『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』でも話題の文豪たち!その素顔に迫るおすすめ書籍と漫画

更新:2022.4.20

文豪といえば、『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。これらの作品のモデルとなった実在した文豪もまた非常に興味深いものです。波乱万丈な人生を送った文豪たち。その素顔がわかるおすすめの書籍や漫画を紹介します。

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※当企画は『犬猫映文館』との連動企画です。映画作品にフォーカスした記事「文豪登場のおすすめ映像作品6選!」もぜひご覧ください!

『文豪ストレイドッグス』に『文豪とアルケミスト』など文豪ブーム到来!

『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』の人気を受け、文豪がブームになっています。では、元来、文豪とはどんな人たちを指すのでしょうか。

文豪とは、主に近代文学における大家のこと、つまり大作家といわれる作家のことです。二大文豪と呼ばれる夏目漱石や森鴎外はご存じの人も多いはず。芥川龍之介や谷崎潤一郎、三島由紀夫などなど名だたる文豪たちの作品は今なお愛され続けています。

これらの実在する文豪をモデルにした二次元創作ものとして人気を博したのが、『文豪ストレイドッグス』(以下、「文スト」)や『文豪とアルケミスト』(以下、「文アル」)などです。「文スト」は文豪がその作品名と同名の異能を持ち戦うアクションバトル漫画。「文アル」も文豪が登場し、文学書の存在をかけて戦うアクションゲームです。文豪たちの性格や人間関係などをそのまま取り入れています。

そんな文豪たちの作品だけでなく、人となりを紹介した書籍も多く存在します。彼らの私生活や人間関係は、実際のところかなり過激で複雑です。だからこそ、誰にも真似のできない独自の名作を生み出してきたのかもしれません。

この記事では、「文スト」や「文アル」以外の文豪に絡んだ多くの書籍や漫画の中から、文豪の人となりがわかるムック本や逸話集、文豪がモデルとなった漫画などを一挙に紹介します。

著者
["風李たゆ", "くろでこ", "しやまとうや", "高遠キョロ", "のりた", "ヨネダ", "板垣ハコ", "浦稀えんや", "おの秋人", "茅島 環", "彩月つかさ", "さっちゃん", "じっか", "永緒ウカ", "七路ゆうき", "なま子", "はやせれく", "藤丘ようこ", "雪矢トモキ", "ユギリ", "渡空燕丸"]
出版日

酒癖の悪さに派手な女性関係など波乱に満ちた文豪たちを紹介!『レジェンド 文豪のありえない話』

『レジェンド 文豪のありえない話』は、明治、大正、昭和と時代ごとに文豪を紹介しています。その選別や時代区分は編集部の決定によるもの。それぞれの時代ごとの文豪年表や文豪相関図、文豪人間関係を図解でまとめたものなど充実した内容となっています。

各文豪の紹介に関してもキャッチーでありながら、その人物が非常によくわかるエピソードが紹介されています。たとえば石川啄木。作品に反して、かなりのダメ人間だったようです。中学校はカンニングがばれ、出席日数が足りずに退学。その後も、友人の金田一京助などに借金をしては女遊びを繰り返していました。

この1冊があれば、一通りは文豪に関して学ぶことができるでしょう。文豪の紹介だけでなく、文豪のしたためた恋文、文豪たちの性表現、戦後小説と文壇の流れなどの読みものも非常に面白く書かれています。そんなところもおすすめです。

多少過激な表現も使われていますが、それだけ文豪たちの私生活自体が面白可笑しいということなのでしょう。天才と人間性は相容れないのかもしれないと思わず考えてしまいますよ。

著者
[]
出版日

意外な組み合わせ!『文豪たちの友情』

『文豪たちの友情』は、そのタイトル通り「文豪たちの友情」に特化しています。この文豪の友情というのもそれぞれ面白いエピソードがいくつも語り継がれているのです。

この本では、その「文豪たちの友情」を3部構成で紹介。第1章は文豪たち自身が認める「ニコイチ」の2人を取り上げています。たとえば、室生犀星と萩原朔太郎など。萩原朔太郎は室生犀星を美少年だと思い込んでいましたが、初めて会った時に、犀星があまりに美少年とかけ離れていたのでがっかりしたというエピソードも。

