『ウマ娘シンデレラグレイ』売切れ続出!アツいスポ根漫画を最新巻まで紹介

更新:2021.8.26

2021年3月のリリース以来、人気が過熱しているソーシャルゲーム『ウマ娘プリティーダービー』。『ウマ娘シンデレラグレイ』はそのスピンオフ作品で、オグリキャップを主人公にしたスポ根漫画です。史実準拠のストーリーが面白く、漫画ならではの表現力、演出でゲームに劣らない人気。売り切れも続出するほど!この記事ではそんな『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力や見所、元ネタについてご紹介していきます。

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熱いレース展開にシビれる『ウマ娘シンデレラグレイ』ネタバレ紹介!

作品概要

『ウマ娘シンデレラグレイ』(以下、「シンデレラグレイ」)は2020年6月から集英社の青年漫画雑誌「週刊ヤングジャンプ」で連載されているスポーツ漫画です。アプリゲーム『ウマ娘プリティーダービー』(以下、「ウマ娘」)の公式スピンオフで、ゲームにも登場するオグリキャップを主人公に据えた作品。

ゲームの「ウマ娘」は実在の競走馬を元にして、擬人化された美少女キャラクターによるレースを楽しむ育成シミュレーションです。ハイクオリティの3DCG、練り込まれたゲーム性、感動的なストーリーで2021年3月の配信開始から即座に人気が沸騰しました。関連コンテンツはもちろん、登場するキャラクターをきっかけにして過去の競走馬に関心が向かい、現実の競馬も盛り上がるという逆転現象も起きています。

その人気ぶりと魅力とは?

「シンデレラグレイ」はそんな状況に後押しされ、既刊4巻までの書籍版電子版の合計が150万部を突破しました(2021年8月現在)。各地の書店やネット販売で売り切れが続出し、「次にくるマンガ大賞2021」コミックス部門第2位に輝くなど、名実ともに大人気作品となっています。

当初ゲームの波及効果で注目されたのは間違いありませんが、「シンデレラグレイ」がここまで売れているのは、純粋に漫画として面白いからに他なりません。

キャラクターの個性が際立つ美麗な作画に、史実をベースにした胸躍るライバル達の激突。一見すると典型的な擬人化萌え漫画かと勘違いしてしまいますが、「シンデレラグレイ」の本質は秀逸なスポ根漫画です。競走馬モチーフという点で言えば、往年の名作ジャンプ漫画『みどりのマキバオー』を想起させる部分もあります。

あまりにも熱い展開の数々に、ファンからはアニメ化待望の声も出ている「シンデレラグレイ」。この記事ではその魅力と見所を史実と照らし合わせながら、たっぷりとご紹介していきます。

『ウマ娘シンデレラグレイ』地方のシンデレラが人々の夢を背にして走る【あらすじ】

物語の舞台は現実によく似たパラレルワールド。そこには生物としての馬がいない代わりに、馬耳や尻尾を持つ人間によく似た「ウマ娘」がいました。ウマ娘は例外なく競争が得意で、人々はその走る姿に感動し、いつしか彼女達のレースはアイドル性と力強さを兼ね備えた世界的エンターテインメントになっていました。

もちろん日本も例外ではありません。しかし「皇帝」シンボリルドルフが一線を退いて以来、花形であるはずの日本中央レース界はどこか精彩を欠いていました。……ある芦毛のウマ娘が、岐阜カサマツに現れるまでは。

そのウマ娘の名はオグリキャップ。

地方で燻っていたトレーナー北原穣(きたはらじょう)は彼女の中に、人々が夢を託すたぐいまれなスターの素質を見出しました。北原の指導を受けたオグリキャップは見る見る頭角を現し、地方の枠組みを遥かに超える圧倒的強さで激走。やがて日本中にその名が轟き、オグリキャップは「怪物」と呼ばれようになります……。

著者
["久住 太陽", "杉浦 理史", "伊藤 隼之介", "Cygames"]
出版日

主要キャラクター紹介!元ネタへのリスペクトがすごい

「シンデレラグレイ」には競走馬をモチーフにしたウマ娘が多数登場しますが、数え上げていけばキリがないため、ここでは主要キャラクターに絞ってご紹介していきます。

オグリキャップ

まずは主人公オグリキャップ。元ネタは第2次競馬ブームを牽引し、「芦毛の怪物」と称された同名の名馬です。初登場時カサマツトレセン学園所属でしたが、地方に収まる実力でないことから、単行本2巻でスカウトを受けて中央に転属します。

