佐藤賢一おすすめ作品ランキングベスト5!中世〜近世のヨーロッパが舞台!

更新:2021.12.15

西洋史専攻出身で本格西洋歴史小説を描く佐藤賢一。多数の資料を土台にした、正確にして緻密な作品構成が魅力です。佐藤賢一作品のおすすめを5作ご紹介します。

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西洋歴史小説と言えば佐藤賢一!

佐藤賢一は1968年生まれ、山形県鶴岡市出身の小説家。1993年『ジャガーになった男』で小説すばる新人賞を受賞してデビューし、1999年には『王妃の離婚』で直木賞を受賞しています。

博士課程まで進んで培った歴史学の知識やフランス語史料を駆使して丁寧に時代背景を描写する作風と、地の文からそのまま独白に入り、最後をカギカッコで締めるという文体が特徴です。

5位:主役がマリー・アントワネットではないフランス革命『革命のライオン』

全10巻からなる「小説フランス革命」の1巻目です。

1789年、ヴェルサイユでフランス革命に大きく影響を及ぼす全国三部会と呼ばれる会議がはじまりまることになりました。

三部会では、聖職者代表の第一身分、貴族代表の第二身分、平民代表の第三身分と分けられた議員が選出されています。第三身分の中にはのちにフランス革命の中心人物となるロベスピエールの姿もありました。

第一身分や第二身分の議員たちにある差別意識のせいで、議会はあまり進展しないことに業を煮やした第三身分の議員たちは国民議会を宣言。

彼らの指導者の貴族・ミラボー伯が裏工作を成功させたことで、第一身分の議員たちが第三身分に合流する動きを見せはじめたことで、議会はやっと動き出すのですが、国王は納得しません。

それどころか、国民議会に解散要求、平民大臣のネッケルを罷免など人民の怒りを買うことばかりを続け、フランス各地で暴動などが起こりはじめ……フランス革命へと繋がることになるのです。

著者
佐藤 賢一
出版日
2011-09-16

世界史の授業で触れるけれど、詳しくは学ばない歴史上の人物や事件がしっかり描かれていて、日本語でこれほど詳しくフランス革命を扱ったものはないのではないでしょうか。佐藤賢一が歴史レポートを作る流れでできあがった作品らしく、濃厚な物語展開はしませんが、史実に基づいて進んでいきます。

いろいろな立場のキャラクターが登場しますが、それぞれが緻密に描かれているので、関係や状況がよくわかりますし、最初は弱々しかったロベスピエールが革命の指導者として立っていく姿や革命の中の人々の動きにリアリティさがある作品です。

フランス革命を『ベルサイユのばら』のエピソードでしか知らない方や、世界史で軽く勉強しただけの方、また既にある程度知識のある方にも、満足できる内容に仕上がっていますので、ぜひ手に取ってみて頂きたい佐藤賢一の作品です。

4位:フランスを作り上げたカペー家の歴史を追う 『カペー朝―フランス王朝史1』

周りを強力な敵たちに囲まれながら、ローマ教皇や神聖ローマ皇帝と並ぶ存在の王朝へと成り上がっていったカペー家300年の歴史を網羅した佐藤賢一の作品です。

凡庸だったといわれるカペー朝の始祖ユーグ・カペーから、赤ん坊のうちに死んだジャン1世までが登場。

著者
佐藤賢一
出版日
2009-07-17

フランスというと、フランス革命が関わったこともあり、ブルボン朝が有名で資料も多く、カペーについて書かれているものはあまりありません。そういえば、ルイ16世の名前に「カペー」が含まれていたなと思い出した程度でした。

ですが、このブルボン朝はカペー朝の支流なので、これがなければ存在しえないわけですから、とても重要なものとなります。

佐藤賢一のこの本では、カペー王朝の起こりから詳しく、それもそれぞれの王について、上下関係や嫁姑問題なども丁寧に書かれているので、のちのフランス革命までの流れを知るための資料としても充分役立つのではないでしょうか。