第2章は若くして亡くなった文豪を取り巻く人間関係についてです。太宰治と坂口安吾などが取り上げられています。第3章は絶好した文豪がその後和解するなど、クセの強い文豪2人の複雑な関係を紹介しています。谷崎潤一郎と佐藤春夫を紹介。妻を巡る友情エピソードは非常に有名です。

特におすすめしたいのは、第2章の人間関係でしょうか。太宰治の名作『走れメロス』のモデルとなったリアルな話は、作品とは程遠いエピソードであることがわかります。

文豪たちの自伝、随筆、書簡、日記などを作者が読み漁り、全部で13組の文豪たちが取り上げられました。筆者曰く、この本は「文豪の履歴書」。各文豪の歴史を友情という視点で紹介した興味深い書籍です。

著者
["石井 千湖", "鈴木 次郎", "ミキワカコ"]
出版日

美化しすぎでは!?『文豪男子コレクション』

『文豪男子コレクション』は、明治時代から昭和時代前半に活躍した文豪の中から、広く現代にも知られる作品を執筆し、それらが活字か電子書籍で読めることを条件に選ばれた文豪を紹介しています。

文豪の人なりを知ることで、文学を自由に理解し楽しんでほしい。文豪も私たちと同じように、笑い、泣き、苦しみ、恋をした生身の人間であることを知り、その作品にも興味をもってほしいという筆者の思いから誕生した本です。

たとえば、最初に紹介されている森鴎外。医者一族の家に生まれたため、医者になることが決まっていました。そんな鷗外の天才エピソードを紹介。神童と呼ばれていた鴎外は東大医学部の受験の際、14歳からしか受けられないところ、年齢を誤魔化し12歳で合格したといいます。

この本で特に注目したいのが各文豪のイラスト。教科書などで目にしたことのある文豪のビジュアルからはかけ離れ、本人の作風や生き方をもとに擬人化した文豪イラストが掲載されています。非常に美化されたイケメン男子に変身した文豪を楽しむことができます。

著者
レッカ社
出版日

毎日が文豪記念日!『文豪きょうは何の日?』

『文豪きょうは何の日?』は、文豪にまつわる記念日を紹介しています。1月1日から12月31日まで1日ごとに、その日どんな文豪に何があったかエピソードを紹介。各文豪の誕生日を取り上げた日もあれば、結婚や離婚、引っ越し、命日など1日も欠かさず何かしらのエピソードが存在しています。

それ以外の面白エピソードもあります。たとえば、1月17日は芥川龍之介がインフルエンザにかかる、2月6日は太宰治が母校の青森中学校で講演を行うなど。どれも年譜や自伝、書簡、日記などの資料をもとに取り上げています。何を参照したかも掲載されているので、興味があれば、直接その資料を読んでみることもできます。

筆者が暦を手がかりに文豪の奇跡をたどっていたら、いくつもの宝のようなエピソードがあることを発見。まさに毎日が文豪記念日。自分や周囲の人たちの記念日と重ね合わせて調べてみても楽しそうですね。

著者
立東舎
出版日

ぜひ参考にしたい!『文豪の凄い語彙力』

文豪といえば、その言葉の巧みさには脱帽してしまいます。そんな文豪が実際にどんな表現を駆使しているか紹介しているのが『文豪の凄い語彙力』です。

文豪のその「凄い」ところは、日々、言葉を探し言葉を選んでいくだけでなく、相応しい表現がなければ創り出してしまうというところ。また、その表現の秀逸さは格別です。

特に印象的なのは、幸田露伴の次女で作家の幸田文。小説『流れる』から「糖衣を脱いだ地声」という表現が紹介されています。糖衣という言葉を強いてほかの言葉で言い換えるなら、「オブラートに包む」のオブラートといったところ。本性を隠しているという意味で使われているのが「糖衣」です。

知性と教養から培われた文豪の語彙を知ることで、読者も使ってみることもできます。この本はそんな国語力を高めてくれる可能性を秘めています。

自分の表現の幅が広がるということは、心が豊かになることでしょう。そうして人生を楽しむひとつのきっかけになりそうな魅力を持った本です。

著者
山口 謠司
出版日

ひと味違った紹介もあり!『文豪お墓まいり記』

『人のセックスを笑うな』で知られる作家・山崎ナオコーラ。彼女が夫とともに文豪の墓まいりをするというある種の紀行文です。夏目漱石や永井荷風が眠る「雑司ヶ谷霊園」、中島敦や堀辰雄が眠る「多磨霊園」などがある東京のお墓だけなく、織田作之助が眠る「楞厳寺」など大阪のお墓にもまいっています。

