耳の聞こえない女の子が出会ったのは、世界を飛び回っている不思議な魅力を持った先輩。『ゆびさきと恋々』は別々の世界で生きていた2人が出会い、互いの距離を縮めていくサイレントピュアラブです。 2021年6月にはミュージカル化もされ、ますます注目の的。本記事では本作の魅力や各巻のネタバレを紹介していきます。
「月刊デザート」で連載中の森下suu(もりした すう)による少女漫画『ゆびさきと恋々』。聴覚障害のある女子大生・雪と、同じ大学の先輩・逸臣のラブストーリーです。逸臣との出会いをきっかけに世界を広げていく雪の前向きさが多くの読者の心をとらえています。
これまでに「ananマンガ大賞」大賞、「このマンガがすごい!2021 オンナ編」第9位、「全国書店員が選んだおすすめ少女コミック2021」第1位を受賞。
「こんなピュアで繊細で綺麗な少女漫画を他に知らない」「何度も読み返したくなる作品。恋っていいなと思える」とSNSで大注目を浴びています。さらにはSnow Manのメンバーで漫画アニメオタクの佐久間大介も、テレビで紹介し話題となりました。
累計発行部数は120万部を突破。2021年6月にはミュージカル化もされている、今注目の少女漫画です。
聴覚障害があり生まれつき耳が聞こえない雪は、電車内で外国人に声をかけられ困っているところを、同じ大学の先輩・逸臣に助けてもらいます。耳の聞こえない自分に躊躇することなく、自然に接してくれる逸臣が気になり始める雪。この気持ちの正体とは?
耳の聞こえない女の子が世界を駆け回る先輩に出会い、新しい感情や世界を知っていくサイレントピュアラブです。
耳は聞こえないけれど普通の女の子と同じように過ごし、逸臣との出会いをきっかけに新しい世界をどんどん知っていく雪。これまで凝り固まっていた自分の世界から抜け出したい、知らない世界を知りたい、新しい環境に戸惑っている人に勇気を与えてくれる作品です。
フルネームは糸瀬雪(いとせ ゆき)。生まれつき聴覚障害があり、耳が聞こえない大学生。幼稚園から高校までは同級生が4人のみの学校に通っていたが、自由に勉強も服もメイクも楽しんでいる大学生に憧れ大学に入学する。初対面でかつ耳の聞こえない自分に動じず、自然に接してくれる逸臣に惹かれ始める。
フルネームは波岐逸臣(なぎ いつおみ)。雪と同じ大学に通う国際文化学部の先輩。国際サークルに所属しており、バーでバイトをしながら資金を貯めてバックパッカーをしている。トリリンガル。将来は海外の山奥の学校で教師となり、世界中で見てきた世界を子どもたちに教えることが夢。家族はドイツで暮らしている。
フルネームは藤白りん(ふじしろ りん)。雪と同じ大学で商学部に通う友だち。大学では雪のサポートとしてパソコンテイクをしている。逸臣と同じ国際サークルに所属している。京弥が好き。
フルネームは波岐京弥(なぎ きょうや)。逸臣とはいとこで、彼がバイトしているバーの店長をしている。雪と逸臣の関係性を心配している。
フルネームは芦沖桜志(あしおき おうし)。雪の幼なじみ。姉が手話を勉強していた影響で、手話を覚えるようになった。現在も手話の勉強を続けており、手話通訳士に興味を持っているらしい。幼なじみとして雪のことを心配しているらしいが、本当のところは……?雪に近づく逸臣をよく思っていない。
逸臣の高校時代の同級生。逸臣のことが好きだが彼からは友だちとしか見られておらず、変わらない関係性にモヤモヤしている。
読み方はしん。逸臣の高校時代の同級生で親友。美容師をしている。酔っ払うとかなりチャラくなるが、普段はクールな人物。エマが逸臣に好意を寄せていることを知っていながら、自身はエマが好きという複雑な関係性。
本作のテーマは「手話」「聴覚障害」ですが、それがメインではありません。耳の聞こえない雪が健常者と同じように好きなものを楽しんだり、恋をしたり、新しい世界を知っていく日常を中心に描かれています。
高校までは、同級生が4人のみという限られた世界で過ごしていた雪。自由に好きな分野を学び、同じ趣味の人と集まってサークル活動したり、メイクやファッションをしたりと、自由を謳歌している「大学生」は憧れの存在でした。
確かに雪は生まれつき耳が聞こえない女の子。しかし、それ以外はごく普通の女の子なのです。大学生になってからは大好きなファッションやメイクを楽しんだり、友だちのSNSをチェックしたり、恋バナもしたり、勉強に励んだりと皆と同じように自由に好きなものを選んでいます。
『ゆびさきと恋々』は耳が聞こえない雪を主人公にしながらも、障害者として彼女を扱うのではなく、雪自身が自分で好きなものを選んで皆と同じように過ごしていく姿を描いているのです。
耳の聞こえない女性が主人公の物語となると、安直に感動を呼びやすいのではないかと懸念する方もいるかもしれません。しかし、雪をちやほやしすぎずに接する逸臣の態度が絶妙な温度感。安心して純粋に「キュン」だけを楽しめるでしょう。