3位:百年戦争を戦い抜いた、美しくない英雄 『双頭の鷲』

ベルトラン・デュ・ゲクランは、イングランドとの百年戦争で、劣勢なフランスを救った英雄でありながら、ブルターニュの貧乏貴族、さらに乱暴で常識がありません。

ですが、とにかく戦の天才。戦のたびにその能力を発揮し……。

容姿に恵まれずに生まれてしまったが故に、「鎧を着た豚」や「ブロセリアンドの黒いブルドッグ」などとあだ名され、それを補うために破天荒に強くなっていった男が描かれるのですが、その逸話も少々悲しいもので、この美しくない英雄に情が湧いてしまう部分でもあります。史実に忠実なので、その悲しさまでもリアルでした。

著者
佐藤 賢一
出版日
2001-06-28

ベルトランの他に彼の主君であるシャルル5世、ライバルに当たるグライーが登場し、物語を進めていきます。ベルトランとグライーの戦いぶりとシャルル5世の背政治上の駆け引きが実に見事に絡み合っているのです。

登場人物の破天荒さ、戦での勝利、物語の展開の巧さなどどれをとっても完成度が高く、楽しめる佐藤賢一の作品。歴史が苦手なら、ハイ・ファンタジーとして読んでみることをおすすめします。

2位:単純な英仏間の戦争ではない! 『英仏百年戦争』

黒太子・エドワードやジャンヌ・ダルクといった国民的英雄が生み出されることになった、後世いうところの「英仏百年戦争」を佐藤賢一が易しく解説している概説書です。

構成がすっきりしていて、無駄な部分がなくて読みやすいので、ややこしい時代と言われる1337年から1453年のフランスとイギリスの歴史がすんなりと頭に入ってきます。

「百年戦争」に詳しくなくともわかるように、知っておくべき知識として「前史」から時系列で書かれているので、追いかけていくのも容易いのです。

著者
佐藤 賢一
出版日

イングランド王、フランス王でありながら、二大勢力がともに「フランス人だった」ところ、この戦争をもってフランスやイギリスのナショナリズムが生まれたのだと知ることもできます。

また、戦争終焉で終わりにはせずに「結論」まで持って来てあるため論文のようであり、分かりやすい仕様になっています。西洋史を学んでいた佐藤賢一だからこそ描けた一作です。
 

1位:王が王妃を訴えた! 直木賞受賞作 『王妃の離婚』

1498年フランス。原告:ルイ・ドルレアン。被告:ジャンヌ・ドゥ・フランス。

国王が王妃に対して離婚裁判を起こしますが、王妃には弁護する者のない不正なものでした。それを知った田舎の弁護士が王妃の弁護を引き受けて……。

どうしても別れたいが故に、カトリック信教の離婚は認められていないというのに、国王があることないことをまくし立てていくのですが、国王に逆らう形となることを恐れて、誰も王妃の弁護をしないわけです。

孤立無援で絶対的に不利な王妃が天才といわれる地方の弁護士に弁護を依頼し、彼がそれに応えて訴訟をひっくり返し、国王の名誉を保ちつつ和解へと持ち込む姿が描かれています。

佐藤賢一が、中世フランスの様子、風俗、神学、法学、裁判についてかなりの資料を調べあげたことが想像できる緻密な描写は、まったく知らない時代のことなのに情景が眼に浮かんでくるという見事さでした。

著者
佐藤 賢一
出版日

特に、離婚するためのむちゃくちゃな王の証言を、キリスト教を絡めての論理でダイナミックにひっくり返していく裁判のシーンなどは臨場感があり、緊張と興奮すら感じてしまうことでしょう。

登場人物の描写は的確で、随所に出て来る少々下世話な表現のせいもあるのか、歴史的な裁判を扱った作品という硬さ、重たさをあまり感じさせません。

硬軟併せ持つ、佐藤賢一の傑作歴史小説です。

資料を読み込み、史実を生かした作品作りをする佐藤賢一。解説書のような本も出しているので難しいのでは?と思われがちですが、そんなことはありません。歴史の中に活き活きと描写されるキャラクターたちの魅力をぜひ堪能してみてくださいね。

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