寺山修司おすすめ作品5選!『書を捨てよ、町へ出よう』は、もう読んだ?

更新:2021.12.15

寺山修司といえば、昭和を背景に駆け抜けた歌人・劇作家です。「昭和の啄木」に代表されるような様々な異名を持っており、様々な作品を発表しました。歌人・劇作家とはいうものの、小説家・映画監督・写真家など、様々な分野に造詣が深かったのも特徴です。

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「メディア」を知り尽くした男、寺山修司

寺山修司は様々なメディアを賑わせました。その文章はどの作品においても読みやすく、寺山修司の作品が広く大衆に愛される理由がわかります。彼の作品は、様々なメディアに触れているからこそ、多様な視点を持って描かれているのです。また、本人の人生も破天荒そのもので、『あしたのジョー』の登場人物である「力石徹」の葬儀を主催したり、覗きで捕まったり、当時のファンを驚かせました。彼の作品の多様な表現は、多彩な経験があるからこそ、書くことができたのでしょう。そんな彼の作品からおすすめの作品を5点ご紹介いたします。

「父世代」への反発、自由であることの面白さ『書を捨てよ、町へ出よう』

寺山修司の書いた評論集です。当時の若者たちに対し、一度アウトローになってみてもいいじゃないか、と、別の視点を持つことを進めています。様々な視点から評論をしていますが、どれもが自由であることの面白さを説いていました。社会に、人間関係に縛られている人ほど、「なるほど!」と手をつくような視点が紹介されている一冊となっています。

著者
寺山 修司
出版日
2004-06-25

『書を捨てよ、町へ出よう』というタイトルは、当時の社会からするととても挑発的なタイトルだといえます。「書」とはすなわち勉強や義務の体現であり、それを捨てて「町」へ出るというのは、遊びに行く、とほぼ同義です。内容も、『不良人間入門』『行き当たりばったりで跳べ』など、刺激的なタイトルが並んでいます。人々に、社会が悪としている、「非協調」、他人を思いやらない道があるということもある、ということを示しているのです。

他人のことを思いやることはもちろん大切なことです。しかし、そればかりでは疲れてしまいますよね。他人本位な実生活に疲れきった人は、この本に触れてみることで、新たな視点をひらけるかもしれません。真面目な人にほど、おすすめの一冊です。
 

一人の青年の目線から、濃い青春を描く『われに五月を』

これは寺山修司が一番はじめに出した作品集で、この作品から、後に長く続くことになる寺山修司の作家としての人生がはじまりました。本作は歌集・詩集になっており、病のため激動の十代後半を過ごした、寺山青年の目から描かれる人生を描写しています。

著者
寺山 修司
出版日
2004-03-25

『われに五月を』は、若い人ならば今過ごしている自分と重ね合わせ、そうでなければ、自分の若かりし頃を思い出しながら読むことが出来る作品です。どこか物語的で、漫画のような表現を含みながら語られる寺山青年の青春は、とてもみずみずしいものばかりです。しかし、寺山青年が当時不治の病を患っていたことを考えると、また別の見方が生まれてくるのではないでしょうか。

彼の青春を謳歌し、生命に満ち満ちた作品の数々は、病気の不安があってこそ生まれたものだと思います。明るく、エネルギーにあふれたこの作品を、寺山修司の背景を知ってから是非読んでみてください。言葉のすみずみに隠れた、ちょっとした不安が読み取れるはずです。それでも、寺山修司はそんな不安をものともせず、雄大に青春を語っています。もし悩んでいることがあれば、きっと、彼の作品が肩を押してくれるでしょう。
 

今はいなくなってしまった「少女」の姿を浮き上がらせる『不良少女入門―ぼくの愛した少女』

寺山修司の作品たちを「少女」という主題のもと集めた一冊となっています。詩や音楽、映画、哲学など、一冊で様々な面から楽しむことが出来るあたりも、メディアを股にかけた寺山修司ならではといえるでしょう。

本作は寺山修司の作品を没後まとめたもので、作品に対する解説を第三者が行っています。寺山修司本人がおこなっているわけではないため、この本の解説とはまた違った解釈が生まれることもあるでしょう。そのように、ある意味本と議論するということを楽しむことが出来る一冊となっています。
 

著者
寺山 修司
出版日

寺山修司たちから見た少女たちはどれも未成熟ながら「特有のエロシチズム」を備えていました。ふと、周りを見回して、現代の少女たちがそういった要素を持っているのか、と考えるのも面白いかもしれません。昭和と現代の少女たちが、どのように異なっているのか、現代にまとめられた作品だからこそ、対比することが出来るのです。
 

戦後書かれた詩を、鋭い目線で批評『戦後詩 ユリシーズの不在』

ほぼタイトルの通り、戦後に書かれた詩を寺山修司が独自に集め、批評した作品です。その数は64編にも及び、一つ一つに丁寧な批評が成されています。
 

著者
寺山 修司
出版日
2013-08-10

寺山修司の批評は鋭く、失礼とさえ思える言葉でおこなわれています。しかし、寺山修司の批評を読んでからもう一度批評の対象となった作品を読み返すと、なるほど、と的を射ている意見ばかり。もちろん、全ての意見が納得のいくものではありませので、本を通して寺山修司と議論をする感覚を味わうことができるはずです。

戦後詩のもう一つの楽しみ方として、「寺山修司編集の詩集」として楽しむことが出来ます。寺山修司自身も、「詩集」として楽しめるように長い詩をそのまま引用したとあります。様々な詩を、寺山修司の鋭い目線と共に楽しめるのです。まさに一冊で二度美味しい書籍だといえるでしょう。
 

激動の時代を駆け抜けた男の、珠玉の名言集『寺山修司名言集―身捨つるほどの祖国はありや』

寺山修司の諸作を検討し、筆者が名言だ、と判断したものをまとめた作品です。没後しばらくしてからまとめられた言葉であるにも関わらず、その言葉は今も生き生きと輝いていています。言葉の一つ一つから寺山修司の思想がにじみ出ており、読んでいるうちに、寺山修司と対話しているような気分にさえなるでしょう。

著者
寺山 修司
出版日

寺山修司の言葉はどれも寺山修司自身への戒めとも取れ、彼の人生を知ってから読み込むと、より深く彼の言葉を味わうことが出来ます。作中の言葉はどれも説教臭くなく、しっとりと心の中にしみわたっていくでしょう。

寺山修司の人生は激動の連続でした。彼に降りかかった災難の中には、彼自身が招いたものもあります。だからこそ、人間臭い彼の言葉には大きな魅力があります。人間、寺山修司の人生を辿る名言集、是非一度触れてみてはいかがでしょうか。
 


以上5冊でした。寺山修司の作品は、どれも彼自身の目線が活かされています。様々なメディアに触れてきた寺山修司だからこそ見える世界があるのでしょう。彼のつむぐ言葉は非常に魅力的で、ゆえに人を強く惹きつけ続けます。もちろん、彼の言葉に共感できないという人もいるでしょう。そんな人でも、彼の言葉には何らかの発見があるはずです。

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