Twitter界の有名人から一躍、売れっ子作家となった人物・燃え殻。web連載の時点で「エモすぎる」と共感を呼んでいた恋愛小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』が実写映画化します。出演は実力のある森山未來と伊藤沙莉とあって期待が高まります。原作のどんなポイントが共感を得ているのか、映画情報とともに解説していきます。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』は、Twitter発の小説家・エッセイスト燃え殻による恋愛小説。デビュー作でありながら、webマガジン「cakes」で連載されていたタイミングですでに糸井重里や堀江貴文が絶賛するなど注目を集めてきました。のちに新潮社から単行本が刊行され、たちまちベストセラーに。
そんな本作が実写映画化されることになりました。2021年11月5日からNetflixと劇場で同時公開。「ボク=佐藤誠」を演じるのは森山未來、ボクの初恋の人・小沢(加藤)かおりを演じるのは伊藤沙莉と実力派が並びます。
物語は43歳の主人公が20年以上前の初恋を回想しながら進みます。そのため、20代から40代まで幅のある主人公を主演の森山未來がどのように演じるのかが見所。ボクは本当に「大人」になれなかったのか、「大人」とはなんなのか。彼のセリフや演技から感じ取ってみてはいかがでしょうか。
また映画オリジナルの登場人物としてボクの現在の彼女・石田恵が登場、大島優子が演じます。どのように物語に関わってくるのか、楽しみですね。
「ボク」はテレビの美術制作会社に勤める独身の43歳。Facebookをなにげなく見ていると、「自分よりも好きになった」初恋の人の名前が。彼女は結婚し苗字が変わっているようです。思わず投稿を追っているうち、意図せず友達リクエストを申請してしまいました。彼女と出会った当時を回想し始めます。
1995年夏、まだ20代前半だったボクはエクレアの工場員でした。外国人ばかりで話す相手もあまりいないなか、アルバイト求人誌の文通コーナーにひときわ異彩を放つ投稿をする女性が。それがかおりでした。文通が始まり、初めて会った時から気が合う彼女と付き合うことに。
そして彼女からの影響もあってかボクは工場を退職し、六本木のテレビ美術制作会社に入社。テレビ業界の末端であり起業したての会社のためせわしない日常を送りながら、週末だけ彼女とホテルで会うという生活に。それでも彼女の独自の感性に精神的な支えを得ます。別れてしまってから20年も経つ今でも、かけがえのない彼女として思い起こせる存在でした。
さらに回想は時を前後しながら進みます。そして彼女が、なにげない一言を残して消えてしまった時のことも……。
- 著者
- 燃え殻
- 出版日
- 2017-06-30
回想する主人公が20代を過ごした時代は1990年代後半。バブルが崩壊し、ノストラダムスの大予言の都市伝説が指し示す人類滅亡の時である1999年7の月が近づいてくるという時代です。その頃のカルチャーがふんだんに登場するところにご注目。たとえば主人公が恋愛や性行為のノウハウを参考にする『Hot-Dog PRESS』という雑誌。「童貞が書いた童貞のバイブル」とも揶揄されますが、バブル期から一旦休刊するまでの時代に読んでいた!と共感できる男性も多いのでは。
また文庫版にはシンガーソングライターのあいみょんによる「アンサーソング」と題したエッセイと、漫画『モディリアーニにお願い』などで知られる相澤いくえによる短編漫画を収録。本編を読んでのそれぞれの思いを作品にしています。
在りし日の恋愛の思い出が似たようなものでもそうではなくても、どこか郷愁を感じられる「エモさ」が根底にある本作。映画を見た方にもぜひ原作で味わっていただきたい作品です。
- 著者
- ["燃え殻", "伊藤沙莉", "高田亮", "C&Iエンタテインメント", "木村和平"]
- 出版日
原作はもちろん、映画でも描き切れなかった過去が写真でよみがえります。『「海行きたいね」と彼女は言った』には、ボクがかおりと付き合っていた時に過ごした、横浜でのある1日を再現したフォトストーリー「あの日はなんでか全部がよかったーー1996年横浜」が収録。伊藤沙莉の絶妙な表情や仕草を見ていると、自分がかおりと付き合っているかのような感覚であの日が再現されるでしょう。
さらに原作者・燃え殻によるエッセイ2篇も読むことができます。映画を見たあともたっぷり作品世界の余韻に浸りたい方は、ぜひ手にとってみてください。
燃え殻について語る時に切っても切り離せないのがTwitter。2021年11月時点でフォロワーが24.7万人いる。なぜ、ここまで支持されるようになったのだろうか。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』でも描かれているように、テレビの美術制作を作成する仕事に就いていた作者。そこからゲーム関連の会社への営業へ転職した際にTwitterに出会うと、かつてラジオのハガキ職人をやっていた経験を活かして仕事や日常の「小ネタ」をつぶやくように。そして元ハガキ職人のラジオの構成作家やスピードワゴンの小沢一敬など著名人にもフォローされるようになり、拡散されていきました。抒情的でフォロワーの心に刺さる特徴的なツイートを楽しみにするファンが増えたのです。
作者のことをもっと知りたい方は、小説よりもエッセイがおすすめ。きれいな表紙で思わず買い集めてしまいたくなるようなデザインの『すべて忘れてしまうから』とその完結編である『夢に迷って、タクシーを呼んだ』を読んでみてください。
綴られているのは、燃え殻の新旧の日常の出来事。相手が言った言葉や行動の一つひとつに対し、考えすぎてしまうような作者の繊細な思索がくり広げられます。共感しながら、自分の経験に重ねて「自分だったら」と考えながら読める文章となっています。
- 著者
- 燃え殻
- 出版日
- 著者
- 燃え殻
- 出版日
映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』について、最新情報を知りたい方はこちらから。
<公式ホームページ>
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