各文豪のお墓紀行では、文豪それぞれの日記なども紹介し、彼らが何を思考していたのかも紹介されています。ただの紀行文ではありません。さすが作家だけあり、読みものとしても面白い作品になっています。

たとえば、永井荷風は『断腸亭日乗』に生前、自分の墓について記しているとのこと。「荷風散人墓」の五文字を高さ五尺を超えない石に彫って、浄閑寺の寺の娼妓たちの墓の中に置いてほしいと書いたそうです。実際には、自分の父の墓の隣に埋葬されたようですが。

また、文豪ごとに本人のイラストが掲載されていますが、このイラストも山崎が描いています。なんとも味のあるイラストは、この本の魅力のひとつです。

現代の作家が昔の作家に会いにいくといった一風変わった形式の文豪書籍が『文豪お墓まいり記』です。

著者
山崎 ナオコーラ
出版日

創作の苦悩や不幸な生い立ち『文豪はみんな、うつ』

多くの傑作を世に送り出してきた文豪たち。彼らの作品は、現在もなお愛され、読み継がれています。そんな文豪たちは、その名声とは異なり、不幸な生い立ちの者や半世間的な生き方を望んだ者も多く、精神的にも不安定な状態の者が少なくありませんでした。

夏目漱石もその1人。漱石には幻聴や被害妄想があり、精神を病んでいたことはこれまでも多く言われてきました。この本では、精神科医の岩波明がその病名について詳しく解説。文豪の作品を用いて、具体的に紹介しています。

著名な文豪たちがドラマティックな人生の一方で、精神を病み、心中や自殺を図ったエピソードなども紹介。文豪たちが、命がけで創作に励んでいたことがわかります。平穏で安全な道をあえて選ばない代わりに、自らの文学を手に入れていった文豪10名をピックアップ。

文豪の生きざまと作品から人間の本質を探ることができる、その手助けになるのが『文豪はみんな、うつ』です。

著者
岩波 明
出版日

夏目漱石のサロンが舞台『或る日、木曜会で。』

1915年、牛込区早稲田南町七番地にある「漱石山房」が舞台。毎週木曜日になると、夏目漱石の自宅に集まる門下生たち。この集まりは「木曜会」と呼ばれ、漱石一番弟子の内田百閒を中心に、漱石を慕う若者たちが集いました。そんな彼らの何気ない日常を描いた物語が漫画『或る日、木曜会で。』です。

物語は、まだ帝大生だった芥川龍之介が久米正雄と「木曜会」に参加するところから始まります。彼らが、木曜会メンバーとして徐々に慣れ親しんでいく様子がなんとも微笑ましく、漱石もみなから好かれていることがわかります。

さまざまな作家が登場していくところも興味深く、文豪好きにはたまらないでしょう。そんな文豪たちの作品にも興味が沸いてくるに違いありません。

【主な文豪】( )は青空文庫へのリンク

夏目漱石(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person148.html#sakuhin_list_1

内田百閒

芥川龍之介(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person879.html#sakuhin_list_1

著者
寺島らて
出版日

萩原朔太郎など天才詩人登場!『月に吠えらんねえ』

『月に吠えらんねえ』は、「月刊アフタヌーン」にて連載された清家雪子原作の漫画作品です。近代詩歌俳句の各作品から作者が受けたイメージをキャラクター化。文豪本人のエピソードを参考にはしていますが、あくまでオリジナル作品であることを謳っています。

作者独自の視点から過激な表現も含まれますが、そこが多くのファンからは評価されているところ。近代女性の悩みや文学者の戦争責任といったシリアスなテーマを扱い、文化庁メディア芸術漫画賞新人賞を受賞しました。

架空の街・□(詩歌句)街を舞台に、主人公の萩原朔太郎を中心とする北原白秋、正岡子規、室生犀星、三好達治、高村光太郎、中原中也たちとの一風変わった交流を描いています。彼らが、人としての幸せを投げうって創作に打ち込む姿はある種の狂気。美しい絵柄に、狂気をはらんだ文豪の生き方が魅力的な物語です。