パッと見でクールな印象を受ける芦毛(白毛と黒毛の入り交じった灰色の毛並みのこと)のウマ娘ですが、実はかなりの天然です。物言いはぶっきらぼうなものの、ズレた発言で場を和ませることもしばしば。大食いの多いウマ娘の中でも、特に桁外れの健啖家です。

赤白黄色の3色のセーラー服が特徴で、これは史実でオグリキャップに騎乗した武豊の勝負服に由来しています。この配色に関しては「芦毛の(白い)怪物」という史実の異名から連想して、「連邦の白いやつ」こと初代ガンダムをオマージュしているのかもしれません。

ベルノライト

そんなオグリキャップをサポートするベルノライト。劇中のレースにはほぼ出走しないものの、実家がスポーツ用品店ということもあって知識が豊富で、公私に渡ってオグリキャップを支える縁の下の力持ちです。

ベルノライトは同名馬のいないオリジナルウマ娘ですが、オグリキャップと同時代に笠松競馬場で走っていたツインビーがモチーフでしょう。コナミの同名ゲーム『ツインビー』のパワーアップアイテム「ベル」と、主要人物ライトをかけ合わせた名前と思われます。コナミはスポーツクラブの経営でも有名なので、そこから実家のスポーツ用品店が設定されたのでしょう。

北原穣

そしてオグリキャップのトレーナー、北原穣。担当ウマ娘と東海ダービーを制覇するのが夢で、無名トレーナーながら的確なアドバイスによって、オグリキャップの才能を伸ばしていきます。40代近いおっさんですが、キャラクター間における立ち位置は完全にヒロイン。

北原はオグリキャップの転属関連で見せた複雑な言動から推察するに、史実における笠松時代の馬主と調教師、騎手の3人をミックスした人物のようです。ちなみに北原が作中で一度口にする自称「キタハラジョーンズ」はオグリキャップの弟、オグリトウショウの幼名「インディジョーンズ」が元ネタの可能性があります。

競馬とスポ根の面白さを両立する『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力

「シンデレラグレイ」が最初に注目されたのはゲーム「ウマ娘」の影響ですが、その後爆発的に売れたのは、1つの作品として優れていたからに他なりません。

史実を落とし込んだ絶妙なアレンジ、胸の躍る活躍と格好いい演出、そして「シンデレラグレイ」で描かれる新たな「ウマ娘」世界の視点。ゲームのファンだけでなく、競馬ファンも唸らせる本作の3つの魅力を、ここから詳しくご紹介していきます。

『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力1:非常に優れたスポ根漫画

「シンデレラグレイ」最大の魅力は、実は漫画としての面白さにあります。各キャラクターの走りに賭ける情熱。レース本番までの練習の積み重ね……。それらが時に小ネタを挟みつつも丁寧に展開されるので、史実の競馬をまったく知らなくても、スポ根モノとして問題なく楽しめるようになっています。

とはいえ、単にスポ根というだけだと読む人を選んでしまいがち。「シンデレラグレイ」は可愛さの中に格好よさもあるキャッチーな作画なので、老若男女関係なく受け入れやすくなっています。

ストーリーの魅力として、ライバル同士のデッドヒートの熱さは完全に正統派少年漫画のそれ。全力のオグリキャップがホラー漫画の怪人じみた異質なタッチで描かれたり、「稲妻」の異名を持つウマ娘が帯電現象を起こしたりと、けれん味たっぷりの誇張表現はバトル漫画顔負けの迫力です。

さまざまなやりとりの中で垣間見える、ウマ娘達の豊かな感情表現にも要注目。顔つきだけでなく、馬耳の動きまで駆使した微妙な感情の発露が見事です。言葉とは裏腹な(あるいは言葉以上の)想いが、手に取るようにわかります。

