市/伏見)
菊盛 春一輪(茨城県/常陸野)
五橋 桃色にごり(山口県)
新政No.6 Xタイプ(秋田市)
- 著者
- ["はるこ", "江口 まゆみ"]
- 出版日
後輩・今泉の思わせぶりな態度に翻弄される松子でしたが、意を決して、今泉を家に誘いました。ついに松子の新政No.6 Xタイプが解禁される日がと思いきや、美森と今泉が付き合っているとの情報が浮上。すぐさま、松子の告白計画は白紙に戻されるのでした。
そんな折、梅酒が縁で年上のイケメン・伊達と出会うことに。日本酒という共通の話題に近しくなる2人。自然な形で付き合うことになります。順調にお付き合いが進む松子。一方、今泉との関係は、なんだかぎくしゃくして……。
松子にやっと春の到来が!しかも、相手は同じ趣味を持つイケメン男子。伊達との恋の行方も気になりますが、今泉ともなんだかいい関係になれそうでなれず……。
今泉の彼女・美森のパンチのあるキャラと対比して、30歳過ぎても恋愛に翻弄される松子が可愛いとさえ思えてします。また、松子にいつも的確な助言をする白石ですが、2巻の「だから本気の女に競り負けるんだよ」は特に名言でした。ぜひ、作中で確認してみてください。
2巻で登場する日本酒を紹介します。
越乃景虎 梅酒(新潟県)
越乃景虎 龍(新潟県)
十六代 九郎右衛門 十三度台九郎右衛門 無濾過生原酒(長野県)
千福 夏にごり(広島県)
船中八策 ひやおろし(高知県)
真澄 銀撰パールライトカップ(長野県)
ふなぐち菊水一番しぼり(新潟県)
純米吟醸 唐猫様 トンボ 花の舞酒造謹製(静岡県)(公式の純米吟醸のページです)
七賢 スパークリング 星ノ輝(山梨県)
- 著者
- ["はるこ", "江口まゆみ"]
- 出版日
クリスマスディナーを楽しむ松子と伊達。そこへ、なんと今泉と美森カップルもやってくることに。その店は、以前、美森から教わった店だったのです。気まずい松子をよそに、伊達と美森の話は盛り上がっていきます。
そこで、伊達が職場にサシ飲みをする女性の同僚がいることが発覚し、そのことで頭がいっぱいになる松子。伊達にやめてとも言えず悶々とする日が続くのですが……。一方、今泉と美森カップルはなんだか雲行きが怪しくなっていました。
「付き合う上で、信頼関係を持てるかどうかはお互いさま。問題を打開出来たらさらにいい関係になるかどうかもお互いの気持ちがあってこそ」と今泉から聞かされる松子。つい伊達と自分に置き換えて考えてしまうのでした。
恋愛もさまざまな考え方があって人それぞれ。松子も伊達とは日本酒のことでは気が合っても、こと恋愛となると異なる考え方も。それは、今泉と美森の2人も同じこと。ただ好きなだけではうまくいかないのがオトナの恋愛。そんなことをつい考えさせられる3巻です。
3巻で登場する日本酒を紹介します。
天鷹 國造(栃木県)(日本酒の口コミサイトへのリンクです)
獺祭 純米大吟醸50(山口県)
大七 箕輪門(福島県)
東一 純米大吟醸(佐賀県)
春鹿 奈良の八重桜(奈良県)
南部美人 上撰カップ(岩手県)(南部美人 上撰の情報です)
- 著者
- ["はるこ", "江口まゆみ"]
- 出版日
仕事の関係で静岡に出張に行くことになった松子。今泉のヘルプで資料を届けることになったのでした。取引先の社長が、日本酒好きの松子をぜひ連れていきたいお店があると言ってくれます。静岡の美味しい地酒と料理を堪能した松子でしたが、今泉とサシ飲みすることに。そこで今泉から衝撃の告白を聞いてしまいます。出張先でも、相変わらず今泉に振り回される松子でした。