本作にとって切り離せないのが、雪が感じている音のない世界。雪は日常生活の会話で、どの言葉が理解できていて、どれがわかりにくいのか。それを読者にもわかりやすく表現しています。
ふきだしの文字で薄くなっているのは、雪が相手の話している口の動きから会話を読み取れているもの。一方で、文字が傾いているのは、雪が読み取れていないものを指しています。
同じ母音が続いてしまうと、口の動きから単語を読み取るのは難しいそうです。ちなみに、この表現は本作の編集担当からの提案とのこと。
この表現方法があることで、このセリフは雪には伝わっていて、これは伝わっていない」ということがわかります。彼女が感じている世界がこんな感じなんだなあ、と理解しやすくなっています。。
ちなみに手話にも、いくつか種類があるそう。「日本語対応手話」と「日本手話」というものがあり、本作では手話監修をしている宮崎さんが日常的に使っている「日本語対応手話」を参考にしています。
簡単に違いを説明すると、「日本語対応手話」は日本語の文法に合わせて表現したもの。「日本手話」はろう者が使う独自の手話で、日本語の文法とは異なります。健常者が学ぶとしたら、「日本語対応手話」となります。
聴覚障害があり耳が聞こえない女子大生・雪は、買い物帰りの電車内で外国人から声をかけられてしまいます。答えたくても何を話しているのかがわからず困り果てる雪を助けてくれたのは、銀髪の男性。
彼は雪と同じ大学の先輩・逸臣で、耳が聞こえない雪に戸惑うことなく、むしろ興味深そうに見つめながら「また」と言って去っていきました。
初めての経験に驚く雪。それと同時に、なぜだか胸が高鳴り始めます。これは恋なのか?それとも憧れなのか?
再会した雪はあらためて逸臣の魅力に惹かれていき、この気持ちは恋だと自覚します。
1巻の見所は1話の終盤。逸臣と連絡先を交換することに成功した雪は、初めてのやりとりの中で彼からドキッとするメッセージが届きます。
「俺を雪の世界に入れて」
(『ゆびさきと恋々』1巻より)
一体これはどう意味なのか?雪は戸惑いつつも、そのメッセージを送ってくれたことの嬉しさから体全体を使って「〇」と答えました。
もしかしたら逸臣にとって自分はただの興味の対象なのかもしれない。わからないけれど、自分に興味を持ってくれただけで嬉しい!と可愛らしい返事をした雪の姿にキュンとできます。
- 著者
- 森下 suu
- 出版日
逸臣への気持ちは恋だと自覚した雪。初めての恋に向き合って頑張ろうと決めた彼女は、まず逸臣との時間を作り彼のことをもっと知ろうと動き始めます。
しかし、そこで高校からの同級生・エマの存在が気になり始める雪。
逸臣の部屋で、ご飯を食べていたところにやってきたエマ。鍵を返すところを偶然見てしまった雪は、2人が付き合っているのではないかと勘違いしてしまいます。
2巻の見所は逸臣の家で過ごしているときに、「おまえのこと、もっと教えて。俺も雪にはいろんなものを見せたい、教えたい」と雪に触れるシーン。
ふざけて雪を驚かせた逸臣は、このとき初めて雪の声を聞きます。雪の声ってこんなにも可愛いのか……。そう感じた逸臣はもっと雪のことを知りたい、耳の聞こえない雪が感じる世界を知りたいと強く思います。
普段はあまり感情が表に出ることがなく、何を考えているのかわかりにくい逸臣。雪といるときは、素直に感じたままを言葉や態度で示しています。もはや告白に近いセリフだということに、逸臣は気づいているのでしょうか。
- 著者
- 森下 suu
- 出版日
「逸臣なら何をされても全部大丈夫」逸臣は雪が自分へ向ける感情を知り、自身が雪へ向ける感情に向き合い始めます。
思い起こせば出会ったあの瞬間から、純真で可愛らしい雪の存在や行動のすべてに見惚れていたと実感した逸臣。それを京弥に打ち明けているところへ、雪とりんがやってきます。
逸臣は雪を外へ連れ出し、手話で「俺と付き合って」と告白。突然の告白に雪が驚くなか、さらに「雪がほしい」と溢れる思いを伝えます。戸惑いつつも、告白を受け入れた雪。こうして2人は恋人同士になりました。
3巻の見所は雪と逸臣の初キスシーン。
春休みの間、海外に出かけていた逸臣が帰国。踏切で偶然再会します。踏切越しに「ぎゅーしていい?」と聞いてきた逸臣。雪は照れくさそうに「いいよ」と答えます。人目のないところに行き、恥ずかしそうに待ち構えているとそこに降ってきたのはキスで……。
じつは逸臣のお願いは「ぎゅー」ではなく、「ちゅー」でした。母音が同じだったため間違えてしまった雪。顔を真っ赤にしながら、何とか必死に冷静を装う雪の姿が可愛らしいです。
- 著者
- 森下 suu
- 出版日
逸臣と付き合い始め、勘違いでありながらも初キスもした雪。