さらに演出の素晴らしさもずば抜けています。見せ場でしっかり見開きを使ったかと思えば、意表を突く繊細な描写(特に2巻、3巻ラスト)もあり、作画担当・久住太陽の表現力にはただただ脱帽するしかありません。用語や競馬を知らなくても、ただ読んでるだけでワクワクさせられます。

全体的には少年漫画のテイストに近いですが、夢や希望だけでなく現実の厳しさを見せつけられる、青年漫画ならではのほろ苦い展開も見所です。このように「シンデレラグレイ」は「ウマ娘」や競馬を抜きにしても、漫画好きの読者が楽しめる非常に優れたスポ根作品となっています。

『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力2:史実とリンクしたストーリー

スポ根漫画らしい激闘も見所ですが、卓越したストーリーも忘れてはいけません。読者をアツくさせる「シンデレラグレイ」の物語。「ウマ娘」としてのアレンジや脚色はもちろんされていますが、ほぼ史実通りということに驚かされます

格下の地方から中央へ移籍して破竹の快進撃、芦毛馬の外見とシンデレラ(灰かぶり)の一致……記録だけ見れば、名実ともに絵に描いたようなシンデレラストーリーに思えるでしょう。しかし史実のオグリキャップが歩んだ道は、決して順風満帆とは言えませんでした。

最初の馬主と調教師のこだわりと挫折、2度の馬主交代と無茶な出走ローテーション、そして日本競馬界に一石を投じたクラシック登録問題……。数々の苦難を経てなお、オグリキャップは見事に走り続けました。そしてそんな地方出身の馬が、エリート揃いの中央競走馬たちを薙ぎ倒していくさまに人々は熱狂しました

こうした実際の出来事の光と影も、「シンデレラグレイ」にしっかり反映されています。語り尽くせないほど波瀾万丈だった史実が、擬人化されることによってよりドラマチックかつ感動的展開に変化しており、往年の競馬ファンなら思わず目頭が熱くなるはずです。再現といえば、オグリキャップの天然大食いなキャラ付け柔軟な体を活かした独特な走法も史実を汲んだものです。これら競馬ファンのツボを突く設定も非常に好評です。

「シンデレラグレイ」は事前知識なしで読んでも充分面白いですが、元ネタのオグリキャップを知っていればいるほど、より一層楽しめる作品となっています。

『ウマ娘シンデレラグレイ』の魅力3:世界観の広がり

作品の面白さを繰り返しご紹介してきた「シンデレラグレイ」ですが、「ウマ娘」のメディアミックスとして読んでも興味深い点があります。それは世界観の拡張です。

「ウマ娘」は基本的に、現実の中央競馬をモチーフとした中央レース=トゥインクル・シリーズがメインとなっています。一方で地方競馬に相当するローカル・シリーズについては、ゲームの一部シナリオで軽く言及される程度で、具体的にどんな状況かまったく不明でした。

そんななかで発表された「シンデレラグレイ」。オグリキャップの出身地であるカサマツレースにスポットが当てられたことで、地方の実態がようやく判明しました

作中の説明によると現実の地方競馬場に対応する日本各地、全15箇所にレース場(おそらく地方トレセン学園も)があり、大半の地方ウマ娘は基本的に所属地方のレースにしか出走しないようです。

しかも中央と地方ではウマ娘の実力、人気ともに相当な格差があることも、カサマツトレセン学園教師や名もなきウマ娘の言動から読み取れました。地方でどれだけ戦績を挙げても、中央の足元にも及ばない。ウマ娘のアイドル的活動から華やかな世界に思えますが、実は徹底してシビアなのが伝わって来ます。

こういった設定を踏まえると、「ウマ娘」のゲームやアニメに対する見方がまた変わってくるでしょう。中央トゥインクル・シリーズはまさに日本ウマ娘の頂点を決する場であり、そこに注ぎ込まれる努力や情熱がいかに熾烈か。「シンデレラグレイ」を読んで世界観の理解度が上がると、より一層「ウマ娘」のレースを楽しめるようになっています。

蛇足ですが地方競馬としては、北海道・帯広の地方レースの存在が明かされたのは注目すべきポイントです。帯広と言えばばんえい競馬が有名。もしかするとウマ娘のソリ引きレースが開催されているかもしれません。このまま「ウマ娘」の人気が続けば、いずればんえいウマ娘が出てくるかも……そんなウマ娘世界の地方事情を空想できるのも「シンデレラグレイ」の魅力です。

『ウマ娘シンデレラグレイ』最新巻まであらすじ、見所、元ネタも紹介!