それとは別に伊達の飲み友達が女性ということが気になって仕方のない松子。伊達の実家に遊びに行ったことで、歴代の彼女の写真も見るハメになります。伊達の周囲にはいつも女性がいて、なんだか気が気でありません。それでも、大人な伊達との結婚を意識し始めます。そんななか、伊達からも重大な告白が待っていました。果たして松子の反応は……。
松子の会社で日本酒部が発足。松子が部長となり今泉も部員となります。そんな今泉は、なんとなく松子の周りをうろうろとしている様子。そこへ伊達の衝撃の告白が……最大のみどころです。悩み多き松子。でも、やっぱり今回も日本酒は美味しそうです。
4巻で登場する日本酒を紹介します。
磯自慢 本醸造(静岡県)
喜久酔 純米吟醸 松下米50(静岡県)
にゃんかっぷ ラスタ・純米吟醸(静岡県)
月見酒の上善如水 純米大吟醸(新潟県)
鏡山 純米ときもカップ・時の鐘カップ(埼玉県)(鏡山の情報です)
菊姫 山廃純米(石川県)
三井の寿 ワイン酵母で造った純米吟醸酒(福岡県)
- 著者
- ["はるこ", "江口まゆみ"]
- 出版日
伊達からの「会社を辞めて海外に行こうと思っている」発言に衝撃を受ける松子。さらに、「松子はどうする?」との伊達。いい機会だから、お互いのビジョンを話し合っていこうとの提案に、ただただ呆然としてしまいます。
伊達は、年末年始にかけてニューヨークに下見に行ってしまいました。ひとりでいたくない松子は、日本酒部若手の今泉と新庄、最上を家に招きます。一旦はみな帰りましたが、なぜか今泉が戻ってきます。またしても、今泉の行動にハラハラさせられる松子。
そんななか、日本に戻ってきた伊達にアメリカに連れて行きたいと言われ、戸惑う松子でしたが……。複雑な気持ちのまま向かった社員旅行でも、大胆な行動に出る今泉。揺れ動く松子の心情から目が離せない第5巻です。
この巻では、誰もが知っているであろう大関の上撰 金冠ワンカップが登場します。飲み進めていくと、ラベルの裏にいろいろ書かれている遊び心が特徴のお酒です。松子の飲んだワンカップに書かれている「ありったけのふつうの幸せ」という言葉。思わず涙する松子でした。ぜひ作中で見つけてみてください。
5巻で登場する日本酒を紹介します。
七冠馬 純米生酒 しぼりしな(島根県)
大関 上撰 金冠 ワンカップ(兵庫県)
天青 吟望 純米酒(神奈川県)
いづみ橋 純米吟醸 恵 青ラベル(神奈川県)
奈良萬 純米大吟醸(福島県)
- 著者
- ["はるこ", "江口まゆみ"]
- 出版日
本格的に旅立ってしまった伊達。結局、日本での生活を選んだ松子はこれまで通りの生活を送ります。伊達との関係もはっきりしないまま、今泉との仲も少しずつ近づく松子。
そんなある日、日本酒部で夏祭りに行くことに。松子の同期の名取との仲を疑う今泉は、かなり積極的です。日本酒部の一泊合宿では、思わず衝撃の行動に出る今泉でしたが……。
それでも、なかなか進展しない松子と今泉。新庄の家で日本酒部の飲み会を行っていると、とうとう今泉から告白。それに応える松子も驚きの行動に出るのでした。
松子と今泉もとうとうかと思いきや、なんと松子の携帯には伊達からのメッセージが。波乱の幕開けとなりそうな第6巻。松子、今泉、伊達の三角関係はどうなっていくのでしょうか。松子の恋愛事情も、今泉の積極的な行動でかなり動き出してきました。
今泉とのことを相談するため、白石を蔵見学に誘う松子。それもまた日本酒絡みか!と思わず突っ込みたくなりますが、これはこれで蔵見学の参考になりますよ。
6巻で登場する日本酒を紹介します。
日高見 芳醇辛口純米吟醸 弥助・純米大吟醸 助六(宮城県)
川鶴 讃岐くらうでぃ(香川県)