逸臣から親友の心に彼女として会いに行ったり、いつか2人で海外に行くための資金を貯めるためバイト探しを始めたりと、少しずつ新しい世界に踏み込んでいきます。
穏やかな日常からドキドキが増えていく新しい日常に戸惑いつつも、雪はその変化を楽しんでいました。
4巻の見所は逸臣の家に初めてお泊りをしたシーン。
友だちの家に泊まったときとは違う雰囲気や逸臣の部屋で感じる彼の日常に、ドキドキが止まらない雪。そんな雪に対して逸臣は、いつもどおりの緩い雰囲気で接します。
「今日は泊まりじゃなくて、一緒にいるだけ」
(『ゆびさきと恋々』4巻より)
逸臣は最初から雪が緊張してしまうだろうと想定していました。だから、寝るときも同じベットではなく、雪がベットで逸臣がソファーと彼女が安心する距離間をとります。
雪を本当に大事に思っていることが、逸臣のこの行動一つひとつから伝わってくるシーンでした。
- 著者
- 森下 suu
- 出版日
ここでは4巻以降の展開についてネタバレしていきます。
4巻ラストで、ついに直接対決をすることになった逸臣と桜志。雪と恋人同士になった逸臣に「どういうつもりで雪と付き合っているのか」と問いかけました。
幼なじみとして心配していると、ずっと言い続けていた桜志。しかし、本当のところは違いました。彼も逸臣と同じように、雪の純真で可愛らしい魅力に惹かれていたのです。
だから、突然現れたのにも関わらず、雪と恋人同士になった逸臣を敵視していました。できるならば雪と別れてほしい。でも、自分が逸臣から雪を奪うことはできない。ずっと想い続けていたからこそ、雪の幸せを壊すようなことはしたくない桜志は、何もできない自分自身に憤りを感じていました。
5巻に続く第17話では、そんな桜志が誰にも打ち明けていなかった雪への想いが明かされています。彼が今後、その想いを雪に伝える日がやってくるのでしょうか。
ここでは『ゆびさきと恋々』の制作秘話について、少し紹介しましょう。
本作には手話を監修している協力者がいます。それは雪と同じように聴覚障害のある女性・宮崎柚希(みやざき ゆき)さん。
初めは図書館などで聴覚障害について調べたり、ろう学校の先生をしている知り合いに取材をしていた作者。しかし、実際に聴覚障害のある人に話を聞いたほうがいいだろうということになり、博多にある手話カフェで接客をしていた宮崎さんと出会います。
宮崎さんには作中のセリフで使う手話を教えてもらったり、動画を送ってもらったり、ネームをチェックしてもらっているそう。
ここではミュージカル『ゆびさきと恋々』のキャストや見どころを紹介します。
キャスト一覧はこちら。
ミュージカルでの見所は3つ。
①耳の聞こえない雪の世界をわかりやすくするため、スマホでのやりとりや手話の意味を背景プロジェクターに映す。
②原作でモノローグとなっている「雪の気持ち」を、ミュージカルではピアノとチェロの生演奏と役者の歌で表現。
③ミュージカルのために作られたオリジナルエンディング。
舞台を見た人たちからは、「キュンだけじゃなくて温かくて力強いメッセージが伝わってきた」「手話とミュージカルという組み合わせがピッタリだった」「原作への愛や情熱が伝わってきた」と大絶賛する声が多く挙がっていました。
残念ながら舞台は終了してしまいましたが、秋にCS衛星劇場にてテレビ放送されることが決定。興味を持った方は続報をお待ちください。
『ゆびさきと恋々』の作者・森下suuが、2人組のユニット漫画家ということを皆さんご存じでしょうか?
原作を担当しているのがマキロ、作画を担当しているのがなちやんです。
出身地が同じで高校で同じ学校に通っていた2人。当時は別々に漫画を投稿しておりマキロは少女漫画、なちやんは少年漫画を描いていました。『バクマン。』をきっかけに共同制作を始め、その後、担当が付いてデビューすることになります。
過去には、『日々蝶々』『ショートケーキケーキ』を連載。とくにおすすめなのが『日々蝶々』です。学校一の美少女だけど無口なすいれんと硬派な空手メガネ男子・川澄のじれったいラブストーリーになっており、異性が苦手な2人が初めて異性に興味を持っていく初々しい恋模様が人気を集めました。
『日々蝶々』の詳しい物語を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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- 著者
- 森下 suu
- 出版日
- 2012-07-25
逸臣からの告白で付き合い始めた雪。お互いのことを少しずつ知っていき、より距離が深まっていく2人の姿は本当に幸せそうで、見ているだけで笑顔になります。
それと同時に気になるのが、2人をずっと近くで見守ってきた人たちの存在。雪には桜志、逸臣には心とエマ。それぞれ複雑な感情を抱えています。彼らの想いの行方にも注目してみてください。