ここからは「シンデレラグレイ」既刊3巻のあらすじと見所をご紹介していきます。

「シンデレラグレイ」には物語の中心となるレース展開から、思わず見落としてしまいそうなちょっとした小ネタまで、史実をベースにした描写が数多くあります。物語には直接関係しないものも多々ありますが、そういった史実由来のネタを探すのも本作の醍醐味。そこで各巻のあらすじとあわせて、細かい小ネタについても解説していきます。

『ウマ娘シンデレラグレイ』1巻:泥だらけのスタート

あらすじと見所

カサマツトレセン学園に入学したオグリキャップは、期待の特待生・フジマサマーチの存在で注目こそされませんでしたが、北原とベルノライトのサポートで徐々に自分の走りをものにしていきます。

とにかくオグリキャップを際立たせる演出が秀逸です。ノルンエースらの妨害を意に介さない、力強い走りが爽快。その一方、普段は周囲の毒気を抜く天然キャラなのが面白く、親しみやすいです。敵味方を問わず人を惹き付けてやまない、スター性の片鱗が天然要素の中にしっかり描かれています。キャラクター同士の関係の変化も見所。

元ネタ解説【ネタバレ注意】

・脚の障害と「ハツラツ」

オグリキャップは作中、幼少期に膝が悪かったと告白します。

これは史実において、右前脚が曲がった状態で生まれたことが元ネタ。脚は献身的な介護で矯正できたのですが、当初は健康な成長も危ぶまれたようで、元気に育ってほしいとの願いから「ハツラツ」という幼名がつけられました。「シンデレラグレイ」ではこれらの逸話が母親の親身なマッサージや、オグリキャップが元気いっぱいなシーンでの書き文字「ハツラツ」に反映されています。

また1巻のオグリキャップはとにかく泥だらけですが、これは史実のオグリキャップが現役時代の間、まだら模様の芦毛だった(芦毛は加齢で毛色が段々白くなる)ことの再現だと思われます。

・フジマサマーチのモデルと靴

オグリキャップと序盤に激戦をくり広げる、フジマサマーチにもモデルとなった馬がいます。地方時代のオグリキャップに唯一勝利した馬、マーチトウショウです。微妙に名前が違うのは、マーチトウショウが権利関係のややこしい馬名であるせいでしょう。

作劇の都合で若干変更されていますが、マーチトウショウとオグリキャップの史実での直接対決の戦績は2勝6敗でした。オグリキャップは当時、蹄叉腐乱(蹄の病気)を発症しており、2度負けたのは病気に起因する出遅れのせいとの見方が強いです。

「シンデレラグレイ」ではこういった事情を踏まえて、スタート直前に邪魔されて靴紐がほどけたり、靴を履きつぶしたためにオグリキャップがうまく走れなかった、という風にアレンジされています。

なおマーチトウショウは短距離を得意とした馬だったので、オグリキャップの蹄叉腐乱がなくとも、距離の短いデビュー直後の2戦では勝っていた可能性が高いのです。

『ウマ娘シンデレラグレイ』2巻:カサマツの星

あらすじと見所

準重賞レース「ジュニアクラウン」を終えて、北原はオグリキャップを「中京盃」に送り出しました。東海地方最高峰「東海ダービー」を目指すなら当然の選択でしたが、懸念材料が1つ。北原は事前に、彼の叔父で中央トレーナーの六平銀次郎(むさかぎんじろう)から、「中京盃」を回避するよう言われていたのです。

六平はなぜ回避するようアドバイスしたのか。一抹の不安とともにレース当日を迎えますが、北原の心中とは裏腹に、オグリキャップは見事に快勝してみせます。

この2巻で序章カサマツ編が終わります。オグリキャップとフジマサマーチの熱戦から一転するため、読んでいるとあまりの急展開に圧倒されるでしょう。

2巻で注目していただきたいのは絆です。トレーナー、ライバル、あるいはファン。形は違えど、オグリキャップに対する熱い想いが胸を打ちます。後半のとあるシーンでは、思わず感涙してしまうかもしれません。