【主な文豪】

萩原朔太郎(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person67.html

北原白秋(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person106.html#sakuhin_list_1

室生犀星(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1579.html#sakuhin_list_1

三好達治(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1749.html#sakuhin_list_1

著者
清家 雪子
出版日

中原中也と小林秀雄の出会い!『最果てサーカス』

大正14年。後に文芸評論家となる23歳の小林秀雄は、上京してきたばかりで18歳の中原中也と運命的な出会いを果たします。天才詩人・中原中也と彼の才能に嫉妬しつつも魅了されていく小林秀雄との不思議な友情。それを描いているのが漫画『最果てサーカス』です。

月刊スピリッツに連載された本作は、第1部全3巻が発売中。原作は『彼女とカメラと彼女の季節』の月子。実在する人物をモデルにフィクションを織り交ぜて描いています。

劇中に実際の詩が非常に効果的に登場します。心を掴むその演出は、この作品のみどころのひとつです。若き日の文豪の文学にかけるその姿に勇気をもらえる、そんな作品です。

 【主な文豪】

中原中也(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person26.html#sakuhin_list_1

小林秀雄(文芸評論家)

著者
月子
出版日

あり得ない設定に笑っちゃう!『文豪失格』

『文豪失格』は、WEBコミックサイト「COMICリュエル」にて連載中のギャグ漫画です。人気声優、故・藤原啓治プロデュースの同名ドラマCDが原作。監修に一柳廣孝、漫画を千船翔子が担当しています。

実在する文豪が天国でも大手出版社で執筆をしているという設定のもと、文豪同士の交流などを面白おかしく描いています。内容は現代に通じていて、たとえば芥川龍之介がライトノベル執筆を頼まれ、夏目漱石に相談。ライトノベルを学ぶため、天国の平成地区にあるアキバにいってみるなどシュールテイスト満載です。

実際の文豪エピソードが取り上げられ、大学教授の一柳廣孝による作品解説などもあり、何気に勉強になってしまうところも魅力。登場する文豪の数も多く、楽しみながら文学史の勉強になるなどお得感のある作品です。

 【主な文豪】

夏目漱石(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person148.html#sakuhin_list_1

芥川龍之介(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person879.html#sakuhin_list_1

泉鏡花(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person50.html#sakuhin_list_1

谷崎潤一郎(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1383.html#sakuhin_list_1

 太宰治(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person35.html#sakuhin_list_1

 中原中也(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person26.html#sakuhin_list_1

 宮沢賢治(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person81.html#sakuhin_list_1

 川端康成

 志賀直哉

 坂口安吾(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1095.html#sakuhin_list_1

 江戸川乱歩(https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1779.html#sakuhin_list_1

著者
["千船 翔子", "AIRAGENCY・フロンティアワークス"]
出版日
2015-11-28

文豪の魅力とは

ここまで文豪に関する書籍を紹介してきました。その文豪の人となりを知った上で作品に触れてみると、理解度も深まり、これまでとは違った印象を受けることでしょう。

現代とは異なる時代背景の中で、創作を続けた文豪たち。非凡な才能の持ち主の彼らは、時に自身の幸せと引き換えに、時に命がけで創作に邁進していました。

自ら死を選び若くしてこの世を去った者、精神を病み苦しみ続けた者、お酒に溺れる者、男女のもつれも日常的な者など波乱万丈な人生を送りながら、自らをさらけ出し創作に臨む文豪たち。これらすべてが彼らの創作の糧となり、その作品は今なお私たちの心を掴んで離しません。文豪の魅力とは、彼らの生き方そのものなのかもしれませんね。

まとめ

文豪と呼ばれる作家たちを紹介している書籍は数多く存在しています。それらの多くで、文豪の素顔を知ることができます。

文豪の人なりを知ることで、その作品に興味を持つこともあるでしょう。その時はぜひ文豪が執筆した文学作品に触れてみてください。

新たな世界への入り口となることでしょう。


※当企画は『犬猫映文館』との連動企画です。映画作品にフォーカスした記事「文豪登場のおすすめ映像作品6選!」もぜひご覧ください!

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