古伊万里 カップ酒 NOMANNE(佐賀県)
屋守 純米中取り無調整生/NEW RAINBOW 貴醸酒 無濾過生原酒(東京都)
紀土-KID-純米酒 カップ(和歌山県)(紀土の公式サイトです)
- 著者
- はるこ
- 出版日
この物語の主人公・松子は32歳の普通のOL。周囲の友人が結婚、出産ラッシュを迎えるなか、独り身を謳歌しています。同僚で親友の白石は、同棲していた彼との結婚を決めました。後輩の美森は、彼氏がいながら婚活をするほど。
当の松子は、不器用で真っ直ぐすぎる性格からか、恋愛においても空回りばかりです。でも、そんな主人公だからこそ、読者の共感を誘うのでは。気になる後輩に振り回されっぱなしの松子は、人間的で魅力的です。
「酒と恋には酔って然るべきなの‼」と豪語する松子。酒に恋に酔い、人生に迷いながら生きていく姿をつい応援していきたくなる。そんな素敵な物語です。
『酒と恋には酔って然るべき』には非常にたくさんの日本酒が登場します。主人公の松子がとにかく日本酒好きで、その酒への愛は時に、好きな相手を凌ぐほど。
原案協力に「酔っぱライター」こと江口まゆみが参加しているだけあって、その知識も相当なものです。作中、日本酒についての基本から豆知識なども掲載されており、社会人なら知っておくのもおすすめです。松子の彼氏との出会いも酒がきっかけ、取引先の社長に気に入られたのも酒がきっかけ。実際の生活においても、あり得ない話ではありません。
それは、酒がコミュニケーションツールのひとつでもあるからでしょう。ビジネスマンの嗜みとして、交友関係を保つ役割として、人生の楽しみとして酒を知ることもいいことかもしれませんね。ただし、飲み過ぎには注意です。
この物語に登場するキャラクターは、みな魅力的な人物ばかり。主人公の松子はもちろんのこと、松子の気になる後輩・今泉の普段は小憎らしいのに、飲むと可愛くなるところや白石の常に冷静で的確なアドバイスをしてくれるところなど、松子を取り巻く人物がとにかく面白いのも作品の魅力のひとつ。
そのほかの人物でも、恋愛と結婚について常にクール考え方を持つ美森、若い頃はめちゃくちゃな恋愛ばかりしていた名取、白石が既婚としりつつもつい憧れてしまう新庄など個性的なメンツばかり。特に、大人の雰囲気を持ちつつ、常に人が集まってくるような松子の彼氏・伊達なども素敵です。
カップ酒片手に漫画を読めば、自分もその世界の住人になれるような気がするかもしれませんね。
話題の漫画『酒と恋には酔って然るべき』は「エレガンスイブ」にて連載中です。秋田書店の公式ページでは、既刊6巻すべての試し読みができます。
エレガンスイブ 2021年 08 月号
2021/6/25
また、セブンイレブン店舗・セブンネットショッピング限定販売で、2021年6月に発売された「じゃらん酒旅2021」では、『酒と恋には酔って然るべき』描き下ろし5Pが掲載されています。日本酒部メンバーが、それぞれのおすすめのお酒とつまみを紹介。漫画で紹介したものもあれば、ここでしか紹介されていないお酒も掲載されていますよ。こちらもぜひ、おすすめです。
*秋田書店の公式ページでの試し読み
日本酒の知識も得られ、ラブストーリーとしても楽しめ1度に2度おいしい漫画『酒と恋には酔って然るべき』。ぜひ、2回目以降読む時は、作中で紹介されたお酒を用意して読んでみてください。まるで、作品の中に入り込んでしまったかのような気持ちになれますよ。
ホンシェルジュ認定ライターの偏愛
長年ホンシェルジュを支える本好きライターたちが、「これについて書きたい!」と作品選定から企画・執筆した記事を集めました!