著者
["久住 太陽", "杉浦 理史", "伊藤 隼之介", "Cygames"]
出版日

元ネタ解説【ネタバレ注意】

・タマモクロスの台頭

オグリキャップを語る上で絶対に欠かせないタマモクロス。作中ではオグリキャップがフジマサマーチを下し、「ジュニアクラウン」を制したのを見て奮起しますが、実はこれも史実に沿っています。

実在のタマモクロスは一般的に遅い4歳でデビュー後、しばらくダートレースなどで走りますが、ほとんど勝ちきれませんでした。ところが1987年10月、オグリキャップが「ジュニアクラウン」で勝利した直後芝に転向すると、まるで呼応するかのように連戦連勝し始めたのです。

馬のタマモクロスが笠松を視察した事実はありませんが、オグリキャップ最大のライバルだけに、なにか運命的な繋がりを感じさせます。

・「中京盃」と中央移籍

オグリキャップの中央移籍は、史実でかなりのゴタゴタがありました。

連戦連勝していたオグリキャップですが、注目度の高い「中京盃」の勝利で全国に名前が知れ渡りました。同時に方々から中央移籍を打診されるようになったのです。笠松競馬にこだわっていたオグリキャップの馬主は拒否し続けていましたが、2代目の馬主となる人物から熱心に説得され最終的に受諾。これは苦渋の決断でしたが、「東海ダービー」制覇を悲願としていた調教師と激しく意見が対立したそうです。

ストーリーでは北原が優柔不断な態度を取りますが、こういったオグリキャップ陣営の混乱が元になっているのは間違いありません。

ちなみに実際のオグリキャップの中央移籍では、同時に装蹄師が1人付き添って中央入りしています。ベルノライトが中央に同行するのは単なるご都合主義ではなく、キャラクターのモチーフにこの装蹄師の要素を含んでいるためでしょう。

・最終直線の振り返りとフジマサマーチの台詞

カサマツ編ラストを飾る最終直線の走りで、涙ながらに観客席の北原を振り返るオグリキャップ。この序章屈指の感動的シーンにも元ネタがあります。

地方時代のオグリキャップの騎手を務めた安藤勝己。彼は最終直線で1番手になった時、よく後方を振り返っていました。オグリキャップの笠松ラストランとなる「ゴールドジュニア」でも同様に、大きく左後方を振り返っているのが映像記録に残っています。

この安藤勝己のクセをうまくエピソードに取り込み、涙なくしては読めないあの名シーンが生み出されたのでしょう。

フジマサマーチはレース決着後、オグリキャップより長くレースを走ると宣言しますが、これも史実に関連しています。モデル馬のマーチトウショウが現役引退したのは、オグリキャップから2年後のことでした。戦績でかなわなくても、現役期間は上という意地が感じられます。

『ウマ娘シンデレラグレイ』3巻:「日本ダービー」への挑戦

あらすじと見所

中央に移籍したオグリキャップは、北原の叔父・六平の元でトレーニングに励みます。断念した「東海ダービー」に代わって「日本ダービー」を新たな目標に据えますが……。移籍のゴタゴタでクラシック登録ができていない彼女には、出走権がないと判明。

オグリキャップは自身の「日本ダービー」出走を例外的に認めさせるため、中央の重賞レースで確かな実力を示していきます。

地方で連勝してるとはいえ、中央から見ればオグリキャップは完全に未知数。格下扱いを隠そうとしないウマ娘すら出てきます。そんな逆風の中でも、見事に力を発揮していくオグリキャップが痛快です。

3巻は世論がオグリキャップを徐々に認めて、大きなうねりになっていくのが見所。地方出身のスターの誕生を望むファンの声は、ついに「皇帝」シンボリルドルフすら動かします。果たしてオグリキャップはすべてのウマ娘が憧れるクラシック最高峰レース、「日本ダービー」へ出走できるのでしょうか?

著者
["久住 太陽", "杉浦 理史", "伊藤 隼之介", "Cygames"]
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元ネタ解説【ネタバレ注意】

・駿川たづな

オグリキャップが理事長秘書の駿川たづなに意味深な反応をしますが、オグリキャップの史実とは無関係です。駿川たづなはゲームで元ウマ娘(「幻の馬」トキノミノル説が濃厚)なのが示唆されており、ファンサービス的に描かれただけでしょう。

・クラシック未登録問題

オグリキャップがクラシック路線(皐月賞・日本ダービー・菊花賞)に出られなかったのはほぼ史実通りです。競走馬が一生に1度、3歳時にしか出られないクラシックレースは、競馬でもっとも重要なタイトルと言っても過言ではありません。特に「日本ダービー」は別格扱いで、そこで勝つことは競馬関係者にとって最上級の名誉です。そのため未登録を理由に、同世代より抜きん出て強いオグリキャップが出られないのは大きな騒動になりました。現実では結局出走できませんでしたが……?

騒ぎの大きさを象徴するものとして、競馬評論家として活動していたタレントの故・大橋巨泉が、オグリキャップを参戦させるよう当時のJRAに異議申し立てしたという話が残っています。作中に登場する競馬記者・藤井泉助と、藤井泉助の書いた記事はこの時の大橋巨泉がモデル。

・武者震い

中央デビュー戦のペガサスステークスで見せた武者震い。心機一転して気合いを入れたことの表現と思いきや、これもオグリキャップが実際にした行動です。

初めて見せたのは本編でも出てきた1988年のペガサスステークス。これ以降、オグリキャップはしばしばゲートイン直前で静止して首を震わせました。大舞台で自分を鼓舞するように見えたことから、まるで武者震いだと親しまれました。

・ブラッキーエールとディクタストライカ

ブラッキーエールとディクタストライカも、フジマサマーチと同じようにモデルから名前が変更されたウマ娘です。それぞれラガーブラックとサッカーボーイ

主要キャラクターを除く、登場ウマ娘とは権利関係で名前を変えるケースが多いです。しかし変更後も、見る人が見ればちゃんと元ネタを連想できるよう工夫されています。たとえばサッカーボーイは父がディクタスだったので、父の名とサッカーから連想してストライカーを組み合わせ、ディクタストライカになったことがわかります。

サッカーボーイは当時オグリキャップとよく比較された競走馬ですが、直接対決したのは距離適性のない有馬記念の1回だけでした。そのため、現在でもどちらが上か議論されることがあります。ディクタストライカは「シンデレラグレイ」でオグリキャップと同格に扱われてるので、もしかしたら史実にない絡みが見られるかもしれません

ちなみに本編に登場する脇役ウマ娘のほぼすべてにモデル馬が存在しますが、ノルンエースとルディレモーノ、ミニーザレディの3人だけは完全オリジナル。序盤にいじめをする悪役なので、馬主に配慮して意図的にモデルを設定しなかったようです。

『ウマ娘シンデレラグレイ』4巻:次なる目標

あらすじと見所

ついにスタートした「日本ダービー」。クラシック路線の中で最長の歴史を持つこのレースには、1つの格言がありました。もっとも運のあるウマ娘が勝つ。「日本ダービー」は速さでもなく、強さでもなく、巡り合わせを掴んだ者が勝者となる、何が起こるかわからない過酷なレースです。

最終直線で先頭に躍り出るサクラチヨノオーに対して、内からメジロアルダン、外にヤエノムテキが迫り――さらに大外から……。

オグリキャップは宣言通り、ルールも常識も実力で覆します。しかし、その結果は必ずしも彼女が望んだようにはいきませんでした。ダービーの決着には前巻までにあった勝利の高揚とは別種の、納得と沈痛が半々ほどで入り交じった不思議な読後感があります。この辺りは『シンデレラグレイ』ならではの妙味と言えるでしょう。

そして第1章中央編入編は「日本ダービー」を区切りとして終わりますが、激動のストーリーはまだまだ続きます。上半期を締めくくるグランプリ「宝塚記念」をタマモクロスが圧勝。

連勝記録を更新し続ける芦毛ウマ娘の同士の直接対決が、ついに実現する瞬間が刻々と迫ってきています。

元ネタ解説【ネタバレ注意】

・「日本ダービー」の勝者

オグリキャップが「日本ダービー」に出走できるか否かは、第1章中央編入編の注目点でした。結果は史実通りサクラチヨノオーの勝利オグリキャップがダービーに参加しているかのような描写は、読者をミスリードする演出でした

「シンデレラグレイ」は現実に叶わなかったオグリキャップ出走が期待された一方で、1988年の「日本ダービー」はサクラチヨノオーの文字通り一世一代の晴れ舞台だった事情があり、史実へのリスペクトを重視する本作でif展開にするのは色々と問題がありました。

その点、本編でシンボリルドルフがダービーのオグリキャップを幻視した演出は、非常に上手い落としどころでしょう。もしもを強く予感させつつ、波風を立てない素晴らしい構成です。

ちなみにサクラチヨノオーは、オグリキャップと違った理由でダービーに出られなかったマルゼンスキーの子だったり、前年のサクラスターオーの無念を背負っていたりと、不思議なほど「日本ダービー」に因縁のある馬でした。なお全力のサクラチヨノオーの瞳から桜が散っている表現は、ダービー後の史実を示唆しているのかもしれません

・いつか誰かが見る「夢」

結局「シンデレラグレイ」でも、オグリキャップのダービー出走はなりませんでした。しかし、署名活動やシンボリルドルフの嘆願もあって、URA上層部がルール改定に乗り出したことが描かれます。

実はこれも史実通り。オグリキャップのクラシック未登録問題がきっかけになって、JRAは1992年からクラシック路線の追加登録制度を導入しました。この制度の恩恵を受けた馬は「ウマ娘」にも登場します。テイエムオペラオーとキタサンブラックです。世代の違うテイエムオペラオーの背中が、のちの「夢」の代表として描かれているのはこのため。

オグリキャップは「日本ダービー」の栄冠こそ手にできませんでしたが、日本競馬のルールとのちのすべてのクラシック未登録馬の運命を一変させるという、他の誰にもできない偉業を成し遂げているのです。

・シリウスシンボリ暴走

1988年の「毎日王冠」ゲート入り前、シリウスシンボリがなぜか暴れだし、レジェンドテイオーとダイナアクトレスを蹴ってしまう事件が起こりました。被害を被ったレジェンドテイオーは発走除外となり、ダイナアクトレスは出走こそできたもののやる気を失って散々な結果に。

劇中ではこのエピソードに実馬の海外渡航経験をミックスし、シリウスシンボリがヨーロッパ仕込みのダンス演舞を披露した際、ロードロイヤルとダイナムヒロインを怪我させる展開にアレンジされています(ロードロイヤルはレジェンドテイオー、ダイナムヒロインはダイナアクトレスがモデル)。

・タマモクロスの調子

実際のタマモクロスは繊細な馬で、そのせいか食が細く、強さのわりに小柄で細身でした。ところが1988年の秋の天皇賞の直前は調整が上手く行ったらしく、この時だけはよく食べて体調も万全になったそうです。本作では珍しくバカ食いするタマモクロスに対して、ゴールドシチーが驚くシーンとして史実が反映されています。

ちなみにタマモクロス専属トレーナーは小宮山勝美(こみやままさみ)という名前ですが、これは実馬の調教師の氏名をベースに、主戦騎手の下の名前を盛り込んだネーミングのようです。タマモクロスの騎手はのちにオグリキャップにも騎乗しているので、六平の弟子を自称する小宮山も今後、タマモクロス抜きで物語に関わってくるかもしれません

・激励する北原

G1を伺うオグリキャップを激励するため、久々に北原が登場します。実際に関係者の激励があったかは不明ですが、北原の言動はおそらく笠松時代に主戦騎手だった、アンカツこと安藤勝己のTwitterにインスパイアされていそうです。

安藤勝己は元号が変わる際に平成最後のつぶやきと称して、当時の中央でのオグリキャップの活躍を眩しく見ていた、と語っています。劇中で北原がどことなく眩しげにオグリキャップを捉えているのは、この発言を受けた演出でしょう。

ついでながら、この時に北原の持参したお土産にも由来があります。お土産らしいお土産に混じって、ひときわ異彩を放つミニーザレディの五平餅とにんにく。五平餅そのものではありませんが、にんにく味噌を実馬のオグリキャップに食べさせていたという記録が残っています

馬ににんにく味噌とはちょっと驚きますが、今でも競走馬の持久力アップや夏バテ防止を目的に、飼い葉に配合して与えることがあるそうです。

 

史実から予想!『ウマ娘シンデレラグレイ』今後の展開はどうなる?【ネタバレ注意】

「シンデレラグレイ」は現在、第2章白い稲妻編が連載中です。見所はもちろん、オグリキャップ最大のライバル「白い稲妻」タマモクロスとの死闘。雑誌連載でも白い稲妻編はまだ途中ですが、この後どんな話が描かれるのか、史実を踏まえて今後の展開を予想していきます。ストーリーを先取りするネタバレになる可能性があるので、気になる方はご注意ください。

史実でタマモクロスは3度オグリキャップと直接対決し、分厚い壁として立ちはだかりました。「秋の天皇賞」、「ジャパンカップ」、そして年末の祭典「有馬記念」。「ジャパンカップ」は一波乱起きるものの、史実では2頭で競り合う大熱戦がくり広げられたので、クライマックスと見紛うとんでもない展開が待っているでしょう。芦毛の馬は走らない、という競馬の常識を覆したデッドヒートがどう表現されるか見物です。

ライバル対決が「シンデレラグレイ」の山場になるのは間違いありませんが、おそらく物語はそのあともまだまだ続きます。白い稲妻編が終われば、そのまま3強編へ突入するでしょう。

天才騎手・武豊を背に、クラシック路線最後の一冠「菊花賞」を勝利(武豊にとって初のG1)、さらに春と秋の「天皇賞」を制覇したスーパークリーク。大井競馬から中央移籍後、春の「天皇賞」優勝および宝塚記念と有馬記念連覇を成し遂げた地方出身のイナリワン。この2頭にオグリキャップを加えた3頭が、昭和から平成へ元号が代わった1989年に、日本競馬屈指の激戦をくり広げたことから「平成3強」と呼ばれました。

年号が令和になったので呼称は変更されると思われますが、オグリキャップをフィーチャーする以上、「シンデレラグレイ」で3強対決を描かないというのは考えられません。互いに譲らないいくつもの名勝負が見られるはずです。また「平成3強」時代にはヤエノムテキバンブーメモリーも「平成3強」に匹敵する実力で走ったため、作中でもかなり大きく取り上げられるのではないでしょうか。

また「平成3強」の前後には、マーチトウショウも一時期中央所属になっています。遅れて中央に編入してくるフジマサマーチとオグリキャップの交流が楽しみなところ。史実で言えばオグリキャップが療養していた時期なので、フジマサマーチの姿に奮起する展開になりそうです。

交流といえば、実馬のオグリキャップが片想いしていたと噂される、ニュージーランドの牝馬ホーリックスとの絡みも注目したいポイント。細かいネタまで拾って昇華する「シンデレラグレイ」ですから、どちらもきっとなんらかのエピソードがはさまれるに違いありません。

実際に1988年の「ジャパンカップ」に差し掛かった連載分では、凱旋門賞馬トニービンがトニビアンカとして登場したのを筆頭に、印象的な海外馬も次々「シンデレラグレイ」に参戦しているため、ホーリックスが来日する翌年の「ジャパンカップ」にも期待できます。

そして最終章は1990年、オグリキャップのラストイヤーです。前年末からの不調を引きずり、勝利が絶望視される中で挑んだ伝説の有馬記念。レース展開は史実をなぞるとしても、どんなアレンジがされるのかとても楽しみです。きっと想像を超える、神懸かった演出を目の当たりにすることになるでしょう。


『ウマ娘シンデレラグレイ』はスピンオフ漫画としては異例の大ヒットを記録しています。できる限り多くの方に作品の魅力をお伝えするために紙幅を費やしましたが、百聞は一見のしかず。

「週間ヤングジャンプ」のスマホアプリ「ヤンジャン!」で無料で楽しむこともできるので、気になった方はぜひ一度読んでみてください。読書中、あるいは読了後にこの記事をもう一度振り返るとより一層楽しめますよ。

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